「港町」や「異国情緒あふれるまち」など、独特なイメージのあるまち・神戸。そんな神戸のステレオタイプなイメージは、実は一部だけで、小さな商店街や長屋の趣など、下町情緒あふれるまちの姿も、まだまだたくさん残っています。
時に坂道が多く、時に山道のような。そして時には歴史が垣間見える通りを通って、歩けば歩くほど、そのまちならではの魅力に出会えるまち歩き。一見普通の住宅街でもまちを知る喜びが詰まっています。
そんな神戸の小さなまちを“勝手に”散策し、“勝手に”魅力を掘り出すまちあるきイベントが、「勝手にまち探訪」。塩屋のまちでさまざまな遊びを生む「シオヤプロジェクト」が主催しているイベントです。坂と車の入れないような小径が繰り広げられる塩屋を歩く、「勝手に高低差学会」から活動は始まり、その後、舞台は塩屋を飛び出した「勝手にまち探訪」がスタート。「同じ道を二度通らない、一筆書きのまちあるき」をモットーに、ほぼ毎月小さなまちをみんなで7時間歩き探訪しています。
今回は第61回「陸ノ編」をレポートします。陸の字をすんなり「くが」と読めたあなたは神戸通!我らがシオヤプロジェクトの本拠地である塩屋も含む垂水区のなかでも、垂水駅を起点に7時間まち歩き。商店街あり、海あり、神社あり、古墳あり。レポートを通して、意外と知られていない垂水の町を紹介します。神戸市の物件を探す
変化する場所、しない場所。垂水駅前の陸ノ町エリアを歩く

集合場所の垂水駅東口に集まった参加者は31名。常連メンバーはもちろん、前回のまち歩きで味を占めた方、このエリアならば!と初参加を決めた方などさまざま。いつも「勝手にまち探訪」で顔を合わせる参加者さんのなかに陸ノ町近辺にゆかりのある方が思いのほか多く、道中もいま昔のことをお話ししてくれました。
今回の案内人、堀範子さんは神戸新聞のレポーター出身、2012年から大道優子さんと共に「神戸垂水おもちゃ箱」というブログを趣味で(!)始められ、お店、イベント、散歩道など、垂水に限定した情報を細大漏らさず発信されています。開設から12年を経たいま、地域で最も信頼を集めるメディアのひとつに育てあげられました。
垂水のスペシャリストと言っても過言ではない堀さんのアテンドにて、今回はどんな光景を見ることができるのでしょうか。


まず向かったのは俗称「いかなご広場」。神戸の名産として知られる「いかなごのくぎ煮」ですが、ここ垂水を発祥の地とする説もあります。「でもですね!」と、早速堀さんからエクスキューズが。写真の象徴的なモニュメントは当然いかなごを模したものかと思いきや、いかなごというより魚一般をモチーフにした防風設備なんだそうです。
いかなごシーズンの3月になると、広場にかかる「いかなごGO!GO!」に引きつけられて誤解を生んでいるのではないかとのこと。ちなみに本年度の播磨灘のいかなご漁は、漁獲量を鑑みて解禁日の3月11日で終了。参加者さんからも多くの心配の声が聞かれました。




「レバンテ垂水1番館」を右手に、真っ直ぐ銀座通りを進んだY字路の分岐点には、たくさんのお地蔵さんが祀られていました。昭和初期に埋め立てられたため池の底から発見された女性のお地蔵さんを祀ったことから「池姫地蔵尊」と名付けられ、その後、長く銀座通りを守ってきた場所。70、80年前から地域のランドマークとされているそうです。

住宅の並ぶ狭い路地を進むと、都市型レンタル菜園を発見。車が入ることができない立地ゆえに空き地となっていたスペースへの対策として、「勝手にまち探訪」で案内人を務めた経験もある散歩活動家、建築士、まちづくりコンサルタントの角野史和さんが打ち出した一策です。2平米の1区画から借りることができ、また無料で利用することのできる道具類もあるので、気軽に野菜作りを楽しむことができます。

駅周辺で忘れてはならないのは、「垂水センター街」の名前を冠したアーケード商店街でしょう。飲食店、八百屋さん、服飾店など、生活に必要なものはなんでもそろってしまいそうな勢い。また路地に入れば雰囲気のある居酒屋さんも。この日も多くの方がお買い物を楽しんでおられました。

ところで、近年、垂水住民や神戸に住まう人々の関心の的になっているのは再開発の話題です。2026年までにその対象となっているのは、すでに完了したものを含めると8地点。垂水センター街の入り口付近に高層マンションが建設されるのも、駅前開発事業のひとつです。


約90年もの間、地域内外の方から愛された「垂水廉売市場」がその歴史に幕を下ろしたことは記憶に新しいですが、代わりに顔出す建物や施設が地域にとって本当の意味で大切な場所になることを願ってやみません。
垂水の神様たちにご挨拶

北側へ歩みを進めると高丸エリアに入りました。「瑞丘八幡神社」(みずおかはちまんじんじゃ)は同エリアのランドマークとして知られています。
正確な創祀年は明らかになっていないものの、当時一帯が垂水村と呼ばれていた時代には村の人々にとっての守りの神社として親しまれていたそうです。現在も地域の方から「厄神さん」と呼ばれ、特に毎年1月の「厄神祭」には多くの参拝者でにぎわうといいます。

実はこのエリア には某超有名作家の別荘があり、道中にこっそりとお宅を教えてもらいました。感動に震えたことは書くまでもありません。ちなみにシオプロの小山さんは一度だけ街中でその作家とすれ違ったことがあるそうです。


