家賃は抑えたいが、希望の条件も叶えたい

都心に近い駅は通勤に便利だが、その分、家賃は高くなりがちだ都心に近い駅は通勤に便利だが、その分、家賃は高くなりがちだ

1~3月は、賃貸住宅市場が活況を呈する時期である。春からの新生活に向けて引越しをする人がいれば、もちろん退去する人もいるわけで、さらに、このシーズンに合わせて入居者の募集を始める新築物件も多い。つまり、物件の選択肢が1年で最も豊富になるタイミングなのだ(※1)。そのなかには、この時期に合わせて新たに二人暮らしを始めよう、新たな住まいに転居しようという夫婦・カップルもいるだろう。

総務省が発表した2022年11月度の消費者物価指数(総合指数)(※2)は、前年同月比で3.8%上昇、前月比は0.3%の上昇となるなど物やサービスの値段が上がり続けている。今後も上昇傾向は続くとみられ、日本銀行が「経済・物価情勢の展望」で示した消費者物価指数の先行きは、2023 年度および 2024 年度もプラス幅は縮小するとしながらも1%台半ばの伸びになると予測されている。一方、物価上昇の加速に賃金の伸びは追いついておらず、家計にとっては苦しい状況が続く。二人の将来を見据えて貯蓄や投資をしようと家計の見直しを図るとき、収入のおよそ2割を占める家賃(※3)の支出を減らせないかと考えたことはあるだろう。

しかし、家賃は単に安ければいいというわけではない。毎日を豊かに過ごすためには、間取り、設備、周辺環境や利便性など、二人の希望の条件を叶えることも大切だ。とはいえ、コストパフォーマンスがよいに越したことはないだろう。そこで今回LIFULL HOME'S PRESSでは、東京都心に通勤する夫婦・カップルをターゲットに、「【二人暮らし×都心通勤編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023」と題し、「都心に近く・住みやすく・かつ家賃も抑えられる街」の可視化を試みた。


※1:LIFULL HOME’Sに掲載された賃貸物件の数は、1-3月期が最多(2020年、2021年実績)
※2:総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国2022年(令和4年)11月分」
※3:『令和3年度住宅市場動向調査報告書』より、三大都市圏の民間賃貸住宅に住む世帯の平均世帯年収は 516 万円、住み替え前の平均月額家賃は8万2,910円

都心に近い駅は通勤に便利だが、その分、家賃は高くなりがちだ住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023【二人暮らし×都心通勤編】

【二人暮らし×都心通勤編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023 概要

本ランキングの対象駅は、都心の職場に通いやすい駅として、JR山手線各駅、ならびに山手線各駅から20分圏内にある駅としている。
また「駅周辺の施設充実度が高い(※4)」ことを「住みやすい」と定義し、不動産・住宅情報サイトLIFULL HOME'Sの独自データをもとに、各駅から徒歩15分圏内の二人世帯用物件の平均家賃とその駅周辺の施設充実度から「理論家賃(駅周辺の住みやすさに見合う妥当な家賃)」を算出。その理論家賃と比べ、実際の平均家賃が安い駅をランキングにした。これは「都心に通いやすく、住環境が優れているわりに家賃を抑えて二人暮らし用の住まいを借りられる駅」を表しているといえる。 対象物件は、築40年以内、駅徒歩15分以内、1LDK・2K・2DK・2LDK・3K・3DK・3LDK、30m2以上80m2未満の賃貸マンションとした。

※4:駅周辺の施設充実度は、LIFULL HOME'S住まいインデックスで用いられるWalkability Index(ウォーカビリティインデックス)の総合スコアを参照。
Walkability Indexとは、駅から徒歩15分以内でアクセス可能な施設(スーパー、コンビニ、公園、飲食店、カフェ、文化施設、子育て・教育施設、医療施設など)を、分類ごとの周辺立地数をもとに、その充実度を100点満点でスコア化したもの。東京大学・株式会社日建設計総合研究所が共同で研究・開発を進めている、不動産の立地環境を暮らしやすさの観点から指標化した日本初のデータ。

駅周辺充実度と平均家賃より理論家賃を算出。理論家賃に比べ安い駅をランキング化(Excel® にて算出)駅周辺充実度と平均家賃より理論家賃を算出。理論家賃に比べ安い駅をランキング化(Excel® にて算出)

1位の亀有駅には、忙しい二人にうれしい施設が充実

【二人暮らし×都心通勤編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023の、1~10位【二人暮らし×都心通勤編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023の、1~10位

