平屋には優れたデザイン性を持つものも多く、デザインや外観にこだわりたいというニーズにもマッチした選択肢といえます。
平屋の外観を大きく左右するポイントのひとつとして「屋根」が挙げられます。屋根には、さまざまな種類があり、どのタイプを選ぶかによって機能にも大きな違いが生まれます。
今回は平屋に合う屋根のタイプを紹介したうえで、選び方のポイントを具体的に解説します。
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平屋でよく使われる屋根の形状は5種類
まずは、どのような屋根があるのか、形状から詳しく見ていきましょう。ここでは平屋に用いられることが多い、5種類の屋根について特徴と併せて紹介します。
1.片流れ屋根

片流れ屋根とは、1枚の大きな屋根が片側に傾くように設置されたものを指します。文字どおり、雨水などが片側に流れていくように設計されているため、雨漏りしにくいのが特徴です。
また、一枚屋根のシンプルな構造なので建築コストも安く、メンテナンスもしやすいのがメリットです。さらに、屋根の方角を南向きにすれば、効率的に太陽光パネルを配置して、安定した発電量を得やすいのも魅力とされています。
一方、特定の方向のみに雨水が集中するため、豪雨に備えて雨どいを大きく丈夫なものにしたり、隣家へ迷惑がかからないように注意したりしなければなりません。
2.切妻屋根

切妻(きりづま)屋根は、いわゆる「三角屋根」のことであり、住宅で広く用いられているスタンダードなタイプです。広く普及していることもあり、効率的な施工が行えるため、片流れと同じように設置コストが安いのが特徴です。
また、太陽光パネルの設置がしやすい点や、ほとんどの屋根材を無理なく採用できる点も切妻屋根のメリットといえます。換気用の小窓も設けやすいので、小屋裏部屋(ロフト)を設置しやすいのもひとつの特徴です。
一方、外壁4面のうち2面は軒の出(屋根の軒が出ている部分)がないため、日当たりや雨風の影響を強く受けてしまいます。そのため、切妻の場合は東西に屋根を向け、日照の影響を均等に保つのが理想的とされています。
3.寄棟屋根

寄棟(よせむね)屋根は切妻に少し形状が似ていますが、面をさらに2つ加えて、合計4つの屋根面になるのが特徴です。
切妻と同じように広く採用されているスタンダードな形状であり、四方の屋根が棟(屋根の頂点)に集まることから、寄棟という名称がついています。
4つの屋根面で支えるため、切妻よりも頑丈な構造となり、風雨に強いのが大きな特徴です。また、どの面からでも軒の出が生まれるため、外壁を強い日差しや雨風から守れるのもメリットです。
一方、切妻と比べて天井付近に換気用の窓をつけるのは難しいため、小屋裏部屋を設ける際には室温と湿度の管理が必要となります。
4.招き屋根(差し掛け屋根)

招き屋根は、屋根の左右で高さや勾配に差をつけ、段違いに設置されるのが特徴です。
屋根の一方が長く、もう一方が短い独特な形状が招き猫の前足のように見えることから、招き屋根という名称がつけられたとされています。
段違いの屋根によって個性的な外観を演出しやすいのが魅力であり、それでいて形状はシンプルなので、コストは安価で抑えやすいです。
また、独特の形状は優れた耐風性と、屋根裏に大きなスペースを確保できるといったメリットも生み出します。
一方、短い方の屋根と外壁が設置するポイントには直接雨があたるため、しっかり雨仕舞(あまじまい:家の中に水が入らないようにすること)を行って、雨漏りを防ぐ必要があります。
5.陸屋根

陸(ろく)屋根はフラットな形状をしており、屋根に勾配がなく平らな屋上ができるのが特徴です。
広い屋上を確保できる点と、箱形のスタイリッシュな外観が魅力であり、平屋で取り入れられる事例も少なくありません。
ただし、屋根に傾斜がないため排水性は悪く、雨水の処理には十分に注意した設計が求められます。
また、換気口を設置しにくいことから、屋根の熱がダイレクトに室内へ伝わりやすいため、断熱性や遮熱性も向上させる必要があります。
屋根の素材は3種類
屋根は形状だけでなく素材選びによっても性質が異なります。ここでは、屋根に用いられることが多い3種類の素材について、特徴を見ていきましょう。
和瓦(日本瓦)

屋根の素材といえば、真っ先に思い浮かぶのが瓦ではないでしょうか。粘土を焼き上げてつくる瓦は耐久性が高く、長期にわたって雨風の影響をシャットアウトできるのが特徴です。
また、釉薬(ゆうやく)を用いたものは防水性にも優れ、一度施工をすれば塗り替えの必要性はほとんどありません。厚さも十分なため、断熱性や遮音性も高く、屋根材に適した強みをいくつも備えています。
ただし、瓦自体に相当の重量があるため、地盤や建物にかかる荷重を十分に想定した設計が必要です。また、瓦同士の接合を適切に行う必要があり、施工が職人の腕に左右されてしまうのも注意点といえます。
スレート(コロニアル・カラーベスト)

天然スレートは、粘板岩(ねんばんがん)を板状に加工した青黒色の素材であり、独特の模様をしているのが特徴です。
自然素材を用いることから価格が高く、いわゆる高級建材として分類されるため、一般的な住宅建築においてはあまり普及していません。
一方、セメントと繊維質を混ぜた化粧スレートは、コロニアルやカラーベストとも呼ばれ、住宅用の屋根材として広く普及しています。
大きなメリットは「重量が軽い」「価格が安い」「デザインやカラーリングの自由度が高い」といった点にあり、柔軟な施工が可能なのが魅力です。
一方、耐久性や防水性は和瓦に比べると劣る面があり、20~30年くらいで交換が必要となるケースも多いです。
ガルバリウム鋼板

