皆さんは普段、着物を着ることはありますか?
着物や浴衣は日本独特の文化でありながら、現代では日常的に着ている方は少なくなっています。しかし普段着として着物を着ることにハードルを感じている方も、お祭りなどで浴衣を着ることはあるのではないでしょうか。
そこで今回は、着物に魅了されて教室に通うこと2年。現在は、着物教室の開業資格も取得した着物好きの私が、「浴衣」についてご紹介します。自分で簡単に浴衣を着る手順や、浴衣のお手入れ方法もご紹介していますので、ぜひ最後まで楽しんで読んでくださいね。
そもそも浴衣ってなに?
夏祭りや花火大会など、夏になると浴衣を着る機会があると思いますが、そもそも浴衣とはどういったものなのでしょうか。
まずは知っているようで知らない浴衣の歴史や着物との違い、着られる時期などについてご紹介します。古くから日本人に親しまれてきた服装である浴衣について、ぜひ知っておきましょう。
浴衣の歴史
「浴衣」と書いて、ゆかたと読みます。浴衣は、日本の入浴文化とともに発展してきた和服です。NPO法人日本ゆかた文化協会によると、浴衣の起源は平安時代、800年以上前にさかのぼります。
当時、お風呂は蒸し風呂のことを指し、現在でいうサウナのようなものでした。浴衣はこの蒸し風呂に入る際に着用されていました。蒸気でやけどしないよう肌を守るため、また複数の人と入浴することから裸を隠す、汗を吸い取るなどの理由で着用されていたようです。
当時は、入浴時に着用する麻素材の衣を湯帷子(ゆかたびら)と呼んでおり、浴衣の語源となりました。その後湯上がりに着られる着衣となり、就寝時に寝間着として使用されるようになっていきます。この頃から素材が吸水性に優れ、風通しのよい木綿に変わります。
現在の「浴衣」は江戸時代中期から
江戸時代中期からは町人文化の発展とともに浴衣となり、外出着として用いられるようになります。お風呂もサウナではなく現在の「お湯に浸かる」という形に変化しました。
この入浴法になってから、お風呂に裸で入るようになります。庶民階層にまでお風呂に入るという文化が根付きはじめました。そこで、湯上がりの汗を拭き取るために着ていたものから、そのまま外に出られるように用途が変わっていきます。
政府の財政難による天保の改革で町人が絹を着ることを禁じられ、木綿の浴衣が発達しました。衣服の制限が、浴衣普及に拍車をかけることになったのです。
浴衣と他の着物との違い
浴衣を含む和服にはさまざまな種類があり、着る時期や素材、TPOにより身に着けるものが異なります。ここでは一般的な着物と浴衣の違いについてご紹介していきましょう。
浴衣と着物の主な違いは、2つあります。1つ目は、浴衣は素肌や肌着の上から直接着てもよいという点です。着物にも、夏物や薄物と呼ばれるものがありますが、浴衣と比べて吸水性に劣ります。
浴衣はもともとお風呂上りに汗を取る目的で着るものだったため、吸水性に優れています。そのため、素肌の上から着用しても問題ありません。しかし現在では、女性が浴衣を着る場合は、肌着を着けてから浴衣を着る場合が多いです。
2つ目は、履物です。浴衣を着るときには下駄を履き、着物では草履を履きます。浴衣に草履を合わせるときは、素足で履きますが、着物の場合は必ず足袋を履く必要があります。
浴衣=お祭りのときだけ?
