3月9日は「雑穀の日」です。雑穀の日は、雑穀のおいしさとともに高い栄養価や機能性、作物資源としての重要性など、雑穀のすばらしさを伝えていく日となっています。
近年健康ブームということもあり、家庭でも飲食店でも雑穀ごはんが使われることが多くなりました。管理栄養士である私も数年前から雑穀ごはん生活を送っていますが、今ではすっかり私のライフスタイルとして定着しました。
今回は、雑穀ごはんの栄養やおいしい炊き方などを紹介します。皆さんも雑穀ごはんのある生活を試してみてはいかがでしょうか。
白米と雑穀ごはんはどう違うの?
雑穀は、日本雑穀協会の制定によると「主食以外に日本人が利用している穀物の総称」とされています。具体的には、ヒエ・アワ・キビ・アマランサス・キヌアなどが挙げられます。
白米よりも小粒のものが多い雑穀ですが、体にうれしい栄養素がたくさん含まれています。また、雑穀の種類によって栄養価や食感、風味も違うので、お気に入りの雑穀探しをするのも楽しいものです。
それでは早速、白米と主な雑穀の違いについてご紹介します。
雑穀ごはんで栄養と食の楽しみをプラス
白米とは、玄米から糠と胚芽を取り除き精米したものです。精米することにより雑味が取り除かれますが、精米するときに多くの栄養素も一緒に取り除かれてしまいます。実際に、精米されることにより食物繊維は約1/6、ビタミンやミネラルも約1/5~1/10も減少するとされています。
そこで毎日の生活におすすめしたいのが、雑穀ごはんです。白米と雑穀を混ぜて炊くことで、白米だけでは摂りきれないビタミンやミネラル、食物繊維、ポリフェノールなどの栄養素を補うことができます。また、雑穀によって粒の食感や大きさが違うので、主食の楽しみを増やすことにもつながります。
雑穀ごはんのおいしい炊き方
雑穀ごはんを楽しむには、自分で雑穀をブレンドするか市販の雑穀ごはんの素を使用する方法があります。自分でブレンドする場合は、食感や体調、好みに合わせて自由に組み合わせられるというメリットがあります。しかし、初心者がいろいろな雑穀を買うと、使いきれなかったり組み合わせに迷ってしまったりするなど、デメリットも大きいです。
初めて雑穀ごはんにチャレンジする方は、ブレンドされているものから試してみるといいかもしれません。近年の健康ブームから、五穀米・十六穀米・三十穀米など、さまざまな雑穀ごはんの素が市販されるようになってきました。個包装になっているものや好きな量を使える大袋タイプなど、用途によって分けて使用することもできます。
次に、おいしい雑穀ごはんの炊き方のポイントや、私が日々の暮らしで活用している雑穀ごはんのアレンジ。お悩み別の雑穀の組み合わせの例をご紹介していきます。
おいしい雑穀ごはんの炊き方
【材料】
・米:1合
・雑穀:大さじ1~3(10~30g)
・水:内釜の目盛まで+雑穀と同量の水
【炊飯器での炊き方】
1.米を研ぐ
白米を普段どおりに研ぎます。1回目に入れた水はできるだけ早く捨て、2~3回水洗いしましょう。雑穀は、水洗い不要なものが多いですが、気になる方や水洗いが必要なものはサッと水洗いします。このとき、小粒の雑穀は流れてしまうこともあるので、茶こしなどの網目の細かいザルを使用すると洗いやすくなりますよ。
2.水を入れて浸水させる
白米と雑穀を炊飯器に入れ、内釜の目盛まで水を入れた後、雑穀と同分量の水を入れて30分以上浸水させましょう。このとき、軽く白米と雑穀をかき混ぜておくと、仕上がりにムラのない雑穀ごはんが炊けます。しっかりと浸水させることで芯まで水を行きわたらせると、食べたときの食感がよくなるだけでなく、消化・吸収もスムーズになります。
3.炊飯スイッチを押して炊く
最後にいつもどおり炊飯スイッチを押し、雑穀ごはんができるのを待ちましょう。
雑穀ごはんアレンジ
オリーブオイルorこめ油を加えて炊く
雑穀ごはん1合に大さじ1程度の油を加えて炊くことで、炊き上がったごはんにツヤが出ます。さらに、ごはん同士がくっつきベタッとした食感になるのを防ぎます。
