日本一高い山、富士山。
富士山に行ったことはなくても、その姿を見たことがない人はいないでしょう。日本で暮らす人なら、一生に一度は富士山を訪れたいと思っても不思議ではありません。そんな富士山は2013年に世界文化遺産に登録され、さらに注目を集めています。
私にとって富士山は、近隣の県にあって観光で訪れる場所でした。しかし19年前に静岡に嫁いでからは、家からも富士山が一望でき、すっかり身近な存在になりました。今回は富士山の見える場所に住む私が、富士山の歴史やトリビア、身近に富士山がある暮らしについてご紹介します。
富士山の歴史と文化
知っているようで意外と知らない富士山の魅力。まずが、富士山の歴史や文化についてご紹介します。
富士山の歴史を知ろう
今から約10万年前、富士山の土台となる古富士火山が噴火活動を開始し、大規模な噴火を繰り返しました。溶岩を多く噴出し、噴出物が堆積して円すい形の形が形成されたといわれています。
現在は大きな火山活動はないものの、1707年までは活発に火山活動が起きていました。「延暦の大噴火」「貞観の大噴火」「宝永の大噴火」は「富士山三大噴火」と呼ばれており、特に「宝永の噴火」については、江戸まで火山灰が降り注いだという記録が残っています。
富士山は「休火山」に分類されていましたが、1960年代からは「活火山」に変更されており、いつ噴火してもおかしくない山とされています。
富士山にある富士信仰とは?
日本人は古代より山を神聖なものと崇拝してきた歴史があり、富士山も人々の信仰の対象とされていました。富士山が激しく噴火を繰り返していたころ、激しい火に怒る神の姿を重ね、崇拝するようになったといわれています。
はじめは富士山を遠くから望む崇拝でしたが、平安時代末期には富士山の頂上まで登山して神仏の加護を受ける形に変わりました。
戦国時代になると庶民の信仰としても広まり、江戸時代には多くの人々が富士山を目指したのだとか。富士山への民衆信仰は「富士講」と呼ばれ、富士山の信仰は現在も受け継がれています。
富士山は世界文化遺産に登録されている
富士山は、2013年6月に世界文化遺産に登録されました。富士山は日本人の自然への考え方や文化に多大な影響を与えてきた歴史があるため、自然遺産ではなく文化遺産になりました。登録の正式名称は富士山ではなく「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」です。
世界文化遺産に登録されたのは、富士山の山体だけではありません。富士山と文化的価値を有する「構成資産」も一緒に登録されました。登録されたものには、富士山の山体はもちろん、富士五湖や巡礼地、神社など、全部で25ヶ所あります。
参考:公益社団法人やまなし観光推進機構(https://www.yamanashi-kankou.jp/special/fujisan.html)
富士山のさまざまな魅力
富士山には、上記で紹介した活火山や富士信仰の歴史があります。しかし、富士山の魅力はこれだけではありません。ここからは富士山に関する魅力的なポイントについて、ご紹介します。
富士山のトリビア4選をご紹介
富士山には、数多くのトリビアがあります。ここでは、神秘的な富士山にまつわる4つのトリビアについてご紹介していきましょう。
富士山は下から雨が降る
富士山の標高は3,776mですが、雨雲は高さ500〜2,000mの位置に発生するため、富士山では雲が頂上よりも下にできます。そのため、強風で雨が舞い上がると、雨が下から降る場合があります。下から雨が降る中にいる経験は、してみたいと思ってもなかなかできません。
富士山が見える最先端は?
