注文住宅は自由度が高く、豊富な選択肢から理想に合ったものをセレクトできる点が大きな魅力です。
しかし、さまざまな希望を反映させようとするあまり、当初の予算をオーバーしてしまうケースも少なくありません。
今回は家づくりで予算オーバーしてしまったときの対処法として、「間取り・構造」「設備・内装」「収納・動線」の3つの観点から具体的なポイントを紹介します。
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まずは難易度を確かめよう! 変更が簡単なもの・難しいもの

予算オーバーの対処法を考えるうえでは、変更内容ごとに難易度を把握しておくことが大切です。
ここではまず、変更が比較的に簡単なものと難しいものに分けて見ていきましょう。
設計中の変更が比較的に簡単なもの
後からでも変更しやすいものとしては、以下のような項目が挙げられます。
- 設備機器の種類・グレードの変更
- 室内フローリングの種類
- 壁紙のタイプ(厚みがそれほど変わらない場合)
これらの項目は、どれもそれほど大きく全体に影響を与えるわけではないため、判断が遅くなっても問題はないことが多いです。
たとえば、「キッチンを標準仕様に変更する」「フローリングの素材を変える」といった方法であれば、後からでも比較的に変更がしやすいといえます。
後からの変更が比較的に難しいもの
後から変更ができないものとしては、以下のような項目が挙げられます。
- 間取りや広さの変更
- 部屋数の変更
- 建物の形状、配置の変更
- 水回りの配置変更、階数変更(配管の変更)
これらの項目については、プラン全体や工期に影響を与えるポイントとなるため、見積もり段階で判断する必要があります。
水回りの配置は見落としがちな項目である一方で、変更には配管の大規模な移動もセットとなるので、早い段階から慎重に検討しておくことが大切です。
<間取り・構造>コストダウンの方法と効果

間取り・構造に関するポイントは、前述のように後からの変更が難しいため、コストダウンは早めに決断する必要があります。
ここでは、主なコストダウンの方法について見ていきましょう。
総二階にする
総二階とは、1階と2階の面積や形状を統一する建て方のことです。基礎や柱などの構造部と屋根の工事が最小限で済むため、大幅なコストダウンにつながるのが特徴です。
外壁の凹凸を減らす
外壁の凹凸を減らす方法も、施工面積が少なくなる分、コストカットの効果が大きいといえます。
総二階の場合は、基本的に外壁も凹凸の少ないプランがセットとなり、施工面積や条件にもよるものの、50万円近くのコストダウンが可能となる場合もあります。
屋根をシンプルな形状にする

屋根には“寄棟(よせむね)”や“切妻(きりづま)”などのさまざまな種類があり、それぞれ形には大きな違いが生まれます。一般的に、棟数の多い寄棟よりも、シンプルな切妻のほうがコストは安く済みます。
また、屋根に傾斜を設けて一面にまとめる“片流れ”であれば、さらにコストダウンが可能です。ただ、片流れの場合は、屋根からの降雪が一部に集中してしまうため、雪国などでは施工に注意が必要な形状でもあります。
延床面積を少なくする
コストダウンのもっともシンプルな方法ともいえるのが、延床面積の縮小です。当然ながら、施工に必要な建材や工期が削減できるため、予算も大幅に抑えることができます。
間仕切りを減らしてシンプルな間取りにする
延床面積をそのままにしたい場合は、間仕切りを減らして、シンプルな間取りプランにするのもひとつの方法です。
間仕切り壁は下地材だけでなく、両面仕上げのコストもかかるため、それなりにコストダウンの効果が期待できます。
水回りの配置を集約させる
水回り設備の距離が離れていると、その分だけ配管を延ばす必要があるため、コストがかかりやすくなります。
そのため、予算オーバーしているときには、水回りの配置を近づけたり、1ヶ所に集約させたりするのも効果的です。
和室をつくらない
和室は洋室に比べて造作が多く、なかには特殊な建材を必要とする箇所もあります。そのため、和室をシンプルな洋室に変えるだけで、予算オーバーが解消されるケースも少なくありません。
注文住宅を探す<設備・内装>コストダウンの方法と効果

