全国の地価公示の動向と大阪府との比較

全国の地価公示の概況と大阪の地価公示を振り返る全国の地価公示の概況と大阪の地価公示を振り返る

全国の2022年の地価公示は、平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年ぶりに上昇という結果になっている。工業地については、6年連続の上昇となっており、上昇幅も拡大している状況だ。新型コロナウイルスの影響は徐々に薄れてきており、全国的には早くも回復傾向という雰囲気になっている。

それに対して、大阪府の平均は、住宅地で2年ぶりの上昇、商業地は2年連続の下落、工業地は7連続の上昇となっている。大阪府では、商業地が新型コロナウイルスの影響を脱し切れていない。

地価変動率の推移
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001470637.pdf

2022年の地価公示は、地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)の上昇率が高いというのが大きな特徴だ。用途別・圏域別に上昇率を見ると、住宅地の変動率は全国平均が+0.5%、東京圏が+0.6%、大阪圏が+0.1%、名古屋圏が+1.0%、地方四市が+5.8%、大阪府が+0.1%となっている。

令和4年地価公示の概要
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001470613.pdf

全国の地価公示の概況と大阪の地価公示を振り返る「令和4年地価公示の結果について」大阪府ホームページ参照。大阪府の年間の地価動向

商業地の変動率は、全国平均が+0.4%、東京圏が+0.7%、大阪圏が0.0%、名古屋圏が+1.7%、地方四市が+5.7%、大阪府が▲0.2%である。 工業地の変動率は、全国平均が+2.0%、東京圏が+3.3%、大阪圏が+2.5%、名古屋圏が+1.6%、地方四市が+7.4%、大阪府が+2.2%という状況だ。

大阪圏および大阪府の変動率は、住宅地と商業率は全国平均よりも低く、工業地のみが全国平均を上回っている。三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)の上昇率はいずれも地方四市よりも低いが、大阪圏は三大都市圏の中でも上昇率が最も低くなっている。商業地に関しては東京圏と名古屋圏は上昇しているが、大阪圏だけは横ばい(大阪府は下落)という結果となった。

全国的には回復基調にあるものの、大阪圏の地価公示は厳しい状況が続いているといえる。

全国の地価公示の概況と大阪の地価公示を振り返る令和4(2022)年地価公示 圏域別・用途別対前年平均変動率
出典:国土交通省ウェブサイト

大阪の地価公示はインバウンド需要減の影響が顕著

大阪の地価公示の特徴は、商業地の下落に見られる。商業地の下落率の全国ワースト10のうち、大阪市の標準地が8地点も入っている。

変動率下位順位表(全国)
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001467037.pdf

下位順位表10に入っている大阪市の標準地は、以下の通りである。

1位「大阪中央5-19」(大阪市中央区道頓堀1丁目) 下落率▲15.5%
2位「大阪中央5-24」(大阪市中央区日本橋1丁目) 下落率▲14.7%
3位「大阪中央5-2」(大阪市中央区宗右衛門町) 下落率▲10.9%
4位「大阪中央5-23」(大阪市中央区心斎橋筋2丁目) 下落率▲10.7%
5位「大阪中央5-15」(大阪市中央区難波1丁目) 下落率▲9.9%
6位「大阪中央5-35」(大阪市中央区千日前2丁目) 下落率▲9.8%
8位「大阪浪速5-3」(大阪市浪速区日本橋4丁目) 下落率▲8.8%
9位「大阪中央5-20」(大阪市中央区西心斎橋2丁目) 下落率▲7.8%

7位には岐阜県高山市、10位に広島県江田島市の商業地が入っている。また、1位の「大阪中央5-19」は、住宅地や工業地も含め、全国全用途の中で最も下落した地点となっている。大阪市で商業地が大きく下落しているエリアは、JR等の複数路線が乗り入れている「難波駅」周辺のミナミと呼ばれる地域に集中している。

