毎回駅前からその街を知るべく街を歩き、巡り合った人に街について聞いてみたり、酒場で店主と話して、街に住む人、そして、その街の良さを探る本連載「スズキナオが降りて歩いて飲んでみる」。第5回は、大阪大学の学生でにぎわう「石橋阪大前」駅です。
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昔ながらの商店街を大阪大学に通う学生が歩く「石橋阪大前」
石橋阪大前駅は、大阪梅田駅と宝塚駅を結ぶ阪急宝塚線の真ん中あたりに位置します。阪急箕面線への乗換駅にもなっているためか、急行や通勤特急といった電車も停車します。大阪梅田駅から急行に乗って16分、各駅停車でも20分ちょっとで石橋阪大前に到着するという距離感です。ちなみに「石橋阪大前」という駅名は2019年10月から使用されているもので、それ以前は「石橋」駅でした。
改称後の駅名のとおり、近くには国立の大学である大阪大学(通称・阪大)の豊中キャンパスがあり、広大な敷地に複数の学部が置かれています。
石橋阪大前駅の西改札口を出るとすぐにアーケードのある「いしばし商店街」が左右に延びているのですが、まずはここを左に折れ、豊中キャンパス方面を目指してみることにします。商店街沿いの掲示板を見るに、大阪大学の学生たちと連携したイベントなども頻繁に催されているようでした。
アーケードが途切れたあたりからさらに10分ほど歩くと大阪大学のキャンパスの入り口にたどり着きます。ちなみにこの入り口は広いキャンパスの北西の端あたりに位置していて、各学部の研究棟が集まっているエリアまではさらにしばらく歩かねばなりません(キャンパスの南の端には大阪モノレールの柴原阪大前駅があり、その駅を使って通学する学生も多いようです)。
キャンパスの一部は標高およそ77メートルの待兼山の裾野に広がっており、そのため、周囲には木々が茂る自然豊かな環境になっています。学生以外もキャンパス内を歩くことができ、のんびりと散歩を楽しんでいるらしい方の姿も見られました。
石橋阪大前駅から最寄りの入り口付近には大阪大学総合学術博物館という入場無料のミュージアムがあり、大学の歴史や研究の成果を展示しています。豊中キャンパスの理学部周辺の地層から発見されたという「マチカネワニ」の化石の巨大なレプリカが壁に展示されていて迫力がありました。
生活感溢れる商店街をじっくりと眺める
豊中キャンパス周辺には当然ながら学生の方々の姿が多く、盛り付けの豪快なラーメン店、自習スペースや阪大生オーナーが運営しているというボードゲームカフェなどもあって、いかにも学生街という雰囲気が漂っています。一方、駅からすぐ続くいしばし商店街へと引き返してみると、こちらは生活感溢れる昔ながらの街という感じ。その対比におもしろみを感じつつ、どちらかというとキャンパスよりも古い商店街が好きな私は、通りの両側に並ぶ店をじっくり眺めて歩きます。
大衆食堂あり、たこ焼き屋さんあり、和菓子屋さんあり、そんな中におしゃれな雰囲気のカフェやスイーツの販売店なども混ざり合い、活気に溢れています。商店街の反対側の果て、箕面川にかかる赤い橋・箕面川橋まで一旦歩き、「伏見屋 阪急石橋駅前店」という豆腐店まで行って豆乳を試飲させてもらいました。
「伏見屋」は茨木市に本店を構えて主に北摂地域に支店を持つお店で、この「阪急石橋駅前店」は2024年8月にオープンしたばかりなのだとか。豆の旨味と後味に甘みの残る豆乳はとても美味しく、豆腐と一緒に買って帰ることにしました。
美味しい豆腐も買えるし、商店街周辺にスーパーもあり、この辺りだけで生活に必要なものは一通り手に入りそうだなと思いました。また、いしばし商店街だけでなく、駅から西へ真っすぐ進んだ通り沿いにも商店が並び、チェーン店もあればちょっと気になる個人店もあってやたらと散策し甲斐があります。
大阪市内から能勢妙見堂へと至る旧街道である能勢街道、京都から九州まで至る旧街道の西国街道という2つの街道が交わるのが石橋付近で、それゆえにこの辺りは昔から栄えていたのだそうです。そんな歴史を物語る石碑などもあちこちにあり、また改めてゆっくり歩きたいなと思いました。
