「暑くてエアコンは手放せないけど電気代が気になる」
「エアコンの効いた部屋に長時間いるのが苦手…」
そんなお悩みをお持ちなら、エアコン以外の涼み方を工夫してみませんか?
家具コンシェルジュ兼インテリアライターの私(mashley)は、平日は断熱性能にこだわった自宅で仕事をしていますが、週末は山の中にある古い家で暑さ対策をしながら過ごしています。視覚や聴覚、味覚などに訴えかける暑さ対策をすると、エアコン以外の方法で涼をとれますよ。
今回は、私が週末の山暮らしで実践している五感を刺激する夏の家の暑さ対策について紹介します。
夏は家の暑さ対策をしよう
そもそも、なぜ暑さ対策が必要なのでしょうか。それは電気代の節約と熱中症対策が必要だからです。
エアコンを使えば暑さ対策になりますが、適切な使い方をしなければ必要以上に電気代がかかる場合があります。暑さ対策が不十分で、気付かないうちに熱中症になることもあるので、危険です。
暑い夏を快適に過ごすために、家の中の暑さ対策についてじっくりと考えてみましょう。
外よりも家の中の方が暑く感じる理由
「外は日差しが強いのに、なぜ家の中の方が暑いのだろう?」と、疑問に思われたことはないでしょうか?
その理由は大きく分けて2つあります。
1つは、家の中に熱がこもっているからです。熱は窓やドアなどの開口部から侵入し、室内の温度を上昇させます。特に断熱性能の低い家は、窓から熱がどんどん入ってきます。家は屋根や壁に囲まれているので、侵入した熱がこもったままになり、暑くなってしまうのです。
もう1つは、風通しが悪いことです。家の中は、何もしていない状態だと、空気がほとんど循環していません。室内に入った熱が停滞してしまうと、さらに暑く感じます。うちわで少し扇ぐだけでも涼しく感じるのは、風通しがよくなるからです。
家の中こそ熱中症に注意
暑さ対策は熱中症を回避するためにも必要です。実は、屋外よりも室内での熱中症が増えています。総務省の「熱中症による救急搬送人員の内訳」(令和2年)によると、熱中症の発生場所で最も多いのが住居(43.4%)です。
「電気代がもったいない」という理由でエアコンを切っていると、気付かないうちに室内の気温が上がり、体から熱が逃げにくくなって熱中症になる場合があります。特に夜間は太陽が出ていないので、油断しやすくなり、危険です。屋根や外壁は昼間に太陽に照らされて熱を蓄積し、夜に気温が下がるとその熱が室内へ伝わります。
部屋に温度湿度計などを設置してチェックし、エアコン、扇風機、サーキュレーターなどを活用して空気の循環や室内の適正温度のキープを心がけましょう。
家の暑さ対策で電気代の節約にも
在宅勤務でエアコンを長時間使っていると電気代が気になりますが、暑さ対策をすることで節約につながります。さまざまな方法がありますが、ここでは簡単に実践できる4つの方法をお伝えしましょう。
電気代を節約した暑さ対策(1) 断熱シートを窓に貼る
1つめは、断熱シートなどを窓に貼って外からの熱を遮断し、エアコンの効きをよくする方法です。エアコンは、設定温度と室温の差が大きいほど温度を下げるためにエネルギーを使います。窓に断熱シートを貼ると外からの熱が入りにくくなり、消費電力を抑えて電気代節約につながります。
電気代を節約した暑さ対策(2) エアコンをこまめに切らない
2つめは、意外に思われるかもしれませんが、エアコンをこまめに切らないことです。エアコンは電源を入れたときに設定温度に近づけようとして活発に動き、たくさんの電気を消費します。つまり、こまめにオンオフしていると、電気代が上がってしまうのです。
