土地を購入するときには、立地や地盤の状態をはじめ、さまざまな情報を確認しながら検討する必要があります。用途地域も確認すべきポイントのひとつであり、主にその土地をどのように活用できるのかを示す重要な項目です。
今回は用途地域の基本的な意味と種類、土地選びで押さえておくべきポイントを解説します。
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用途地域とは

まずは、土地の購入時にどうして用途地域を意識しなければならないのか、基本的な内容を踏まえて説明します。
用途地域とは
用途地域とは、都市計画法に基づいて「計画的な市街地を形成するために用途別で13種類に分けられたエリア」のことを指します。おおまかに「住居系」「商業系」「工業系」に分類されます。
用途地域が決められている理由
用途地域は用途の異なる建物が無秩序に建てられてしまうのを防ぎ、効率的な都市づくりを行うために定められています。たとえば、住宅が集まる場所に大規模な工場が建てられてしまうと、その周辺の住環境は騒音や排気などのトラブルによって、著しく低下する恐れがあります。
そこで、あらかじめエリアごとの用途を決めておき、快適な都市環境が保たれるようにする必要があるのです。
用途地域の種類によって何が変わる?
用途地域は文字どおり土地の用途を決めるものですが、それ以外にも「建ぺい率」や「容積率」に影響を与えます。どちらも建物の広さに影響を与えるポイントなので、用途地域によって、同じ土地の広さでも建てられる住宅の面積に差が出るケースがあるのです。
また、用途地域の種類によっては、高さなどの法令制限が生まれる場合もあります。このように、用途地域はさまざまな項目に影響を与える要素なので、種類ごとの特徴を押さえておくと、住んでからの暮らしが見えやすくなります。
用途地域の種類と特徴を一覧で確認しよう

用途地域は長く12種類の状態が続いていましたが、2019年の4月から「田園住居地域」と呼ばれる用途地域が増えたことで、現在では13種類となっています。ここでは、用途地域の種類と主な特徴を一覧で確認しておきましょう。
用途地域一覧
まずはどのような用途地域があるのか、おおまかなジャンルで分けて見ていきましょう。
住居系
住居の環境を最優先した地域
・第一種低層住居専用地域
・第二種低層住居専用地域
・第一種中高層住居専用地域
・第二種中高層住居専用地域
住宅の環境を守るための地域
・第一種住居地域
・第二種住居地域
道路沿い等で自動車関連施設などと住居が調和した環境を守るための地域
・準住居地域
農業の利便の推進を図りつつ、良好な低層住宅の環境を保護する地域
・田園住居地域
商業系
映画館や倉庫、車庫なども建てられる地域
・近隣商業地域
・商業地域
工業系
住宅を建てられる地域
・準工業地域
・工業地域
住宅は建てられず工場のみ建てられる地域
・工業専用地域
用途地域の特徴を詳しく把握しよう

