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北の大地旭川で、地酒と暮らす。よき水・よき米・よき気候がそろう旭川の魅力
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日本酒がおいしくなる決め手は、なんでしょうか?

酒造りを管理する「杜氏」の腕はもちろんですが、原料である水と米がカギを握ります。

豊かな自然に恵まれた北海道旭川市には、酒造りに適した「3大要素」があります。名水が流れ、酒造りに適した米が豊富で、冷涼で寒暖差が大きい、というものです。隆盛期の大正時代には「北海の灘」、今でも「北の灘」と呼ばれるほど、酒造りが盛んなまちです。
旭川の日本酒業界は現在、「男山株式会社」「髙砂酒造株式会社」「合同酒精株式会社」の3蔵元が切磋琢磨しています。道内でも指折りの酒どころとして魅力を高め、地元の水や米にこだわり、国内外の愛飲家を魅了しています。

私は、旭川に移住して3年目。地元の酒蔵が開放する仕込み水を日々飲み、その名水を育む大雪山を拝みながら暮らしています。ここにしかない地酒の魅力を、現地から紹介します。

恵の源泉は、大雪山の雪解け水

オエノングループ 合同酒精株式会社提供
オエノングループ 合同酒精株式会社提供

きっかけは、開拓を担った「屯田兵」

旭川での酒造りは、開拓を担った「屯田兵」が1891(明治24)年に入植した際、札幌の酒造関係者が、旭川に可能性を見いだして拠点を構えたことがきっかけといわれています。
旭川は、「北海道の屋根」と呼ばれる大雪山連峰に囲まれています。大雪山の雪解け水が、長い時間をかけて伏流水となって流れ、開拓とともに米作りが盛んになりました。盆地で寒暖差が大きく、冬の厳しい寒さがあることも、酒造りの適地として注目されるポイントになりました。 1899(明治32)年には、現在の「男山」の前身が札幌から移転し、現「髙砂酒造」の前身も創業。翌年には現「合同酒精」の原点となった会社が発足しました。
ただ、安価で低品質な地元の米を使っていたことで評価は低く、伸び悩んでいました。そこで、それぞれの蔵が互いに行き来し、技術を共有する「蔵まわり」を通して研さんを積みました。地元の農家と手を携え、酒米の改良にも尽力。1921(大正10)年ごろには、道内最大の酒どころとして知られるようになりました。

戦後の一時期、市内の醸造会社は10に増え活気がありましたが、徐々に嗜好の変化でビールなどに押され、日本酒人気が低迷。昭和後期には廃業する蔵元が相次ぎました。

3蔵元、それぞれのこだわりと歩み

戦時中の統廃合と独立、市場の変化にもまれ、現在は3つの蔵元が残っています。それぞれのこだわりと歴史を大切に、酒造りに励んでいます。三者三様の酒蔵を紹介します。

男山

男山株式会社提供
男山株式会社提供

前身の山崎酒造は1887(明治20)年に札幌で誕生し、1899(明治32)年に旭川へ移転しました。江戸幕府の官用酒で、浮世絵にも描かれるほどの人気だった「男山」を造っていた「木綿屋」(兵庫県伊丹市)から正統継承し、今に至ります。淡麗辛口の銘柄が多いといわれています。
海外へも積極的に打って出ていて、全出荷量の15%を輸出が占めています。日本酒としては世界で初めて、1977年にモンドセレクション金賞に輝き、その後も連続して受賞しています。
新型コロナウイルスの感染拡大前は、毎年2月に「酒蔵開放」を開催。遠方からのファンや地元の愛飲家ら1万人が訪れる人気行事として定着しています。立春には、その日の朝に搾った縁起物の酒をお披露目し、早朝から酒店の関係者らを招いて、共同でラベルを貼ります。この季節の風物詩になっています。
旭川市内や周辺の町では、古い民家や商店に「酒は男山」「清酒 男山」と書かれたホーロー看板をよく見かけます。地域を代表する酒蔵として、身近な存在になっています。

髙砂酒造

髙砂酒造外観
髙砂酒造外観

旭川で4番目の蔵元として1899(明治32)年に創業した「小檜山酒造店」が前身で、伝統に誇りを持ちつつも、ユニークな挑戦や、地元の企業・学校とのコラボレーションを積極的に仕掛けています。
新酒のタンクを雪で覆って熟成させる「雪中貯蔵」は、1997(平成9)年から続け、まろやかな純米酒と純米吟醸酒を造っています。年間約50トン出る酒粕の有効活用にも力を入れ、2007年から商品を開発し、今では約30種類を展開。酒粕熟成のブルーチーズ「旭川」や、酒粕を飼料にしたブランド牛「旭髙砂牛」が有名です。
社内の若手職人らは、毎年違った酒質や味わいの日本酒を醸造するプロジェクト「若蔵 WAKAZO KURA Challenge」で、若い世代に日本酒の魅力を広げています。地元の旭川農業高校とは、生徒が校内の田んぼで酒米を育て、酒造りへの参加やラベルのデザインにも関わる産学の事業を行っています。
「髙砂酒造」の名を世に知らしめたのは、1975年に誕生した端麗辛口の「国士無双」。今に至る代表銘柄として親しまれています。

