JR金町駅(かなまちえき)と聞いて、どの鉄道路線を思い浮かべますか?実は、JR常磐線各駅停車の駅だとすぐに答えられる人は、意外と少ないかもしれません。というのも、「2025年 LIFULL HOME’Sみんなが探した!借りて住みたい街ランキング(首都圏版)TOP100」では64位、同様に「買って住みたい街ランキング(首都圏版)TOP100」では87位と、決して上位とはいえない結果となっているからです。
しかし、ランキングが街の良し悪しすべてを物語るわけではないと思います。実際にJR常磐線を日常的に利用している私から見ると、金町駅周辺は「知られざる住みやすさ」がたくさんあると考えています。そこで、本稿では、普段からJR常磐線を利用する私が、金町駅周辺の“住みやすさ”についてお伝えしていきたいと思います。
金町駅周辺の基本情報
はじめに、葛飾区全体の都市構造を知ると、金町の魅力を的確に捉えることができます。
葛飾区は東京特別区の中でも北部に位置し、隣は江戸川を挟んで千葉県松戸市・市川市、南側は江戸川区、北側は足立区・埼玉県三郷市に接しています。また、多核型の都市構造を形成しており、常磐線沿いの金町や亀有、京成線沿いの京成高砂や京成立石、総武線の新小岩などの主要駅を中心に中心市街地が形成されています。
その中でも、金町駅は、行政計画上、区の北部の拠点に位置づけられています。
金町駅周辺の特徴の一つに、近年、市街地のリニューアルが進んでいることがあげられます。上図は、昭和時代と近年の衛星写真の比較です。駅南口と、駅北口、よび駅北口西側エリアの街区の建物群に大きな変化が見られます。
金町駅周辺では、これまでに駅南口での市街地再開発事業、駅北口西側エリアでの土地区画整理事業などが行われており、大規模な土地利用の転換が進んでいます。
金町というと「下町風情」のイメージがあり、街全体に「昭和時代で止まったような」印象があるかもしれませんが、下町っぽさは残しつつも、一部ではゆとりある都市空間が広がってきました。それが金町の特徴かと思います。
金町駅周辺での市街地リニューアルの契機となったのが、2003年に閉鎖した「三菱製紙中川工場」です。約33ha(東京ドーム約7個分の広さ)におよぶ跡地で、住宅・商業・大学・研究所・公園等の機能が入る大規模な土地区画整理事業が行われました。この区画整理事業により、「東京理科大学葛飾キャンパス」や「葛飾にいじゅくみらい公園」の整備、大規模な民間分譲住宅が供給され、駅北口西側エリアの環境は様変わりしています。
このように市街地の再編が進んでいることで、駅周辺の人口も変化しています。
金町駅周辺の人口の推移
上図は、金町駅周辺と葛飾区全体の人口推移(2011年から2025年)です。ご覧いただくと、葛飾区全人口の増加率は約8%にとどまっていますが、金町駅周辺については約32%と、区全体よりも増加率が高いことが分かります。いずれも一貫した増加傾向にありますが、特に金町駅周辺では顕著に人口増加が続いています。
続いて、年齢別の人口推移を見てみましょう。若い世代(18〜39歳)と子ども(0〜17歳)などの人口構成を示したものです。右側の区全体よりも、左側の金町駅周辺は子どもの割合が3.6ポイント高いことが分かります。
これは、市街地再開発や土地区画整理事業に伴い、若い世代をターゲットとした住戸が整備されたことで、新たに若い世代が流入し、子どもも増加していると考えられます。これは街の人口構造に代謝が起きている証拠で、国全体が抱えている歪な人口構造と比較しても、特に金町駅周辺は恵まれた環境下にあるといえます。
ちなみに、現在、東京理科大学と金町駅との間のエリアで市街地再開発が進められており、街区の印象が大きく変わる予定です。繰り返しになりますが、今年4月からは東京理科大学(薬学部・薬学研究科)が葛飾キャンパスに移転してきたことで、多くの学生が駅周辺を利用するようになっていますから、既成市街地での住宅再開発は今後も進展していくはずです。