山手線駅まで20分圏内の駅のうち、住みやすさのわりに家賃が安い駅の1位は「亀有」駅(JR常磐線・東京都葛飾区)、2位は「川口」駅(JR京浜東北・根岸線・埼玉県川口市)と、1・2位は「一人暮らし×都心通勤・通学編」と同様の2駅がランクイン。また、一人暮らし・都心通勤・通学編では8位だった「小岩」駅(JR総武線・東京都江戸川区)が3位に食い込んだ。

1位の「亀有」駅から乗車できる常磐線各駅停車は、東京メトロ千代田線に直通しており、大手町駅まで23分、霞ケ関駅まで28分と、都心にダイレクトにアクセスが可能だ。また、駅から徒歩15分以内にある施設の充実度をスコア化した「駅周辺充実度」は100点満点のうち85ポイントで、駅周辺の施設充実度から算出した理論家賃は17.47万円となり、実際の平均家賃10.48万円との差額(-6.99万円)は対象駅のなかで最大となった。これは住環境から見た妥当な家賃よりも、6.99万円低い家賃相場で借りられることを意味している。

また、亀有駅の駅周辺充実度を項目別に見ると、「スーパー」のスコアが91、「弁当・惣菜」のスコアが87と、共働きで忙しい夫婦やカップルにとって、うれしい施設が充実している。亀有銀座商店街や亀有北口中通り商店街も活気があり、平日も休日も、便利に楽しく暮らすことができる駅といえそうだ。

LIFULL HOME'S住まいインデックス「亀有駅の住まいと暮らしやすさ」
https://lifullhomes-index.jp/info/areas/tokyo-pref/01038-st/
〈亀有駅の二人暮らし用賃貸物件〉
https://www.homes.co.jp/chintai/theme/15101/tokyo/kameari_01038-st/list/

【二人暮らし×都心通勤編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023の、1~10位商業が集積する亀有駅北口周辺の様子。2006年には南口から徒歩圏内の工場跡地に大規模ショッピングセンター「アリオ亀有」も開業した。付近は平坦で、自転車を活用すれば行動範囲も広がりそうだ
【二人暮らし×都心通勤編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023の、1~10位亀有駅南口からは、羽田空港行きのリムジンバスなども発着する。葛飾区には南北方面の鉄道路線がないため、バス路線もうまく活用したい

2位の川口駅、3位の小岩駅は、子どもができても暮らしやすい?

2位の「川口」駅は、駅周辺充実度が85ポイントで理論家賃は17.50万円、実際の平均家賃(10.88万円)との差額は6.61万円となった。川口駅のある川口市は、荒川を挟んで東京都と隣接しているが、川口駅から1駅東京寄りの赤羽駅(東京都北区)の家賃相場は14.8万円となっており、県境を越えることで相場は約4万円下がる。
川口駅からは、京浜東北線で上野駅まで18分、東京駅まで25分でアクセスできるほか、赤羽駅で乗り換えれば、池袋駅や新宿駅、渋谷駅といった副都心エリアへも30分以内でアクセスできるため、夫婦やカップルで通勤先が異なるとき、どちらもが通いやすい立地として検討しやすいエリアである可能性もある。また、「子育て施設」のスコアが88と、上位10駅のなかで最も高く、子どもが生まれてからも住み続けやすい環境といえるかもしれない。


LIFULL HOME'S住まいインデックス「川口駅の住まいと暮らしやすさ」
https://lifullhomes-index.jp/info/areas/saitama-pref/00599-st/
〈川口駅の二人暮らし用賃貸物件〉
https://www.homes.co.jp/chintai/theme/15101/saitama/kawaguchi_00599-st/list/

川口駅周辺には、市立中央図書館や川口駅前行政センターなどの行政施設も集まる。商業施設が充実する東口に対し、西口には川口西公園(リリアパーク)が隣接し、水遊びができる川や遊具が整備されている川口駅周辺には、市立中央図書館や川口駅前行政センターなどの行政施設も集まる。商業施設が充実する東口に対し、西口には川口西公園(リリアパーク)が隣接し、水遊びができる川や遊具が整備されている

3位はJR総武線の「小岩」駅。山手線や京浜東北線に乗り換えができる秋葉原駅までは17分、隣の新小岩駅で総武快速線に乗り換えると、東京駅へ20分、品川駅へ30分以内で到達可能だ。駅周辺充実度が85ポイントで理論家賃は17.49万円なのに対し、実際の平均家賃は11.02万円。差額は6.48万円となった。
駅周辺施設充実度は、「コンビニ」のスコアが83、「飲食店」のスコアが85と、いずれも亀有駅や川口駅よりも高く、料理に手間はかけられない忙しい二人には便利な環境といえそう。また「医療施設」は、ランキング上位10駅のなかで最も高い88ポイントとなっている。子どもが小さいうちは特に病院にかかる機会も多いが、医療機関が充実している点は、子どもができてからも住み続けることを考えた際の、安心材料のひとつとなるだろう。

