- 賃貸と持ち家の金銭的な違い
- 賃貸と持ち家は、初期費用や月々の支払い、維持費の面で異なります。ローン完済後に資産として残る持ち家に対し、賃貸はライフスタイルの変化に応じて引越ししやすいのが特徴です。それぞれのメリット・デメリットを比較しましょう。
詳しくは、「賃貸と持ち家の違い」をご覧ください。 - 賃貸に住み続けるときの注意点
- 賃貸に住み続ける場合、生涯家賃の支払いが発生するため、老後の資金計画が重要です。また、高齢になると収入面や健康面の不安から、新たな物件を借りにくくなる点も知っておきましょう。
詳しくは、「賃貸に住み続けるうえで考えるべきポイント」をご覧ください。 - 持ち家を購入するときの注意点
- 持ち家を購入するときは、定年までの完済を目指して返済期間が短くなるため、月々の返済額が大きくなりがちです。また、購入時の諸費用に加え、固定資産税や将来の修繕費といった維持費も忘れずに計画しておきましょう。
詳しくは、「持ち家を購入するうえで考えるべきポイント」をご覧ください。
50代は、定年後の収入減少や資金づくりといった老後の資産形成を現実的に考える機会が多くなります。
特に、現在賃貸に住んでいる人にとっては「持ち家を購入しておくべきかどうか」迷ってしまうタイミングでもあるでしょう。
今回は50代からの住まい事情を紹介したうえで、賃貸と持ち家の違いをさまざまな角度から解説します。
50代で賃貸を借りるのは恥ずかしい?

かつては一定以上の年齢を重ねると多くの人が持ち家を購入し、50代を迎える頃には終の住処を所有しているのが一般的でした。そのため、現在でも50代で賃貸物件に住んでいるのは、どこか「恥ずかしい」と感じてしまう人もいるようです。
ここではまず、50代以上の住居事情についてさまざまな観点から見ていきましょう。
賃貸物件に住んでいる人は少なくない
総務省「住宅・土地統計調査」(※1)によれば、65歳以上で賃貸物件に住んでいる人の割合は、2018年には単身者で33.5%、夫婦のみの世帯で12.5%とされています。
また、国土交通省の2020年度「住宅市場動向調査」(※2)によれば、賃貸物件入居世帯を世帯主の年齢別に分けて計算すると、50代は12.2%、60歳以上は13.0%となっています。
このように、総数でいえば持ち家の所有者よりも少ないものの、50代以降も賃貸物件に住み続ける人は一定数いることが分かります。
※1 総務省「平成30年住宅・土地統計調査」
※2 国土交通省「令和2年度 住宅市場動向調査 報告書」
持ち家率はエリアによって異なる
続いて、先述の「住宅・土地統計調査」から持ち家率を見てみると、全国平均では61.2%という数字が出ています。しかし、持ち家率はエリアによって差があり、地価の高い東京都では45.0%と、全国平均よりも低い基準です。
この結果を踏まえると、居住エリアによっても、賃貸物件を借りることへの感覚は異なると考えられます。そのため、対外的なイメージを気にかけるよりも、老後資産をきちんと計算したうえで、自分にとって賃貸と持ち家のどちらがいいかを判断することが大切です。
ここからは、賃貸と持ち家の違いについて考えておくべきポイントを具体的に見ていきましょう。
賃貸と持ち家の違い