浴衣は夏用の着物である薄物と同様に、7月から8月にかけて着用するのが一般的です。しかし、現在は気候変動が激しく、5,6月でも真夏日の日があったり9月でも暑い日が続いたりしています。そのため、私は洋服でいうTシャツや短パンと同じ感覚で、暑い日には浴衣を着ることが多いです。
夏季は浴衣で過ごすことが多い私ですが、少し肌寒い日は、やや厚手の浴衣に長襦袢を合わせ、外出着にしています。
ただし、7月から8月以外に浴衣を着るのは、家の中などプライベート空間だけにしています。なぜなら、5月や10月は袷(秋から春にかけて着る着物の種類)の季節で、外出着として浴衣を着ていると場違いになるからです。
浴衣はカジュアルな普段着
浴衣はあらたまった場に着ていくものではなく、1人で外出するときや親しい友人との軽い食事会など、日常で着る方が好ましいです。浴衣は、もっともカジュアルで気楽な着物として位置づけられています。
浴衣の魅力
私は、浴衣の魅力はその手軽さにあると思っています。着る手順も着物よりもかなり簡略化されており、慣れてしまえば5から15分ほどで着ることができます。私も、着付けを習い始めて1年たつ頃には、5分ほどで着られるようになりました。
浴衣は夏に着る服装ですが、長袖でも風がとおりやすく、涼しい素材でできているため、冷え性や汗かきの方におすすめです。真夏に冷房で体が冷えすぎて風邪をひいた経験を持つ人は多いでしょう。浴衣ならお腹まわりが帯で守られているため、冷えすぎるということはありません。汗をかいても綿や麻などの素材でできていることから浴衣がすぐに吸水してくれます。
また、着物を着る機会のある結婚式やお葬式、入卒園式などのイベントは人生で数えるほどしかなく、限られています。浴衣なら日常で気軽に着ることができるため、イベントに向けた練習として着てみても楽しいですよ。
浴衣の具体的な着方
ここからは、浴衣を着るために必要な準備や具体的な手順について紹介します。初夏になると浴衣の着付けセットが売られていますが、着付けに使う道具は家にあるもので代用できます。
また、浴衣でお出かけするときの動き方やマナーなどについても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
必要な小道具をそろえよう
浴衣は洋服と違って体の線にそっていません。そのため、これから紹介するさまざまな道具を使い、体型に合うように調節する必要があります。代用可能な道具とそうでないものがあります。
<必要なもの>
・浴衣
・肌襦袢
・帯
・ウエストベルト
・クリップ付き伊達締め
・前板
・浴衣
浴衣そのものが必要です。正しいサイズを選ぶことで、浴衣の着付けがとても楽になります。浴衣は他の着物同様に、丈でサイズが分けられています。着る人の身長を基準にサイズを選びましょう。
身長ごとのサイズの目安は、以下のとおりです。
身長155cm以下:Sサイズ
身長155cm以上165cm以下:Mサイズまたはフリーサイズ
身長165cm以上:Lサイズ
・肌襦袢
着物を着るときに使用する、専用のインナーです。体の汗や皮脂で浴衣が汚れるのを防ぎ、肌が透けてしまうのを防ぐために着用します。
肌襦袢には主に2つのタイプがあります。ワンピースタイプで太もものあたりまでカバーできるタイプと、肌着と裾よけが上下にわかれたタイプです。着物に慣れていない方はワンピースタイプの方がおすすめです。
浴衣を頻繁に着ている私は、肌着と裾よけが上下にわかれたタイプのものを使っています。上下がわかれていると、洗濯後に早く乾き、着崩れしても補正がしやすいです。
・帯
帯は、浴衣にはなくてはならないものです。半幅帯や兵児帯、作り帯や結び帯など、さまざまな種類があります。浴衣セットとして売られている場合、帯はすでに結び部分が作られている「結び帯」であることが多く、簡単に着ることができます。
