一年の始まりを華やかに彩る、「おせち料理」。地域や家庭によって中身や味が違い、私にとって生まれ故郷を感じられる家庭料理の一つでもあります。
買ってくる豪華なおせち料理ももちろん素敵ですが、手作りにはまた違った魅力があります。準備の段階から楽しく、おせち料理をあける瞬間もまた、楽しみとなるでしょう。
今年のお正月は、新型コロナウイルス感染症の影響で、いつもと違ったお正月になるかもしれません。しかし、こんなときだからこそ「手作りおせち」で新年を彩ってみませんか。
自分好みの味付けにアレンジできる醍醐味を味わいながら、できるものを手作りして迎えるあたたかいお正月は、最高の贅沢ではないでしょうか。
地元長野の、手作りおせち
おせち料理の由来
おせち料理は、「節」といわれる季節の変わり目ごとに豊作を感謝して神様にお供え物をした「節供」に由来しています。
やがて節句の一番目である正月の料理を、「おせち料理」と呼ぶようになったといわれています。お供え物として作った料理が、おせち料理の始まりだそうです。
長野特有のおせち料理とは?
私の生まれ故郷は長野です。長野では大みそかの晩の食事は「年取り膳」と呼ばれ、ごちそうを用意します。海なし県の長野では、昔から海の幸は“ごちそう”とされており、年取り魚のブリやサケとともにおせち料理を囲みます。
そのため、おせち料理ではなく「年取り膳」とも呼ばれ、年末から年始にかけてお祝いをするのが昔からの伝統です。
つまみ食いが大好きだった幼少期
なぜか美味しく感じるつまみ食い。年末はおせちを仕込む母の横で、できたてホヤホヤを兄弟そろってつまみ食いする瞬間が、大好きでした。
中でも黒豆はわが家の一番人気で、つまみ食いといいながら大きなスプーンで頬張っていました。通りがかるたびにつまみ食いする私たちを見越してたくさん仕込んでいた母の姿を、大人になった今でも鮮明に覚えています。
これも手作りだからこその醍醐味だと思うのです。仕込む時間に家中に広がるおせち料理の匂いも、新年の訪れを感じさせます。
家族で囲む食卓で感じるお正月
待ちに待ったお正月は、手作りのおせちとともに家族だんらんのひとときを過ごすのが何よりの楽しみでした。華やかなおせち料理は見ているだけで輝かしく、お正月がとても特別な時間に感じるものです。
好きなものを好きなだけ、好みの味に仕上げるおせちは、手作りならではの贅沢さと家族みんなで食卓を囲むよさを感じます。
手作りおせちの魅力
お重に詰めると圧巻のおせちも、一つひとつはシンプルな味付けのものが多く、意外と簡単に作れるところが魅力です。
保存が利くので忙しい年末でも安心
年末は忙しくておせちを作る暇がない方でも、心配は要りません。おせち料理は保存が利く料理が多く、お重にはしっかりと冷えた状態で盛り付けるため、事前に作り置きしておく料理がほとんどです。
そのため、年末の忙しいときにすべてを作る必要はなく、時間がある日に1品ずつ作り置きができます。
おせち料理の作り方
それでは次に、わが家の定番おせちレシピを紹介します。ローカルな長野のおせち料理も紹介しますね。
『栗きんとん』
黄金色に輝く小判に例えた栗きんとん。財産がたまるようにという願いが込められています。こちらのレシピは家庭で再現しやすいようにクチナシを使用せず仕上げています。
また、小さなお子さんでも安心して食べられるようにはちみつ不使用となっていますので、家族みんなでお楽しみいただけますよ。
<材料>
・さつまいも 1本
・栗の甘露煮 10粒
・水 1/2カップ
・栗の甘露煮のシロップ 大さじ7
・砂糖 大さじ5
・みりん 大さじ2
・塩 少々
<作り方>
①さつまいもは皮をむき、一度さっと茹でる
②鍋のお湯を捨て、再度お湯をひたひたになるくらい入れ30分ほど煮る
③鍋に茹で汁を1/4カップ程残し、さつまいもをつぶす
④すべての調味料と水を加え練りながら2~3分火にかける
⑤栗を加えさらに2~3分煮る
『田作り』
別名「ごまめ」とも呼ばれ、「五万米」という漢字から豊作祈願からつけられています。
<材料>
・田作り30g
・醤油 大さじ2
・みりん 大さじ3
・砂糖 大さじ2
<作り方>
①フライパンに田作りを入れ、弱火で煎り、ざるに上げて冷ましておきましょう
②調味料をすべてフライパンに入れて火にかけ、とろみがついてきたら①を加えて和えてください。
『花れんこんの酢漬け』
れんこんにはいくつもの穴が空いていて、向こう側が見通せることから「将来の見通しがいい」と縁起を担いでいます。
