ZEHとは何？ 特徴と省エネ住宅の基本知識

ZEH（ゼッチ）とは、再生可能エネルギーを活用して消費エネルギーをまかなう住宅のことです。「Net Zero Energy House（ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス）」の頭文字をとった略語であり、具体的には「消費するエネルギーと太陽光発電などで創出するエネルギーの収支をゼロ以下に抑える」ことを可能にした住宅を指します。

 

ここでは、ZEHの主な特徴を3つのポイントに分けて見ていきましょう。

高断熱による快適な空間

ZEHを実現させるには、住宅そのものの冷暖房効率を高め、基本的な電力消費を抑える必要があります。高断熱化については、住まいの快適性を大きく左右するポイントであることから、以前からも「省エネルギー基準」と呼ばれる基準が設けられていました。

 

しかし、「ZEH基準」には従来の基準よりもさらに厳しい要件が設定されているため、高い断熱性能を備えた住宅が実現します。高断熱の住宅では、「室温が安定しやすく快適」「ヒートショックのリスクが軽減される」といったさまざまなメリットが得られます。

大幅な省エネルギー

ZEHには前述した高断熱性能に加えて、家庭内の電力量や稼働状況を管理・確認する「HEMS（Home Energy Management System）」と呼ばれる専用のシステムが導入されます。また、高効率な給湯システムや省電力で稼働する冷暖房、換気システムなども取り入れるため、全体的に省エネ性の高い住環境が実現されるのが特徴です。

 

そのため、従来と同じように生活しているだけでも自然と省エネを実現でき、光熱費の削減につなげられるのが大きなメリットです。

太陽光発電などによる創エネルギー

高い省エネ性と並んで、ZEHのもう一つの特徴といえるのが「創エネ」です。ZEHでは、基本的には太陽光発電などの創エネ設備の設置が必要であり、家庭で利用する電力を自力でまかなうことで、エネルギー収支ゼロを目指すというのが基本的な考え方です。

 

さらに、蓄電池を導入すれば太陽光発電で得た電力をストックできるため、災害時の非常用電力としても利用でき、防災時のメリットも期待できます。

 

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ZEHの主な種類

ZEHは、年間の消費エネルギー量をゼロ以下に抑える住宅を指しますが、省エネ性や創エネ性の基準に応じたいくつかの種類があり、一戸建て住宅の場合は主に以下の5つが挙げられます。

ZEHの種類	省エネ性能/創エネ性能	その他の要件
ZEH（ゼッチ）	・省エネ基準から20％削減 ・「省エネ分＋再エネ分」で省エネ基準の100％削減	・一定以上の強化外皮基準
ZEH＋（ゼッチ　プラス）	・省エネ基準から25％削減 ・「省エネ分＋再エネ分」で省エネ基準の100％削減	・一定以上の強化外皮基準 ・以下のうち2項目をクリア 外皮性能のさらなる強化 HEMSによるシステム制御 電気自動車の充電設備の設置
Nearly ZEH（ニアリー　ゼッチ）	・省エネ基準から20％削減 ・「省エネ分＋再エネ分」で省エネ基準の75％削減	・一定以上の強化外皮基準
Nearly ZEH＋（ニアリー　ゼッチ　プラス）	・省エネ基準から25％削減 ・「省エネ分＋再エネ分」で省エネ基準の75％削減	・一定以上の強化外皮基準 ・以下のうち2項目をクリア 外皮性能のさらなる強化 HEMSによるシステム制御 3．電気自動車の充電設備の設置
ZEN Oriented	・省エネ基準から20％削減	・一定以上の強化外皮基準

ZEH（ゼッチ）

「ZEH」は、一次エネルギー消費量を従来の省エネ基準から「20％以上削減」することと、「省エネによる削減分＋再生可能エネルギー創出分で省エネ基準の一次エネルギー消費量から100％削減」することを実現させた住宅のことです。

