2021年6月に靱(うつぼ)公園に面したビルの1階にオープンしたコミュニティスペース・チグニッタ。アートギャラリー、本や雑貨の販売をメインに、水曜の夜にジャズを楽しむ「水ジャズ」をはじめ、トークやブックフェアなどのイベント開催、さらに、知恵と人を繋ぐオンラインコミュニティの運営など、幅広い活動で注目を集めています。
店主は、FM802のアート発掘・育成プロジェクト「digmeout」の中心的人物として活躍し、その経験と想いを活かしチグニッタをオープンした谷口純弘さん。そんな谷口さんに改めて、チグニッタに至るまでの経緯と場所について、そして、街との関係を聞いてみました。ちなみに、チグニッタの由来は、逆からどうぞ。大阪府の物件を探す
20年前からの憧れの地、靱公園周辺とのいい関係

――この場所にチグニッタをオープンさせた経緯を改めてお聞きできますでしょうか?
このスペースは2021年6月オープンしたんですが、2年ってあっという間で早いですよね。ずっと会社で勤めている頃から自由にもっとできればと考えていました。会社員時代にやっていたギャラリーは駅ビルの中にあったので、オープンもクローズもきっちり決まっていまして、夜遅くまで作家としゃべったり飲んだり、設営に時間かけたりと、もっと自由に活動できる場所がないかずっと探していました。
この場所は中矢丸くんという友人がやっている[VADE MECVM. Showroom #2]で、彼とはアメリカ村にあった[GRAND Cafe](2016年閉店)で僕がDJをやっている頃からの20年来の友人だったんです。とはいえ、しばらく会うこともなく、偶然[飛行船スタイル](靱公園近くのギャラリー)で知り合いの作家が展示をするということで見に来た時に、久しぶりに会って、近況を話していると「一緒にやりましょうよ」と言ってくれて、最初は冗談半分な感じだったのが、その年の年末に「ほんまにやる?」みたいなことを聞いたら、「ぜひ」ということで、会社を辞めることにしました。
そんなことで始まるんですよね。きっかけなんて。本当に偶然、靱公園のこの界隈では20年前から建築家の人たちと飲んだり、おもしろい人がいるよと紹介されてくる場所がこの付近の事務所だったり、縁はずっとあったんです。
そして、この場所の設計は柳原照弘くんで超ミニマル空間。[VADE MECVM. Showroom #2]としてのスペースはカウンターのみの設計で、他に何もなかった。そんな場所で何かをするなんて思いもしてなかったんです。


サポーターも加わって、一緒に作る作家を支援できる場所に
――そうして、会社も辞めて、自らインディペンデントな存在となったわけですが。
インディペンデントでやるって本当に大変じゃないですか。クリエイティブだけやっているわけにもいかず、自分自身で交渉もしたり営業もしたり、生きていく全てをせなあかん。ストラグルせなあかん。そういう人の気持ちはすごいよくわかるんです。だから、いろんなことできる人が集まって一緒にやったらもっとやりたいことが実現できるんちゃうか、と。そんな感じでインディをサポートしたい気持ちがあったんです。
――なるほど。
それと、昔は有名なキュレーター、プロデューサー、雑誌にフックアップされないと何もできなかった状況が、今や完全にSNSが取って代わっていて、インスタで仕事を得たり、そういう時代になってきたので、僕もそういうSNSを使って仕事をする方法とかも教えてほしいし、インディペンデントな仲間と一緒に何か新しいことを実現したいと思ったんです。でも、そこで自分がサラリーマンで給料もらって…インディペンデントと言ってもあかんやろうと。同じ土俵に立たないと。