賃貸と持ち家の違いにはさまざまな項目が挙げられます。ここでは、主に金銭面での違いを中心にピックアップして、具体的な考え方を解説します。
初期費用に関する違い
賃貸の初期費用は、敷金や礼金、仲介手数料などの合計額であり「家賃の4~6ヶ月分」程度が目安です。そのため、一般的な賃貸物件であれば、初期費用が100万円を超えることはありません。
一方、持ち家の初期費用は、各種税金や手数料などの合計額であり「物件価格の3~10%程度」が目安です。購入する物件によって上下はあるものの、100万円を超えるケースがほとんどなので、賃貸物件よりも負担は大きくなります。
毎月負担額の違い
賃貸物件を借りれば、入居している間は毎月家賃の支払いが発生します。一方、持ち家の場合も毎月ローン返済を負担する必要はありますが、完済してからは支払いがなくなるのがメリットです。
ただ、50代から住宅ローンを組む場合は、それほど長い返済期間を設けられないため、借入額によっては毎月の負担額が大きくなってしまうリスクもあります。
維持費
持ち家の場合、固定資産税などの維持費や修繕費用などを捻出する必要があります。そのため、毎月のローン返済に加えて、定期的に積み立てを行わなければなりません。
賃貸であれば、維持費は一般的に2年ごとの更新料(家賃1ヶ月分が一般的)と火災保険料だけで済むので、持ち家よりも負担が軽くなります。
老後の資産形成
持ち家は、賃貸よりも何かと負担が大きい面があるものの、ローンを完済すれば資産として手元に残ります。後ほど詳しく紹介しますが、持ち家を活用した資産運用方法も充実しているので、老後資金を考えるときには何かと安心感があります。
住み替えの選択肢
持ち家は一度購入すると、気軽に住み替えを行うことはできません。ローン返済が苦しくなったときには、売却といった選択肢もありますが、希望どおりの買い手を見つけるためには時間や労力がかかります。
賃貸であれば、家計の状況やライフスタイル、居住人数の変化に応じて自在に住み替えを行えるので、心理的な負担は小さいといえます。

賃貸に住み続けるうえで考えるべきポイント

これまで紹介したように、賃貸と持ち家にはさまざまな違いがあり、どちらにもメリット・デメリットの両面が存在します。ここでは、賃貸に住み続けるうえで考えておきたいポイントを詳しく見ていきましょう。
家賃が発生し続ける
賃貸に住むうえで第一に考えておきたいのは、「家賃を安定して支払い続けられるか」というポイントです。
総務省統計局の家計調査(※)によると、2020年の65歳以上の平均的な毎月の家計収支は以下のように示されています。
| 可処分所得 | 消費支出(住居費を除く) |
|---|---|---|
単身無職世帯 | 12万5,423円 | 12万754円 |
夫婦二人世帯 | 22万5,501円 | 20万9,872円 |
可処分所得とは、収入から税金などの非消費支出を除いた金額であり、自由に使えるお金と考えることができます。このデータから分かるように、年金などの収入から生活費を差し引くと、住居費に使えるお金はほとんど残りません。
データはあくまで平均値であるものの、収入と支出のバランスを見る限り、家賃は老後を迎えるまでの貯蓄から賄わなければならないと考えられます。
そのため、たとえば65歳から20年間賃貸物件に住み続けることを考えると、家賃だけでも相当な額の貯蓄が必要であることが分かります。
※ 総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2020年(令和2年)平均結果の概要」
高齢になると賃貸を借りにくくなってしまう
賃貸に住み続けるうえでもうひとつ考えておきたいのが「高齢者の入居はハードルが高くなりやすい」という問題です。
高齢になると「収入の低下による家賃支払いへの不安」「健康状態への不安」といった点が懸念され、貸主としても貸し出すことにためらいを感じてしまう面があるのです。
そのため、住み替えなどで新たに賃貸物件を探すときには、以下の方法を検討するといった工夫が必要となります。
方法
- 収入のある家族や子どもに連帯保証人を引き受けてもらう
- 家賃債務保証制度を利用する
- 都市再生機構の高齢者向け賃貸住宅を利用する
- シニア相談可、高齢者歓迎の物件を探す
持ち家を購入するうえで考えるべきポイント

