大阪の中心地・梅田から阪急電車に揺られて約30分。箕面大滝や瀧安寺など自然と歴史が溢れる箕面は、お出かけスポットとしてだけでなく、暮らしやすい街としても人気のエリアです。そんな箕面の銘菓である「もみじの天ぷら」をご存知でしょうか?実は1300年もの歴史があり、現在は贈答用や手土産として親しまれているそう。
今回は約80年「もみじの天ぷら」を作り続けているお店「紅仙堂」の久國香保里さんへ、その歴史と箕面の良さについて教えていただきました。大阪府の物件を探す

「久國紅仙堂」。実際に「もみじの天ぷら」を揚げている様子を目にすることができる

―約1300年前からあるという「もみじの天ぷら」は、どのような由来があるのでしょう?

久國さん:「箕面の山は修験道の開祖である役行者(えんのぎょうじゃ)さんによって、658年に龍安寺が創建され、多くの修行者が入山していました。『もみじの天ぷら』の始まりも、この役行者さんによるそうです。箕面の山は全山紅葉の木でできていると言われていて、ある時役行者さんが滝にひらひらと落ちる紅葉を目にし、とても感銘を受けたそうなんですね。そこで訪れる方々に、何か振る舞ってあげようと思い、箕面の紅葉を灯明の油(菜種油)で揚げて出したことが始まりと言われています」

―なんと始まりは、役行者さんが関係していたんですね。

久國さん:「はい。天ぷらに関しては、今は観賞用の葉っぱではなくて食用の葉っぱを使って作っています」

―また別で育てられているんですね。

久國さん:「種類が違って、食用の紅葉は黄色くなる葉っぱ。箕面の組合で食用の木を育てていますが、うちはそれだけでは足りないので、もう1箇所栽培の場所を構え育てています」

―お店はいつ頃開店されたのですか?

久國さん:「1940年頃ですね。歴史のある『もみじの天ぷら』ですが、一般的に出されるようになったのは100年前で、初めは旅館などで出されていたそうです。うちは『もみじの天ぷら』を手がけるようになって、約80年。始めた当初はこの参道に、40軒ほど『もみじの天ぷら』をつくるお店があったのですが、高齢化などもあり、今では15軒ほどになりました。店舗数は減っても、箕面のいい思い出を持って帰って欲しいと、みなさんつくり続けています」

―紅葉は薄いですし、一枚一枚揚げるのは相当難しそうです。

久國さん:「実はそうなんです。綺麗な形で揚げるのは本当に難しいんですよ。母は55年揚げていますが、母の手がける『もみじの天ぷら』のように揚げたいと、私たちも必死に頑張っています(笑)。母が揚げたものは美しい紅葉の形を意識しているのはもちろん、ちょっぴりぶっくりしていて本当においしそうなんですよね」

お母様の久國節子さんが揚げた『もみじの天ぷら』

毎日『もみじの天ぷら』を揚げつづけている節子さん。大阪府による、極めて優れた技能を有した府内の第一人者に贈られる「なにわの名工」に選ばれているそう

―『もみじの天ぷら』は、地元の人たちはどのような時に食べているのでしょうか?

久國さん:「毎日食べるというよりは、贈答用に購入される方が多いですね。一つずつ丁寧に作っているものですし、他の地域にはないものなので」

ギフトボックス贈答用(800円)

―なるほど。紅葉は収穫したあと、どのような工程で天ぷらになるのでしょう?

久國さん:「毎年秋に収穫後、1年間塩漬けします。その後、塩抜きをして、欠けている葉っぱを選別して一枚一枚揃えていきます。意外と工程がたくさんあるんです」

一枚ずつ形を見ながら、紅葉を選別する様子

―それは知らなかったです。

久國さん:「シンプルなお菓子だからこそ、小麦粉の銘柄やお砂糖の種類など生地の原材料や油にこだわり作っています」

―ひとえに「もみじの天ぷら」と言っても、他の材料でお店ごとの違いなどが出てくるのですね。

久國さん:「そうなんです。80年こうやって続けてきました。一人でも多くの方に『もみじの天ぷら』と箕面のことを知っていただきたいですね」

丁寧に油切りをして、パリッとした食感に仕上げる

日常用にはシンプルな「プレーン」(590)円を

自分用にはもちろん、ちょっとしたお土産にもおすすめ。最近は「甘辛のしお」や「グリーンティー」「黒糖」など、味の種類も増やしたそう

―いただくことで、箕面での楽しかった記憶を思い出すきっかけにもなりそうですよね。箕面は、観光の方も多いと思いますが、暮らしてみてどうですか?

久國さん:「私は30年前にここへお嫁に来たんです。自然豊かなので、朝は鳥の囀りで目覚めます。秋はもちろん紅葉が美しいのですが、春や初夏は本当に新緑が綺麗です。箕面大滝までの道は川が流れていてマイナスイオンで溢れているように感じます」

―秋は観光客が多そうですが、初夏は住んでいる方ならではの楽しみかもしれません。

久國さん:「6月になると蛍もきれい。それに、冬の凍った滝も美しいです。一年中四季の変化が楽しめる場所なんです。私は本当に、箕面にお嫁に来れて良かったなと思います。住んでいる方同士も、人と人の繋がりが結構あって、ご近所さんはみんな知り合いというような和気あいあいとした雰囲気。お店の前を通る子どもたちとも『いってらっしゃい』『いってきます』『ただいま』と、声を掛け合ってみんなで見守っている雰囲気があります」

―子育て世代がとても暮らしやすそうですね。

久國さん:「箕面市は子育てへのサポートも力が入っており、支援制度や医療費助成制度などもありますし、子どもさんに優しい街ですよ」

こちらは「久國紅仙堂」のすぐ近くにある別店「Cobeni」。こちらでは「もみじの天ぷら」のほかに、「もみじソフトクリーム」などもいただける

◆今回取材したお店

「久國紅仙堂」

住所:大阪府箕面市箕面 1-1-40

電話:072-721-2747

営業時間:10:00〜17:00

定休日:木曜休

今回ご紹介した「久國紅仙堂」は、阪急電鉄箕面駅から徒歩1分。箕面大滝へ向かう滝道の途中に位置しています。滝道には土産店やカフェ、住宅などが並び、そこを進んでいくと箕面の山へ。滝と聞くと観光名所としてわざわざ足を運ぶスポットのように感じますが、箕面の人たちは日々の生活の延長で山に入り、散歩をしている人が多くいるそう。自然と暮らしが一体となった生活を愛し、この街を気に入って長く住む人も多いようです。

また、梅田へは約30分。伊丹空港までは約20分と、各地へのアクセスも便利です。2023年度末にはOsaka Metro御堂筋線と箕面市によって、箕面船場阪大前駅と箕面萱野駅も新設されるそうです。より暮らしやすくなることが期待されています。便利で自然も溢れる箕面。ぜひ引越し先の候補にしてみてはいかがでしょうか。

◆本記事の担当者

取材・文:小島知世 写真:沖本明

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更新日: / 公開日:2026.02.27