このように下町と新しい市街地が共存する金町ですが、歴史を振り返ると、より金町の魅力に気づけると思いますので、少しだけ歴史を遡ります。
金町の歴史
区の歴史資料によると、金町という地名は、室町時代の資料に出てきていますが、金町という地名になった理由は分からないというのが現時点での学術的な結論です。
しかしながら、金町周辺は、歴史的に重要な役割を果たしてきた地域です。江戸川に面した金町には旧水戸街道の「金町松戸関所」が置かれ、関所施設は、金町側に設置されていました。旧水戸街道は、日本橋から土浦藩や水戸藩の城下を結び、ささらに水戸から北は、磐城・相馬街道とも呼ばれ、幕府直轄地小名浜や磐城平藩、相馬藩、遠くは仙台藩まで結んでいました。金町の関所は、江戸から見て重要な位置にあっただけに、「入鉄砲と出女※1」といわれた監視が厳しかったとされます。
※1 関所を越えて江戸に持ち込まれる鉄砲と江戸から外に出る江戸在住の女性のこと。鉄砲は謀反に使われるのを防ぐため、女性は人質として江戸に住む大名の妻が江戸から脱出するのを防ぐために厳しく取り調べが行われていた。
金町駅から北東部の旧水戸街道に位置する「葛西神社」の創建は平安時代末期とされ、御祭神の一つが「徳川家康命(みこと)」とされています。その理由は、江戸時代初期、幕府を開いた徳川家康が葛西神社の操り人形芝居の神事に感激し、奨励のために御朱印十石を下賜したことが縁となったというものです。徳川家康は、江戸幕府を開きその後、265年にわたって安定の世を築いたこともあり、立身出世や組織統括、事業成功の神様として祀られています。徳川家とも歴史的なつながりがあるのが金町の特徴の一つでもあります。
金町の市街地形成の歴史を語る上で重要な施設がいつかあります。それが「三菱製紙中川工場」や「江戸川バリウム工業所(後の三菱ガス化学東京工場)」、「大東紡織金町工場(東京モスリン金町工場)」です。金町駅は1897年に開業しますが、周辺には江戸川や中川に挟まれた水利の地を活かした工場が進出し、そこで働く人たち向けの商店街や、工場で働く人たち向けの住宅街が発達していきました。
このうち、駅北口にあった大東紡織金町工場(東京モリスン金町工場)の跡地は、1968(昭和43)年に「旧日本住宅公団金町駅前団地」に、三菱製紙中川工場の跡地は、「東京理科大学葛飾キャンパス」や「葛飾にいじゅくみらい公園」に生まれ変わっています。このように、現在の金町駅周辺の市街地が形成された過程には、金町が水運の利に恵まれ、工業地帯として発展を遂げた歴史があります。
金町駅周辺の住みやすさ
金町駅周辺の交通利便性
JR金町駅からは、JR常磐線各駅停車を利用し、乗り換えなしで北千住駅まで約9分、相互直通を実施している東京メトロ千代田線の大手町駅までは約26分で到達します。このように金町駅周辺は、比較的都心へ近いことが大きな魅力といえます。
また、北千住駅で常磐線快速(上野東京ライン)に乗り換えることで、上野駅や東京駅までアクセスすることも可能です。さらに、金町駅南側に位置する京成金町駅からは京成金町線を利用し、参拝客でにぎわう「柴又帝釈天」の最寄駅・柴又駅まで一駅という近さでもあります。
<金町駅から主要駅へのアクセス時間>
・北千住駅:約 9分
・大手町駅:約26分
・品川駅 :約45分(北千住駅にて常磐線快速に乗り換え)
金町駅周辺の買い物・飲食店事情
金町駅周辺には、13の商店会があります。特に金町の魅力は下町風情が感じられる商店街が形成されていることにあり、飲食店や日用品、生鮮食品などが充実しているのが特徴です。近年では、東京理科大学葛飾キャンパスが移転してきたこともあって、学生をターゲットにした飲食店も増加傾向にある印象です。グルメの方にとっては、食という面で魅力的に映るかもしれません。