続いて、持ち家を購入するうえで考えておきたいポイントを見ていきましょう。
住宅ローン返済期間をあまり長くとれない
50代はそれまでと違い、住宅ローン返済期間をあまり長くとることができません。多くの住宅ローンでは完済時年齢の上限を75~80歳以下としていますが、老後の資金を考えると、定年を迎える65歳までに完済できる計画を立てるほうが無難です。
返済期間が短ければ「毎月の返済額が大きくなってしまう」あるいは「十分な借入額を融資してもらえない」といった問題が生じるので、慎重に住宅ローン計画を立てる必要があります。
諸費用や維持費がかかる
前述のとおり、住宅の購入には諸費用や維持費がかかります。諸費用は「住宅購入価格の3~10%」であり、維持費と修繕費用は平均的な一戸建てであれば「年間40万~50万円程度」が必要となります。
ローンの滞納リスク
持ち家を購入する場合は、住宅ローンの返済が苦しくなってしまったときの対応策を考えておくことも大切です。
まずは苦しくなり始めた段階で融資を受けている金融機関に相談するのが原則ですが、老後の資産形成においては「リバースモーゲージ」と「リースバック」の仕組みを理解しておくことも重要といえます。
リバースモーゲージとは、自宅を担保に生活資金を借り入れる方法であり、利用者が亡くなった後は物件を処分して返済に充てる仕組みです。リースバックは自宅を第三者に売却したうえで、家賃を払いながら入居を続ける方法です。
どちらも持ち家に住み続けながら生活資金を確保できるので、選択肢のひとつとして頭に入れておくといいでしょう。

賃貸と持ち家で総住居費は違う? 80歳までの30年間でシミュレーション

これまで紹介した賃貸と持ち家の違いを踏まえて、最後に総住居費のシミュレーションをしてみましょう。
今回は以下の条件を基に、賃貸と持ち家のそれぞれでどのくらいのコストがかかるのかを計算します。
共通条件
- 50歳から80歳までの30年間で総住居費を計算する
- 現在の貯蓄額は1,000万円として計算する
- 「家賃」「毎月のローン返済額」はいずれも12万円程度
賃貸の場合
まずは賃貸物件に30年間居住する場合のコストを計算しましょう。今回は計算にあたり、以下のような条件を設定しました。
条件
- 借りる物件:家賃12万円のマンション
- 初期費用:家賃5ヶ月分と想定
- 更新費用:2年に一度12万円
上記の条件で計算すると以下となり、総住居費は「4,560万円」となります。
総住居費
- 初期費用:60万円
- 家賃:4,320万円
- 更新料:180万円
現在貯蓄が1,000万円あるなら、残り「3,560万円」を捻出する必要があります。
持ち家の場合
続いて、持ち家を購入する場合のコストを計算しましょう。計算にあたって、以下のような条件を設定しました。
持ち家の条件
- 2,500万円の中古マンションを購入
- ローン返済期間:15年
- 頭金:500万円
- 借入金額:2,000万円
- その他の条件:固定金利1.5%、元利均等返済
- 毎月返済額:12.4万円
- 諸費用:200万円
まず、頭金と諸費用の合計は700万円なので、貯蓄のうち「300万円」が手元に残ります。次にLIFULL HOME’Sの「住宅ローンシミュレーター」を使い、上記の条件で住宅ローンの総返済額を計算すると、「約2,230万円」となりました。
維持費については、修繕費も含めて毎年40万円と想定すると、30年間の合計では「1,200万円」です。これらの合計額から貯蓄額を差し引くと、「3,130万円」になりました。
シミュレーション結果の捉え方
上記の条件でそれぞれ計算をすると、今回のシミュレーションでは持ち家を購入したほうが住居費を抑えられることが分かりました。
ただし、今回は「中古マンションを購入したこと」「賃貸物件の家賃を高めに設定したこと」などを考慮する必要があります。
購入費用が高くなる場合や、より家賃を抑えられる物件に住み替えた場合には、結果が逆転するケースも十分に想定されます。そのため、今回の結果を参考にして、実情に合わせた計算をすることが大切です。
まとめ