合同酒精 旭川工場

オエノングループ 合同酒精株式会社提供
オエノングループ 合同酒精株式会社提供

1900(明治33)年創業の「日本酒精製造」旭川工場が起源です。東京・浅草で日本初のバーといわれる「神谷バー」を開いた神谷傳兵衛が、酒精(アルコール)の原料となるジャガイモやトウモロコシが調達でき、発展の余地が大きいまちとして旭川に着目。民間初の国産アルコール醸造にこぎ着けました。このアルコールの残りかすを飼料に活用して養豚を大規模に始め、旭川市では養豚業が盛んになったことから、「旭川ラーメン」で豚骨スープがスタンダードになったといわれています。
改称された「神谷酒造」を母体に、1924(大正13)年に道内の焼酎製造の4社が合併、「合同酒精」となり、本社は1963(昭和38)年に東京へ移転するまでは、旭川にありました。
その後も合併を経て規模を拡大し、現在の「オエノングループ」につながっています。焼酎がメインですが、1966(昭和41)年から日本酒の生産も始めました。
1992年に、看板ブランド「大雪乃蔵」が誕生。「本当にうまい北海道ならではの地酒を」という思いから、1998年に機械化を進めた工場を稼働させました。杜氏や蔵人を置かず、重要な工程をオートメーション化しています。酒の種類ごとに違う、さまざまな工程のパターンを機械に入力することで、最適な温度・湿度を管理し、品質の安定性を保っています。試行錯誤を繰り返し、最新の機械と、それを補う職人の技術力で、バラツキのない通年醸造を可能にしています。
原料の酒米は、本州で広く知られる「山田錦」に負けないほどの質まで品種改良されたため、2010年からすべて道産米一本に。食用米を原料にした酒造りにもチャレンジしています。

飲んで、訪ねて、知って…多彩な楽しみ方

まずは気軽に一杯

うえ田舎提供
うえ田舎提供

あれこれうんちくを語ってしまいましたが、まずは飲んでみないことには、分かりませんよね。道北で最大の繁華街を擁する旭川は、地酒を楽しめるお店が多くあります。手軽に楽しむなら、JR旭川駅からすぐの歩行者天国「平和通買物公園」にある、角打ち「うえ田舎」がおすすめです。お店のスタッフに話を伺ったり、「利き酒 旭川」で飲み比べたりしながら、旭川の地酒の個性をいっそう感じることができます。

JR旭川駅内の観光物産情報センターでは、3蔵元の1本(300㎖入り)ずつがセットになり、旭川の酒造りの歴史をまとめた小冊子が付いた「あさひかわ蔵めぐり」(企画:旭川小売酒販組合)が販売されています。

蔵で感じる歴史と個性

男山と髙砂酒造では、風格ある工場や、資料館を実際に見ることができ、地元の人に親しまれています。

男山では、本蔵に隣接して売店と資料館があります。

男山株式会社提供
男山株式会社提供

1階の売店には蔵元限定の酒が多く並ぶほか、愛飲家なら思わず手が伸びてしまいそうなオリジナルグッズも販売しています。奥には試飲コーナーもあります。
2階と3階は、酒造りに必要な道具や工程、歴史を知ることのできる資料館です。コロナ前は外国人観光客の姿も多く、年間15万人ほどが訪れていました。仕込み時期には、資料館から窓越しに、隣接する蔵で酒造りの一部を見学することもできます。
建物の前は日本庭園になっていて、市民らが藤棚や池でくつろぎます。冬になると、そり滑りを楽しめる雪山や、雪像がお目見えします。四季を通して親しまれています。

髙砂酒造では、1909(明治42)年に建てられた酒蔵が、明治時代の面影を残したまま動態保存されています。当時は製造から瓶詰め・貯蔵・店頭販売までをしていましたが、2000年から直売店と資料館として、一般開放されています。当時の貴重な資料などが展示されています。

髙砂酒造ホームページより
髙砂酒造ホームページより

合同酒精旭川工場は一般に開放されていませんが、外から、存在感のある赤レンガ造の旧蒸留棟を見ることができます。この建物は歴史的建造物として、経済産業省の「近代化産業遺産」に選ばれています。ここで製造されたアルコールの残りかすを豚が食べ、旭川ラーメンにつながっていると思えば、感慨深いですね。

