「得意料理はカレーです」
ひと昔前まではギャグっぽく受け取られていたこの言葉も、すっかり冗談の気配がなくなってしまいました。
カレーのお店やイベントが増え続ける現状を喜ばしいと感じる人も多いでしょうが、僕が「なくなってしまった」と言うのには理由があります。昨今流行しているスパイスカレーは、僕にはいささか面倒すぎるのです…。
格別においしいカレーは作れるけど、特別手間はかけていない。それが僕のひそかな自慢です。今日はそんな“とびきりの手抜きカレー”を作る秘訣と、出来上がったカレーをさらにおいしく食べるコツをお伝えしましょう!
まずスパイスをそろえるのが大変
いやカレーと言えばスパイスカレーでしょ、作ればいいじゃん楽しいぜ、と思う人がいるかもしれません。まずはレシピを書く前に、僕が“手を抜く”理由をはっきりさせておきましょう。
お店や旅行先で食べるスパイスカレーはもちろん、おいしい。それを家で作ろうと考え、実践する人にも反論はありません。ただ、僕にはちょっと荷が重い、というだけ。
地方に住んでいる僕は、家の近くにスパイスを取りそろえている小売店がなく、通販で買うとなるとお金がかかりすぎます。その一皿を極める気はない、というスタンスでいるので、よほど贅沢しようと覚悟を決めなければポチっとできないのですね。
しかも貧乏性なので、グラムあたりで安いものを探せば、当然の成り行きとして業務用の大容量パックを視野に入れることになります。
買ってしまったが最後、香りが飛ぶ前に使い切ろうとカレー漬けの毎日が始まり、どうにか使い切った頃には部屋にカレー臭が染み付いてしまうのでは…。
とそんな理由で、僕は今のところスパイスカレーに手を出さないのです。
手抜き、万歳!
スパイスを使わないでどうやってカレーを作るのか?
もちろん、ルウで作ります。
日本のルウカレーはもはや日本食だと言われます。実際にどこからどういう経路を辿って日本に上陸したのかを研究していない僕は、知った風なことを言えないのですが、日本人に長らく愛されてきた文化であることは確かでしょう。
日本食かどうかはともかく、ルウで作るカレーはおいしい。カップラーメンみたいなもので、本場とか本来のそれとは違うかもしれませんが、ひとつの料理としておいしいですよね。せっかくこんないいアイテムがあるのだから、使わない手はありません!
最近では各スーパーがプライベートブランドでルウを作っていたりするので、特売でなくても1箱(8人前)100円程度。コイン1枚なら、財布の紐をどれだけきつく縛っても、なんとか取り出せるのではないでしょうか。
ではいよいよ、ルウで作る“とびきり手抜きカレー”レシピの一端をご紹介しましょう。
『水なし濃厚!ぎゅぎゅっとトマトカレー』
・基本はふつうの(ルウの箱に書いてある)作り方
・煮込むときに水の代わりに「カットトマト(ホールトマトでも可)」を入れる
・具材に火が通ったらルウを溶かして完成!
『冬限定? 究極のブロードカレー』
・上に鍋を置いて沸かせる「石油ストーブ」で暖を取る
・寸胴鍋に大量の水を張り、皮を剥いただけの玉ねぎ丸ごととにんにくを好きなだけ投入
・ストーブの上に載せ、3日3晩(目安)放置 *ストーブはつけっぱなしでなくてOK
・玉ねぎとにんにくの形がなくなったら豚挽き肉を入れる
・味つけは塩だけで1食楽しんでから、ルウを入れて完成!
『ひと手間、ですらない! なんちゃってスパイスカレー』
・ふつうにカレーを作る
・最後に市販のガラムマサラを入れて完成!