一方、金町駅のランドマークとされていた「イトーヨーカドー金町店」が2022年9月に閉店しています。しかし、現在、進められているイトーヨーカドー金町店の跡地での市街地再開発に伴い、2025年8月には新しい大規模商業施設がオープンする予定となっています。
この記事の執筆時点では、どのようなテナントが入るかは明らかにされていませんが、再開発組合が都に提出した届出書(大規模小売店舗立地法に基づく変更届出)では、店舗面積は約1万9,300m2とされていますので、金町駅周辺では比較的大規模な商業施設となる見込みです。
金町駅周辺の自然環境
金町駅周辺の自然環境としては、駅から北側方面へ少し離れた位置に、都立公園としては面積最大の「水元公園」があります。菖蒲園が有名で、水と緑の両方に触れ合うことができるのが魅力です。しかしながら、金町駅からは徒歩でのアクセスができず路線バスや自家用車とならざるを得ないため、普段使いというよりは、休日利用という印象です。また、江戸川河川敷を散歩するというのも楽しみの一つになるのではと思います。
日常的に利用しやすのは、「東京理科大学葛飾キャンパス」と一体となった「葛飾にいじゅくみらい公園」です。約7haと広々で、2025年4月には大学内にカフェ(スターバックスコーヒー)がオープンしており、公園利用者も利用することが可能です。
金町駅周辺の公共施設
金町駅周辺では、区内最大の蔵書数を誇る中央図書館をはじめとして、住民票や証明書の発行業務などを担う「金町区民事務所」、葛飾区金町駅前活動センター「カナマチぷらっと」などの公共施設を利用することが可能です。
また、東京理科大学葛飾キャンパスの図書館棟1階には、区の教育施設である「科学教育センター未来わくわく館」が入居していることに加えて、葛飾区在住の18歳以上であれば、東京理科大学葛飾キャンパス内の図書館を利用することも可能となっています。
金町駅周辺の治安・ハザード
金町駅周辺の地域(東金町1〜3丁目、金町4〜6丁目、新宿6丁目)の刑法犯認知件数は2024年統計では251件でした。この251件という値は、葛飾区全体の約8%(区全体は3,037件)を占めます。
上図の町丁別の認知件数をご覧いただくと、金町駅周辺エリアの一部では、黄色・緑色の部分が占めており、周囲に比べて、犯罪認知件数が多いことが見て取れます。犯罪の種別としては、認知件数が多い順に、「自転車窃盗」125件、「万引き」28件、「詐欺」11件となっています。このような傾向は、区全体で見ても同様の傾向にあります。
犯罪認知件数は近年減少傾向にあり、コロナ禍もあって、その傾向は強まっていましたが、コロナ禍が明け、近年は若干の増加傾向に転じています。とはいえ、長期的な期間で見ると減少傾向にあるといえますので、比較的治安は良好といえます。
なお、葛飾区では、区民を対象に防犯対策助成金事業を実施しています。防犯カメラやセンサーライト、防犯ガラスなど、対象経費の2分の1、助成上限額は6万円となっています。詳細は、以下の参照をご覧ください。
一方防災面で見ると、江戸川の河川洪水では、一部で3m以上5m未満の浸水の恐れがあるとしています。加えて、高潮浸水の恐れもあります。
駅周辺エリアに居住する場合には、想定浸水深以上である2・3階以上に居住するか、またはハザードマップから避難先・避難ルートを確認し、強雨時にはすぐに避難可能な体制を確保しておくことが必要です。
ちなみに、過去の浸水被害で最も有名なものは、1947年に発生したカスリーン台風による被害があげられます。この台風では、大雨により葛飾区全域が浸水し、新宿地区では3m以上の浸水、死亡者3名、行方不明者1名、浸水家屋数は約5.4万戸に及ぶ甚大な被害をもたらしています。
