いい街にはいい書店があるというのが、本当かはわからないけれど、いい書店がいい影響を街に与えるのは確かなことでしょう。それは、本はさまざまな知識や知恵を与えてくれるものと同時に、いい書店はそれをうまく人と結びつけてくれているから。このコーナーではそんな大阪の書店とその店から見える界隈の様子をご紹介します。大阪府の物件を探す

西天満の美術書専門店で4年、本を販売するだけでなく、出版や海外への本の出荷など、およそ一般的な書店員でもその期間では体験しないさまざまな経験をした、「Calo Bookshop and Cafe」店主石川あき子さん。

今でこそ本を直接、出版社から仕入れることも珍しくなくなりましたが、約20年前はまだまだ独立系などという言葉もなく、駅前の書店か全国各地にある書店、というとにかくベストセラーばかりが並び、みんなが知らないような本を置いているお店というのは、まだまだ少ない、そのような時代でした。

少し違う書店の世界を目の当たりにした石川さんは、その店が閉店してすぐに、現在の肥後橋の物件を見つけ、「Calo Bookshop and Cafe」(以下、Calo)を肥後橋にオープンさせました。

石川あき子さん:「当時働いていた書店で、多くを学びました。今やっていることにつながる多くのことを学びました。経理も担当していて売り場面積当たりの売上もだいたいわかっていたので、ニッチなアートブックをメインにしても持続できるように店づくりを考えていきました」

「Calo」は、リトルプレスやZINE、作家自身が制作する作品集など、店主の石川さんが得意とする美術書や写真集を中心に、他ではなかなか出会えない本を多数取り扱っています。店内には小さなカフェスペースもあり、窓辺の席からは、大阪市内の名物と言っても過言ではない、街中に走る高速道路の景色を眺めながらの時間も過ごせます。

どこにでもある街中の景色と思うかもしれませんが、高速道路の下にはもともと西横堀川が流れ、筋違橋(すじかい橋)が架かる交通の要だったことを想像すると、この景色も楽しめるものになるのかもしれません。

石川さんがこの店をオープンさせたのは、18年前に遡ります。当時の肥後橋といえば、

石川あき子さん:「小さな会社や事務所が多い静かな街でした。今はたくさんあるコンビニエンスストアもこの辺りにはほとんどなくて、飲食店も今ほど多くはなかったですね。このビルも2階の『The Third Gallery Aya』さんは、同時期に西天満から引っ越してきたのですが、それ以外は普通の会社のオフィスでしたし、今のようにギャラリーが複数はいるようなビルではなかったんです」

そんなところに引っ越してきたのにはもちろん理由があり、

石川あき子さん:「国立国際美術館が、中之島に引っ越してくるというのを物件探しの前から聞いていて、この辺りがいいのではないかと」

自らが取り扱いたい商品のラインアップを考え、美術に興味がある人が集まりそうなエリアを探しオープンさせる、そのもくろみは見事にハマり、Caloの入居するビルは、階下の全フロアがギャラリーになっています。

何もない時代から、変化してきた肥後橋界隈

石川あき子さん:「ここに店をオープンさせた当時は、先ほども話した通り暮らすにはやや不便な街でした。特にスーパーマーケットが全然なくて。ただ、当時からデザイン事務所や設計会社、編集プロダクションなどが多い地域でしたので、クリエイターの方も多く来店していただいています。

それに、本を仕入れるときに、この本はあの人が要りそうだな、とピンポイントでお客さまの顔を思い浮かべながら注文することもあります。あとうちの場合、本を買われる方と喫茶などで来られる方、ギャラリーだけを観に来られる方とけっこう目的がはっきりと分かれています。その中でも、いつも喫茶だけの方が本を買ってくださると、とてもうれしくなります(笑)。

住む環境としていえば、店を開いてしばらくして、自宅もこの近所に引っ越してきました。その頃から考えると、スーパーやコンビニ、クリニック、そしてこだわりの個人店も増えましたし、中之島の美術館は3つになり、展覧会やコンサートが徒歩圏内。暮らしを楽しむ街に変わりましたね」

街を楽しむための図書 記憶する楽しみ

石川あき子さん: 「『月刊ビル』というリトルプレスとそれを制作しているビルマニアカフェ(BMC)という昭和のビル好きが集まるユニットの関連本を紹介したいです。『月刊ビル』の最新号(上写真:一番右)は、靱公園近くにあった印刷関連の会社のビルを紹介しています。ビルマニアカフェの方曰く、取り壊される直前にビルオーナーのご家族から連絡があり、奇跡的に、オーナーのこだわりを詰め込んだ建物を写真に残すことができたそうです。このあたりもどんどんマンションに建て替わっていますが、銀行や保険会社が立ち並ぶ淀屋橋に対して、中小の会社が多い肥後橋らしいエピソードといえるでしょう」

ローカルの情報を丁寧に取材、撮影を続けているからこそ、この情報が舞い込み、このような冊子が出来上がっているわけです。それを想像すると、変わりゆく街をいかにつぶさに見てまわるということが重要なのかが理解されるように思います。

以前にその場所に何が立っていたのかは、新しくなると思い出せないこともしばしばありますが、どんな建物があったのかを記憶して移り変わりを眺めるのも、楽しみのひとつかもしれません。

「Calo」の入居するビルの螺旋階段。特徴的な形でこの写真を撮りにくる人も多い

取り扱うZINEやリトルプレスは、大型書店では出会えないものが多数

美術家・飯川雄大の作品販売も

解説を見て吟味

◆今回取材したお店

「Calo Bookshop and Cafe」

所在地:大阪府大阪市西区江戸堀1-8-24若狭ビル5階

電話:非公開

営業時間:12:00~19:00(土曜は~18:00)

定休日:日・月曜休

https://www.calobookshop.com

「Calo Book and Cafe」のある肥後橋駅には、大阪のキタの中心、梅田からOsaka Metro四つ橋線で1駅。中之島とも近くオフィス街が広がりつつも、南に下れば靱公園もあり、自然環境も豊か。週末には、家族連れが水浴びをしたり、公園で遊んだり憩いの場所として賑わっています。近年、周辺にたくさんの飲食店のほか、ギャラリー、雑貨店なども多くなり、遠方から訪れる人も増えています。

肥後橋駅周辺へ興味を持った方は、ぜひ物件情報を探してみてくださいね。

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◆本記事の担当者

取材・文:松村貴樹  写真:大塚杏子

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公開日: