大阪環状線の駅数は19駅。いよいよ、残すところ3駅となってきました。毎月駅を起点にうろうろ歩き、いい飲み屋さんがあれば入って店主にお話を聞き、駅周辺のムードを垣間見て帰るというこの環状線の降りて歩いて飲んでみるも終わりも間近になってきました。今回は、訪れる機会が決して多くはない今宮駅です。さて、どのような散策になったのか、早速スタートです。
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大阪環状線の中では乗降客数が少ない駅だが、意外に便利な立地
大阪市浪速区大国に位置する今宮駅は、大阪環状線の中でも乗降客数が少ない部類の駅です(国土交通省の2022年時のデータでは、大阪環状線全駅の最下位となっています)。
というのも、明治時代からの歴史を持つ今宮駅は、長らく関西本線の駅として存在していました。そこに後から関西本線の貨物支線などを利用して大阪環状線が開通し、芦原橋駅と新今宮駅が新設されました。その間にある今宮駅にも、その後大阪環状線のホームが新設された、というちょっと複雑な経緯をたどっているのです(自分で書いていてもややこしい……)。
もとから別の路線として存在していた駅だけど、その後に同じルートを使った大阪環状線ができて、最初は通過されていたけど、後に大阪環状線も停まるようになった、と、そんな流れなのです(というか、芦原橋駅と新今宮駅ができた際に今宮駅が廃止される計画もあったそうですが、近隣住民の声によって撤回されたとか)。
今宮駅が大阪環状線の停車駅になったのは1997年のことで、2024年現在、大阪環状線内で一番新しい駅が今宮駅なのです。何が言いたいかというと、そのような経緯をたどってできた駅で、隣り合う芦原橋駅と新今宮駅がどちらも歩いていけるほどに近い、というのも乗降客数が少ない理由だと思われる、ということです。
裏を返せば、芦原橋駅にも新今宮駅にもほど近い立地ということになります。加えて、Osaka Metro 大国町駅も徒歩圏内です。
住宅街が広がる駅周辺エリア。西側には団地群も
駅の目の前、西側にはホームセンターの「コーナン」の大型店舗があり、「コーナン」の大きな文字がホームからも見えます。まずはその駅の西側を歩いてみることにします。
大きな団地が立ち並び、あちこちに公園があって、そこでのんびりと過ごしている人の姿が目立ちました。自転車に乗っている人の姿も多く、今宮駅前にたくさんの商店が立ち並んでいるわけではないので、買いものなどするには大国町や、なんば、新今宮駅方面などを目指すと便利なようでした。どこも自転車に乗れば10分圏内といったところでしょう。
あちこちにベトナム食材を扱うお店が見え、海外から日本に来て暮らしている人々にも便利なエリアになっている様子でした。
今宮駅まで引き返して今度は駅の東側へ歩きます。10分もせず、Osaka Metroの大国町駅周辺にたどり着きました。「よしのや酒店」という酒屋さんに角打ちスペースがあったので、そこで瓶ビールを飲ませてもらうことにします。
おつまみ類も豊富にそろう店で、鯛のお刺身の新鮮さと、きゅうり古漬けの深い味わいに驚きました。吉野杉から作られているという箸のいい香りも、その美味しさに彩りを添えてくれます。活気もありつつ、落ち着いてのんびりした気分にひたれる素晴らしいお店でした。こんな店が近所にあったらな……。
大国町から北へ歩けばすぐになんばですし、南へ進めば新今宮駅も近い、今宮駅の西側を歩いて感じたのんびりしたムードとは打って変わってにぎやかなあたりです。本格的な中華料理を出す、ここ最近では“ガチ中華”などとも呼ばれる店もちらほら増えているようで、そういうお店にも惹かれましたが、国道25号線の大通り沿いに「えびす食堂」という食堂を見つけ、そこでさらに一休みしていくことに。
