これからの住宅業界は、ますます多種多様なニーズに迫られる
長期優良住宅、瑕疵保険、ゼロエネ住宅、スマートハウス、低炭素住宅、中古住宅市場の活性化、インスペクションなど、住宅にまつわるキーワードが連日新聞紙上を賑わす。
政権が不安定で、住宅政策も目まぐるしく変わってきていることもあるが、これから住まいを検討している方にとってみれば、それらのキーワードについて情報が氾濫しており、自分にとって必要な情報なのかどうか、整理するだけでも一苦労なのではないだろうか。
ましてや、史上空前の低金利時代、消費税増税、住宅ローン控除の拡充などの優遇税制も絡んでくると、何となく気持ちも焦り、"今やらなくていつするの?""今でしょ!"なんて、流行の言葉も浮かび、無理やり背中を押されている感じになっている人も多い。
個人の背景も同じ。
多少景気が良くなっているような感じはあるものの、バブル崩壊後の長い不況や東日本大震災を経験した世代は、これから収入は増えていくのか、ずっと定年まで雇用してくれるのか、退職金はでるのか、年金はもらえるのか、老後の生活は大丈夫なのか、親の面倒は誰が看るか、土地は、建物は、相続税が発生したら支払えるのか、また大きな地震がきたらどうするのか、不安は絶えない。
これからの住宅業界は、こうした顧客の多種多様なニーズに多角的に対応していかなければならない。
住宅業界は、製造業からサービス業へ
今までの家づくりは、顧客との信頼関係をもとに、抽象的な表現だが、しっかりとした家を建てていればよかった。いわば“製造業”という意識である。
ところが、平成12年4月1日に「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」が施行され、耐震性能、省エネ性能など住宅の性能が客観的な等級で示されるようになり、姉歯事件をきっかけに、逆手にとるような偽装問題なども起こった。顧客の意識は、建物の情報開示と具体的な安心を求めるようになった。
また、バブル崩壊後の長い不況で、お金に関する考え方も大きく変化した。
感覚的に購入する人はいなくなり、今後の収入や生涯設計に慎重で、すべての不安を払拭しない限り、前へ進めない慎重派が増えた。こうした顧客の不安を解消するためには、住宅業界に携わる我々は、建物の構造というハード面だけでなく、住宅ローンなどのファイナンス知識、各種優遇税制の税務知識などあらゆる知識が必要で、多角的に提案する必要がある。
いわば、住宅業界は、“総合サービス業”と変化しなければならない。
セカンドオピニオン会社の重要性
住宅業界では、建築士という専門家が主導で家づくりを行ってきた。
顧客の要望を聞き、設計図面を作成し、各種行政関係をまとめ確認申請を行う。現場が始まれば、施工監理をしながら完成まで導く。いわゆる建築の専門家だ。今も昔ながらの工務店では、営業が存在せず、最初から最後まで一人の建築士(社長)が行っている。基本的にはこの形は今後も変わらないが、顧客の多種多様なニーズに応えるためには、建築という一つの専門性だけではもはや対応できない。
土地から購入する場合は不動産会社に、リフォームするならインスペクション会社に、住宅ローンや年金などはファイナンシャルプランナーに、優遇税制や確定申告などは税理士に、相続・贈与や近隣トラブルなどは、弁護士、司法書士に意見を求め、包括的に、そして多角的に提案することが求められている。
また、最近では、売り手でも作り手でもない客観的な第三者機関も登場してきた。施工会社の紹介会社しかり、住宅全般のコンサル会社しかり、現場の検査などを行うインスペクション会社しかりだ。
医者にセカンドオピニオンがあるように、直接施工を行なう会社の意見だけではなく、こうした第三者的な会社の意見を利用するのも、後悔しない方法の一つだ。
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