引っ越し先を考えた時、交通の便やスーパーマーケットに商店の数など、人それぞれの条件があるもの。けれど、スペック的なところは検索すればわかるものの、実際にその街で暮らすとどんな雰囲気や光景に出会えるかは、未知数です。
本企画「私の街を紹介します」では、そんな、暮らしてみたからこそわかる街の良さを求めて、その街で暮らす人々にインタビュー。数字や検索だけではわからない、その街に流れる空気を紹介します。大阪府の物件を探す

西は大阪湾、北は淀川に面している大阪・此花地区。そんな此花地区の梅香・四貫島エリアでは、「夢を持った若者を応援する街 梅香・四貫島」をテーマに、これまで「みっけ!このはな」など、町を舞台にしたイベントが行われてきました。

そんな此花に惹かれ、初めて訪れたときに引っ越しを即決したというマルヤマさんは、ここに暮らして6年。今年から始まったイベント「Buy by Bye Bye Markets」で賑わう、此花の顔「モトタバコヤ」にて、その魅力をお聞きしました。

―まずは此花へ住み始めた理由をお聞きできますか。

マルヤマさん:「此花は2006年ごろから地元の土地屋さんの協力を得ながら開催していた年に1度の「みっけ!このはな」というイベントを軸に、街で若者が表現や創作に取り組み、活躍できる場づくりを目指したさまざまなプロジェクトが行われてきました。その甲斐があり、さまざまなクリエイター、アーティストが暮らしたり通ったりする町になっています。僕が初めて此花へ行ったのはその動きの中の一つの、2015年に開催されていた「青い鳥展」というグループ展でした。展示といえばホワイトキューブのギャラリーで行うことが一般的ですが、此花では空き家をギャラリーのようにして作品を展示していて。その様子が当時の僕には結構衝撃だったというか」

―こんなやり方があるんだ、というような?

マルヤマさん:「こんなに自由でいいのか!というような。本当に廃屋みたいなところで表現活動をしていたり、作品が展示されているわけですよ」

―確かにおもしろそうです。町を楽しみながら作品に出会えるんですね。

マルヤマさん:「あと、僕は大学では家具制作を専攻していたのですが、ものづくりが生活の基本だったんですね。でも当時の仕事は企画が主となって、なかなか手を動かすという場面がなくて。もっと手を動かしたいという思いを持っていました。それが此花だったらできるんじゃないかと」

―アーティストをはじめ、さまざまな人が集う町だからこそ?

マルヤマさん:「そうですね。おもしろそうな人たちがたくさん集う此花だったら、ものづくりができる環境を自分で持ちつつ、本業の仕事もするという理想のバランスがとれそうだなと思ったんです。その場ですぐに、此花で設計事務所をやっている方に『いい物件ないですか?』って相談していました(笑)。そしたら、すぐ見つかったんですよ」

―初めての場所なのに、すごい行動力ですね。

マルヤマさん:「友人が町を拠点に仕事をしていたことや、その日のうちに知り合いもたくさんできたこと、そして何より『モトタバコヤ』の存在も大きかったですね」

―「モトタバコヤ」は、現在カフェとして営業していますね。

マルヤマさん:「はい。今はstudioBAIKafeさんがメインで営業されています。ここは元たばこ屋だったのをリノベーションしているのですが、引っ越した当時は曜日や時間帯でお店が替わるシェアショップでした。僕もせっかく引っ越すなら何か町で役割を持ちたいと思って、『モトタバコヤ』で週3日『ichido morning stand.』というコーヒースタンドを始めることに。当時神戸で働いていたので週3日の早起きは苦行でしたが(笑)、楽しかったですね」

当時「モトタバコヤ」でオープンしていた「ichido morning stand.」

生業の余白をシェアし、街を育てる

―もともとこの辺りはどういう町なのでしょう?

