オール電化住宅は、今や私たちの生活の中でもすっかりおなじみの存在となりました。
オール電化はキッチンで火を使わないから安全、光熱費が節約できる等の魅力的なイメージがありますが、使い方によっては光熱費が跳ね上がってしまう、細かな不便さが目立つという側面もあります。
オール電化住宅に暮らして10年の私が、その実体験を通してガスを併用したい理由をまとめます。
電気かガスか…住宅設備の選択はライフスタイルで決まる
私は10年前からオール電化の集合住宅に住んでいます。オール電化住宅を選んだ理由は、冒頭に書いたような安全性や経済面でのメリットを感じたからです。
でも、実際に暮らしてみて、私の生活サイクルではそのメリットだけでなく不便さも感じる点が出てくるようになってきました。
確かに、キッチンで火を使わないことの安全性は感じます。私の場合、小さな子どもがいるのでそれは強く感じています。しかし、同時に料理する上での物足りなさも否めません。毎日料理をされている主婦の方や、料理が好きな方も同じように感じるのではないでしょうか。(10年前と今では性能は変わっているかもしませんが。)
IHクッキングヒーターでも相当の加熱力はありますが、直火にかけて調理した場合よりも味が劣ってしまうメニューもあると感じています。
また、IHクッキングヒーター対応の鍋やフライパンを買う必要があり、その選び方も重要です。中華鍋のような底が丸い鍋は使用できないので、日頃から中国料理を好んで作るという方にはIHクッキングヒーターは不向きです。
大きさも一定の決まりがあるので、家族構成によっては調理に一工夫必要になってきます。なお、あくまで料理にこだわりがある方のみの問題で、普通に必要最低限の料理をする分には不便はないでしょう。
オール電化のメリットは、わが家ではあまり体感できず…
そして、当初メリットに感じていたコスト面ですが、これも期待どおりの削減にはなりませんでした。オール電化住宅を選んだときは、ガスの基本料金が無くなるから節約になるだろうと思っていたのですが、私の生活サイクルではガス併用の住宅に住んでいた頃と光熱費は変わらなかったのです。むしろ、お湯を多く使う秋冬は光熱費が高くなってしまいました。
電気代が安い深夜に集中して電気を使うような生活サイクルであればよいのですが、我が家の場合は、小さい子どもがいるので、どうしても日中に電気を使わざるをえません。
もちろん家族構成や年齢によっては光熱費を十分に抑えられるのかもしれませんが、オール電化住宅向けの電気料金プランは深夜が割安で、それ以外の時間帯は割高に設定されています。そのため、日中に誰かが在宅しているような家庭では、大幅に電気代を抑えることはあまり期待しない方がいいかもしれません。
またお湯を沸かして溜めておく電気給湯器も、4人家族だとすぐにお湯が無くなってしまうので、電気料金が高い時間帯に沸き増しが始まってしまうことがあります。
わが家の場合はガスがよかった?
