思えば、大阪の地において“小劇場”とはよく聞く言葉ではないかもしれません。そんな貴重な存在が梅田や難波ではない、港区の安治川沿いにあるのをご存じでしょうか?
もともとは石炭の倉庫として使われていたそのスペースには、約200席の客席、前拠点から引き継がれた照明や音響設備が並び、作り込まれすぎていないレトロな雰囲気が流れています。
演劇からプロレス、習い事の発表会まで!ジャンルレスにエンターテイメントの世界を表現する「世界館」の世界観を、同館スタッフ・彭匡信さんに伺いました。大阪府の物件を探す

石炭倉庫から小劇場へ
―目の前には安治川、周りには工場が多いこのエリアに劇場があるなんて、最初に知ったときは驚きました。
彭さん:「よく見つけたなと思いましたよ(笑)。ありがとうございます」

―でも2004年からなので20年近く活動されていますね。どんな経緯で始まったんでしょうか?
彭さん:「日本には、宝塚歌劇団と松竹歌劇団に並んで、大阪松竹歌劇団、通称OSKという有名な劇団があります。OSKは奈良県のあやめ池遊園地の円形大劇場を拠点にしていたのですが、そこが取り壊しになるということで世界館が新拠点として始まりました」
―OSKは1922年の創設後、70年代前半から近鉄のグループとして活動した期間は同じく近鉄の運営だったあやめ池遊園地の劇場を拠点にしていたんですよね。その次の拠点がここだったということですね。
彭さん:「そうです。ここのオーナーの丸井商会さんが近鉄さんと知り合いだったというご縁があってのことです」
―丸井商会さんはエネルギー系の会社ですよね。劇場とはどこか距離があるようにも思えるのですが。
彭さん:「オーナーさん自身、お芝居やミュージカルがお好きでよく見に行かれていて、ご自分でも劇場を作りたいと思っていたそうです。そこに円形大劇場がなくなることと、この物件が売りに出たというタイミングが重なったという流れです」
―この建物も劇場らしくないというか不思議な感じですね。
彭さん:「もともとは石炭の貯蔵場として使われていた倉庫だったので、劇場としての設備は何もなかったんです。あやめ池遊園地の劇場から、客席、照明機材、音響機材などを持って来て、足りない部分を自分たちで付け足していって今のようになりました。倉庫の名残はほぼありませんね」


なんでも来い!な、居酒屋スタイル
―劇場としての世界館の特色は?
彭さん:「それがないんです(笑)。所属の劇団もいません。やっている内容も、お芝居、プロレスなどの格闘技、コンサート、ダンスの発表会、会社の宴会、最近だとファン・ミーティングもあるくらいバラバラです。劇場ですけれども、ホールを貸しているレンタル屋さんといったほうがイメージしやすいかと思います」
―そうなんですね!劇場というとつい演劇を想像してしまいますが、もっと色んな展開をされているところが面白いですね!なにか狙いがあってのことなのでしょうか?
彭さん:「いや、特にないですよ(笑)。できるんだからやりましょうって。そっちのほうが面白いですよねって。演劇も格闘技もダンスも全部エンターテイメントなので、お客さんに楽しんでもらうという目的では同じだと思っています」

―彭さんにとって印象的だったイベントはありますか?
彭さん:「イベントの内容についてはあまりこちらで判断をしないようにしているので、ありません。私たちの仕事はイベントの内容に関わることではなく、企画を実現させるために必要な機材や環境を提案することですから」

―あくまでも内容は使うひと次第ということですね。どこかとても現代的な姿勢にも思えます。色んな展開がある場だからか、劇場特有の入りづらさをあまり感じないような……。。
彭さん:「うちは食べ物屋さんで喩えるなら居酒屋ですから(笑)。ほかの劇場は行けないけどうちには来られると言ってくださる方も多くいらっしゃいます」
変わりゆく弁天町と変わらないスタンス
―お客さんは地域の方が多いですか?
彭さん:「内容によりけりですが、弁天町は環状線が通っていて、関西空港、大阪駅、新大阪駅からのアクセスが抜群に良いので、東京からのお客さんが多いです。ここを借りてくださるのも府外の方が多いかもしれません」
―そのなかでも地域の方がとりわけ多く集まるイベントはありますか?
彭さん:「強いて言えば、10年以上やっている大晦日のカウントダウンプロレスですかね。昼間の興行、夜の興行、それで最後にみんなで年越しまでカウントダウンをします。年が明けたら近くの三社神社にお参りに行って、お酒を飲みに行くまでが恒例になっています」

―最高に楽しそう!お客さんとしてはあまり近隣の方は多くないとのことでしたが、弁天町ってどんな町なんでしょう?
彭さん:「昔はほんとに町工場がズラーっていう感じの町でした。この立地なので、主には港湾関係のねじ工場や船の部品を作る工場です。その人達の仕事は朝が早い分、終わるのも早いので15時くらいからお酒を飲める居酒屋さんも活気がありましたね」
―いまもこの辺りは工場が残っているものの、駅から歩いてくるなかでマンションなどの住宅も多く目にしました。
彭さん:「工場をやられていた方がお年を召されてやめられて、そこにマンションが建っていきました。それと平行して特に駅前には食べ物屋さんも増えたり、生活をするうえで便利な方向に変わりつつあります」
―働く町から住む町に変わりつつある?
彭さん:「そうですね。ここを拠点にしていれば飛行機や新幹線へのアクセスがよいので動きやすいですし、大阪内の移動も地下鉄とバスがあるので申し分ないですしね。私たち『世界館』からすると、色んな方に来ていただきやすい町です。今後はジャンルレスにエンターテイメントを見られる場としての活動を持続させていきながら、もっと地域のひとが見に来てくれるような場所にもしていきたいですね」
◆今回取材した施設
「世界館」
住所:大阪府大阪市港区波除6丁目5-15
電話:06-6567-9824
営業時間:イベントによって変動
定休日:ホームページからイベント情報を確認
Instagram:@sekaikan_2004
X:@sekaikan_2004
HP:https://www.theater-sekaikan.com
取材・文 石川宝 写真 貞雄大
「世界館」はJR大阪環状線・弁天町駅、もしくはOsaka Metro中央線・弁天町駅から徒歩10分ほどのところに位置します。本町駅、大阪駅、天王寺駅、なんば駅など、市内の主要駅はもちろん、関西空港や新大阪駅からのアクセスもよいため大阪市の西の玄関口とも言われています。彭さんが教えてくれたように、かつての工場地域から徐々に生活地域へと変化しており、夜遅くまで営業のスーパーやホームセンターもでき始めています。中央改札の整備も予定されており、これからも動きのありそうな地域です。府外への出張が多い方には特におすすめのエリアです。
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