- 50代以上で賃貸に住み続ける人も一定数以上おり、エリアによって持ち家に対する感覚も異なる
- 賃貸と持ち家は初期費用、維持費、毎月負担額、住み替えのしやすさなどに違いがある
- 賃貸なら家賃の捻出、高齢による入居ハードルの上昇を考慮することが大切
- 持ち家なら諸費用と維持費、ローン返済のリスクについて考える必要がある
- 細かな条件を設定したうえで、賃貸と持ち家の総住居費を計算しながら比較してみよう
よくある質問
Q1:50代で賃貸に住んでいるのは一般的ではないのでしょうか?
A1:総務省の2018年の調査によると、65歳以上で賃貸に住んでいる方は単身世帯で33.5%、夫婦のみの世帯で12.5%います。また、50代の賃貸物件入居世帯は12.2%と、決して少なくありません。エリアによって持ち家率も異なるため、一般論にとらわれず、ご自身の状況に合わせて考えることが大切です。
Q2:賃貸と持ち家では、初期費用にどれくらいの差がありますか?
A2:賃貸の初期費用は家賃の4~6ヶ月分が目安で、一般的に100万円を超えることはほとんどありません。一方、持ち家の初期費用は物件価格の3~10%が目安となり、100万円を超えるケースがほとんどです。
Q3:賃貸と持ち家、毎月の負担額に違いはありますか?
A3:賃貸は毎月家賃が発生しますが、持ち家は住宅ローン完済後は支払いがなくなります。しかし、50代からの住宅ローンは返済期間が短くなるため、借入額によっては毎月の返済額が大きくなる可能性があります。
Q4:持ち家に住む場合、住宅ローン返済以外にどのような費用がかかりますか?
A4:持ち家には、固定資産税などの維持管理費や修繕費用がかかります。一般的な一戸建てであれば、年間40万~50万円程度の維持管理費と修繕費用が必要とされています。
Q5:賃貸に住み続ける場合、老後のお金についてどのような点に注意が必要ですか?
A5:賃貸に住み続ける場合、家賃を安定して支払い続けられるかが重要なポイントです。総務省統計局のデータによると、年金収入から生活費を差し引くと住居費に充てられるお金はほとんど残らないため、老後を迎えるまでの貯蓄で家賃を賄う計画が必要です。
Q6:高齢になると賃貸物件を借りにくくなるというのは本当ですか?
A6:はい、高齢になると「収入の低下による家賃支払いへの不安」や「健康状態への不安」から、賃貸物件を借りにくくなる傾向があります。収入のある家族に連帯保証人になってもらう、家賃債務保証制度を利用する、高齢者向けの物件を探すなどの工夫が必要になります。
Q7:50代で住宅ローンを組む際の注意点はありますか?
A7:50代では住宅ローンの返済期間を長く取れないことが多く、多くの住宅ローンでは完済時年齢の上限が75~80歳以下とされています。定年を迎える65歳までに完済できる計画が理想ですが、返済期間が短いと毎月の返済額が大きくなるか、十分な融資を受けられない可能性があります。
Q8:住宅ローンの返済が難しくなった場合、どのような選択肢がありますか?
A8:住宅ローンの返済が苦しくなった場合は、まず金融機関に相談することが原則です。老後の資産形成においては、「リバースモーゲージ」や「リースバック」といった選択肢も考えられます。リバースモーゲージは自宅を担保に生活資金を借り入れ、リースバックは自宅を売却して家賃を払いながら住み続ける方法です。
Q9:賃貸と持ち家で、80歳までの総住居費をシミュレーションする際のポイントは何ですか?
A9:シミュレーションでは、現在の貯蓄額、家賃や毎月の住宅ローン返済額、購入物件の価格、初期費用、維持管理費など、具体的な条件を設定して計算することが重要です。物件の種類や家賃設定によって結果が異なるため、ご自身の状況に合わせて細かく計算することで、より現実的な比較ができます。
Q10:最終的に、賃貸と持ち家のどちらを選ぶべきでしょうか?
A10:賃貸と持ち家にはそれぞれメリット・デメリットがあります。老後の収入や貯蓄状況、将来のライフプラン、住み替えの可能性などを総合的に考慮し、ご自身の経済状況とライフスタイルに合った選択をすることが大切です。記事内で紹介されているシミュレーションを参考に、ご自身の具体的な数値を当てはめて比較検討してみましょう。
更新日: / 公開日:2022.01.17