国道沿いの立ち飲み店で喉の渇きを癒す
少し歩き疲れてきたところで国道176号線沿いの「カミナリ酒店」という立ち飲み店に明かりが灯っているのを見かけ、入ってみることにしました。
お会計はキャッシュオンスタイルのお店で、お客さんはみな店に備え付けられた両替機に千円札を入れて小銭を作って飲んでいます。両替機から出てくる100円玉の中にはたまに“当たり”が入っていて、それがあるとおつまみが一品サービスになるそう。残念ながら今回崩した100円の中には当たりは無いようでした。
缶入りのオリオンビールを飲みつつ、大き目で食べごたえのある「カミナリしゅうまい」、ニンニクの効いた味わいとホクホク感がたまらない「新じゃがジャーマンポテト」をいただきます。日替わりメニューも豊富で、どれも300円台~400円台中心の嬉しい価格です。
店主の山田洋平さんは、オープンから13年ほどになるこのお店を前店主から受け継いで7年ほどになるそう。オーナーが仕入れてくる新鮮な魚介類を手頃な価格で提供しているのがこの店の売りなのだとか。ちなみにオーナーは大の音楽好きで、関西にツアーに来たバンドマンがお店に立ち寄っていくこともあるそう。
地元もこの辺りだという山田さんはこの街について「飲み屋さんが多くて、昼間よりも夜の方がにぎやかになる街だと思います。生活するのにも便利な街ですよ。まあ、それなりにですけどね(笑)」と語ります。ちなみにお店に来るお客さんは地元の方がほとんどで、学生さんは稀なのだとか。「学生さん向けのおしゃれなお店も多いので、そっちに行かれるんでしょうね」と言います。
失礼かとは思いつつ「この周辺でお好きなお店はありますか?」と聞いてみたところ、「『しば田』さんの焼鳥はすごく美味しいですよ」と教えてくださいました。
その言葉に従い、2軒目は「しば田」を訪ねてみることにしました。「カミナリ酒店」とは反対側ですが、同じく国道176号線沿いにあるお店です。
人気店ゆえ、席は予約で埋まっているそうでしたが、幸い早めに入店したため、お客さんが来るまでの時間内ならと、通していただくことができました。
生ビールを飲みつつ、本わさびを添えた上ささみ、ひざなんこつ、うずらのむね肉まきを焼いていただきました。個人的に特に大好きだったのがひざなんこつ。お肉もしっかり残っていて、旨味と共に軟骨の歯ごたえが堪能でき、至福の一串だと感じました。
「しば田」のオープンは4年前。梅田の焼鳥屋さんで働いていた店主の柴田順一さんが独立して始めたそうです。オープンがまさにコロナ禍に重なったために、当初はご苦労されたようでしたが、前のお店からのお客さんや、徐々に増えていった地元のお客さんたちで今では大にぎわいになっているとのことでした。
柴田さんは8年前に近くに引越してきたそうですが、「石橋、最高ですわ」と、この街がとても気に入っているようでした。「ここで自分の店ができて最高です。あと30年はここでしようと思ってますよ」と頼もしい一言も聞けました。
絶妙な焼き加減で提供される肉の旨味と脂の上質な味わいを堪能し、あっという間に時間となったところで再び外へ出ます。「カミナリ酒店」の山田さんがおっしゃっていた通り、夜の駅前は昼間とは違って魅力的に輝いて見えます。「このまま帰るのはもったいない。もう一軒行ってみようかな」と、そんなことを考えながらゆっくりと駅へと歩きました。
学生からファミリーまで暮らしやすい石橋阪大前
学生の街でもあり、急行や通勤特急も停車する便利な駅でもある石橋阪大前。前述の通り梅田までのアクセスもよく、商店街なども栄えていて、生活のしやすさがうかがえます。さて、そんな石橋阪大前の家賃相場はというと、LIFULL HOME'Sによれば、ワンルームだと6.03万円。1Kは5.38万円、1DKは6.65万円で、2Kであれば5.77万円。さらに、1LDKは8.01万円、2LDKは11.95万円です(2025年2月時点)。学生用のマンションに単身、少し広めのシェア用、さらに、ファミリータイプまで駅前の商店街付近から、物件は多数あります。商店街から少し離れても住宅地が広がります。学生向けの飲食店などもたくさんあるのも嬉しいところです。