一番ポピュラーな帯は、半幅帯です。結び方を変えることで雰囲気や着用シーンを変えることができ大変便利です。表と裏で柄や色が異なるリバーシブルタイプのものもありますよ。
・クリップ付き伊達締めとウエストベルト
クリップ付き伊達締めとウエストベルトは、着崩れを防止するために使用し、腰紐でも代用が可能です。腰紐は締めやすくてゆるみにくい長い紐のことで、モスリンやポリエステル、絹などさまざまな素材や色があります。私はモスリンで作られた紐が使いやすく気に入っています。
ただし、長時間浴衣を着る場合は、クリップ付き伊達締めとウエストベルトを使った方が着崩れはしにくいです。
・前板
前板は、帯と腹部の間に挟む板です。帯を巻く部分にしわがよらないようにするために使用します。これは画用紙や厚紙でも代用が可能です。
前板は、帯の幅よりも狭いものであることと、体の線にそっていることが前提です。ただし、市販の前板の場合、体の幅に合わないものも多いため、代用の厚紙などで自分に合ったものを作ることをおすすめします。
・下駄などの履物
浴衣を楽しむための道具として、下駄もしくは草履も忘れずに準備しましょう。日常的に下駄などを履きなれていなく、足が痛くなってしまう場合はサンダルでも大丈夫です。
具体的な基本の手順
それでは浴衣を着ていきましょう! ここでは代用可能なものは、すべて代用品に置き替えています。事前に画用紙は前板の形に切っておきます。
1.肌襦袢を着る
肌襦袢を身に着けたら、左右についている紐を結びましょう。
2.浴衣をはおり、着丈を決める
肌襦袢の上に浴衣をはおり、浴衣のすそが、くるぶしの下の線あたりにくるように短めに、左が上で右が下になるように合わせます。
3.腰紐を締める
着丈を決めたら腰紐で腰骨の上あたりを結びます。後ろで交差させて腰紐の中心が前の中心よりやや左寄りもしくは右寄りになるようにし、紐の中心付近でかた結びにします。結んだ紐は左右にふりわけて紐にはさみましょう。
4.斜めあげ
斜めあげとは、浴衣の胸元のダブつきがないように整えることです。3で締めた腰紐の上では浴衣が少し余っているように見えます。右手を浴衣の掛衿(浴衣の襟の部分)から左へ、左手を浴衣の両脇にあいている部分から右へ通し浴衣の胸元を平らにします。
5.おはしょりを整える
手を下にしておはしょり(腰紐で締めた部分)の線をまっすぐになるように整えます。
整えたら、左手を脇から抜いて浴衣を着たときに上になる部分を浮かせて右手で下前(浴衣を着たときに下になる部分)をつまみます。
右手でつまんだ下前を外側から左手でつまみ、右手を離しましょう。左手でつまんでいる部分の下にある余分な生地を右手で上にしまいます。生地をすべて上にしまったら右手を抜き、左手でおさえている部分を右手でおさえます。
6.胸紐を締める
4でおさえている部分を腰紐の中心にして後ろで交差させ、かた結びで締めます。ちょうどアンダーバストのところに紐がある状態です。
7.前板をあてる
6で締めた胸紐がかくれるように前板もしくは、厚紙を胴にあてます。胃のあたりを覆うように当てるとちょうどよい位置になります。
8.帯を締める
前板が落ちないように帯を胴体に1周させて一度締めます。胴にぴったりと帯が巻き付いたら、もう1周させましょう。そのあとは、基本的にはちょうちょう結びをして完成です。帯の結び方には、さまざまな形があるため、好みで結び方を使い分けてみると楽しいですよ。
浴衣でお出かけするときの所作
立つ姿勢きは背筋を伸ばし、あごを少し引きます。左右の膝をあわせるようにつま先をくっつけるか、片側を少し引くとより美しくなります。歩くときは少し内股気味に、畳1枚を3-4歩で歩くくらいの小さめの歩幅にしましょう。
椅子に座る場合は背もたれによりかからず、浅めに腰掛けます。背筋を伸ばして両膝をつけ、つま先はそろえます。
浴衣の保管の仕方と適した住まい
次に浴衣の保管の仕方と、浴衣がある住まいについてご紹介します。
浴衣の保管方法
・浴衣の基本的な保管方法
