過去に土地がどのように利用されていたのかを知る「地歴調査」
住宅を建てるために、土地を探す。そして気に入った場所が見つかれば、次は「さてどんな住宅を建てようか」と、マイホームの夢が膨らんでいく……。
しかしその前に知っておきたいのが、土地に潜むリスクだ。
宅地として販売されている土地は、多くの場合、開発会社や不動産会社によって土地の素性やリスクが明らかにされているが、なかにはそのリスクが潜んだままの土地も存在する。しかし、施主としては隠れたリスクもできるだけ知っておきたいもの。
そこで2つの記事を通して、一般の消費者が自らの手でできる調査の仕方と見つけるべきリスクを紹介する。1回目は、その土地が過去にどのように使われていたかを調べる「地歴調査」について。
さまざまな土地の調査を手がけてきた土地の専門家である、有限会社トヨノ測量・設計事務所 土地家屋調査士の中川繁さんに伺った。
地歴調査によってわかる土壌汚染の可能性
地歴調査は、土地利用履歴調査ともいわれる。以前に化学工場やガソリンスタンド、溶剤を使用するクリーニング工場などが立っていた場合、当時使用していた有害物質が地下に浸透して土壌が汚染されていることがあり、その可能性を調べるものだ。
汚染されたまま対策を行わず、有害物質が地下水などによって周囲へ広がったりすれば、健康被害が生じる可能性もある。土壌汚染によって引き起こされるリスクは以下のとおり。
■人間の健康や暮らしへの影響
・健康被害
手などについた有害物質を口から直接摂取したり、揮散(きさん)した有害物質を含む空気を吸入したり、汚染された地下水の飲用や有害物質を吸収した魚介類や農作物を摂取することによって健康被害を生じる。
・生活環境への悪影響
悪臭や不快感、空気の汚染が生じる。
■経済的な影響
・土壌汚染がある土地は当然資産価値が下がる
・土壌調査や対策のために経済的負担が生じる
・訴訟・賠償費用が生じる可能性がある
2003年2月に施行された「土壌汚染対策法」は、土壌汚染の状況を把握して健康被害の防止や対策、措置を実施し、国民の健康を保護することを目的とする。この法律により、特定有害物質を使用する土地の所有者や管理者、占有者は、土壌汚染状況調査の実施・報告を行うことが義務付けられている。法が定める特定有害物質は以下の3種。
・第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)
・第二種特定有害物質(重金属など)
・第三種特定有害物質(農薬など)
「土壌汚染に関しては、土壌汚染対策法や自治体の条例で調査が義務化されている区域があります。また、調査対象の有害物質が指定されている場合もあります」(中川さん)
地歴調査はあくまで土壌汚染の可能性を調べるもの。実際の土壌汚染の有無は、土壌サンプルの採取による専門的な分析が必要になってくる。土壌汚染の可能性がわかった場合、自治体の水道局では上水道の水質検査も行ってくれる。
健康に直結する大きなリスクである土壌汚染。これを知るためにはまず、登記簿などで以前の土地の用途を調べ、そのうえで自治体などが指定する調査対象になっていないかどうかを調べたい。
建物が建てられない可能性も!? 地下の埋蔵物によるリスク
「次に大きなリスクといえるのが、埋設物です。地下にある構造物は、建築物を建てるときに大きな障害となる場合があります。土木工事の障害となる埋設物を除去するための費用がかかることも考えられます」(中川さん)
埋設物とはどんなものか。よくあるのは、鉄筋コンクリートの建物の基礎や、地下タンクなどだという。
「地下には構造物だけではなく、遺物や遺跡といった文化財が埋もれている場合もあります」
文化財が地下に埋もれた土地は埋蔵文化財包蔵地といわれ、その存在が知られている土地は全国で約46万ヶ所もある。現在も毎年9,000件程度の発掘調査が行われている。
「文化財が埋もれている可能性がある場合は、市町村の教育委員会によって調査が行われます。しかしそれは非常に時間がかかり、その間、建築もストップします」
目的の土地に遺跡が埋まっていないか、まずはその可能性を知るために、埋蔵文化財包蔵地に該当しているかどうかを調べてみよう。
その方法については「市町村の教育委員会が作成している遺跡地図や遺跡台帳で確認できます」と中川さん。ただし埋蔵文化財は必ず遺跡地図や遺跡台帳に記載されているとは限らないという。未確認の文化財も多く、新たに発見される場合も多い。
埋蔵文化財包蔵地に該当する土地で土木工事を行おうとするときには、60日以上前に自治体の教育委員会に届出を行い、試掘調査が必要になる。試掘調査にかかる費用は、土地所有者が負担しなければならない。調査の結果によっては詳細な発掘調査が求められることもある。この場合、調査期間中は工事がストップするだけでなく、結果的に目的の建物を建てられないケースも出てくる。
構造物にせよ文化財にせよ、地下の知られざる埋蔵物は、土地の利用者にとってリスクであることは確かだ。
閉鎖謄本と土地台帳。古い資料は法務局で閲覧できる
土地の利用について残されている公的な書面が登記簿謄本だ。建物が登記されていなくても、土地の用途として記載がある。
なお、謄本がデータ化される以前に関しては、「閉鎖謄本」として閲覧できる。閉鎖謄本を閲覧する場合、まず目的の土地の地番を知ることが必須となる。地番は土地に振られている番号だが、住居表示とは異なる。法務局に備えてあるブルーマップという地図では、住居表示と対比しながら地番を知ることができる。
そして地番がわかれば、法務局の窓口で閉鎖謄本の閲覧を請求する。土地の所在地によって管轄する法務局が違ってくるので、これはネットで確認してから出かけたい。
文字でわからないリスクは、航空写真と古地図で
土壌汚染と埋蔵物に関して、事前にその可能性を知る方法を紹介してきた。しかし、文字の情報だけではわからない情報もある。現在は、ネット上でさまざまな土地に関する古い情報が手に入る。まずは、自然地形がわかる古い地図と、古い航空写真を用意しよう。
これに関しては、国土交通省国土地理院が、地歴調査に使える古い地図や航空写真をWebサイトにまとめている。国土地理院の「地図・空中写真・地理調査」というページがそれだ。
ほかにも、大学の地理関係の研究室などが独自の古地図サイトを公開している例も。これらのサイトでは、日々精度や利便性が向上してきており、私たち一般の消費者が得られる土地の情報は増えている。
しかしこれらのサイトを通じて得られた情報は、土地のリスクを確定するものではない。これ以上は詳細な調査が必要になり、その結果を基に初めて実際の対策を考えることになる。
私たちが土地の購入を考えるとき、たとえ住宅用地として販売されている土地であっても、そこにはさまざまな目に見えないリスクが存在するのだ。まずは関心を持つことが、リスク回避の観点から重要だといえる。
ここまで地下に埋もれた物について、そのリスクを書いてきたが、もう一つ重要な観点がある。それは土地の災害リスクだ。次回は災害と土地の関係について調べてみよう。
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