――確かにそこに信頼関係は生まれなさそうです。そして、場所が決まってからは具体的にどのような流れで?
内装にこれくらいかかる、什器を用意しないといけないと見積もった時、先立つものがなかったので、クラウドファンディングをしてサポーターを募りました。「ギャラリーを作ります」ではなく、みんなが持ち寄って何かをできるコミュニティスペースを作ろうと。そうしたら、400人くらい支援してくださって。始まる前から400人のサポーターがいて、ここを見に来てくださるきっかけが、もうできているのを感じていました。
そして、コロナ禍ということもあったのでオンラインでも集まろうよ、と80人くらいから始まり、2年たった今でも30名くらいの人が毎月のオンラインサロンに集まってくれています。その集まりの中から、レコードを作ったりイベントをしたりと仲間と共にいろんなプロジェクトが立ち上がってます。
――レコードはこれまで2枚出されていますね? 7インチと12インチ。
レコードは、会社員時代に中国やアジア各地に友人とDJをしに行っていたんです。コロナ前でシティポップが全盛期、日本の誰かわからないおっさんのDJに何百人も集まるんですよ。「TATSURO―」とか言われたり、ジャケットの写真を撮ってくれたり。今でこそ落ち着きましたが、そんな頃に、「レコードを作って、それをアジアでかけたりしたいよね」なんて言っていたんですがコロナ禍になって。そんな話をしていた仲間もコミュニティメンバーとして入ってくれて、彼がたまたまYouTubeで見つけてきたフィラデルフィアのミュージシャンでいい人がいたんで、その人にオファーをして、最初の7インチを作りました。
コミュニティの中には、ミックスダウンできる人や、アナログプレスができる人もいたし、音のスペシャリストも多かったので「じゃあ作ってみうよ!」と。経費はクラウドファンディングをして、先に予約を取ることで、プレスする金額は集めました。そんな感じでやりたいことをカタチにしています。

靭公園な人々とのつながり――現在、チグニッタが懇意にされている方々はどのような?
私事ですが、2023年に60歳、還暦を迎えて、そのイベントをさせてもらったんです。その中でトークイベントもしたんですけど、結局、今でも繋がっている人は街場で楽しくやっていた人たちなんですよ。会社員時代に名刺交換してというような付き合いではない。付き合いは友達から始まるのが、いいように思いますよ。
――そんな友達はこの街にもいらっしゃいますか?
京町堀で言うと、この界隈って社長多いなって思います。インディ社長(笑)。いっぱいいてて、社員5人から30人ぐらいで、でもちゃんと全国相手に仕事してる人がいっぱい。なんかその現場がおもしろいなと。
ある日、店(チグニッタ)にいてたらレコードをめちゃめちゃ買うやつがいて、「めちゃくちゃ買うね」なんて声をかけたら、近くの会社の社長で、その人は元ミュージシャンということもあって仲良くなり、彼が僕に「チグニッタで何をしたいんですか?」と聞くので、「最後はジャズ喫茶の親父になりたい」みたいなことを言うと、「自分もやりたいんです」って。そしたら、実験をしてみようってことになって。「水ジャズ」というイベントが始まりました。「毎週やりましょう」と今で一年半続いています。だいたい21時過ぎごろから人が集まりますね。
いろんなクリエイター社長が周りにいて、ここにないのは、アートじゃないかと思ったのもあり、展示を始めました。アーティストとここにいる社長たちとの化学反応で、何かが起こるんじゃないかと。それで始まったのが、[メタセコイア キョウマチボリアートフェア]です。そういうことが生まれる可能性がある場所だなと思います。京町堀っておもしろい場所ですよね。


*[メタセコイア キョウマチボリアートフェア]
応募者の才能、作品、クリエイションが広くさまざまな人と場所とにマッチングしていくことを目指しているアートフェア。
◆今回紹介したお店
「チグニッタ」
住所:大阪市西区京町堀1丁目13−21
営業時間:12:00~19:00
定休日:不定休
Instagram:@chignitta
HP:https://www.chignitta.com/
住宅、公園、飲食、アパレルや企業、さまざまな人々が交わるエリア
「チグニッタ」の最寄り駅は肥後橋駅。Osaka Metro四つ橋線の梅田駅の一つ南駅になります。駅から北に向かえば、梅田、東に向かえば大阪市役所に到着します。その南西にあるのが、靱公園。靱公園には世界のジュニア大会も行われている有名なテニスコートもあり、過去には錦織圭や大坂なおみなどもプレーしたこともあるようです。
最近はタワーマンションが多数完成しているところも増え、新たな住人が数多く住んでいる場所とも言えます。家賃相場は肥後橋駅周辺で見ると6.95万円と比較的リーズナブルなエリア。
谷口さんもいうようにさまざまな出会いと可能性に溢れているエリア。何か新しいことにチャレンジしたいと考えている人にもおすすめのエリアと言えるのかもしれません。
取材・文 松村貴樹 写真 三宅愛子
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