これは私も実際に自宅で実験しましたが、こまめに消していた夏に比べて、つけっぱなしにした夏の電気代の方が安くなりました。ただし、長時間つけっぱなしにしすぎると、家の断熱性能次第では電気代が高くなる場合もあります。散歩や買い出しに行く程度ならつけっぱなしにして、長時間留守にするときにはエアコンを切るようにしましょう。
電気代を節約した暑さ対策(3) エアコンの掃除をする
3つめは、定期的にエアコンの掃除をすることです。フィルターや室外機にほこりやゴミが溜まっていると、エアコンの効きが悪くなってたくさんの電力を消費します。定期的にチェックして、汚れていたらお手入れしましょう。
電気代を節約した暑さ対策(4) サーキュレーターを使用する
4つめは、サーキュレーターを併用することです。エアコンの室内機の温度感知センサーはフィルター付近についています。部屋の天井付近は暖気が溜まりやすいので、センサーが天井付近の温度を部屋全体の温度と判断し、室内を必要以上に冷やそうとします。
そこでサーキュレーターの出番です。室内の空気を循環させることでエアコンが効きやすくなり、温度をいつもより低く設定できます。
五感を使った夏の暑さ対策
ここからは、私が山の中の家で実践しているエアコンを使う以外の暑さ対策について紹介します。五感のすべてを刺激して涼をとる方法です。簡単に導入できるおすすめグッズも紹介しますので、ぜひ参考にして取り入れてみてくださいね。
【耳で涼む】心地よい風鈴の音色
夏の風物詩である風鈴は、耳で涼をとるアイテムです。私も山の中の家のウッドデッキに吊るして軽やかな音に耳を澄まして涼を取ることが多いです。
風鈴の音を聞くと涼しいと感じる理由は、脳の思い込みと関係しています。風鈴の音が鳴ると、頭の中で風が吹く涼しい光景が浮かび、脳が末梢神経に指示を出して、体温を下げるように作用すると考えられています。そのため、風鈴の音を聞き慣れていることが条件となっており、風鈴に慣れ親しんでいない海外の方の場合、効果を期待できないようです。
風鈴の音にはリラックス効果も期待できます。根拠は、風鈴の音が持つ1/fゆらぎです。これは、波の音や川のせせらぎなど自然界にある不規則に繰り返される音のことで、人がこれらの音を聞くとリラックスできるといわれています。
風鈴の素材には、ガラス・南部鉄器・真鍮などがあり、素材によって音やデザインが変わります。好みに合わせて選びましょう。ちなみに私は真鍮の風鈴を飾っています。選んだ理由は、デザインが和モダンインテリアに合い、強風で落ちたときに割れないからです。
風鈴を取り入れる場合の注意点
集合住宅にお住まいの場合、風鈴の音がトラブルになることがあります。自分は心地よくても、人によっては騒音と感じる場合があるので注意しましょう。気になる方は、ベランダや窓付近に吊るすのではなく、スタンドに吊るして室内のテーブルの上などで楽しむのがおすすめです。
【目で涼む】風にそよぐモビール
目で涼むアイテムとして、ダイニングにモビールを吊るしています。モビールとは、空気の流れに反応して揺れる装飾品のことです。窓を閉めていても、わずかな空気の流れでゆらゆらと揺れます。
モビールは海外で古くから親しまれているアイテムですので、夏の風物詩というわけではありません。ただ、暑い日に風にそよぐモビールが目に入ると、涼しげに見えます。音がしないので、風鈴を吊るすことに抵抗がある方に、おすすめです。
モビールはインテリアのアクセントにもなります。デザインの種類が多いため、インテリアに合わせてコーディネートするのも楽しいです。好みのデザインがない場合は、DIYもおすすめです。
モビールを取り入れる場合の注意点
少しの風でも反応するモビールは、とても繊細な構造になっています。エアコンやサーキュレーターの強い風が直接当たると、紐が切れてしまうので、空気の流れが穏やかな場所を探して飾りましょう。
【鼻&肌で涼む】体感温度を下げるハッカ油