はちみつorみりんを加えて炊飯する
雑穀ごはんに甘みが少ないと感じるときは、はちみつやみりんを大さじ1程度加えて炊くことでほんのり甘みの出るごはんになります。子どもも食べやすくなるので、家族みんなで雑穀ごはんを楽しむために、ひと工夫してみてはいかがでしょうか。
しょうが
お好みでしょうがパウダーや刻んだしょうがを入れて炊飯します。夏場はしょうがの清涼感ある香りが食欲をそそるので夏バテ解消に効果があり、冬場は体を温める作用が冷え性対策として有効です。
梅干しor梅昆布茶
しょうがと同じく、炊飯するときにお好みで梅干しや梅昆布茶を入れます。雑穀ごはん全体に梅の風味が付き、さっぱりと食べやすくなります。雑穀ごはん独特の風味も和らぐので、食べ慣れていない方におすすめの食べ方です。
小見出し:あご出汁&昆布茶
「よりおいしく雑穀を楽しみたい!」という方は、あご出汁や昆布茶などの粉末出汁と一緒にごはんを炊いてみましょう。風味とコクが増すので雑穀ごはんをよりおいしく食べられます。
主な雑穀、それぞれの栄養素
次に代表的な8種類の雑穀をご紹介します。
大麦
大麦の特徴は何といっても食物繊維の多さです。白米の約17倍の食物繊維が含まれています。
食物繊維には、水に溶けると粘度が増し、ゼリー状になって消化吸収を緩やかにしてくれる水溶性と不溶性の2種類があります。大麦には水溶性食物繊維が多く含まれており、食感は白米と似ていて味もクセが少なく、雑穀に慣れていない方でも使いやすいです。また、加工の仕方によって「押麦」「米粒麦」などがあるので、お好みの形状を探すのも楽しいですね。
黒米
表面が黒いのが特徴で、少量でも炊飯すると紫色に色づきます。黒色の種皮部分にはポリフェノールの一種であるアントシアニンが含まれています。抗酸化作用や美肌効果もあることから、楊貴妃が好んで食べていたともいわれている美容食です。
白米と比べると、食物繊維以外にも鉄分やマグネシウムなどのミネラルが多く含まれており、中国では薬膳料理にも使用されています。
赤米
名前のとおり赤い色をした赤米は、炊飯すると淡いピンク色になります。毎日の食卓を華やかにしてくれるだけでなく、お弁当に入れるだけで手軽に彩りがよくなります。赤米には、お茶の渋み成分でもあるポリフェノールの一種タンニンが含まれていますが、赤米の渋みはそれほど気になりません。
アワ
アワの名前の由来は「風味が淡い」ということもあり、白米に近い風味が特徴です。クセが少なく食べやすい雑穀で、モチモチとした食感が楽しめます。白米に少ないビタミンB1を補ってくれるほか、パントテン酸という体内の細胞を維持する栄養素が雑穀の中でもとくに多いのが特徴です。ほんのり赤い種皮はポリフェノールが豊富な証拠です。きれいな赤がプラスされると主食も華やぎます。
キビ
アワと似ている雑穀キビは、見た目の色でもある「黄実」よりキビといわれるようになりました。小さな粒ですが、甘みは強く、冷めてからもモチモチとした食感が楽しめます。
表皮の黄色の色素はポリフェノールで抗酸化作用があり、穀類に不足しがちなメチオニンという必須アミノ酸を含んでいます。白米と一緒に食べることで栄養バランスも整い、健康面にも一役買ってくれる雑穀です。
アマランサス
世界保健機構(WHO)が「スーパーグレイン(驚異の穀物)」「未来の食物」と評価したため、日本では5年ほど前から注目を集めています。ケシの実のような小さな粒の中には、人の体内で合成することのできない必須アミノ酸のすべてを含んでいます。また、NASAでは宇宙飛行士の食料としても取り入れられることから、スーパーフードとして注目されるようになりました。
骨粗しょう症予防にもつながるカルシウムが白米の23倍と多いことが特徴で、種皮が柔らかいためプチプチとした食感が楽しめます。
キヌア