ガルバリウム鋼板(こうはん)とは、ガルバリウムでメッキ加工を施した鋼板(鉄)のことです。
ガルバリウムは亜鉛にアルミ、シリコンを組み合わせた合金であり、さびにくく耐久性・耐熱性にも優れているのが特徴です。
「重量が軽い」「デザインやカラーリングが豊富」といった点はスレート材とも類似していますが、より長持ちするのがメリットであり、30~50年の品質保証が行われていることもあります。
一方、金属製のため、飛来物による衝撃などで表面にキズが生まれやすいのが欠点とされています。また、金属という性質上、海沿いの土地などでは塩害による影響を強く受けてしまう面もあります。
まとめ:屋根材3種類の特徴
屋根材について、それぞれの特徴を簡単にまとめたので、参考にしてみてください。
素材 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
和瓦(日本瓦) | ・耐久性、耐水性が高い ・長持ちする ・断熱性、遮音性に優れる | ・重量があるため、地盤や建物に負担がかかる ・施工には高い技術が必要 |
スレート(コロニアル・カラーベスト) | ・軽い ・施工費用が安い ・デザイン性が高い | ・耐久性が低い ・定期的なメンテナンスが必要 |
ガルバリウム鋼板 | ・耐久性、耐熱性に優れる ・軽い ・デザイン性が高い | ・表面が傷つきやすい ・塩害による影響を受けやすい |
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洋風モダンな平屋に合う屋根の形状は?

洋風モダンな平屋には、シンプルですっきりとした外観の屋根が相性がいいとされています。
具体的には、以下のタイプの形状が人気です。
- 片流れ屋根
- 切妻屋根
- 寄棟屋根
- 陸屋根
片流れ屋根や陸屋根は、余計な装飾がないシンプルな外観に向いたタイプであり、全体的にスッキリとした印象に仕上がるのが特徴です。
陸屋根の場合、四角いボックスの形状を実現することもできるので、コストを抑えつつ一風変わった平屋を実現したいケースなどには向いています。
また、一般的な住宅でも採用されることが多い切妻屋根や寄棟屋根は、あえて屋根部分の主張を抑えて、周囲の景観に自然と溶け込むような仕上がりになるのが魅力です。
和風な平屋に合う屋根の形状は?

和風な平屋には、やや凝った装飾のある屋根も合います。具体的には、以下のようなタイプとの相性がいいとされています。
- 切妻屋根
- 寄棟屋根
- 招き屋根
- 入母屋屋根
- 越屋根
切妻屋根や寄棟屋根は、住宅の和洋を問わず採用されるケースが多く、実際に和風建築との相性もピッタリです。
いずれも広く普及している形状ではありますが、素材に和瓦をセレクトすることで、落ち着きと趣のある和風の外観デザインを実現できるのが特徴です。
また、屋根の左右で長さや勾配を変化させた招き屋根も、和瓦との相性がいいため、和風の平屋に採用されるケースが多い形状といえます。
コストに余裕があり、より高級感のある外観デザインを実現したい場合は、入母屋(いりもや)屋根や越(こし)屋根も魅力的な選択肢です。
入母屋屋根とは、切妻と寄棟を組み合わせたつくりであり、重厚な見た目と高い耐久性・通気性を誇るのが特徴です。
凝った装飾が施されることも多く、施工には高い技術力を要するため、現在では一部の高級和風住宅に用いられるケースがほとんどです。
越屋根は、切妻などの屋根の上に、換気や採光を目的とした屋根がもう一段上乗せされた形状を指します。通常よりも高い窓から風や日差しを取り込めるため、平屋との相性にも優れたタイプの屋根です。
ただ、入母屋と同じように複雑な形状をしているため、施工には高いコストがかかるのが難点です。
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地域・気候別の屋根選びのポイント

快適な住環境を手に入れるためには、住みたい地域の特性や気候に合わせて屋根選びを行うことも大切です。最後に、屋根選びのポイントを地域別に見ていきましょう。
豪雪地域は傾斜のある屋根がベスト
豪雪地域では、屋根の積雪によって建物や地盤に大きな負荷がかかってしまうのが課題となります。
そのため、屋根に雪がたまってしまわないように「片流れ屋根」や「切妻屋根」といった傾斜の大きな屋根を採用することが多いです。
また、素材については雪が滑りやすくなるガルバリウム鋼板が適しているといえます。そのうえで、落雪による影響が生まれないよう、隣家との間に雪止めを設置したり、傾斜の方向を工夫したりすることが大切です。
猛暑地域は遮熱と換気性能を意識する
猛暑地域での家づくりでは、十分な断熱・遮熱と換気性能が重要となります。そのため、屋根と天井の間に換気スペースを設けられるよう、十分な傾斜をつけた「切妻屋根」や「招き屋根」が適しているといえます。
素材については、熱伝導率の高い金属製のものより、断熱性の高い和瓦が向いています。
台風の影響を受けやすい地域は屋根の傾斜を抑える
台風の被害を受けやすい地域では、傾斜が出やすい片流れ屋根や招き屋根を採用するよりも、切妻屋根や寄棟屋根を採用したうえで、勾配を抑えた設計を意識することが大切です。
また、素材については水を弾きやすいガルバリウム鋼板などが効果的とされています。
まとめ

- 平屋に適した屋根には大きく分けて5つの種類がある
- 切妻屋根や寄棟屋根は汎用性が高く、一般的にも広く普及している
- 洋風モダンな平屋ならシンプルな片流れ屋根や陸屋根も向いている
- 和風住宅では招き屋根や入母屋屋根、越屋根が向いている
- 素材の種類と特徴も把握して選ぶことが大切
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更新日: / 公開日:2022.11.21