ZEH＋（ゼッチ　プラス）

「ZEH＋」はZEHの上位にあたる区分であり、一次エネルギー消費量を従来の省エネ基準から「25％以上削減」することと、「省エネによる削減分＋再生可能エネルギー創出分で省エネ基準の一次エネルギー消費量から100％削減」することを実現させた住宅を指します。さらに、「外皮性能のさらなる強化」「HEMSによる冷暖房、給湯システムの制御」「電気自動車の充電設備の設置」のうち、2項目以上をクリアする必要があります。

 

そのため、ライフスタイルのすべてを通して、大幅な省エネが実現されるのが特徴です。

Nearly ZEH（ニアリー　ゼッチ）

「Nearly ZEH」は、太陽光発電による創エネが不十分なエリア（寒冷地や豪雪地帯、日照率が低い土地など）での住環境を想定した区分です。省エネ基準についてはZEHと同様ですが、創エネを加えた要件は「省エネ基準の一次エネルギー消費量から75％削減」とやや緩和されています。

Nearly ZEH＋（ニアリー　ゼッチ　プラス）

「Nearly ZEH＋」は、Nearly ZEHと同じように創エネが不十分なエリアを想定した区分ですが、「省エネ基準から25％以上削減」と、より高い省エネ性能を要件としている点に違いがあります。また、ZEH＋と同様に「外皮性能のさらなる強化」「HEMSによる冷暖房、給湯システムの制御」「電気自動車の充電設備の設置」のうち、2項目以上をクリアする必要があります。

ZEH Oriented（ゼッチ　オリエンテッド）

「ZEH Oriented」とは、主に都心部の狭小住宅などで創エネが不十分な場合を想定した区分です。創エネに関する要件は設けられておらず、基準以上の省エネ性能をクリアすれば認められるのが特徴です。

 ZEH補助金の種類と利用時の注意点｜最大125万円の支援を活用

ZEHを実現するには、高い住宅性能と優れた設備が必要となるため、建築費が高くなりやすいのが難点です。そこで、国が推進のために設けているのがZEHに関連した補助金制度です。

 

ここでは、ZEHを建てる際に活用できる補助金の種類と、利用時の注意点について解説します。

ZEH関連の補助金制度

■ZEH：戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス（ZEH）化等支援事業

ZEH支援事業とは、「ZEH」、「Nearly ZEH」「ZEH Oriented」を対象とした補助金のことです。

補助金額	55万円/戸
追加対象設備への補助金額	・蓄電システム：上限20万円 ・直交集成板（CLT）：定額90万円 ・地中熱ヒートポンプ：定額90万円 ・PVTシステム：65万円、80万円、90万円 ・液体集熱式太陽熱利用システム：12万円、15万円
適用条件	1．ZEHの定義を満たしていること 2．SIIに登録されているZEHビルダー/プランナーが関与（建築、設計又は販売）する住宅であること

 

■ZEH＋：戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス（ZEH）化等支援事業

「ZEH＋」、「Nearly ZEH＋」を対象とした補助金制度であり、ZEHよりも手厚いサポートを受けられるのが特徴です。

補助金額	100万～125万円/戸
追加対象設備への補助金額	・蓄電システム：上限20万円 ・直交集成板（CLT）：定額90万円 ・地中熱ヒートポンプ：定額90万円 ・PVTシステム：65万円、80万円、90万円 ・液体集熱式太陽熱利用システム：12万円、15万円
適用条件	1．「ZEH＋」「Nearly ZEH＋」の定義を満たしていること 2．SIIに登録されているZEHビルダー/プランナーが関与（建築、設計又は販売）する住宅であること

 

■子育てエコホーム支援事業

子育て世帯あるいは若者夫婦世帯が、ZEH水準の住宅を建てる際に利用できる補助金制度です。

補助金額	80万円/戸 ※市街化調整区域、土砂災害警戒区域、浸水想定区域では40万円/戸
適用条件	長期優良住宅、ZEH水準住宅のいずれかに該当すること 所有者自ら居住すること 住戸の床面積が50平米以上240平米以下であること エコホーム支援事業者に依頼すること　など