さわやかな白い鳥居と、それにそぐわないおどろおどろしい「御霊」の字。源平合戦で両軍とも多くの死者を出した垂水の福田川。その霊を祀るために作られた神社です。一度は別の場所に移されるも地域住民の働きかけでこちらに戻ってきた経緯があるそうで、一帯の御霊町という地名はこの神社に由来します。

ちなみに神社のほうは「ごりょう」、地名は「ごれい」というのが正しいそうですが、後者は明治時代に土地整備をされて以降に定着した読みであるため、古くからここに住まう人は「ごりょう」が本来的だと思われているんだとか。

海のほうに行けば、言わずと知れた「海神社」(かい / わたつみじんじゃ) も。航海安全、漁業繁栄、交通安全、安産、開運厄除けの神様として有名です。が、ご覧の通り、立派な鳥居はマンションに挟まれる形に……。もともとは朱色ではなく、周囲に建物が建ち始めて目立たなくなったことから色を塗った経緯があります。ところが……、

反対から眺めると、海からの視界を遮るように神戸市漁業協同組合の建物が建っていることがわかります。「神様の通り道を塞いでしまって大丈夫か?」と一同総ツッコミ。獲れた海産物の直売や地魚の販売イベントなど、地域になくてはならない施設なだけに両義的な気持ちになりました。

シオヤプロジェクト的!垂水の絶景&珍景
シオプロのまち歩きといえば、細い道や高低差に惹き寄せられ、絶景や珍景を愛でるスタイルがお馴染みです。皆が好きな有名どころも否定せず、個々の琴線に触れる光景を楽しむ。広く柔軟な心を持ってまちを歩けば、日頃見過ごしている興味深いモノ、コトに出合えます。今回の様子をハイライトで紹介します。
細道、坂道編

旭が丘に現れた、急傾斜坂。以前に一度ここを通ったことがあるそうで「上から見る景色が最高ですよ」と全員で再アタック!

坂を登り切ってから少し横道に逸れると、オーシャンビューが。もともとは市外住宅が多く、ここまでの景色は見えなかったといいます。取り壊された結果、明石海峡大橋を望む絶景スポットに。

一筆書きのまち歩きで来た道を引き返すことなどご法度です。坂からの帰りは新しい道を見つけて傾斜を下ると……

趣のある建物に遭遇しました。退色した白い壁、ゴツゴツとしたテクスチャー、1階のアーチ、繁茂する木々に囲まれた環境が、どこか外国の海沿いの町に来たかのように錯覚させます。
施設編——「みんなの家 セラビィ」

平磯エリアを歩いていると、堀さんがおもむろに古民家へと足を向けました。いくら好奇心が旺盛でも他者のプライバシーは侵さなかった「勝手にまち探訪」もついにここまでか……、と皆さん困惑気味。
ですが事前にお話済みだったらしく、温かく迎えてくださったのは「みんなの家 セラビィ」代表の大島美佐子さん。明治時代からある別荘を借り、0歳から2歳のお子さんを預かるスペースとして始まった同施設。現在は0歳から100歳まで、さまざまな人がここで交流し、学び、自分らしく時間を過ごしてほしいとのことで、大人は1時間550円、5時間1,650円、小学生は1時間330円、5時間880円 の利用費を払えば誰でも立ち寄れるオープンスペースとして運営されています。ギャラリーや制作の場としても使ってほしいとのことでした。



歴史ある建物ながらきちんと整備されているので清潔感があり、0歳から100歳という言葉通り、どの年代の方でも寛ぐことのできそうなゆっくりとした時間が流れています。

実際に取材中、中央に鎮座する巨大なマットには0歳の赤ちゃんがスヤスヤと寝息を立てており、そばでお母さん方が時間を過ごしていました。ちなみに大島さんは保育士、介護福祉士ともに資格をお持ちです。


共働きのお父さんお母さんが小さいお子さんを預けるのはもちろん、放課後に子どもがさまざまな世代と触れ合いながら迎えを待ったり、なんらかの事情で学校に行きづらくなった子どもが自前の学ぶ場としたり、あるいは少し人と話したいときにでもふらりと利用できる優しいスペースです。
珍景編











駅前、住宅地、海沿いと歩き、垂水のまちのさまざまな顔を見た、今回の「勝手にまち探訪」。エリアこそ変われど、どこもしっかりと生活している人の存在が感じられました。再開発という変化に晒されながらも、変わらず昔の実践を大切にし続ける住民の方々、変化を受け入れて新しい取り組みをする人々、双方が適切な距離感で人付き合いをしていた印象です。
また、近隣の海と言えば須磨の砂浜を思い出すかもしれませんが、ときには垂水漁港から眺めてみるとまた違う趣を感じられるかもしれません。
きれいになっていく町をどう感じる?神戸・垂水
今回歩いたのは、最寄りに、JR神戸線・垂水駅、山陽電鉄本線・山陽垂水駅のふたつの路線を擁するエリア。三宮から大阪・京都方面への都市部への移動はJRが、姫路方面のローカルな移動は山陽電鉄本線が適しています。
駅からすぐのところにショッピングモール、商店街があり、日頃の買い物に困ることはないでしょう。実際、「LIFULL HOME'Sまちむすび」では、「買い物がしやすく、交通の便が良いところ」「買い物がしやすい。駅近なので、無駄な時間を使わなくてもいい。効率よく生活できる」といった住民の声が寄せられていました。だからこそ、シオプロ本拠地の塩屋のように、ある種の不便さが転じて生まれる豊かさがあるかといわれると難しいところ。神戸はライフスタイルに合わせて選択肢が多くあるところが魅力ですね。
平均家賃は5.06万円。まち歩き中に多くのお子さんに出会ったことから、家族で暮らしやすいエリアと言えるかもしれません。
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