*ガラムマサラ:カレー用に調合されたスパイス。僕はスーパーのプライベートブランドで売られている詰め替え用(100円くらい)を使います。
『どんな味付け・具材でも使える鉄板メソッド』
・2種類の油を組み合わせる
基本的には味を複雑にするほどカレーはおいしいです。オリーブオイル、豚肉の脂、鶏皮、ピーナッツオイル、バターなどを少しずつ組み合わせてみましょう。
目新しくはないのですが、たったこれだけのことで、ものすごくおいしいのです。僕も恋人に絶賛されたので、気になる人にアピールしたい! というときにもしっかり武器になりますよ。
手抜きが功を奏した“別腹カレー”
普段料理をする方なら分かると思うのですが、手の込んだ料理よりも手を抜いた料理の方が喜ばれることがあります。
気合に反比例する結果に最初は納得がいきませんが、肩の力が抜けたことにより、いい結果に繋がるというか、そういうものかもしれないな、と諦念じみた達観をするように。
はなから手抜き至上主義を唱える僕のカレーでさえ、似たようなことがありました。
ルウでならカレー得意かもしれない、と感じ始めていた頃、友人から新築祝いパーティの招待を受けました。庭でバーベキューをする、と聞いた僕は、頼まれもしないのに鍋やカレーの材料を持って出発。その日のカレーが、いつもとちょっと違うものになるとも知らずに…。
ベースはさきほど紹介した『水なしトマトカレー』だったのですが、コンロが普段より少ないので、メイン具材である鶏のもも肉だけ、バーベキューで焼くことになりました。単に作業を並行して進めるための時短アイデアだったのですが、これが大変な効果をもたらしたのです。
脂を落としながら炭火で焼かれた肉はとても香ばしく、意外なことに、カレーソースに沈んだあともその風味が保たれました。
そのおかげで、カレーソース自体もいつもよりおいしくなり、総勢15人ほどの友人みんなが口に入れた瞬間目を丸くし「もうお腹いっぱいなんだけど、ルーだけでもおかわり」と言ってくれるほどの出来栄えに。
さんざんバーベキューをしたあとでもおかわりしてもらえる“別腹カレー”。みなさんにも、ぜひ試してほしいです。
「肉を炭火で焼いてから入れる」というテクニックだけでなく、その場でふと思いついたアイデアが、それぞれのその時間を楽しく、カレーをおいしくするはず。
誰かと一緒に食べるなら、カレーはますます最高の食事になりますね。
カレーをおいしく食べるには
カレーをおいしく作ることができるようになったところで、今度はカレーをおいしく「食べる」方法を考えてみましょう。
たとえば、カレーに限ったことではありませんが、「おいしい料理ができたら、誰かと一緒に食べたい」と思うのは当然の道理。
僕がカレーをよく作っていた時期は、幸い近くに恋人が住んでいたので「おいしいカレーができたよ」と呼んでいました。やっぱり、二人で食べるとまったく違いますよね。「おいしいね」「天才だね」と言い合って頬張るカレーのおいしさたるや、です。
ただ、近くに家族や友人や恋人がいない、という人も多いでしょう。ということで、ここからは「誰もがカレーをおいしく作っておいしく食べられる」家の条件を考えていきます。
ロケーションを考える
ルウカレーは「いつでも、どこでも、いくらでも」作れるカレーなので場所を選びません。
ただ、自分でカレーをよく作るようになると、煮込み中のスープよろしくフツフツと沸き上がる欲望があることを、さしもの僕でも無視できません。すなわち「いろんなおいしいカレーを食べたい」という探究心と好奇心です。
自分の頭で思いつく範囲の材料や作り方ではバリエーションに限度があります。本格スパイスカレーの味や作り方を知り、そのエッセンスを一滴だけでも取り入れることで、相変わらず手を抜きながらも変化に富んだカレーを作れるようにはなるはず。
そんな勉強熱心な方のために、カレーを学ぶならぜひ行ってみたいお店をチョイスしてみました。
「Tokyo Spice Curry(トースパ)」
東京カリ〜番長の「リーダー」が週に一度だけランチ営業するお店。
同じカレーは二度と作らないとのことで、行くたびに新しい発見がありそうです。
目黒駅から約700mの場所にあります。
「J's curry(ジェイズカレー) 北千住店」
見た目からして異質で革新的なカレーを提供しているお店。
伝統的なスパイスカレーだけにこだわっていない僕は、とても気になります。
北千住駅から約300mの場所にあります。
「スープカレーGARAKU(ガラク) 東京八王子店」
仙台に8年住んだ身として、スープカレーは外せません。
中でもブロッコリーの仕上がりに定評のあるこのお店は要チェック! 八王子駅から約600mの距離にあります。
「Dipmahal(ディップマハル)」
カレーのみならず、タンドーリプラウンをはじめとしたエスニック料理全般を提供しています。
もちろんカレーも多種多様、かつどれも本格派。新宿、青山、赤坂に1店舗ずつあります。(2019年4月現在)
「Darra(ダーラー)」
インドもいいけどタイカレーの独特な風味をルウカレーに取り入れたら面白そうです。
タイ人の女性が営むこのお店では、ハサミが丸ごと入ったカニのカレーを提供。
インパクト抜群なカレーを食べられます。
浅草駅から約200mの場所にあります。
バラエティに富んだカレーで舌を鍛えれば、カレー探求が加速すること請け合いです。
自分好みのカレーはやっぱり最高
腕によりをかけて手を抜く最高のおうちカレー、あなたもぜひ楽しんでくださいね。