それぞれの用途地域について、どのような特徴があるのか詳しく見ていきます。ただ、エリアによって必ずしもそのとおりとは限りませんので、あくまで傾向として捉えてみてください。
第一種低層住居専用地域
一戸建てや低層マンション(3階建て以下)が多く集まる閑静な住宅地であり、以下のような特徴が挙げられます。
特徴
- 建てられる建物の高さが10~12m以下に制限されている
- 店舗は面積50m2以下なら建てられる
- 主な建物の種類:一戸建て、賃貸アパート、低層マンション、小中学校
高さの制限があるので、あまり階数の多いマンションを建てることはできません。また、店舗を建てることは可能ですが、面積50平米以下という制限があるので、一般的なコンビニやスーパーなどの商業施設ではなく、個人商店のような形がほとんどです。
第二種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域の特徴は以下のとおりです。
特徴
- 建てられる建物の高さが10~12m以下に制限されている
- 店舗は面積150 m2以下なら建てられる
- 主な建物の種類:一戸建て、賃貸アパート、低層マンション、小中学校、コンビニなど
ほとんど第一種低層住居専用地域と同じ特徴を持っていますが、店舗の広さ制限が150平米にまで広がっています。そのため、閑静な住宅街ながらも、コンビニなどの小さなお店が建てられるのが大きな特徴です。
第一種中高層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域の特徴は以下のとおりです。
特徴
- 建物の高さ制限はない
- 店舗は2階建て以内かつ面積500 m2以下なら建てられる
- 主な建物の種類:中高層マンション、スーパー、幼稚園~大学までの教育施設、病院、図書館など
これまでの地域と比べて、高さ制限がないのが大きな特徴です。3階建て以上の中高層マンションが増えます。ただ、大きな商業施設などは建てられないので、中高層マンションが立ち並ぶエリアのなかでは静かな環境ということもできます。
第二種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域の特徴は以下のとおりです。
特徴
- 建物の高さ制限はない
- 店舗は2階建て以内かつ面積1,500 m2以下なら建てられる
- 主な建物の種類:中高層マンション、中規模商業施設、幼稚園~大学までの教育施設、病院、事務所
第一種住居地域
第一種住居地域の特徴は以下のとおりです。
特徴
- 3,000 m2までの店舗や事務所が建てられる
- ホテルも建てられる
- 主な建物の種類:各住居専用地域で建てられる建物、ホテル、大型商業施設
各住居専用地域に比べて、より広い商業施設が建てられます。半面、大きな通りに面していることも多いため、車の騒音や振動が気になるケースはあります。
第二種住居地域
第二種住居地域の特徴は以下のとおりです。
特徴
- 1万m2までの店舗や事務所が建てられる
- 遊戯施設やカラオケボックスなども建てられる
- 主な建物の種類:各住居専用地域で建てられる建物、大型商業施設、パチンコ店、カラオケボックス
第一種住居地域と比べて、さらに制限が減って、大きな商業施設も建てられるエリアです。
準住居地域
準住居地域の特徴は以下のとおりです。
特徴
- 主に国道や幹線道路沿いが多い
- 住居系地域ではもっともにぎやか
- 車庫や倉庫、床面積150m2以下の自動車修理工場が建てられる
- 床面積200m2以下の劇場や映画館が建てられる
- 主な建物の種類:各住居専用地域で建てられる建物(分譲マンションが多い)、1万m2までの商業施設、事務所、ロードサイド店舗(パチンコ店、カラオケボックス等)
準住居地域は自動車関連施設と住居の環境を調和させて、保護することを目的にした地域です。国道や幹線道路沿いが中心なので、普段から車を使う人に向いている地域といえます。
田園住居地域
田園住居地域の特徴は以下のとおりです。
特徴
- 第一種低層住居専用地域に近い
- 2階建て以下の農家関連施設が建てられる
- 主な建物の種類:一戸建て、農家関連施設、幼稚園~高校までの教育施設、病院、寺院
農地と市街地の共存を図る目的で新たに制定された地域であり、住環境としては第一種低層住居専用地域に似た静かで落ち着いたイメージを持っています。田んぼや畑が広がるエリアであり、150平米以下の店舗や飲食店500平米以下で、2階建てまでの農業用施設を建築可能です。
近隣商業地域
近隣商業地域の特徴は以下のとおりです。
特徴
- 店舗や事務所、劇場、映画館は面積の制限なく建てられる
- 環境を悪化させる恐れのない150m2以下の工場を建てられる
- 主な建物の種類:中高層マンション、大規模商業施設、遊戯施設、小規模工場
商業系地域は住居系地域と比べてさらに生活利便性が向上する半面、人通りや車通りが多く、騒がしい住環境になりやすいのが特徴です。
商業地域
商業地域の特徴は以下のとおりです。
特徴
- 主にターミナル駅の周辺エリアなどが多い
- 近隣商業地域よりもさらに幅広い建物が建てられる
- 主な建物の種類:高層マンション、大規模商業施設(百貨店など)、金融機関、小規模工場
商業地域はほとんどの建物を建てられる地域のため、どちらかと言えば住環境よりも商環境が優先されています。ただ、生活利便性・交通利便性が特に高いため、利便性を重視する人には向いているエリアです。
準工業地域
準工業地域の特徴は以下のとおりです。
特徴
- 危険性や環境への影響がある場合を除いてほとんどの工場を建てられる
- 日影規制があり、住宅の日当たり条件は良好
- 住居と工場、商業施設がバランスよく配置されることが多い
- 主な建物の種類:工場、住居、病院、教育施設、ホテル
さまざまな工場を建てられる点を除けば、特徴としては各住居地域に似ているといえます。また、商業系と比べて日影規制があるため、住宅の日当たりを確保しやすいのも特徴です。
そのため、マンションだけでなく一戸建ての数も多くあります。
工業地域
工業地域の特徴は以下のとおりです。
特徴
- 湾岸エリアでは該当する地域が多い
- すべての工場を建てられる
- 住宅や店舗は建てられる
- ホテル、映画館、病院、教育施設は建てられない
- 主な建物の種類:工場、住居、店舗
工業地域はどんな種類の工場でも建てられるエリアですが、住宅や店舗も建設可能です。湾岸エリアは工業地域に指定されることが多いので、タワーマンションなどが立ち並ぶ東京都心エリアをイメージすると感じをつかみやすいでしょう。
工業専用地域
工業専用地域の特徴は以下のとおりです。
特徴
- すべての工場を建てられる
- 住宅は建てられない
- 主な建物の種類:すべての工場、倉庫、郵便局などの公共施設
工業専用地域は専用と名のつくとおり、工場のためのエリアであり、住居や一般的な店舗を建てることはできません。
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【ケース別】適した用途地域の選び方

これまで解説したように、用途地域にはそれぞれ異なる特徴があります。住まいを選ぶなら、以下のようなイメージで適した用途地域を把握しておくといいでしょう。
ポイント
- 静かな住環境を求めたい→第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域
- 高さの制限などを気にせず3階建てを建てたい→低層住居専用地域以外の住居系地域
- 近くに多少の商業施設は欲しい→第一種住居地域・第二種住居地域
- とにかく利便性を重視したい→商業系地域
厳密にはその土地の個別条件によっても住み心地は異なりますが、おおまかな絞り込みを行うときやどんな環境なのかざっくり把握したいときには役立つでしょう。
土地が異なる用途地域にまたがっているときの考え方
土地によっては、2つの異なる用途地域にまたがっているケースがあります。その場合は、「過半主義」を取り、「面積が多いほうの用途地域に従う」こととなるので注意しましょう。
ただし、容積率、建ぺい率については、「それぞれの面積を案分して計算する」「それぞれの建築物の部分が属する地域の高さ制限を採用する」などのルールが設けられています。また、防火・準防火地域の制限については「厳しいほうのルールを採用する」などの違いがあるので、併せて注意が必要です。
土地選びから任せられる建築会社を見つけよう

用途地域はインターネットなどで簡単に調べることができるので、自分でリサーチすることも可能です。しかし、土地の特性にはそれ以外にもさまざまな項目があるので、実際に要望にぴったり合う土地を自分だけで見極めるのは難しいものです。
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まとめ

- 用途地域とは、都市計画法に基づいて「計画的な市街地を形成するために用途別で13種類に分けられたエリア」を指す
- 用途地域によって建てられる建物の種類や面積、高さなどが決められている
- 用途地域は住居系、商業系、工業系の3つに大別できる
- 住居系だけでなく商業系、工業系にも宅地に適したエリアはある
- 各用途地域の特徴を理解して土地選びに役立てよう
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