ジャズ喫茶やジャズバーが点在し、「ジャズの街」としての顔を持つ神戸。そんな神戸でジャズ文化が生まれてから、今年2023年で100周年を迎えます。

今回ご紹介するのは、コーヒーとジャズのお店「茶房Voice」。飲食店や雑貨店、アニメグッズ店など多様なお店が入居するセンタープラザ西館で1995年から続いてきました。ジャズ好きな年配の方だけでなく、最近は若者たちも集っているこちら。ジャズ喫茶としてではなく普通の喫茶店として始まったそうですが、いつしかジャズ喫茶としての顔をもつように…。店主の村田大さんに、お話をお聞きしました。兵庫県の物件を探す

※掲載情報は執筆時点のものです。営業時間などが変更になる場合があるため、お出かけ前に公式サイトなどで最新情報をご確認ください。

―もともとは喫茶店として始まったそうですね。

村田さん:「そうなんです。もともと花隈で『ROTA』という喫茶店をやっていたんですね。その後、『Savoy』というカレー屋を三ノ宮でオープンしたのですが、製氷器のあるストックルームを作りたくて、近くのセンタープラザ西館に2軒目の喫茶店を作ろうと、『茶房Voice』をオープンすることにしたんです。当時はレコードからCDへと変わっていった時期だったので、『ROTA』はCDだけにして『茶房Voice』へレコードを移動させることにしました」

賑やかなセンタープラザ西館の中で、趣のある雰囲気が漂う「茶房Voice」

―でもスタートはあくまで、喫茶店として?

村田さん:「そうですね。父は喫茶店がしたくて始めたので、最初はジャズだけでなくポップスなどのレコードもかけていたと思います。でもだんだんと、ジャズのレコードが集まってきちゃったんです(笑)。よくあるのがね、常連さんが『転勤になったからレコードをもらってくれないか?』とか、『整理していてこれはもう聴かんからあげるわ〜』とか。ここやったらちゃんとかけてくれるのがわかってるから、お客さんがね」

レコードを替える、初代店主のお父さま

―なるほど。

村田さん:「そんなわけで、1,000枚やったレコードが2,000枚になり、それが3,000枚になり…今はだいたい8,000枚ぐらいジャズのレコードがあるんちゃうかな」

レコードが並ぶ店内。レコードはバックヤードにもたくさん保管されているそう

―そんなにあるんですね。レコードの集まり具合から、ジャズが好きなお客さんが集っていたことがわかりますね。

村田さん:「でも最近は、普段はジャズを聞かないというような20代ぐらいのお客さんが増えたんです」

―みなさん、何がきっかけで来るようになったんですか?

村田さん:「コロナ禍でも、うちは通常営業をしていたんですね。だからちょうど遊びに行く場所がなくなった若い子たちが居場所を探して、たまたまうちを見つけて。それからずっとおりますね。もしかしたらジャズを聴きにきている人は、今は1%もいないかもしれない(笑)」

深みを感じつつもすっきりとした味わいの「ブレンド珈琲」(600円)

村田さん:「うちも『ジャズを聴け!』というようなやり方はしていないですし、僕はそれが正しいと思っているので。あくまでジャズのレコードがたくさんあって、ジャズが流れている喫茶店という。僕はしゃべるのが好きなんで、お客さんともずっとしゃべってますしね。若い子たちは、それがおもしろいのかもしれない。だって、チェーンのカフェに行っても店員さんは気軽に話しかけてこないでしょう?」

―確かに、そうですね(笑)

村田さん:「僕はジャズの話題だけでなく、いろんなことを話しかけますから(笑)。お悩み相談を受けることもあるし、人を紹介することもよくします。例えばお客さんのおじいちゃんおばあちゃんが何かに困っていたら、『こんな人紹介してあげるわ〜』とか」

―そうやってお客さん同士がつながっていくような場所なんですね。

村田さん:「それが、本来の喫茶店だと思うんですね。喫茶店って、人がたくさん出入りする場所。昔あったおばあちゃんがやってるような喫茶店では、みんなようしゃべって遊んでたじゃない?今はそういう店がほとんどないけど、それが本来のあるべき姿だと思う」

―なるほど。でも、村田さんご自身はジャズがお好きなんですよね?

村田さん:「大好きですね。25年前に店に入ったときは全然ジャズを知らなかったんだけど、お客さんに『お前そんなんも知らんのか』って言われていじめられて(笑)。悔しいから毎日6枚レコードを聴いて、それが年間300日以上続くうちに、大好きになりました」

―ジャズのどんなところがお好きですか?