令和4(2022)年地価公示 変動率下位順位表(全国)<br>
出典:国土交通省ウェブサイト
令和4(2022)年地価公示 変動率下位順位表(全国)
出典:国土交通省ウェブサイト

ミナミは外国人観光客が多く、飲食店も集中しているエリアであるため、新型コロナウイルスの影響を色濃く受けている。新型コロナウイルスによってインバウンド需要が大きく減り、飲食店における会食ニーズも激減したことから、地価の下落が顕著となった。全国的に見ても、近年の地価上昇が外国人観光客の増加を背景とした商業地は下落が継続している傾向がある。

例えば、札幌市のすすきの地区にある「札幌中央5-2(札幌市中央区南6条西)」もインバウンド需要を背景に上昇してきた繁華街であるが、2021年は▲7.4%、2022年は▲1.6%と下落が継続している。

特徴的な地価動向が見られた各地点の状況
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001469931.pdf

札幌のすすきの地区の商業地も2年連続で継続しているが、下落率は大阪のミナミ地区よりは小さい。一方で、外国人観光客の増加を背景に地価が上昇してきた地域でも、2022年に上昇に転じたエリアもある。例えば、東京都台東区にある浅草地区もインバウンド需要を背景に上昇してきた商業地である。浅草地区にある「台東5-4(台東区浅草1丁目)」は、2021年は▲12.0%の下落であったが、2022年は+1.1%と上昇している。

浅草も大阪ミナミと同様に外国人観光客は回復していないものの、浅草は立地に対する希少性や市場の期待感を理由に価格が上昇している。大阪ミナミの場合、希少性や期待感といったあいまいな理由だけでは上昇には至らず、実際にインバウンド需要が回復しないと上昇には転じにくいものと思料される。

令和4(2022)年地価公示 変動率下位順位表(全国)<br>
出典:国土交通省ウェブサイト
大阪府大阪市中央区道頓堀地区の大阪中央5-2(なんば駅230m)は10.9%下落、大阪中央5-19(なんば駅260m)は15.5%下落。写真は大阪府・南海難波駅前

大阪圏の住宅地は0.1%上昇、大阪市は+0.6%

住宅地の上昇率は、大阪圏で0.1%、大阪市は+0.6%、大阪府では+0.1%となっており、利便性の高い大阪市は大阪府の中でも高い上昇率を示している。

大阪圏の地域別対前年平均変動率
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001467019.pdf

大阪府の中でも、上昇率が高い区は、1位が西区の+6.0%、2位が中央区の+3.5%、3位が同率で都島区と浪速区の+2.0%となっている。

大阪圏の市の対前年平均変動率
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001467020.pdf

皮肉にも商業地として最も下落率が高い中央区は、住宅地としては上昇率が高い部類に属している。少し広い範囲の大阪圏でとらえると、大阪府箕面市では北大阪急行線の新駅が開業するため、地価上昇が継続する地点も見られた。

大阪府箕面市にある「箕面-19(箕面市船場西1丁目)」では、2021年に+4.5%、2022年に+4.3%上昇しており、比較的高い上昇率が続いた形となっている。また、箕面市の新駅開業予定地周辺では、商業地の上昇も続いている状況だ。

特徴的な地価動向が見られた各地点の状況
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001469931.pdf

大阪府箕面市船場地区の箕面-19(千里中央駅2.1km)は4.3%上昇、箕面 5-4(千里中央駅1.6km)は7.5%上昇。北大阪急行延伸で設置される新駅の徒歩圏内エリアで地価の上昇が続いている。(写真はイメージ)大阪府箕面市船場地区の箕面-19(千里中央駅2.1km)は4.3%上昇、箕面 5-4(千里中央駅1.6km)は7.5%上昇。北大阪急行延伸で設置される新駅の徒歩圏内エリアで地価の上昇が続いている。(写真はイメージ)