ハッカ油とはミントの1種から抽出して作られる植物油のことで、薬局や雑貨店などで購入できます。爽快感のある香りが特徴で、キャンディや歯磨き粉などに使われています。メンソール成分が神経を刺激して、冷たさを感じさせるので、鼻と肌への刺激で涼をとるアイテムです。
ただし原液で使うと刺激が強いので、薄めてスプレーボトルに入れて使いましょう。数滴のハッカ油と薬局などで手に入る無水エタノール10mlほどを混ぜ、90〜100mlの水で溶きましょう。草刈りやDIYの作業中に首筋や腕にふりかけると、涼をとれてすっきりします。
メンソールは虫が嫌う成分といわれているので、虫除け対策としても役立ちます。夏の山は虫だらけです。昼間は森林用の強力な線香を身に着けて作業しますが、香りがきついのでお風呂上がりには身につけたくありません。
そこで、ハッカ油スプレーの出番です。体にふりかけたり網戸にスプレーしたりしておくと、防虫効果を期待できます。完全な虫除けにはなりませんが、寄ってくる数は減らせますよ。
ハッカ油を使う場合の注意点
ハッカ油スプレーを作るときは、ハッカ油の入れすぎに注意しましょう。使いすぎると痛くなり、強い寒気を感じる場合があります。実際、私も経験しました。最初は使い方を知らずに原液をたっぷりと体につけてしまい、その後数時間、強い悪寒に襲われて大変でした。
【舌&目で涼む】爽やかなミント水×ガラス
舌で涼む方法として、庭で栽培している無農薬のミントと水をガラスボトルに入れ、ミント水を作っています。ミントの清涼感で口の中がさっぱりします。お好みでレモンを加えて酸味をつけるのもおすすめです。
この方法は、ガラスのボトルやグラスを使うのがポイントです。涼しげに見え、視覚的にも涼をとれます。また、緑色は緊張感を和らげるともいわれており、ミント水の入ったガラスボトルを見ていると、リラックスした気分になります。
ミント水を作る場合の注意点
ミント水の作り方は簡単ですが、ミントをよく洗ってから使いましょう。
庭でミントを育てる場合、地植えはおすすめしません。なぜなら、ミントは繁殖力が高く、他の植物の育成を阻害する場合があるからです。増えすぎると手入れが厄介ですので、鉢植えで育てましょう。
【体で涼む】暑いロフトで活躍するサーキュレーター
山の家にはセルフリノベーションしたロフトがあります。ロフトは秘密基地のようでワクワクしますが、暑い時期は厄介です。熱気球を思い浮かべると分かりますが、空気は温まると軽くなって上昇する性質があります。つまり、天井に近いロフトは床付近よりも暑くなり、寝苦しくなります。
そこで導入したのが、サーキュレーターです。扇風機は体に直接風を当てて涼をとる家電ですが、サーキュレーターは人の体に当てるものではなく空気を循環させる役目があります。天井付近の暖気と床付近の冷気を循環させることで、体感の暑さが和らぎます。
ロフトには蚊帳を取り付けて、睡眠中の虫除け対策をしました。風通しがよいだけでなく見た目も涼しげで、目でも涼めるアイテムです。
サーキュレーターを取り入れる場合の注意点
サーキュレーターは、設置方法を工夫しなければ効果を感じにくくなります。ポイントは空気の流れを作ることです。床に設置する場合はエアコンに向けて、暖気を下ろすようにしましょう。ロフトの場合は、サーキュレーターが2台あると便利です。ロフトに1台置いて暖気を下ろし、床のもう1台を天井やエアコンに向けて空気の流れを作ります。
【体で涼む】家の周りで打ち水をする
日本で古くから行われてきた打ち水は、気化熱の働きを利用した涼のとり方です。水は蒸発するときに周囲の熱を奪い、温度を下げます。お風呂上がりに体をきちんと乾かさないと、湯冷めしやすい原理と同じです。