また、コスト面以外にも、オール電化にしたことでライフスタイルの上で後悔している部分があります。
我が家には小さい子どもがいるので、特に暖房に関しては電気だけだとパワー不足を感じています。エアコンを数時間付けても充分に暖かくはならないので、すぐに暖まりたい場合は衣類を多く着せて調節するしかありません。そう思うと特に暖房に関しては、電気代には見合っていないと若干感じています。
また、子どもたちに料理を教える点でも、IHクッキングヒーターよりもガスコンロの方がよかったなと思います。実際に火を見せることで火の危険さを学ぶことができますし、火加減を調節するという作業も子どもたちにとってはいい勉強です。そうして出来上がった料理はなお美味しく感じるでしょうし、その経験は次回に生かすことができるでしょう。そのような食育面でもIHクッキングヒーターにして、ちょっと失敗だったかなと思っています。
オール電化は安全性が高いので一人暮らしや高齢者の方にとってはいい選択だと思いますが、家族で暮らすにはガスがある住宅を選んだ方が快適に生活できるのかなと個人的には思っています。
これらのことをふまえて総合的に考えると、最初にイメージしていたオール電化のメリットをあまり享受できなかったというのが本音です。もちろん生活サイクルは人によってさまざま、「あくまで私の場合は」なのですが、次に引越すときは必ずガスが使える家に! と決めています。
ガスのある暮らしの魅力
このように考えると、私のような生活サイクルの人・家族には、オール電化ではなくガス併用住宅が向いていると思っています。また、私がガスをおすすめしたい最大の理由は、「暖房機能」にあります。
ガスファンヒーターが優れているポイント
オール電化住宅では暖房はエアコンに頼るケースがほとんどです。しかし、電気エアコンの暖房は部屋が暖まるのに時間がかかりますし、部屋の広さによっては全体が暖まることは難しい場合があります。また、取り急ぎ暖めたいときはハイパワー機能を使うことになるので、余計に電気代がかかってしまいます。
電気ストーブの場合はピンポイントで暖めることができますし、手軽に使えますが、安全性が高いとはいえません。それでも灯油を使うストーブに比べると安全といえますが、電気ストーブが原因の火事も頻繁に起きています。特に小さい子どもがいる家庭は避けた方が無難です。
また、エアコンにしても電気ストーブにしても、部屋の空気を乾燥させるというデメリットがあります。
暖房を使う時期はインフルエンザやノロウイルスといったウイルス性の感染症が流行するので、部屋を乾燥させないことは本当に大切です。そのため、暖房器具を使用する場合は加湿器との併用が推奨されていますが、加湿器の分も電気代がかかってしまいます。
その点、ガスのファンヒーターは部屋が乾燥しないどころか、ガスの成分が燃焼することによって部屋を加湿してくれます。加湿器を使用しなくても室内の湿度を保ってくれるので、ガス代だけで済んでしまうのです。節約したい人にはぴったりの暖房器具ですね。
また、ガスファンヒーターはエアコンと比べて立ち上がりが早く、すぐに部屋を暖めてくれるのも嬉しいところです。数分どころか数秒でフルパワーになるガスファンヒーターもあるので、寒い朝や夜遅くの帰宅時などでもすぐに暖まることができます。
広範囲で暖かくなるガスファンヒーター
ガスファンヒーターはその形状から、電気ストーブのようにピンポイントで暖める暖房器具と誤解されがちですが、広範囲を暖めてくれるというメリットもあります。電気ストーブとはパワーが圧倒的に違うので、暖めた温風がすぐに部屋中に行き渡ります。灯油で暖めた空気のように上に溜まることも無いので、足下まで温かく過ごせます。
ガスファンヒーターの対応範囲はかなり広めで、一番小さい20号という規格でも木造7畳、コンクリート9畳までとなります。ただ、ガスファンヒーターだけに限りませんが、暖房の効果は物件の風通しや居住地域の気候によって左右されてしまいます。実際に使用する部屋よりも1つ上の広さに対応してくれる規格を選んでも、思うように部屋が暖まらないというケースもあります。
そのため、部屋に対して本当に適切なガスファンヒーターなのか、選ぶのが少し難しいかもしれません。自分で購入するのではなく、ガスファンヒーター付きの物件ならば安心ですね。
また、ガスファンヒーターを使用する際、ガス栓の工事が必要になる場合もあります。
ガスファンヒーターの賢い使い方
最後に気になるコストですが、ガス会社のHPによると、ガスファンヒーターを1日8時間利用した場合は1日あたり100~250円程度です。ガスファンヒーターの規格や、都市ガスかプロパンガスかによってもコストは変わりますが、ガスファンヒーターに搭載されているエコ機能などを上手に使うことで削減できます。
また、電気とガスを併用している住宅の場合は、最初に立ち上がりの早いガスファンヒーターで部屋を一気に暖めて、その後はエアコンで温度調節することで暖房費を節約できます。