旭川での酒造りは、市内の製造業の中で最も早い時期に確立されたと言いれています。それぞれの蔵元は、歴史やこだわりを感じる貴重な場にもなっています。

暮らしに溶け込む「仕込み水」

仕込み水を汲みにいく

そして、下戸の人でも地酒を感じられるのが、旭川ならではかもしれません。

モンドセレクションを連続受賞している、男山の最高位の「男山純米大吟醸」の謳い文句に「ベースになるのは、大雪山の万年雪から染み出た水の味」というものがあります。男山全体のパンフレットにも、「伏流水が男山の味の根幹」と書いてあります。髙砂酒造も合同酒精も同様に、水へのこだわりはとても強いです。
男山では、仕込みに使われている大雪山の伏流水を「延命長寿の水」として通年、一般開放しています。大きなポリタンクや焼酎ボトルを抱えた市民が3つある蛇口の前で列をなすこともままあり、真冬でも多くの人が訪れます。旭川の銘酒が、身近な名水からできていることを感じられます。

この水でコーヒーを入れたり、味噌汁を作ったり。水が良質だと、暮らしのクオリティも高くなった気分になります。25年近く「男山」の水を汲んでいる旭川市内の女性は、「キリッとしておいしい。もう浄水でも飲めないです」と言い切ります。水を汲みに行くときは、資料館を子どもたちと楽しむこともあるといいます。

髙砂酒造では、直売所の入り口近くに水飲み場が、旧酒蔵の裏手には水汲み場があります(ともに冬は凍結のため休止)。この仕込み水は、軟水の水道水と違い、適度にミネラルが含まれる中軟水で、ややまろやかで、飲みやすいです。直売所近くの水飲み場では「高砂酒造の日本酒の味わいもこの水から誕生」と書かれてあり、なくてはならない存在であることが強調されています。

北海道を代表する大自然からの雪解け水が開放されているというのは、酒蔵と市民の距離の近さを物語っているようにも思えます。また、酒粕を使った石鹸、ラーメン、ソフトクリームなど、さまざまな日常のシーンでも地酒を感じることができ、贅沢なことこの上ないですね。

地酒好き垂涎。自然と都市が調和した拠点都市旭川

市内に3つの酒蔵を擁する旭川は、人口約33万人が暮らす、北海道第2の都市です。良質な水を生みだす大雪山連峰に囲まれ、中心部から15分も車で走れば、豊かな自然を楽しめます。一方で、道北の拠点として都市機能が集積しているので、買い物やレジャーで近隣の町からも多くの人が訪れます。
市内だけでなく、少し足を延ばせば魅力的な酒蔵が誕生しているのも、拠点都市らしい魅力です。

2017年には、旭川の奥座敷・層雲峡温泉がある上川町で「上川大雪酒造」が産声を上げ、「緑丘蔵」として地元メインで販売しています。札幌など、遠方から買い求めるファンもいるほどです。
2020年には旭川の隣の東川町に、「三千櫻酒造」が岐阜県中津川市から移転。「公設民営」というユニークなスタイルで、町内の水や酒米が生かされ、旭川周辺に新たな息吹をもたらしています。

水や米という自然の恵みを身近で感じ、多様な地酒を楽しめる旭川エリア。かわいらしいラベルのお酒や、おしゃれな直売所を目当てに、伝統から新進気鋭まで多彩な酒蔵を巡る、なんていう週末も粋ですね。

参考文献:旭川市広報「あさひばし」(2020年11月号)
「旭川魅力発見伝 旭川大雪観光文化検定公式ガイドブック」

その土地を感じる「地酒」の魅力

私は旅をしたら、現地の地方紙をめくり、居酒屋で地酒を飲むようにしています。そこで生まれたものを楽しむことで、その土地を感じられる気がするからです。

旅したことのある地域、憧れるまち、かつて住んだことのある場所…。それぞれの地酒を味わうことで、思い出がよみがえり、イメージが膨らみ、魅力を再発見できるという声も聞きます。地酒には独特の力があるはずです。

先人が新たな地を求めて、受け継いだ人が「ここにしかない」を追求し、今なお挑戦を続ける旭川の3酒蔵。そんな北の大地の開拓者精神まで楽しんでみませんか?

松本浩司ゲストハウス経営・フリーライター

中日新聞社の記者として10年勤務し、2018年10月に家族で北海道旭川市へ移住。観光・移住・まちづくりが好物です。タイニーハウスで地域に溶け込み、ローカルな暮らしを感じる「旭川公園ゲストハウス」https://asahikawakoen.com/を運営しています。

※掲載内容の実施に関してはご自身で最新の情報をご確認ください

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