テレビなどで、東京から見える富士山の映像に驚いた経験はありませんか。じつは富士山は、かなり遠くからでも見られます。
最東端は千葉県銚子市、最南端は八丈島の三原山、最北端は福島県の花塚山です。また、最遠地は和歌山県色川富士見峠で、富士山との距離はなんと約323kmもあります。
富士山頂で結婚式ができる
富士山頂では、毎年3組ほどのカップルが結婚式を行っているそうです。富士山頂には富士山本宮浅間大社奥宮があり、そこで神前式が行えます。
日本一の富士山で結婚式を挙げるのは貴重な体験なので、一生の思い出になることは間違いありません。
富士山は不死山だった
富士山はもともと「不死山」と呼ばれていました。諸説ありますが、「竹取物語」でかぐや姫を失った帝が不老不死の薬を焼いたことから「不死山」と呼ばれるようになったといわれています。
富士山が見える地域は、富士見台や富士見ヶ丘などと呼ばれますが、地域によっては不死が変形した不二見と呼ばれることもあります。
富士山には四季折々の風景がある
富士山といえば、山頂に雪をかぶった風景を思い出すかもしれません。しかし、富士山には四季折々の魅力的な風景があります。
さまざまな花が咲き誇る富士山の春(3〜5月)
冬は雪に覆われている富士山麓も、春にはさまざまな花が咲き乱れます。まだ雪がうっすら残っている富士山と花とのコラボレーションが見られるでしょう。
桜と富士山のコラボレーションは、日本を代表する美しい風景です。また、富士山麓では芝桜まつりが行われており、富士山の足元に色とりどりの芝桜が広がる風景は圧巻ですよ。
富士山を間近で感じられる夏(6〜8月)
富士山の山開き前日の6月30日には、富士山開山前夜祭が行われます。富士講の方々や市民が参加して、北口本宮富士浅間神社まで練り歩きます。
夏の富士山は登山シーズンです。夏以外の季節とは違い、間近で富士山を感じられます。遠くから見る富士山は青く凛とした姿をしていますが、間近で見る富士山は岩山のためゴツゴツしています。富士山の力強さや雄大さを身体中で感じられるのが、夏の富士山の魅力でしょう。
富士山と紅葉のコラボレーションが魅力の秋(9〜11月)
秋の富士山といえば、紅葉とのコラボレーションが魅力です。 山中湖や河口湖などで、色づいた木々との写真を撮るのも楽しいでしょう。
また、紅葉がライトアップされるところでは、紅葉と夜の富士山を眺められ、黒い富士山の写真を撮れます。空気が澄んでくるため、夏に比べてはっきりした富士山が見えるようになっていきます。
純白をまとった富士山が見られる冬(12〜2月)
富士山といえば、冬の風景が1番有名ですよね。純白をまとった富士山を見ると、長年富士山を見続けた私も写真を撮らずにはいられません。空気が澄んでいるため、富士山麓からではなく、少し離れた地域からでも美しい富士山が望めます。
朝焼けや夕焼けで染まった「赤富士」や湖に富士山が映る「逆さ富士」、山頂に太陽が重なる「ダイヤモンド富士」なども、ほかの季節に比べて見える可能性が高いです。
河口湖では冬でも打ち上げ花火をする場合があり、花火と富士山のコラボレーションも見られます。
富士山の近くは遊ぶところがたくさん
富士山周辺には遊ぶ場所がたくさんあり、富士五湖や白糸の滝、富士急ハイランドなどが有名です。ここでは、私のおすすめのスポットをご紹介します。
まかいの牧場
まかいの牧場では、富士山が見える広大な土地で牛や馬、羊などの動物が飼育されています。動物の餌やりなど、触れ合いを楽しめます。乗馬や乳しぼりなどの体験もでき、疲れたら富士山を眺めながらゆっくり過ごせるのが魅力です。
休日に何度も子どもと訪れたことがあります。牧場のソフトクリームを食べ、子どもたちが遊ぶ姿と富士山を眺めながら、ゆったりをした時間を満喫しました。
施設名:まかいの牧場
所在地:静岡県富士宮市内野1327-1 アクセス: 東名高速富士I.Cから(約30分)国道139号線西富士道路へ乗り換え、富士宮河口湖方面へ
東海道新幹線で東京駅から(約70分)、新富士駅で富士急行バスに乗り換え(約60分)
営業時間:9:30〜17:30(11月21日〜3月20日9:30〜16:30)
田貫湖
田貫湖には、広大な土地にはキャンプ場や宿泊施設、芝生広場などがあります。ダイヤモンド富士が見られるスポットとしても人気を博しており、大自然の中、富士山を感じながら過ごせる場所です。釣りやボート遊び、サイクリングなどもできます。
田貫湖には宿泊施設があり、私はコテージに泊まったことがあります。富士山の見える場所でキャンプをしたりコテージで過ごしたりするのは、日々の疲れを癒やすぜいたくな時間でした。
施設名:田貫湖(たぬきこ)キャンプ場
所在地:静岡県富士宮市佐折634-1(南側 瓔珞の家)
アクセス:新富士I.C(新東名)から車で約40分
富士駅からJR身延線で富士宮駅まで(約20分)、富士急静岡バス「休暇村行き」に乗り換え(約45分)
富士山清水みなとクルーズ
富士山麓から少し離れる静岡市では、清水港をクルーズして富士山と海の美しい風景を眺めながら、ゆっくりと過ごせます。富士山は近くで眺める風景もすてきですが、少し離れた場所からほかの風景と一緒に見るのも美しいため、とてもおすすめです。
※天気によって運行状況が変わります。
施設名:富士山清水港クルーズ日の出のりば
所在地: 静岡県静岡市清水区港町1-410−3(券売所兼待合所)
駐車場:有料駐車場あり
施設名:富士山清水港クルーズ三保のりば
所在地: 静岡県静岡市清水区三保2729
駐車場:有料駐車場あり
富士山に登るには? 注意点を確認しよう
富士山は初心者でも登りやすい山のため、対策をせずに登山する人がいます。しかし、富士山は3,776mの日本一高い山であり、遭難や事故のリスクがあることを知っておくことが大切です。高山病や転倒の危険もあるため、万全な体調で臨みましょう。
富士山に登る際には、以下の点に注意しましょう。
・防寒対策をする
・緊急時のために救助要請を確認しておく
・登山ルートや基本情報を調べておく
・登山靴やトレッキングシューズ、雨具を用意する
また、富士登山には以下のものを持っていくとよいでしょう。
・水(1〜2リットル)
・ライト(できればヘッドランプ)
・軽食(お菓子など)
・ごみ袋
・地図
・お金
・ヘルメット
・携帯電話
・タオル
・健康保険証
富士山では自然保護のため、五合目より上に厳しい規制がかけられています。そのため、指定区域内での動植物の採取や溶岩や石の持ち出し、落書き、テントの設営・たき火、ペット等の放し飼いは禁止です。
さらに、富士山を守るための「富士山カントリーコード」というルールも存在しています。
・美しい富士山を後世に引き継ぐ
・ゴミは絶対捨てずに、すべて持ち帰る
・ゴミになるようなものを最初から持っていかない
・登山道をはずれて歩かない
・登頂記念の落書きをしない
・車道外へ車両等を乗り入れない
・溶岩樹型等の特殊地形を壊さない
・駐車場ではアイドリングをしない
・動植物を採らない
・トイレなど公共施設をきれいに使う
富士山が見える街! 住むならどこがいい?