家に帰ってきたらすぐに浴衣と帯を脱ぎ、着物用ハンガーなどにかけて陰干しします。シミや汚れがある場合はすぐに対処してください。風通りをよくすることで汗や水分を飛ばすことができます。2~3日干したあとたたんで保管しましょう。
・洗濯
汗で湿っている状態なら、洗濯機で洗います。ただし、浴衣の素材によっては洗濯機ではなく、手洗いをすすめているものあるため、洗濯表示の確認は必須です。
洗濯機を使う場合は、浴衣をネットに入れて手洗いコースなどの弱水流にします。着付けに必要な道具も、浴衣と同様に、脱いだあとは陰干しします。湿っている場合は洗濯表示を確認してネットに入れて洗濯機で洗いましょう。
・年に1度の虫干し
定期的なお手入れとして、年に1回は浴衣を干すようにしましょう。これは虫干しといって、着物や浴衣を定期的に干すことで、害虫や湿気から守る方法です。理想は年に2回の土用干しと寒干しをすることです。
土用干しは7月下旬から8月上旬に行う虫干しで、梅雨の間に含んだ湿気を乾燥させることを目的としています。絹物や木綿、麻やアセテートなどの素材のものを干します。
寒干しは1月下旬から2月下旬にかけて行う虫干しで、1年でもっとも湿度が低いことから、主に絹物など上質な着物を干すのに最適な時期です。
・虫干しの方法
タイミングとしては、7~8月あたりに行うとよいでしょう。干し方は以下のとおりです。
2~3日晴天が続く日の10:00-15:00頃まで風通しのよい室内でロープを張り、広げて干します。着物用ハンガーを使ってもよいでしょう。
このときシミや汚れを点検し、保管場所の引き出しやケースも同時に干します。浴衣の温度が下がってから防虫剤や防湿剤を、浴衣に触れないようティッシュなどにくるんで浴衣とともに入れて保管してください。
どうしても干す時間がないという場合は、年に1回乾燥した日に保管場所の蓋や入り口を開けておきましょう。
「おうちの中で洗濯物を乾かしたい」人向けの賃貸物件
エリア別に住まいを見る
浴衣の収納方法
浴衣や着物は三つ折りにして収納しましょう。スペースとしては、縦55cm横30cmほど確保してください。また、収納で気を付けたいのが湿気です。水回りの近くに収納スペースがある間取りはできるだけ避け、日当たりのよい、窓際近くの収納が可能な住まいをおすすめします。
「収納を重視したい」人向けの賃貸物件
エリア別に住まいを見る
サーキュレーターなどがあらかじめ設置されている住まいだとさらによいでしょう。虫干しするときにスペースが足りない場合は、保管ケースの蓋をあけて風をおくることで乾燥できるからです。
浴衣や着物を楽しむためには、周辺の住環境も整っていると安心できます。私の自宅近くに呉服屋さんと和小物雑貨屋さんがあり、小さなことでもすぐに相談しにいくことができ、とても心強いです。
自宅近くではなくても生活圏内のすぐ近くに着物関係のお店があると嬉しいですね。洗濯やしみ抜きの方法、帯結びのやりかたなど些細なことも相談することができますよ。
浴衣を手軽に着てみよう
手順を覚えてしまえば、浴衣は簡単に着ることができ、おしゃれを楽しめます。近年、和服ブームが再燃して和柄やモダン柄など、多くの柄がアパレルブランドやデザイナーさんから発表されています。
浴衣は長く親しまれてきたため、日本のジメジメした気候にぴったりフィットしています。さらに身長でサイズを決めることから体型の変化に対応し、強く末永く着ることができる衣服です。特別なイベントだけに着るのはもったいないので、手軽に生活に取り入れてみてくださいね。
参考URL:NPO法人日本ゆかた文化協会
[浴衣の歴史]
https://yukatabunka.com/%E3%83%81%E3%83%BC%E3%83%A0/%E3%82%86%E3%81%8B%E3%81%9F%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2