エネルギー効率の高い発電が可能な住まいへの関心が高まっています。「太陽光発電」と「燃料電池」の家庭での導入例を見てみましょう。
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太陽光発電だけで電力はまかなえるか?

太陽光による発電は、発電中のCO2排出量がゼロなのでまさにエコなエネルギー源ですが、太陽光を電気に変える変換効率は、一般流通品ではカタログスペックで13~14%前後。日照の条件などによって実際の効率はさらに低下しますから、太陽光発電だけで住まいのエネルギーをすべて賄うのはまだ少し難しい状況です。そのため、住宅の断熱能力を高くするなど、設置する対象の住宅側の省エネ性能も重要です。

 

左は環境配慮商品「シンセ・ソレスト」。工場ではこうしたユニットの形まで仕上げられ、現地で組み立て、設備工事、内装工事を行うシステム。工場での組み立て比率が最大85%と非常に高く、世界一の生産量を誇るトヨタ車の高度な生産技術とノウハウが品質管理に活かされているそうです。

 

環境配慮商品「シンセ・ソレスト」

環境配慮商品「シンセ・ソレスト」

住宅の断熱能力が高いと、外の気温と快適な温度との差を埋めるために使用する冷暖房コストがより少なくて済みます。トヨタホーム を例に取ると、熱損失係数(Q値※)は、鉄骨系プレハブ住宅としてはトップクラスの1.86を標準仕様として達成しています。通常の在来工法住宅のQ値が3を超える値とされていますので、高断熱住宅としてはトップクラスの性能と言えるでしょう。

 

※Q値:室内外の温度差が1度の時、家全体から1時間に床面積1平方メートルあたりに逃げ出す熱量で、住宅の断熱能力を数値化する指標

 

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トヨタホームでは太陽光発電との組み合わせで、CO2排出量実質ゼロのエコハウスを実現しています。この上記のモデルでは光熱費(特に夏の冷房費)を下げるため通風設計に力を入れ、戸締りしたままで通風可能なシャッター「エアリーガード」(図5-2)を装備。さらにエコキュートもついています。

 

これに最高出力6kWの太陽光発電システムを搭載し、日中の余剰電力を販売することで電気代ゼロ=計算上のCO2排出量差し引きゼロを達成しているのです。

 

防犯ブラインドシャッター「エアリーガード」(下写真)はスリットが開閉可能。外出中にも通風が可能で室温の上昇を防ぐことができます。さらに地窓や欄間付きドア、トップライトなどの効率的な配置で通風を促し、室温の上昇を防ぐ設計です。

 

図5-2:トヨタホーム「エアリーガード」による通風設計

図5-2:トヨタホーム「エアリーガード」による通風設計

太陽光発電住宅がCO2排出量ゼロになる仕組みは、どこも同じ。深夜電力の割引料金と売電価格の差で計算上差し引きゼロという考え方です。

 

そして近い将来、本当のCO2排出ゼロ、電力自給100%が実現できるかもしれません。トヨタホームでは現在、家庭用蓄電池を組み込んだHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)を開発中。これが普及すれば太陽電池で発電した電力を蓄電し、夜間に使用することができるようになるのです。

 

1990年頃に建てられた一般的な木造住宅が年間4トンのCO2を排出していたのに比べ、トヨタホームECOモデル+太陽光発電6kWは実質CO2排出量ゼロ。年間光熱費も34万5,000円の節約になります(下図)。

 

図5-3:トヨタホームECOモデルのCO2排出量比較

図5-3:トヨタホームECOモデルのCO2排出量比較

エコでクリーンなエネルギー

東京ガスや新日石などが5月から一般販売を始めた家庭用燃料電池「エネファーム」。ガスや灯油などの燃料から水素を取り出し、空気中の酸素との化学反応で発電する小型の発電機です。水素×酸素の化学反応によって、電気と水だけを生み出す(※)ので、クリーンなエネルギーだといえます(※燃料から水素を取り出す改質の過程ではCO2を多少発生します)。

 

エネファームの運転は、給湯需要にあわせて自動的に行われる設定。貯湯タンクが空になると運転を開始し、満タンになるとストップするシステムです(図5-4)。

 

図5-4:エネファームの24時間シュミレーション。発電は2次的なものとして設定されており、すべての電力需要を満たすことはできないので、電力会社との契約が必要となる

図5-4:エネファームの24時間シュミレーション。発電は2次的なものとして設定されており、すべての電力需要を満たすことはできないので、電力会社との契約が必要となる

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エネルギーを生成するために費消したエネルギーに対して、利用できるエネルギーの割合を示すエネルギー効率の面では、エネファームの発電は約33%。プラスして化学反応の際に発生する排熱を給湯に利用することで、総合的なエネルギー効率が80%にもなるエコシステムです(図5-5)。

 

「太陽光発電と違い、天候や時間に左右されずに発電できる点がエネファームの長所。80%のエネルギー効率もコンスタントに実現でき、生み出された電力は、家電などの待機電力を中心に、1ヵ月の電力需要の約50%を賄えます。すでに全国で約3,000基が実証試験に入っていますが、これまで1件の事故も無く、水素ガス漏れも皆無です」(東京ガス リビング企画部の伊藤千春さん)

 

運転4万時間・運転開始4,000回・10年間という保証期間内であれば、安全性も万全と言えるでしょう。

 

また、エネファームは単体で既存住宅に設置することも可能です。燃料電池ユニットと貯湯タンクユニットはある程度離して設置することもでき、個別の敷地条件にも柔軟に対応できます。ただ、集合住宅への普及は今後のテーマで、次々世代機あたりで実現しそうです。

 

取材協力
トヨタホーム
東京ガス エネファーム

 

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図5-5:従来システムとエネファームの一次エネルギー利用効率比較。排熱利用で47%を利用できるので、エネファームの1次エネルギー効率は80%に

図5-5:従来システムとエネファームの一次エネルギー利用効率比較。排熱利用で47%を利用できるので、エネファームの1次エネルギー効率は80%に

01 太陽光×燃料電池
 ・最新のエコエネルギー
 ・CO2もコストも減ります

 

02 バウビオロギー住宅
 ・建築は「第3の皮膚」
 ・京都のモデルケース

 

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更新日: / 公開日:2013.03.10