TOP データラインアップ [調査研究レポート] 地方創生のファクターX
PDFで資料をダウンロードする
地方創生をテーマにした今回の調査研究では、47都道府県の在住者へのアンケート調査を実施し、各都道府県の「寛容性」の気風を測定しました。同時に東京圏に住む各道府県出身の若者の意識調査も実施し、分析の結果、各地域の「寛容性」と地域からの人口流出意向・東京圏からのUターン意向の間に密接な関係があることが分かり、地域の「寛容性」がこれまでの地方創生政策が見落としていたファクターXであるという結論に至りました。地方創生の重要な指標として「寛容性」に注目することを提案します。
また、近年さまざまなシーンで注目度が高く、今後の地方創生議論の中でも不可欠になると思われる「幸福度(Wellbeing)」の実態についても都道府県別に把握し、今後の議論の材料として発表いたします。
2021.09.15
お詫びと訂正
本書のP79掲載データに誤りがありましたので、修正版PDFデータと正誤表を掲載しております。読者の皆様にご迷惑をお掛けしたことを、深くお詫び申し上げます。
2021.12.27
安倍政権の目玉政策として始まった地方創生には、2014年から「まち・ひと・しごと創生事業費」だけで毎年1兆円(個別施策の事業費を含めると2兆円前後)の予算が注ぎ込まれてきた。2020年に内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局が実施した調査によれば、全国1778の地方公共団体のほぼ全てにおいて、「都道府県まち・ひと・しごと創生総合戦略」及び「市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略」の改訂・延長等が行われ、1期のころから切れ目なく地方創生の取り組みが推進されていることが報告されている。
にもかかわらず、今のところ目に見える成果は上げられていない。それどころか、東京圏(1都3県)への人口転入超過は増加傾向にすらある。
なぜ若者が地方を出て東京圏に集まるのか。なぜ地元へUターンしないのか。
地方から東京圏へ流入する人口は、年齢区分では20〜24歳が最多を占め、上京の2大理由は進学と就職である。地元にはない魅力を持った高等教育機関や企業を求めて、若者は東京に集まってくる。そこで、地方創生をめぐる議論では人口のダム機能として東京圏への流出を防ぐための施策が打ち出されるが、その問題をまず指摘しておきたい。
停滞した地方を活性化するためには、新しい技術や知識を学んだ人材が必要になる。そのためには地域の未来を担う若者は、東京だろうが海外だろうが、どんどん外を目指して広い世界を経験すべきだ。問題は若者の転出が多いことではなく、外の世界で新しい技術や知識を学んだ優秀な若者が戻って来ないことにある。あるいは、生まれ故郷にこだわらず自分の能力を発揮する場所を探している若者が、その地域を選んでくれないということにある。
では、UターンやIターンの現状はどうなっているか。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局が、今現在東京圏に在住する地方出身の20〜30代の若者を対象に実施した調査では、約50%の若者が地方での暮らしに関心があると回答している。このようなアンケート結果をもとにあたかも地方移住が増加しているという論調の記事は多く、特にコロナ禍でテレワークが浸透したことで、地方移住に期待が集まっている。
しかし実際に行動に移す者は少ないし、残念ながら地方が期待するような人口移動は目立った動きにはなっていない。先にみたように東京圏への転入超過は長期的なトレンドとして継続しているし、コロナ禍の2020年にさえ東京圏への転入超過は続いている。東京都からの転出数は若干増加してはいるものの、転出先は神奈川県、千葉県、埼玉県でほとんどが占められており、1都3県という範囲でみれば、東京一極集中の傾向はコロナ禍でも揺らいでいない。
複数のアンケートで確認できるように、Uターンなど地方移住の阻害要因の大きなものとしては、求める仕事のなさ、所得の低下、生活利便性の低下があげられ、それらが充足されることが移住の条件となっている。東京に出た出身者のUターン意向に関していくつかの地方自治体でも調査がなされているが、傾向は概ね同じである。
今回、LIFULL HOME'S総研は、このような地方創生に関する基本的な課題にあらたな論点を付け加えたいと考えている。
一度県外に出た人がUターンで戻って来るかどうかには、各種の意識調査の結果が示す雇用や所得、インフラ整備等生活環境の要因だけでは説明できない部分も小さくない。東京圏へ出てきた地方の若者が地元に戻らない阻害要因として、これまでの地方創生議論が見落としていたものがあるのではないか。ここではそれをいったん「地方創生のファクターX」としておこう。
文:LIFULL HOME'S 総研所長 島原万丈
報告書全体(107.1MB)
地方創生のファクターX
47 都道府県の寛容と幸福、人口移動に関する調査
橋口理文(株式会社ディ・プラス 代表取締役)
吉永奈央子(フリーリサーチャー/株式会社ディ・プラス フェロー)
1. アンケート調査分析:属性別、都道府県別の傾向(26.2MB)
[寄稿]地方創生のための寛容性と幸福の分析(7.4MB)
有馬雄祐(職業能力開発総合大学校 建築環境設備エネルギーユニット 特任助教)
2. 47 都道府県別データ集(52MB)
取材のお申し込み、講演・執筆のご依頼はこちらから