マルヤマさん:「街のつくりでいうと、この辺りは埋立地なんですね。昔は埋立地を作る大事業に関わる日雇い労働者や出稼ぎの人が暮らしていた町だったそうです。『モトタバコヤ』の周りは住宅地でお店があまりないですが、喫茶店やスナックなどがポツポツとあって。そういうお店は、当時暮らしていた労働者の人たちの憩いの場として営まれていたようです」

―なるほど。街の作りにそって、商いが興っていたんですね。

マルヤマさん:「そうですね。そういうことも含めて直感的に、此花は人が支え合っている感じがすごくあったんですよね。大きなスーパーもあって僕も買い物に行きますけど、全部をそこに頼るのではなく、知り合い同士でちゃんと商いや暮らしの環境を作っていこうというようなスタンスが垣間見えたというか」

―その感覚は、この場に集う新たな人たちにも広がっているのかもしれませんね。雰囲気ものんびりしています。

マルヤマさん:「そうですね。いい意味で戦っていない。各自の生業の余白を、それぞれがシェアすることで新たな可能性が広がっているような感じがします」

―と言いますと?

マルヤマさん:「こないだ空き地を借りて、何人かで農園をやりはじめたんです。僕は特に目的はなく興味本位で藍を育ててみて、思いのほかたくさん収穫できたので、毛糸を染めたり紡いだりをする友達にお裾分けしたんですね。そしたらそれを使って染めた毛糸をプレゼントしてくれて。こういう経済とは違う関係性のようなものが、この町にはありますね」

―これを作ったらあの人が喜びそう!と、誰かを思うことで新しいものが生まれる、そんな雰囲気のある環境なんですね。

マルヤマさん:「はい。そうやって地域の人と関係性を築き一緒に楽しむということが実現できていて。これこそ求めていた暮らしだ!と思っています(笑)」

―マルヤマさんは、お子さんもいらっしゃいますが、子育てという面ではどうですか?

マルヤマさん:「最高ですね!」

―どのような点を、そう思います?

マルヤマさん:「千鳥橋駅の北側にすごくいい公園があるんですよ。正蓮寺川公園という公園で、もともとは川だった場所を埋め立てて公園にしているんですね。これはまだ進行中のプロジェクトで、完成後は今の3~4倍の距離になるそうです。車もバイクも入れないのはもちろん、川の堤防がしっかり残っているので接道している場所がかなり限られていて、子どもが100mぐらい先へ走って行っても、安心してみてられるんです」

―のびのびと遊べそうな環境ですね。

マルヤマさん:「田舎で子育てしたいと思ったこともありますが、田舎には逆にこの安全はないなと思いますね。 他にももう少し西へ行くと北港マリーナという場所があって、ヨットハーバーのようになっているんです。流木を拾ったり、芝生エリアでピクニックをしたり。ここで見る沈む夕日も最高ですね」

―此花、なんだか楽しそうです。住んで6年経ちますが、当時感じた街のおもしろさに変化はありますか?

マルヤマさん:「実は『みっけ!このはな』は残念ながら2017年で10年の幕を閉じ、終わってしまったんです。引っ越す大きなきっかけにもなったイベントでしたし、町にハレの場がなくなってしまったのが寂しかったです。そこで、今年の春から『Buy by Bye Bye Markets』という蚤の市イベントを始めました」

マルヤマさんが手掛けた「Buy by Bye Bye Markets」のフライヤー

―ちょうど今日開催されているイベントですね。

マルヤマさん:「はい。これは『モトタバコヤ』だけでなく、あちこちのお店や場所で同時多発的に行うイベントです。モノやコトを心地よく循環していくことを目指した広義での蚤の市なんです。お店の人や個人それぞれが、自由に手をあげて参加できるようなイメージですね」

「KIKI」で出店していた、「ごはんやiori」さん

マルヤマさん:「僕自身は『モトタバコヤ』の前で蚤の市を開いていますが、自宅のガレージを開く人も。10年以上の蓄積で町に関わるアーティストもたくさんいるので、展示をしてもらってもいいですし、すごくラフな感じで、その気になれば誰もが参加できるイベントにしようとやり始めました。点在している魅力を線でつないでいくことで、此花という面が見えてくる。そんな役割を持たせたいなと考えていて、実際に徐々にそうなってきている気配を感じています。これからも少しずつ、広げていきたいですね」

今回紹介したのは阪神なんば線の千鳥橋駅があるエリア。

駅前には四貫島商店街があり、昔ながらの個人商店がまだ現役で営業していて賑わっています。なんばや梅田には約15分、尼崎には約10分で出られるので、繁華街に出やすいのも魅力。

さまざまな世代の人が暮らし、のどかな雰囲気があるので、下町風情を感じられる場所で暮らしたい人にはおすすめですよ。

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◆本記事の担当者

取材・文:小島知世

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