LIFULL HOME'S住まいインデックス「小岩駅の住まいと暮らしやすさ」
https://lifullhomes-index.jp/info/areas/tokyo-pref/01928-st/
〈小岩駅の二人暮らし用賃貸物件〉
https://www.homes.co.jp/chintai/theme/15101/tokyo/koiwa_01928-st/list/

川口駅周辺には、市立中央図書館や川口駅前行政センターなどの行政施設も集まる。商業施設が充実する東口に対し、西口には川口西公園(リリアパーク)が隣接し、水遊びができる川や遊具が整備されている小岩駅は南口・北口ともに商店街が発達している。現在、複数の再開発計画も進行中だ

トップ30には城西エリアの私鉄駅も登場

4位には、東京都から多摩川を渡って神奈川県に入ってすぐの「川崎」駅(JR東海道線、京浜東北・根岸線、南武線・神奈川県川崎市)がランクイン。続く5位は、城東エリアに位置する「堀切菖蒲園」駅(京成本線・東京都葛飾区)となり、トップ10には主に城東エリアの各駅と、川口駅、川崎駅といった東京都と県境を接する市の中心駅が名を連ねた。

9位の「上板橋」駅(東武東上線・東京都板橋区)は普通電車しか停車しなかったが、2023年3月から準急電車が新たに停車するようになり、池袋駅への利便性が向上する。一般的に優等列車停車駅は家賃相場が高くなることから、同駅の今後の家賃相場の動向も注視しておきたい。

30位以内には、城西エリアの私鉄沿線の駅も登場しており、これらの駅は、都心へ通勤しやすく、都市の利便性を享受しながら比較的家賃を抑えて暮らすことができる駅といえる。

【二人暮らし×都心通勤編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023の、11~20位【二人暮らし×都心通勤編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023の、11~20位
【二人暮らし×都心通勤編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023の、11~20位【二人暮らし×都心通勤編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023の、21~30位
【二人暮らし×都心通勤編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023の、11~20位【二人暮らし×都心通勤編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023の、1~30位の各駅

二人にとって何が大切かを考える機会に

新型コロナウイルス感染症の拡大により、ライフスタイルの多様化が加速した。今回は、都心に通勤する二人を前提に、都心へのアクセスを担保したうえで、駅周辺の総合的な施設充実度が高いわりに家賃の安い駅をピックアップしたが、住まい探しの指標は決してそれだけではない。

今回、1~3位の亀有駅、川口駅、小岩駅の各駅はいずれも駅周辺充実度の総合スコアが85で、総合的な利便性は同等だが、項目別に3駅を比較すると、「スーパー」のスコアは亀有駅が最も高く、「コンビニ」のスコアは小岩駅が高い。他方「カフェ」が最も集積しているのは川口駅となる。また、ランキング上位の各駅には、ハザードマップ上で、河川が氾濫した際に浸水が想定される「洪水浸水想定区域」にかかる地域も含まれている。
日々の食事は自炊か外食か、休日はどのように過ごすか、災害リスクをどれだけ許容するかなど、人ぞれぞれで大切にしたい指標は変わるはずだ。LIFULL HOME’S住まいインデックスでは項目別のスコアも公表しているので、本ランキングとあわせてぜひ活用いただき、二人の住まい探しに役立てていただきたい。

5位の堀切菖蒲園駅は、「習い事」のスコアは上位10駅中で最も低いが、⼀⽅で「公園」のスコア
は最も⾼い。花菖蒲のほか、四季折々の花が見られる堀切菖蒲園の最寄り駅5位の堀切菖蒲園駅は、「習い事」のスコアは上位10駅中で最も低いが、⼀⽅で「公園」のスコア は最も⾼い。花菖蒲のほか、四季折々の花が見られる堀切菖蒲園の最寄り駅

■ランキング調査概要
・対象駅:1都3県(東京・神奈川・千葉・埼玉)に所在する全駅のうち、JR山手線各駅ならびに山手線各駅から20分圏内の全駅、また掲載物件200件以上の駅
・対象物件:築40年以内、駅徒歩15分以内、1LDK・2K・2DK・2LDK・3K・3DK・3LDK、30m2以上80m2未満の賃貸マンション、
・対象期間:家賃・掲載物件は2021年10月~2022年9月、駅周辺充実度は2022年10月時点
・算出方法:駅ごとの対象物件の平均家賃と駅周辺の施設充実度から「理論家賃(駅周辺の住みやすさに見合う妥当な家賃)」を算出、その理論家賃と比べて実際の平均家賃が安い駅をランキング化
・集計分析:LIFULL HOME'S事業本部 リサーチグループ

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