現代では、これまでに流域上流でのダム整備をはじめ、河川改修、中川放水路整備、貯留施設の確保など、さまざまな対策が進められています。しかしながら、近年の急速な気候変動に伴い想定以上の強雨が発生しないとは言い切れない状況ですので、できる限り、安全対策を行うことをおすすめします。
河川洪水・内水氾濫に対する災害ハザードエリアについては、葛飾区が公開しているハザードマップ情報、または国が公表している不動産情報ライブラリがありますので、それらを使用して災害ハザードリスクを把握することをおすすめします。
金町駅周辺の病院事情
金町駅周辺に位置する金町地区センター(金町区民事務所)には、「金町休日応急診療所」があり、休日や夜間の一次診療を担っています。そのほか、金町駅周辺には、救急医療を担う「金町中央病院」や「第一病院」などがあります。
また、妊娠・出産には欠かすことのできない産科(マスダ産婦人科)が立地しているのも金町駅周辺の特徴といえます。
金町駅周辺の子育て環境
金町駅周辺には、子育て支援のための施設や教育施設として、「金町子どもセンター」や「カナマチぷらっと」「科学教育センター未来わくわく館」などがあります。また、規模な大きな中央図書館も立地しているので、子育て環境は充実しているといえます。前項で述べたように、日常において不可欠な医療施設も充実していますので、妊娠から出産、子育てまで安心できる環境といえます。
なお、葛飾区が公表している資料によると、2021年から待機児童数ゼロを達成・維持しています。
金町駅周辺の家賃相場
<金町駅の家賃相場>
・ワンルーム:9.91万円
・1LDK:13.04万円
・2LDK:19.34万円
・3LDK:18.55万円
<亀有駅の家賃相場>※隣駅
・ワンルーム:6.88万円
・1LDK:14.22万円
・2LDK:16.91万円
・3LDK:19.98万円
金町駅の市街地再開発事情
現在、金町駅北口西側エリアでは、市街地再開発事業が行われており、住商複合型再開発ビルの建設や、広場・公園の整備が進められいます。工事は第Ⅰ期エリアと第Ⅱ期エリアに分けられており、このうち第Ⅰ期エリアは、2025年7月に竣工しました。この再開発は、東京理科大学葛飾キャンパスと金町駅との中間エリアで行われており、第Ⅰ期工事では、店舗面積1万m2超の大規模商業施設「MARK IS 葛飾かなまち」が2025年9月3日にオープンします。なお、MARK IS 葛飾かなまちの屋上には、イトーヨーカドー金町店の屋上にあった金町自動車教習所が、装いも新たに再オープン(2025年8月1日)しています。
金町駅周辺の魅力まとめ
今回は、JR金町駅周辺の住みやすさについて紹介しました。金町駅周辺は、歴史や文化が感じられる下町の街並みと、再開発や区画整理によって整備された新しい市街地とが共存する、魅力的なエリアです。また、その混在は無秩序に広がっているわけではなく、行政や民間事業者によって適切にコントロールされており、金町ならではのまちづくりの特徴が感じられるのも魅力の一つです。今後、再開発や葛飾キャンパスの学生増をきっかけに、既成市街地のリニューアルがさらに進み、街全体がより魅力的に変化していくことが期待されます。
一方で、水害リスクには十分な注意が必要です。居住を検討する際には、自分自身や家族内で、水害リスクをどの程度許容するのか、あらかじめ話し合っておくことをおすすめします。
都心への交通アクセスの利便性に加え、商業・教育・子育て環境の充実、そして親水空間や緑地の豊かさなど、暮らしにうれしい条件がそろった街が金町といえます。自分らしい住まい選びの選択肢として、金町をチェックしてみてはいかがでしょうか。