大阪市の南に位置する阿倍野区は、交通の要として古くから栄えてきました。また、阿倍野区のシンボルであるあべのハルカスやキューズモールなど、大型ショッピングモールも数多くあり、近年の再開発により都市の広がりが顕著なエリアですが、少し離れると下町風情ある街並みが残されているのが特徴です。
今回足を運んだのは手作りドーナツのお店「あたりきしゃりき堂」。阿倍野区の中心から少し離れた昭和町エリアで昔ながらのドーナツを作り続ける久保晶さんに、お店や街のことをお聞きしました。大阪府の物件を探す
昔ながらの手作りドーナツ屋「あたりきしゃりき堂」

——古民家のレトロさが感じられる素敵なお店ですね。こちらでお店をやられてどれくらいなんでしょうか。
久保さん:「2001年にお店を作ったから、もう四半世紀近くになりますね。お母さんが家でおやつに出してくれたようなドーナツを作り続けています」
——ドーナツ屋を始めたきっかけはなんだったのでしょうか。
久保さん:「前にやっていた雑貨の小売の仕事がなかなかうまくいかなくなったんです。それで、前の仕事で使っていた車を使って、お菓子の移動販売を始めたのがドーナツ屋を始めたきっかけですね」

——ドーナツのメニューはどんなものがあるのでしょうか。
久保さん:「プレーンときび砂糖の2種類と、水曜日と金曜日限定で黒胡麻のドーナツを作っています。使う材料は卵、小麦粉、砂糖と、特別変わったものは使わず、昔懐かしい味わいに仕上げています」
——メニューも材料もシンプルですね。お客さんはどんな方が多いですか?
久保さん:「今のドーナツはハードな食感のものが主流だから、ウチみたいな昔ながらのソフトドーナツは珍しいでしょ。お年寄りから若い子までいろいろなお客さんが来てくれますね。多いときは1日に500個以上作るので、夏は暑くて厨房にいるだけでダイエットになりますよ(笑)」

身体に優しく安心できる味を伝えていく

——1日500個も売れるというドーナツは、どんなこだわりで作られているんでしょうか?
久保さん:「使う材料は至って普通なんだけど、食材選びは気を使っています。たとえば、愛媛県産の小麦粉に、鹿児島県産のきび和糖。揚げるときに使うなたね油は、明治18年の創業から変わらない製法で作られているもの。添加物をいっさい使わずに作っているんですよ」
——自然で身体に優しいものを選んでいるんですね。
久保さん:「今はほとんどの食べ物を海外からの輸入に頼っているでしょう。それが不自然なものって訳でもないんだけど、毎日口にしている食べ物について、産地まで気にしている人はなかなかいないと思うんです」

久保さん:「僕が子どものころは国産が当たり前。小麦だってほぼ100%自給率があったんです。店の看板に「おいしいドーナツ」と書いたからには、美味しいものを作りたい。昔ながらの味を作るため、無添加で安心できる食材を選んでいるんですよ」
——小さい子どもからご年配まで、多くの人に愛される理由がわかった気がします。少し気になっていたんですが、お店の前や店内に佐渡島の雑貨が置いてあるのはどうしてでしょうか?
久保さん:「ここのお店でも働いてもらっていた、親しくしている夫婦が佐渡に移住したんです。何度か訪れているうちにとても気に入って、2017年に佐渡にもお店をオープンしました。弟子の店を含めたら佐渡には4店舗。ミスタードーナツより多いんですよ(笑)」

下町風情が感じられる街
——長くこの場所でお店をやられてきましたが、街の様子はいかがでしょうか。
久保さん:「このあたりは戦争でも空襲の被害を受けなかった家が多く残ってて、今も昔ながらの風景がたくさん残った下町風情を感じられるゆっくりとした街。対比するように、あべのハルカスのあたりは再開発が進んでますね」
——開発が進んでいる天王寺駅まで電車かバスで10分ほどの距離ですけど、雰囲気はかなり違いますね。
久保さん:「そうですね。もっと遡ると、店のすぐ横の阿倍王子神社は、もとは仁徳天皇が創建したと言われており、平安時代に熊野詣に訪れる人々で賑わっていた歴史ある神社です」

——歴史とロマンを感じる場所ですね。来た当初に比べると街にどんな変化がありましたか?
久保さん:「最近はマンションがたくさん建って、店前の通り沿いには新しいお店が増えてますね。飲食や販売といろんなお店ができてるけど、どれもすごく人気なお店が多いです。少しずつ街並みは変わっているけど、のんびりとして過ごしやすい街の雰囲気は、今も変わりませんね」
◆今回取材したお店
「あたりきしゃりき堂」
住所:大阪府大阪市阿倍野区阿倍野元町9-7
電話:06-6623-1890
営業時間:12:00〜18:00
定休日:日・月曜休
「あたりきしゃりき堂」の最寄り駅は、Osaka Metro御堂筋線の昭和町駅。天王寺から約2分という近さにもかかわらず、現在も長屋などが残るこの地域は、良き下町の雰囲気が漂い、さまざまな人が暮らしやすそうな地域です。家賃相場は2LDKで10万円以下と比較的安価なので、家族3人暮らしなど、子育て世代にもおすすめです。
休日は「あたりきしゃりき堂」のドーナツを片手に、下町散歩というのも良いかもしれません。昭和町での暮らし、想像以上に豊かそうな気配です。
◆本記事の担当者
取材・文:関戸直弘 写真:沖本明
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