また、れんこんは種が多いことから多産の象徴とされ、こちらも「子孫繁栄」の意味があります。
穴の形に添うように数ミリの厚さを残して飾り切りすると、蓮の花のように美しい花れんこんとして、おせちを華やかに彩ります。
<材料>
・れんこん 1本
・酢 150ml
・砂糖 大さじ3
・みりん 大さじ3
・塩 少々
・唐辛子 少々
<作り方>
①れんこんは皮をむき、厚めにスライスする
②輪の周りの穴と穴の間をV字型にカットし、花形にする
③すべての調味料を鍋でひと煮立ちさせ、茹でたれんこんを漬け込む
④お好みで食紅を使用し、色付けをする
『長芋ようかん』
長野のおせち料理で、他の地域の方にも特に食べていただきたいのが「長芋ようかん」です。
長芋特有のさっくりとした歯切れの良さと食感が癖になる一品です。
<材料>
・長芋 400g
・砂糖 70g
・寒天 5g
・水 1カップ
<作り方>
①寒天を水(分量外)に浸しておく。
②長芋は皮を剥き、蒸して裏ごしをする。
③鍋に水を入れ、水気を絞った①を加える
④③に砂糖と②を加え、練りあげる。
⑤型に流し入れ、冷やし固める
おせちの伝統、料理は見せ方が大事
おせちは盛り付け方が地域によって異なります。お重の段数ごとに盛り付ける料理を見ていきましょう。
三重の場合は、次のとおりです。
【一の重 祝い肴・口取り】
一の重は口取りの重といい、晴れやかな新年を彩る前菜や、お酒の飲めない子どもも楽しめる甘い料理が特徴です。
【二の重 焼き物・酢の物】
二の重は海の幸などの焼き物や、さっぱりとした酢の物を盛ります。
【三の重 煮もの】
三の重は煮しめ、筑前煮等の煮ものを盛り付けます。
段ごとに盛り付ける食材が決められているため、伝統を守りつつ、開けたときの華やかさを意識して盛り付けることが大切です。
料理が美しく見えるお重の詰め方
お重に盛り付けるポイントとしては、立体感を意識して盛り付けることです。
後ろ側には背の高いもの、汁気のあるものは小さな器を使用して盛ると、よりきれいに見えます。また、彩豊かなおせち料理は、食材の色合いに強弱をつけて盛り付けると、より一層美しく盛り付けることができます。
少人数家族にはワンプレートおせち
少人数家族にはワンプレートのおせちもおすすめです。
今年は新型コロナウイルスの感染対策としても、一人ひとりお皿に盛り付ける「ワンプレートおせち」が好まれるかもしれませんね。
ワンプレートおせちのコツは、小さな器に立体感を意識して盛り付けるといいでしょう。
手作りおせちで食卓を彩るなら
家族みんなが集まれる空間
お正月は家族だんらんの時間をゆったりと過ごすことのできる広いリビングがあるとより快適ですね。
家族みんなが集まりたくなるような落ち着く空間と、料理が並ぶテーブルを配置できるよう、広い間取りのリビングがおすすめです。(今年は各地の感染状況を考慮しながらになりますが…。)
3口コンロのある物件
品数の多いおせち料理を快適に作るためには、3口以上のコンロがあると便利です。
おせち料理は、煮込む時間が長いものが多く、コンロ数が多いとさまざまな料理を同時に調理できます。調理後、粗熱を取る際の置き場としても活躍しますよ。
私は2口コンロの物件に住んでいますが、お部屋選びで後悔しているポイントの一つでもあります。
日々の料理時間の短縮や、より快適な時間を過ごすためにも3口コンロの物件がおすすめです。
昔ながらの伝統を大事にする街
私自身は名古屋に住んでいたこともありますが、やはりお正月には地元長野が恋しくなるものです。
大都会の暮らしにも憧れますが、昔ながらの伝統を受け継いでいる街には地域の特色があり、伝統を大切にしています。
おせち料理も地域によってさまざまな特色があり、手作りでなければ感じることのできない地元の料理でもあります。時代が変わっていっても、昔ながらの伝統を残しつつ、地域の味を守っていきたいです。
手作りおせちで新年を迎えよう
お重に詰めると輝かしいほどの豪華なおせち料理も、一つひとつの料理はシンプルな味付けのものばかりです。
今年のお正月は例年と違い、思うように外出ができなかったり、会いたい人に会えないもどかしさを感じたりするかもしれません。
しかし、こういった状況だからこそ、日々の暮らしを見直し、おうちで食事を楽しむ時間がより特別なものに感じられるでしょう。
一年に一度のお正月、愛情たっぷりの手作りおせちとともに、特別なお正月を過ごしてみてくださいね。