村田さん:「自分の音楽があるところかな。レコードって1940年代や50年代、60年代頃のものが多いんですが、やっぱり当時は1枚作るにもお金がかかりますよね。だから演奏者も『誰よりもうまい、いいもんを作ってやろう!』とか『俺が最先端のことをしてやる!』という思いがあった。レコードを聴いていると、そういう何かが生まれる瞬間のエネルギーを感じるんです。でもそれを感じられるのは、何度も何度もジャズを聴いて初めてわかる部分もあるし、お客さんに押し付けてしまってはダメだと思っています」

―村田さんは、KOBE MODERN JAZZ CLUBという活動もされていますね。

村田さん:「はい、毎年KOBE MODERN JAZZ CLUBとしてジャズの公演を主催しています。今年で38回目。初めの数回は日本人アーティストを呼んでいましたが、その後はずっと海外アーティストの来日公演を組んでいます」

―毎年チケットがすぐ完売している印象です。以前、イタリア人アーティストのClaudio Vignaliの公演を聴きに行ったことがあるのですが、とても素敵なライブで、チケットが1,000円ということに驚きました。あのようなライブは、普段聴きに行こうと思うと少なくとも6,000〜7,000円はする印象です。

村田さん:「そうですね。実は1,000円でチケットを販売するというのが、テーマの一つでもあるんです」

―というと?

村田さん:「1,000円の価値をどこまであげられるかに、挑戦しています」

―1,000円払って、どれぐらいのことが体験できるか?ということでしょうか。

村田さん:「そうそう。ジャズのライブで、しかも海外アーティストのレベルの高い公演が1,000円って、相当安いです。KOBE MODERN JAZZ CLUBは僕ひとりで活動しているのですが、チラシなどもすべて自分で作るし、協賛の依頼も自分で行うし、アーティストを呼ぶための滞在許可証の申請も自分で行う。すべて、自分で。そうやってコストダウンし、アーティストにお金を使うことで、1,000円でものすごくいい演奏を提供することができ、1,000円の価値を上げることができる。2019年にはALAN BROADBENTを招くこともでき、グラミー賞を受賞したアーティストを呼ぶという一つの夢を叶えることができました。彼はこれまでグラミー賞を2度受賞しているんです」

2022年11月に行われたKOBE MODERN JAZZ CLUB。イタリアからクラウディオ・ヴィニャーリ(Pf)とセレーナ・ザニボーニ(Vo)を呼んで

―すごいですね。今年はどなたがいらっしゃるんですか?

村田さん:「今年はスペインからMarco Mezquida が率いるトリオがやってきます。10月7日(土)に開催しますが、8月頭にチケットは完売しました」

―スペインから!招待するアーティストはどのように選んでいるんですか?

村田さん:「最近はYouTubeを通して知ることが多いですね。ライブ演奏などを見て、これは!と思ったらHPなどを確認し、直接コンタクトをとってみる。その方法で毎年さまざまな国のアーティストを呼んできました。KOBE MODERN JAZZ CLUBの公演だけでなく、その前後で東京や京都などでのライブも企画しています」

すでにチケットは完売となった、今年のKOBE MODERN JAZZ CLUBがこちら

―なぜ、日本のアーティストからシフトして海外のアーティストを呼ぶようになったんですか?

村田さん:「海外アーティスト」は、誰かのコピーではない、自分だけの音楽をやっている方が多いから。今回のMarcoも素晴らしいですよ。だからKOBE MODERN JAZZ CLUBで演奏を聴いて、1,000円ですごいものを聞けた!と満足した人が、ジャズバーなどに行って『これで、1700円!?』って衝撃を受けてくれたらいいな、と思ってます(笑)。いいものを聴いたら、いいか悪いかが自然とわかるようになるでしょう?1,000円で聴いたあの演奏は、実は1万円ぐらいの価値があったんやって何年かして気づいてくれたらいいなあ、と。そしたらお客さんが自分で演奏を判断できるようになって、日本の店もアーティストも改めて考えるようになるし、淘汰されていく。もちろん買いやすい金額であるからこそ、初めて聴いてみようかなというお客さんもいるわけで。神戸はジャズの街と言われますが、やっぱりジャズが日常にあるという人は今は少ない。だからKOBE MODERN JAZZ CLUBでいい演奏を聴いてもらって、ああこれがジャズなんだと感じてもらえたら、それに越したことはないですね」

―その挑戦が、どのようにジャズファンを増やし続けていくのか、今後も楽しみです。

◆今回取材したお店

「茶房Voice」

住所:兵庫県神戸市中央区三宮町2-11 センタープラザ西館2F

電話:078-334-3668

営業時間:11:00〜19:00

定休日:水曜休、毎月最終火曜休

http://www.jazz-voice.biz

今回ご紹介した「茶房Voice」は、JR三ノ宮駅・阪急神戸三宮駅・阪神神戸三宮駅から徒歩約8分。神戸の街の中心地であり、ジャズ喫茶はもちろんさまざまな店や施設が集まるエリアです。中心地でありながら山が望め、自然も近くに感じる街。家賃平均は6.57万円と比較的安価なため、探してみると学生や新社会人でも借りやすい物件に出合えるかもしれません。

ジャズ喫茶を楽しめるお店と聞くと、今まで行ったことがない人にはハードルが高いかもしれませんが、「茶房Voice」はコーヒーやおしゃべりを楽しみながら、ジャズの音色に耳を傾けられる開かれた空間。そんなお店が身近にある三宮で、新生活を始めてみてはいかがでしょうか。

◆本記事の担当者

取材・文:小島知世 写真:沖本明

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更新日: / 公開日:2026.02.27