大阪圏の商業地の変動率は0.0%も、大阪市で下落

商業地は、全国平均は+0.4%の上昇となっているが、大阪圏の変動率は0.0%、大阪市平均は▲1.1%の下落となっている。

大阪圏の地域別対前年平均変動率
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001467019.pdf

大阪市の中でもミナミのある大阪市中央区の下落率が最も高く、大阪市中央区の平均下落率は▲3.2%である。

大阪圏の市の対前年平均変動率
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001467020.pdf

大阪市の商業地はミナミも下がっているが、梅田駅周辺のキタも下落している。大阪圏の中で最も地価の高い「大阪北5-28(大阪市北区大深町)」は、2021年は▲8.4%、2022年は▲3.5%と下落が継続している状況にある。

特徴的な地価動向が見られた各地点の状況
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001469931.pdf

キタはミナミのように外国人観光客の依存度は高くはないものの、店舗やホテルの収益性が低下していることが下落の理由とされている。2022年の地価公示では、全国的に商業地は再開発事業等の進展期待があるエリアやマンション用地と競合するエリアは地価が上昇するという傾向が見られた。

大阪のミナミとキタでは、タイミング的に目玉となる再開発は行われておらず、マンション用地と競合するほど地価も安くないことから、上昇する要因はなかったといえる。結果的に、インバウンドの減退や会食ニーズの減少の影響をまともに受ける形となってしまい、地価の高い大阪の中心部ほど回復に至らなかったことになる。

大阪府大阪市北区梅田地区は価格順位大阪圏1位。大阪駅近接の大阪北5-28は3.5%下落。写真は大阪梅田の都市風景大阪府大阪市北区梅田地区は価格順位大阪圏1位。大阪駅近接の大阪北5-28は3.5%下落。写真は大阪梅田の都市風景

大阪圏の工業地は7年連続で上昇

工業地は全国的に上昇しており、広く大阪圏で見ても7年連続で上昇中となっている。工業地はもともとインターネット通販の拡大により、倉庫が建てられる物流適地の地価の上昇が続いていた。

新型コロナウイルスは巣ごもり需要を喚起させたことから、工業地にとっては追い風となり、2021年も工業地については全国平均で上昇していた状況にある。大阪圏の工業地は2021年が+0.6%、2022年が+2.5%であり、上昇幅も拡大している。

地価変動率の推移
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001470637.pdf

令和4(2022)年地価公示 地価変動率の推移<br>
出典:国土交通省ウェブサイト令和4(2022)年地価公示 地価変動率の推移
出典:国土交通省ウェブサイト

大阪圏の工業地で最も上昇率が高かったのは「枚方9-1(大阪府枚方市堤田近1丁目)」の倉庫街である。枚方市は大阪市と京都市の中間地点にあり、2大都市へのアクセスが良好であることから物流適地となっている。

特徴的な地価動向が見られた各地点の状況
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001469931.pdf

令和4(2022)年地価公示 地価変動率の推移<br>
出典:国土交通省ウェブサイト大阪府枚方市の枚方9-1(樟葉駅3.5km)は17.3%上昇。写真は枚方市駅周辺

今後の動向

大阪市は住宅地が+0.6%の上昇、工業地が+1.3%となっており、商業地以外はプラスに転じている。全国的に住宅地と工業地は上昇傾向が見られることから、大阪市も住宅地と工業地は引き続き上昇が継続するものと見込まれる。

一方で、商業地は下落原因がインバウンドの減退と会食ニーズの減少の2つが理由となっており、この2つが改善しないとなかなか上昇には転じにくいと思われる。2022年は既に3分の1を経過しているが、今のところインバウンドや会食ニーズは回復に至っていない状況である。

インバウンドや会食ニーズが回復するまではしばらく時間がかかることから、商業地が力強く上昇するのは少し先になるのかもしれない。

夕暮れの大阪ミナミ 道頓堀川夕暮れの大阪ミナミ 道頓堀川