注文住宅は仕様やグレード、広さなどによって費用に大きな幅が生まれます。そのため、いきなり具体的な住宅プランを考え始めるよりも、現実的な予算を立ててから細かなポイントを考えていく方がスムーズに進められます。
今回は「予算3,500万円」のケースを想定して、実際にどのような注文住宅を建てられるのかを解説します。
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注文住宅の予算3,500万円は高い? それとも安い?

まずは、予算3,500万円がどのくらいの水準に当たるのか、公的な統計データと比較して見ていきましょう。
建築費用としては平均的
国土交通省の2021年度「住宅市場動向調査報告書」によれば、注文住宅の住宅建築資金は「3,459万円」となっています。これは、「土地の購入を含めない」建築費の平均値です。
つまり、相続などですでに土地を持っている場合であれば、予算3,500万円は平均的な水準といえます。
土地の購入代も含めると水準よりかなり低い
一方、同調査データによれば、土地の購入も含めた場合の平均所要資金は「5,112万円」とされています。
そのため、土地を取得していない段階から注文住宅の計画を立てる場合には、予算3,500万円は水準よりかなり低いラインといえます。
建てたいエリアにもよるものの、土地購入代を含めて考えるのであれば、さまざまな工夫が求められる予算と判断できます。
“建築費の予算3,500万円”でどのような家が建てられる?

ここでは、すでに土地を取得しているケース(建築費に3,500万円を使えるケース)を想定して、どのような家を建てられるのかを見ていきましょう。
建築費として3,500万円の予算を使えるのであれば、以下のようにおおむね希望する一戸建てを実現できると考えられます。
- 延床面積120平米程度を確保できる
- ある程度特殊な家の形状も実現できる
- 外構にも予算を使える
- 設備や建材にもこだわれる
- アフターサービスに優れたハウスメーカーに依頼することも可能
一般的に、家の形状は正方形や長方形といったシンプルな方が費用は安く収まります。しかし、都心部などの住宅密集地では、そもそも土地の形状が不整形である場合も多いです。
建築費に3,500万円の予算を割けるのであれば、そうした土地にも問題なく理想の住宅を建てられるでしょう。また、費用配分によっては、床暖房や水回りのグレードアップなども可能です。
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“土地代を含めた予算3,500万円”でどのような家が建てられる?

土地代を含めて予算3,500万円以内に収めるためには、土地選びや建築プランなどのさまざまな部分に工夫が求められます。
ここでは、建築費にどのくらいの費用をかけられるのかも含めて、実現可能な住宅の特徴を見ていきましょう。
土地の購入費は全国平均で1,500万円程度
住宅金融支援機構がまとめている2021年度「フラット35利用者調査」によれば、土地を購入して注文住宅を建てたときの所要資金のうち、土地取得費にかかっているコストは全国平均で「1,444.9万円」となっています。
ここから考えると、土地の購入費用も含めて予算3,500万円とした場合、建築費には2,000万円ほどかけられると計算できます。
建築費2,000万円の場合
建築費に予算2,000万円をかけられる場合、すべての希望をかなえるというのは難しい面がありますが、特定の部分にこだわりを反映させることは可能です。
- 延床面積110~120平米程度を確保できる
- 次のうちいくつかの希望を実現できる
・外壁の仕上げにこだわる
・水回りの設備にこだわる
・バルコニーや窓の数を増やせる
・部分的にこだわりのある建材を使用できる
条件の優先順位を明確にしておけば、予算2,000万円であっても満足のいく家づくりは十分に可能でしょう。
首都圏に土地を買う場合
首都圏で家を建てる場合、土地の価格は全国平均と比べて大きく上昇するので注意が必要です。たとえば、先ほどの「フラット35利用者調査」によれば、首都圏の平均土地取得費は「2,220.9万円」となっています。
そのため、総予算が3,500万円であれば、かけられる建築費は約1,300万円にまで下がります。建築費が1,000万円台前半となると、一般的には「ローコスト住宅」と呼ばれる注文住宅が有力な選択肢となります。
ここからは、ローコスト住宅の特徴も踏まえながら、建築コストを抑えるコツについて見ていきましょう。
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建築費を抑えるために知っておきたいコツ