補助金利用時の注意点

補助金はあらかじめ登録されたZEHビルダーや支援事業者を利用して建てなければ利用することができません。そのため、施工を依頼する段階で、補助金を利用できる会社を選ぶことが重要です。

 

また、ZEH関連の補助金は「併用不可」である点にも注意が必要です。たとえば、子育て世帯であればZEHあるいはZEH＋と、子育てエコホーム支援事業のうちから、より補助が手厚いものを選ぶ必要があります。

 

この場合、基本的には「ZEH＋に該当する住宅を建てるならZEH＋支援事業を選ぶ」「ZEH相当なら追加でそろえる設備の有無でZEH支援事業と子育てエコホームのどちらがよいか判断する」といった考え方が合理的といえるでしょう。

 

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ZEHに対応したハウスメーカーを選ぶときのポイント

補助事業に対応したZEHビルダー/プランナーは登録制となっていますが、2024年度の登録事業者は全国で約6,000件あります。そのなかから、自分に合った工務店・ハウスメーカーを選ぶにはどのような観点を意識すべきなのでしょうか。

 

ここでは、基本となる3つの視点をご紹介します。

ZEH率のチェック

「ZEH率」とは、その建築会社が提供した新築一戸建て住宅実績に対するZEHの割合を示したものです。ZEH率が高いほど、実績が豊富で高い技術を備えている傾向があるため、一つの判断基準になります。

住宅性能の比較

住宅性能はZEHを実現するうえでも重要ですが、快適な生活を送るためになくてはならない要素でもあります。特に断熱性能、省エネ性能、創エネ性能はZEHに求められる最重要項目でもあるため、各建築会社がどのような技術で実現させているのかも詳しく調べておくとよいでしょう。

費用とサポート体制

費用面から見ると、ZEHには「省エネによる光熱費の削減」「補助金による負担軽減」というメリットと、「建築コストが高くなる」というデメリットの両面があります。また、太陽光発電や蓄電池、高性能な住宅設備などは経年劣化や故障リスクもあるため、定期点検・補修のコストも頭に入れておかなければなりません。

 

そのため、各建築会社がどのようなアフターサポートを行っているのか、保証やメンテナンス支援の仕組みも含めてチェックしておくことが大切です。ハウスメーカーを比較するときには、建築コストだけでなく、長期的な維持費や光熱費削減効果も含めてトータルコストを検討しましょう。

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LIFULL HOME’Sの「住まいの窓口」とは、家づくりを検討している方を対象に、無料で資金計画から工務店・ハウスメーカー選びまでをサポートするサービスです。アドバイザーが中立の立場で、資金計画から住宅の条件整理などを幅広くサポートしています。希望条件に合う工務店・ハウスメーカーを紹介してもらうこともできます。

すべてのサービスが無料で利用できるので、理想の建築会社を探すにあたって活用を検討してはいかがでしょうか。

 

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記事のおさらい

最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

 

Q：ZEHとは

A：「Net Zero Energy House（ネット・ゼロエネルギーハウス）」の頭文字をとった略語であり、「消費エネルギーと創出するエネルギーの収支をゼロ以下に抑える」ことを可能にした住宅を指します。主な特徴として「高断熱による快適な住空間」「太陽光発電などによる創エネ」「高度な省エネ性能」が挙げられます。

 

Q：ZEHの種類は？

A：一戸建てとマンションのそれぞれに、ZEHに関するさまざまな区分が設けられています。一戸建てでは基本となる「ZEH」のほかに、より高い基準を満たした「ZEH＋」や寒冷地などを想定した「Nearly ZEH」「Nearly ZEH＋」、都心部の狭小住宅を想定した「ZEH Oriented」などがあります。

 

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