昔の人は打ち水に柄杓を使っていましたが、ペットボトルを使うのもおすすめです。私の場合は、ホース・バケツ・手を使います。ホースのシャワーモードで軽く水をまき、ホースが届かない場所は米の研ぎ汁などをバケツに入れて、手で打ち水をします。
土への打ち水はアスファルトほど大きな変化はありませんが、まくのとまかないのでは体感温度が変わるので、ぜひ試してみてください。
打ち水を行う時間帯は、「朝晩がよい」「昼間の方がいい」など意見はさまざまです。私個人の経験からいうと、昼間はすぐに蒸発してしまうので、夕方に打ち水をした方が、夜に涼しく感じやすいのではないかと考えています。
ただし、お住まいの地域や立地条件によって異なりますので、時間帯別に試してベストなタイミングを見つけるのがおすすめです。
打ち水を行うときの注意点
打ち水は、風通しの悪い場所を避けましょう。なぜなら湿度だけが上がり、蒸し暑く感じることがあるからです。また、公道で打ち水をすると、車や自転車がスリップすることがあるので危険です。ベランダや自宅の敷地内で行うようにしましょう。
夏の暑さ対策を意識した住まいを選ぶ
ここからは、紹介した夏の暑さ対策を取り入れながら暮らせる3種類の住まいを紹介します。暑さ対策をネガティブにとらえるのではなく、楽しみながら暮らせる住まいです。物件探しの際はぜひ選択肢に入れてみてくださいね。
一戸建ての物件
一戸建ての賃貸物件には軒がついていることがあり、風鈴を吊るして日本らしい夏を楽しむことが可能です。隣家との距離がある立地なら、風鈴の音で発生するトラブルを気にせずに済みます。庭がある物件なら、家庭菜園でミントを育てれば、自家製のミント水を作れます。
一戸建ての賃貸物件は集合住宅よりも家賃が高くなる場合がありますが、集合住宅よりも開放感があるところがメリットです。子育てをされている方にとっては、子どもをのびのびとした環境で育てられる魅力もあります。
通気性も集合住宅に比べて確保しやすいので、朝夕は窓を開けて部屋の空気を循環させることも可能です。
古民家風物件
風鈴やすだれなど、伝統的な暑さ対策を取り入れる古民家風物件での暮らしは趣があります。暑さ対策そのものがレトロインテリアになります。縁側があるなら、軒に風鈴を吊るして昔ながらの日本の夏を堪能しましょう。
住み心地に関しては、メリットとデメリットがあります。築年数が長いので隙間が多く、夏は虫が入りやすいことがデメリットです。一方で、古民家風物件はアスファルトに囲まれた都会よりも緑豊かな田舎に多く、夏は比較的過ごしやすくなっています。
外断熱の住まい
外断熱の住まいは、室内の温度を外へ逃がしにくくなる設計になっています。そのため冷房で冷やされた室内の空気が外へ漏れにくく、エアコンの使用を控えることができます。
室内の温度が下がったら、エアコンを切ってもある程度の涼しさが保たれるので、冷風が苦手という方は外断熱の住まいを検討してみてはいかがでしょうか。
エアコン付きの住まい
室内の暑さ対策の強い味方であるエアコン。自分で設置するとなると費用がかかりますが、エアコン付きの住まいであれば設置費用はかかりません。暑い夏を快適に過ごすためにもエアコン付きの住まいがおすすめです。
暑さ対策グッズで日本の家の夏を楽しもう
高温で湿度の高い日本の夏は、人を不快にすることもあります。クーラーがあればボタン1つで簡単に暑さが解消できますが、それだけだと電気代がかさむ一方です。
クーラー以外の暑さ対策も取り入れると、効率よく快適な環境が作れます。今回ご紹介したように自分が楽しめる方法を取り入れて、夏を満喫してみてはいかがでしょうか。軽やかな風鈴の音、爽やかなミント水、風にそよぐモビールなど、五感を使った方法なら、暮らしの満足度が上がりますよ。日本の家の夏を楽しみましょう!