アンデスの厳しい環境でも生き抜き、豊富な栄養素を含むキヌアは「母なる穀物」と呼ばれています。また、飢餓や栄養失調、貧困の根絶に重要な役割を果たすとして、国連が2013年を「国際キヌア年」として定めたことから、スーパーフードとして世界中で注目されました。
便通の改善に役立つ食物繊維だけでなく、鉄分やカルシウムといったミネラルも豊富です。過熱をしてもプチプチとした食感が残り、胚芽が白いひげのように出てくるのが特徴です。
ゴマ
普段の料理でもなじみのあるゴマは、中国では「食べる丸薬」といわれるほど栄養価が高いです。白ゴマと黒ゴマの2種類があります。ゴマには抗酸化作用があり、「若返りのビタミン」といわれるビタミンEが多いため、美容や健康を意識している方におすすめの雑穀です。
体調や期待効果に併せてブレンドしてみよう
スーパーなどでよく見かけるのは、十穀米・十六穀米・三十穀米といったすでにブレンドされているものが多いです。しかし、自分で好みの雑穀を組み合わせることによって、体調に合わせた雑穀ごはんを楽しめます。
ここでは、美肌や血行促進など、効果効能別におすすめの雑穀の組み合わせを紹介します。
美肌
アワ・アマランサス・キヌア・赤米・黒米には、糖代謝や脂質の代謝に欠かせないパントテン酸がたくさん含まれています。そのため、肌荒れなどの肌トラブルが気になる方におすすめです。
血行促進
「寒さに耐える」が語源のヒエは寒冷地や高地で栽培されているため、寒さに強い雑穀です。そのため、ヒエ・キビ・アマランサス・キヌアを使った雑穀ごはんは血行を促進してくれるので、冷え性改善効果があります。
ダイエット
栄養たっぷりの雑穀は代謝を促進してくれるので、ダイエット効果も期待できます。加熱するとひき肉のような食感になることから「ミートミレット」の愛称があるタカキビを一緒に混ぜ合わると、さまざまな食感も楽しめて食べ応えも抜群です。
便秘解消
食物繊維が多く含まれる雑穀は、お通じが気になる方や食べすぎですっきりしない方にもおすすめです。アワ・アマランサス・キヌア、水溶性食物繊維をたっぷり含んだ大麦は外せない雑穀です。
貧血予防
貧血予防には、鉄分が多く含まれるアワ・キビ・アマランサスをブレンドしたものがおすすめです。穀物ではないですが、一緒に鉄分たっぷりのひじきを炊くと、さらなる貧血予防効果を期待できます。
雑穀ごはんを楽しむ住まい
いろいろな雑穀を試したくなったら
雑穀ごはんの魅力にハマってくると、いろいろな種類の雑穀を試してみたくなると思います。
そうなったときに重要なのが収納スペースです。いろいろな雑穀をキッチンにきれいに並べるとおしゃれになりますが、忙しい毎日に追われていると、つい乱雑に扱ってしまうものです。
また、瓶などに保管していてもキッチンの油汚れがついてしまい、お手入れの必要が出てきます。そこで収納や清掃に困らないためにも、「食品庫」と訳されることも多いパントリーがある住まいを選ぶと、雑穀を楽しみやすくなりますよ。
収納スペースをあらかじめ確保しておくと、料理をするときの動線もスムーズです。パントリーがあることによって、収納する食品の定位置が決まるので、在庫切れの心配やストックしすぎることはなくなります。収納ボックスなどをうまく活用すれば、パントリーの清掃が手軽になるだけではなく、キッチンがすっきりします。収納面や清掃面でもパントリーがあるキッチンのある住まいは、心にゆとりをもったライフスタイルを叶えてくれますよ。
雑穀ごはんを楽しむライフスタイル
雑穀ごはんは栄養価が高いだけでなく、食感や風味、色を変化させてくれるのでいつもの食事がランクアップします。
私自身、忙しい毎日を送っていても主食を白米から雑穀ごはんに替えるだけで、体をいたわっている感覚があります。その結果、心にゆとりが生まれ、外食続きなどで食生活が乱れたときもリセットした気持ちになるのです。
また、パントリーのあるキッチンでの調理は、キッチンに食材や調理器具が混在せず、見た目もすっきりしています。毎日食べる食事、毎日過ごす場所だからこそ、気持ちよく過ごせる環境にして、心も体も健康になっていきましょう。