ローコスト住宅とは
ローコスト住宅とは、坪単価30万~50万円台程度、広さ35坪程度で、1,000万円台の建築費で建てられる住宅のことです。
ローコスト住宅では、部材の大量一括購入や合理的な施工システムの導入などにより、なるべく性能を保ったままコストを削る仕組みがとられています。
建築費を抑えながらも、安定した品質の住宅に住めるのが大きなメリットである一方、建材や工法を画一化する必要があるため、素材や設備、デザインなどの柔軟性は低いのがデメリットです。
立地にこだわって土地を探そうとすると、どうしても土地購入費が割高になってしまうため、予算に合わせてローコスト住宅を検討してみるのもいいでしょう。
コストダウンする方法
注文住宅はプランの選択肢が広い分、コストダウンする方法にもさまざまなパターンがあります。
ここでは、一例としていくつかのコツを紹介します。
大規模なもの(建物全体に関わるもの)
- 家の形状をシンプルにする
- 総二階建てにする
- 延床面積を小さくする
- 外観の凹凸を少なめにする
- 水回りの配置を1つにまとめる
- 屋根面積を少なくする
小規模なもの(部分的な工夫で実現できるもの)
- 屋根の形状をシンプルにする
- 窓の数を減らす、サイズを小さくする
- 収納スペースをまとめる
- バルコニーの数を減らす、サイズを小さくする
- 設備のグレードを下げる
- 不要な設備を削減する
大規模なものについては、間取り全体に影響を与えるため、プラン設計の段階から意識しておく必要があります。
一方、小規模なものであれば、プランの途中からでも見直せる場合があるので、施工会社に相談してみるといいでしょう。
いずれにしても、予算とプランのすり合わせを行うときには、かなえたい条件の優先順位を決めることが大切です。
妥協しない方がいいポイント
安全性や快適性に関わる次のポイントは、費用を優先的に割くことが大切です。
ポイント
- 耐震性
- 耐火性
- セキュリティ
- 断熱性
- 気密性
- 外構
これらは安全で快適な住まいを実現するために重要なだけでなく、長く住まいの寿命を保つためにも必要となります。コストダウンを考える場面であっても、上記のポイントは重視しましょう。
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住宅ローン3,500万円の返済シミュレーションと年収の目安はどのくらい?

最後に、3,500万円の住宅ローンを借りる場合に、具体的な返済プランや必要な年収がどのくらいになるのかをシミュレーションしてみましょう。
今回はLIFULL HOME’Sの「住宅ローンシミュレーター」を使い、以下の条件で計算を行います。
条件
- 借入額:3,500万円
- 返済期間:35年
- 金利条件:全期間固定金利1.5%
- 頭金:頭金なし、1割(350万円)、2割(700万円)の3パターンで計算
なお、必要な年収の目安については、一般的に無理がない返済負担率とされる「25%」で計算します。たとえば、毎月返済額が10万円なら、必要な年収は「10万円×12ヶ月÷25%=480万円」となります。
上記の条件でシミュレーションすると、結果は次の表のようになりました。
| 毎月返済額 | 総返済額 | 必要年収の目安 |
|---|---|---|---|
頭金なし | 10万7,165円 | 4,500万9,113円 | 約514万円 |
頭金1割(350万円) | 9万6,448円 | 4,050万8,201円 | 約463万円 |
頭金2割(700万円) | 8万5,732円 | 3,600万7,290円 | 約412万円 |
3,500万円の住宅ローンを借りる場合、頭金なしのフルローンでは少なくとも500万円以上の年収が必要であることが分かりました。
ただし、頭金や金利などの諸条件によって結果は大きく異なるため、自身のデータを基にシミュレーションしてみてください。
記事のおさらい
注文住宅の予算3,500万円はどのくらいの水準?
建築費のみであれば、全国的に見て平均水準といえます。一方、土地の購入費用を含めて考えると、平均よりかなり低い水準となるので、プランにはさまざまな工夫が求められます。
建築費3,500万円ならどんな家が建てられる?
基本的な希望は、おおむねかなえることができるでしょう。予算配分によっては、外構や外観にこだわったり、床暖房やグレードの高い水回り設備などを取り入れたりすることも可能です。
3,500万円の住宅ローンを借りられる年収は?
諸条件によっても異なりますが、フルローンで返済期間を35年に設定した場合は、少なくとも500万円以上の年収が必要となります。返済期間や金利プラン、頭金によっても結果は異なるので、実情に合わせてシミュレーションしてみましょう。
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