東日本大震災・熊本地震と大きな災害が続く災害大国日本。今後も高い確率で大きな災害が起こると予測されています。
災害に強い国土を作るためには、政府・民間が協力して事業を進めていくことが重要なポイントです。そこで、政府は強くてしなやかな国土を作るために「国土強靭化基本法」を制定しました。国土強靭化基本法は具体的にどういう内容なのか、法律の概要や課題について解説していきます。
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国土強靭化基本法の概要
国土強靭化基本法は2013年に可決・成立しました。相次ぐ大規模自然災害を受けて「強くしなやか」に対応できる国土を作っていくための法律です。
基本理念は4つあり、1つ目には東日本大震災などの自然災害から学び、教訓を踏まえて防災・減災に取り組んでいくことが挙げられています。2つ目は実際に災害にあった後にスピード感のある復旧・復興を実施するための施策作りです。
3つ目は国民の生命や財産を保護すること、4つ目は国民生活や経済に与える影響をできるだけ少なくすることと、災害が発生したときのリスクをいかに下げるかが基本理念とされています。
今後は、基本理念に基づいた基本計画を作成し、民間・地方自治体と連携しながら様々な取り組みを実施していきます。

国土強靭化基本法の基本理念は4つ
30年以内に起こるとされている大地震
2011年に東日本大震災が起こり、2016年には熊本地震が発生しました。台風などの水害も含めると毎年のように自然災害が発生し、多くの犠牲者が出ています。地震調査研究推進本部では、南海トラフ地震・首都直下地震が30年以内に70%程度の確率で発生すると発表しています。地震による命の危険・経済のリスク・災害後の復興を考えると対策は急務と言えます。国土強靭化基本法と同時期に、南海トラフ地震対策特別措置法・首都直下地震対策特別措置法も成立しました。
東日本大震災などの大規模災害では、災害以前の生活に戻ることができない人が大勢います。もし同じような災害が起こったとしても国民生活が守られるような仕組み作りが急務です。
※出典:南海トラフで発生する地震 地震調査研究推進本部

災害時も国民生活が守られる仕組み作りが急務
物件を探す おすすめ特集から住宅を探す計画実施には、地方自治体が重要な役割を持つ
国土強靭化基本法のもと、施策を作り実施していく上で基本目標が定められています。最優先は人命保護、次に日本社会の重要な機能・公共施設の維持が重要とされています。基本目標全体として、災害の被害を完全にゼロにすることはできませんが、できるだけ致命的な被害を負わないことと速やかに復興することが掲げられています。
国土強靭化基本法では、「国土強靭化地域計画」として、地域の特性などに合わせた計画を策定できると決められています。災害対策では、実際に地域ごとの仕組み作りが重要になってくるため、地方自治体への期待は大きいです。特に、南海トラフや首都圏直下の地震で被災する可能性がある地方自治体では対策が急がれています。
想定される様々な事態に合わせた対策が必要なため、国土強靭化の推進方針では分野に分けた計画作りを推奨しています。例えば、住宅・都市分野では、住宅が密集している地域での火事の広がりを防止する対策、交通・物流分野では、交通機関や物流の施設が止まってしまうことによる被害を想定して、建物の対災害性を向上させる対策などです。他にもエネルギー分野・情報通信分野などに分けられています。

地域の特性などに合わせた計画の策定を
<具体的に進められていること>
・ハザードマップを策定し活用を推進する事業
・海岸防災林・海岸堤防の整備
・避難施設・避難経路の整備など
施策は一人ひとりの行動や心構えを変えていくソフトの面と、建物を修復したり設備を整えたりするハードの面に分けられています。
国土強靭化基本計画が2014年に閣議決定されてから、全国の地方自治体で話し合いが進められ、南海トラフで被災する可能性のある山梨県では既に国土強靭化地域計画が策定されました。しかし、国土強靭化地域計画を作ることは必須ではないため、まだ計画が完成しているところは多くありません。

具体的な話し合いが進められているが…
国土強靭化基本法は本当に必要なのか?
いつどこで起こるか分からない自然災害に備えて迅速に対策を決め、人々の生活を守ることは各自治体にとって重要なことです。しかし、国土強靭化地域計画のもとで進めるかどうか、本当に必要かどうかはまだ議論の余地があります。
国土強靭化基本法が制定され、地方自治体も話し合いを始めています。その中にはこの法律が災害対策の名の下に公共事業への予算投下ではないかという見方もあります。国土強靭化基本法では、10年間で200兆円の予算が含まれています。公共事業を進めることが、本当に住民の生活を守ることになるのか、私たちは慎重に見守る必要があるでしょう。

住民と話し合って施策を作ることが重要
東日本大震災では防波堤の建設に反対する住民が大勢います。かさあげ工事や高台移転などの事業も住民との折り合いがつかずに、予定通りに進捗しませんでした。完成した頃には、申請していた住民が既に仮設住宅から引越していて不要になってしまった場所もあります。復興庁によると、東日本大震災では、2011年度からの5年間で約4.4兆円の予算が未使用だったと発表しています。
予算を地方自治体に配分しても資源不足・人材不足などの理由で使いきれない可能性があるということです。それぞれの自治体は、本当に必要な対策に予算と資源を割くことができるように地域住民と入念に話し合いながら施策を作っていくことが重要です。
更新日: / 公開日:2016.10.29