設備や内装については、後からの変更が利きやすい箇所も多いため、予算の細かな調整を行う際に目を向けてみるといいでしょう。
窓の配置を工夫する
窓の数を減らしたり、サイズを縮小したりすることでもコストダウンが可能となります。
ただ、窓は日当たりや通風といった快適性に大きな影響を与えるポイントでもあるため、変更するときには効果的な配置とセットで考えることが大切です。
具体的には、西日が当たる部分は窓を減らす、北側は換気用にとどめるなどの選択肢があります。
バルコニーの数を減らす
バルコニーは施工時に補強が必要な部分でもあるため、必要以上に数を設けるとコストを圧迫してしまう要因になります。
予算オーバーしてしまうときには、数を減らす、あるいはサイズを縮小するといった方法にも目を向けてみましょう。
設備のグレードを慎重に検討する
水回りや暖房設備などにおいて、ハイグレードな機器を導入している場合は、標準仕様のものに戻すだけでコストダウンができます。
設備の判断については、使用頻度や具体的な利便性をしっかりと見極め、家族で話し合いながら優先順位を決めておくのがコツです。
トイレの数を減らす
トイレを複数設けるプランであった場合には、数を減らすことも視野に入れてみましょう。
ただ、後から増設するのに比べれば、新築時に設けたほうが費用は大幅に安くなるため、将来的な家族構成やライフプランの変化にも十分に目を向けて検討することが大切です。
エアコンや照明は自分で取り付ける
エアコンや照明器具の取り付けは専門家に依頼せず、引き渡し後に自分で行うのもひとつの方法です。
特に、照明器具は自分で好みのものを用意したいと考える人も多く、後から設置するケースは決してめずらしくありません。
費用としてはそれほど大きな差額にはなりませんが、すでに持っているものを使いたい場合などでは有効な方法となります。
水回りや壁の仕上げ材を統一する
基本的に、建材はできるだけ同じものを使用したほうがコストを抑えられます。仕上げ材を統一すれば、一括で仕入れが行えるため、その分だけ費用が浮くのです。
また、メーカーの規格品なら、さらに安く使うことができます。特にこだわりがなければ、内装は既製品で統一して、ほかのところに費用を割り当てるのもひとつの方法です。
<収納・動線>コストダウンの方法と効果

収納や動線に関する項目は、後からの変更がしやすいものと、設計段階での考慮が必要なものの2種類に分かれます。
ここでは、コストダウンの具体的な方法を、変更の難易度と併せて見ていきましょう。
収納場所をまとめる
利便性だけを考えれば、居室ごとに収納スペースを設けたいところですが、数が多くなればコストを圧迫する原因にもなります。
広めのウォークインクローゼットを設けるなどして、収納場所を1ヶ所に集約すれば、費用を大幅に節約することが可能です。
ただ、間取りの変更と同様に後からの調整が難しい場合も多いため、できるだけ早い段階での検討が必要となります。
パントリーに扉を設けない
収納の役割によっては、扉を設けなくても問題ない部分もあります。たとえば、出入りが多いパントリーなどは、扉を省いたほうがかえって使いやすくなることもあるのです。
パントリーはキッチンの近くに設けることが多いため、扉の省略によって省スペース化できれば、収納スペースを増やせる点もメリットとなります。
この方法であれば、プランが固まりつつある段階でも取り入れることが可能です。
キッチンの吊り戸棚を省いて棚を造作する
カウンターキッチンなどでは、吊り戸棚を省略してコストダウンを狙うこともできます。ただ、キッチンまわりは少しでも収納スペースが欲しい部分でもあるため、後から棚を造作するなどの工夫も大切です。
この方法も、ある程度プランが固まってから取り入れることができるため、予算の調整を行う選択肢として意識するといいでしょう。
階段をリビングに設ける
特にこだわりがない場合は、階段を仕切らず、リビング内に設けるのもひとつの方法です。
出入り口の建具を削れるだけでなく、階段用のスペースも省略できるため、延床面積を減らすことにもつながる点が大きなメリットとなります。
ただ、大がかりな設計の調整が必要となるため、後からの変更は比較的難しいといえます。
注文住宅を探す安易なコストダウンを避けるべきポイント

ここまでコストダウンのさまざまな方法を紹介してきましたが、なかには安易なコストダウンを避けるべきポイントもあります。
最後に、コストダウンを慎重に検討すべきポイントをいくつか見ておきましょう。
外構工事
フェンスや門扉などの外構工事は、建築予算のなかでも大きな割合を占める項目です。
しかし、プライバシーを確保したり、防犯性を高めたりするためになくてはならないポイントでもあるため、安易なコストダウンはしないほうが無難だといえます。
特に角地や交通量の多い道に面した土地では、車の衝突事故から建物を守る役目も果たします。こうした立地では、外構にも優先的にコストを割くことが大切です。
耐震性・断熱性
耐震性や断熱性は、住まいの安全や快適さに関わる重要な項目となります。長く快適に居住できる家づくりには欠かすことができないポイントとなるため、優先度は高いといえるのです。
また、高断熱・高気密住宅は冷暖房効率が高くなるため、入居後の光熱費が節約できるといったメリットもあります。
セキュリティ
セキュリティに関するポイントとしては、外構のほかに「割れにくい窓・ドア」や「安全性の高いカギ」などが挙げられます。安全な生活を送るためにも、防犯面にはしっかりと力を入れておくことが大切です。
水回りの設備
予算にゆとりがある場合は、水回りの設備から優先的に希望を反映させていくのもひとつです。特にキッチンは、ほぼ毎日使うエリアでもあるため、できるだけこだわりを実現したいところです。
家族で話し合うときには、家事の分担割合などにも目を向けて、それぞれの価値観をていねいにすり合わせることを心がけましょう。
まとめ

- プランを組むうえでは、後からでも変更がしやすいものと難しいものを分けて考える
- 間取りや構造はコストに与える影響が大きい半面、後からの変更は難しいため、早い段階で見直すことが大切
- 設備や内装は後からの変更もしやすいため、予算の調整を行うポイントとして意識しておく
- 収納や動線は利便性とのバランスを考慮しながら検討する
- 予算を削らないほうがいい箇所やポイントも押さえておく
更新日: / 公開日:2021.09.14