富士山にはさまざまな表情があるため、旅行などで訪れるだけでは富士山のすべてを知ることはできません。富士山に魅了され、富士山について詳しく知りたい場合は、富士山が見える街に住むのがおすすめです。
「富士山が見える街」と一言でいっても、少し離れた街と富士山麓とではずいぶん暮らしむきが変わってきます。ここでは、富士山から少し離れた街や富士山が極めて近い街などをご紹介します。
【静岡県静岡市】ほどよい都会で、富士山が見える街
少し離れていながらも、富士山を眺めながら過ごすのにおすすめなのが「静岡県静岡市」。静岡市は人口約70万人の政令指定都市であり、ほどよい都会さと豊かな自然のバランスがよい街です。
海に行っても山に行っても、それこそ散歩をしていても富士山を眺める場所がたくさんあります。目の前に迫るような富士山ではなく、まるで絵画のように絶妙な富士山が見えますよ。
富士山と海を眺められる三保の松原は、富士山世界文化遺産の構成資産に登録されています。富士山の海と茶畑のコントラストが美しい日本平や、歌川広重の「東海道五十三次 由井 薩埵嶺」に描かれた絶景の薩埵峠(さったとうげ)などもあります。
静岡県静岡市の賃貸物件を探す
富士山を毎日のように感じられながらも過ごしやすい気候のため、冬に雪が降らないのもうれしいところ。大都会とは違い、コンパクトシティになっており、利便性がよいのもポイントです。
【静岡県富士市・富士宮市】いつでも大きな富士山が見える街
静岡県富士市は人口約25万人の都市で、都会すぎず田舎すぎないところが魅力です。自然を楽しむ公園が多くあり、ファミリーで遊べるスポットも豊富にあります。
東海道新幹線も利用できるなど、アクセスも抜群。どこからでも富士山が眺められる近さなのに、利便性がいいのが特徴です。中心地に住めば大きな富士山を身近に感じて暮らせますし、さらに富士山を満喫したい場合は少し足を伸ばして富士山麓に行けます。
静岡県富士宮市は、人口約13万人の都市です。都市部が富士市よりも富士山に近く、富士山本宮の「浅間神社」や「白糸の滝」などの観光名所もたくさん。
静岡県富士市・富士宮市の賃貸物件を探す
市の約半分が「富士箱根伊豆国立公園」の区域です。富士市よりも富士山の近くに住みたい人におすすめのエリアです。
【山梨県富士吉田市】富士山が間近!麓の街
山梨県富士吉田市は富士五湖の中東部に位置しており、県内で最も富士山に近い街といわれています。富士山麓だからこそ、大迫力の富士山を感じながら生活できます。
あまりにも富士山が近いため、桜や紅葉など、四季折々の富士山の風景を見逃すこともありません。五重塔越しに富士山が見える新倉山浅間公園は、とても大人気のスポットです。
富士山登山でメジャーな吉田ルートの起点でもあります。富士山信仰の神社や史跡なども残っており、風景・歴史ともに富士山と生きる街といえるでしょう。
山梨県富士吉田市の賃貸物件を探す
富士山の四季を感じながら暮らす
私の中で富士山といえば、雪化粧の白い富士山でした。富士山を見るために旅行する場合、富士山が一番見えやすい冬に行くことが多かったからです。
しかし、毎日富士山が見える街に住んで、四季によって富士山の表情が違うことに気づきました。また、同じ日でも朝夕で違う色合いの富士山が見えることもあります。
私は富士山から少し離れた静岡市に住んでいるため、富士山と四季のコラボレーションを見たいときには、富士山の近くに足を伸ばします。日常で見ている富士山とは、少し違う雄大な富士山を感じられるのです。
富士山の四季を感じながら暮らすことは、日本の四季を感じながら暮らすこと。ぜひ、富士山の四季を感じてみませんか。