定食類もあればお酒のおつまみに最適な一品メニューも豊富に用意されたお店で、店内の照明は抑えめ。落ち着いた雰囲気でゆったり食事ができました。小ぶりでぷりぷりした食感の餃子とエリンギバターをつまみつつ店内を眺めると、お勤め帰りらしき人も、お酒を飲みつつゆっくり会話を楽しんでいるグループも、親子連れもいて、それぞれが好きなスタイルで過ごせるこういう店があることがありがたく思えました。
再び今宮駅へ戻り、地元出身の店主が営むアットホームな酒場へ
もう少し今宮駅周辺の雰囲気を味わってみたいと思い、再び駅の方へ歩きます。気づけば割と遅い時間になっていたこともあり、駅前にはなかなか今の気分にしっくりきそうな飲食店が見当たりません。「中の様子が見えないスナックに飛び込んでみるか!」とも思いつつ、駅の南側、国道43号線まで出てみます。
すると「楽笑酒場」という店の看板が明るく灯っていたので、そこへ入ることにしました。ちなみに通りを挟んだ向こうには「ニトリ」の大型店舗が立っています。
店内には家族連れのお客さんがいて、子どもたちが店のモニターを使ってゲームをしているようです。家庭的な雰囲気に、早速気持ちが和みます。
ビールをいただきつつ、店主の福山さんにお話を聞かせていただきました。福山さんは28歳とお若い方ですが、大阪の料亭で修行を積み、北海道のフレンチレストランでもお仕事をされていたそう。地元はこの近所で、3年ほど前、北海道から戻ってきて自分のお店をオープンしたのだとか。
今宮駅周辺エリアについて話を伺うと「なんか危ない街みたいなイメージがあると思うんですけど(笑)でも、あったかみがあると思いますね。こういう店でも、大人も来て、子どもも遊んでいいし、そういう感じがある場所というか」とのこと。
この街で育った福山さんにとっては「すごく立地のいい場所」だそうで、「天王寺もなんばも近いですし、梅田も大国町駅から地下鉄に乗ればすぐですし。めっちゃ便利やと思いますね。家賃も安いし」と語ってくれました。10代の頃はよく天王寺駅前の「あべのキューズモール」に遊びに行っていたそうです。
一方、ここ数年での変化も感じられているらしく、「昔と比べたら変わってますね。きれいになってると思います。マンションもバンバン建っていて、新今宮駅前とか、海外の人もたくさんいて観光地っぽくもなってますし。今宮駅の方も民泊をやってるところがたくさんあって、海外からの人が多いみたいです」といいます。
その後も、常連さんを交え、この辺りのおすすめのお店をたくさん教えていただきつつ、楽しく飲ませていただきました。
「大国町に比べてこの辺りはお店がないんですよね。うちと近くのホルモン屋さんが唯一遅くまで看板出してる感じで(笑)」と言う福山さんがこの辺りに明かりをともし続けてくれることを願いつつ、駅へと歩きました。
<今回立ち寄ったお店>
楽笑酒場
大阪市西成区中開1-2-12
11:00〜14:00 18:00〜24:00
日曜休
鈴木さんも書くように、なかなかおもしろい歴史がある今宮駅。ミナミにもキタにもアクセスはよく、乗降者数が少ないのが驚かれるほど便利な立地です。住宅街は、南西に広がり西に行くと木津川があり、渡ると大正区に入ります。そんな住宅地の家賃相場は、やはり便利なだけあり高めです。大阪環状線の中で最も家賃相場が高いのは、大阪駅で7万5,100円。最安値は、今宮駅のお隣の駅、新今宮駅。お隣が最安値なのにも関わらず、LIFULL HOME'Sの家賃相場によれば、上位3番に入る高さで、6万8,800円。ただ、この高さも実際に現地を歩いてみると納得です。難波に行くにも大阪のメインストリート御堂筋にもすぐと今宮駅を使わずとも暮らせる条件がそろっているのです。