日本各地、それぞれの地域で親しまれている郷土料理や郷土菓子があります。熊本名物である郷土菓子「いきなり団子」もその一つ。
昔はよく手作りされていたいきなり団子ですが、時代の変化とともに少しずつ食べる機会が減っています。熊本で生まれ育ち、いきなり団子をこよなく愛する私は、熊本の郷土菓子を後世に受け継ぎたいと思っています。
そこで今回は、他県の方にもぜひ試していただきたい、おうちでつくれるいきなり団子の魅力をお伝えします。
熊本の郷土菓子、いきなり団子とは?
いきなり団子は、熊本で長く愛されている郷土菓子です。輪切りにしたさつまいもとあんこを、小麦粉を練った生地で包んで蒸したお菓子です。
モチモチした生地に包まれたほくほくのさつまいもとあんこが優しい甘さで食べやすく、小腹を満たすのにぴったり! 子どもから大人まで、どの世代の人にも愛され続けています。
いきなり団子の歴史
いきなり団子の始まりは古いものだと江戸時代からという説もあります。昔はあんこが入っておらず、さつまいもを、だんご生地で包んで蒸しただけの、今よりも素朴なおやつでした。
戦後になってあんこが入れられるようになりました。最近では生地に黒糖やよもぎが混ぜてあるもの、紫芋を使ったものなどたくさんの種類があります。
いきなり団子の由来
いきなり団子という名称はユニークですよね。「いきなり」とは、「突然」「急に」という意味があります。急な来客などいきなり(突然)人が来ても、いきなり(すぐに)つくって出せる、というのが名前の由来になっているそうです。
生の芋からつくるため、生き成り(いきなり)となったという説もあります。そのほかにも、熊本の一部地域では片付けが苦手でざっとした(大雑把な)人を「いきなりな人」ということから、簡単につくれるお菓子という異説もあるようです。
いきなり団子を手作りするとなると、さつまいもの皮をむいてあんこを挟んで蒸す、という工程が必要になるため、手間がかかります。昔はこれが”簡単”につくって出せるという感覚だったということに、時代の変化を感じますね。
いきなり団子のつくり方
いきなり団子の材料はごくシンプル。水・小麦粉・さつまいも・あんこの4つです。たくさんつくって冷凍しておくと、小腹が空いたときに簡単なおやつになります。
レシピ紹介
いきなり団子は、手のひらサイズの大福をイメージしてください。
材料 (いきなり団子4つ分)
・水 40ml
・小麦粉 75g
・さつまいも 中サイズ半分ほど
・あんこ(つぶあん、こしあんはお好み) 適量
今回は素材の味を楽しむために、シンプルに小麦粉とさつまいもとあんこだけでつくります。お塩を少し入れたり、上にゴマを置いたりアレンジもおすすめです。白玉粉を追加するとよりモチモチ感もアップします。熊本ではだんご専用の粉も売っています。
作り方
1. 小麦粉と水を混ぜて生地をつくります。さつまいもは2口サイズ程度に切っておきましょう。
まとまる状態まで手でこねて、少し寝かせます。
この状態から郷土料理の「だんご汁」にも使えます。だんご汁は鶏肉や野菜を煮込み、最後にだんごをちぎって加え、煮込んでいきます。
だんごは、小さくペタンコにしたりうどんのように細長くしたりと、どんな形にもできるので子どもたちも楽しくお手伝いができますよ。自分でつくったものだとより美味しく食べられるので子どもたちと一緒にだんごをつくるだんご汁も、わが家の定番メニューです。普通の鍋料理に入れるのもおすすめです。
2. 生地を4等分にします。
3. 平らに伸ばした生地に、カットしたさつまいもとあんこを挟んでいきます。
ポイント:生地が厚すぎるとかたくなってしまうので、薄く伸ばしてください。意外と破れないので思い切って伸ばしても大丈夫です。
4. 包んだら蒸し器に入れて蒸します。さつまいもに火が通ったら完成です!
できたてのアツアツの状態で食べるとほくほくのさつまいもが本当に美味しいです。あんこが熱すぎるので食べるときは注意しましょう。
今回、さつまいもはシルクスイートという種類を使用しました。
いきなり団子は、子どもも大好きな味
子どもたちは焼き芋とあんこが大好物なので、「うわ〜!美味しい!」と言いながらあっという間にパクパク食べてしまいます。熊本で昔から食べられているおやつなんだよと話すと、「じゃあママも子どものときに食べていたの?」と会話も弾みます。
子どもたちにとっての郷土料理や郷土菓子への興味は、これからどんなものに触れて育つかによって変わってきます。こういう会話をしながら、少しずつ子どもたちに母が生まれ育った土地の食べ物や暮らしのことを知っていってほしいものです。
いきなり団子を受け継いでいきたい
私はいきなり団子だけではなく、だんご汁などの熊本の郷土料理を次の世代に受け継いでいくために、できることを考えています。
核家族が増え、地元から離れて暮らしていると、家庭の味や家庭ごとのオリジナリティは薄れていってしまうのかもしれません。
子どもたちにとっては生まれ育った場所が地元になります。今後はご当地料理も勉強しつつ、母や父の地元の料理やおやつも調べて作っていけたらいいなと思っています。
温かいいきなり団子を食べた学生時代の思い出
いきなり団子は高校時代によく食べていた思い出があります。友人のおばあちゃんが朝からつくってくれたいきなり団子を、たくさん学校に持ってきてくれていました。
冬の寒い日、できたばかりの温かいいきなり団子を授業前に友人みんなと頬張っていました。最高に幸せなひとときです。私たちが高校生のときでさえ手作りをする家庭は少なくなっていたので、つくり続けてくれていた友人のおばあちゃんに感謝です。
食べる機会が減っているいきなり団子
SNSで熊本の友人にいきなり団子についてアンケートをとったところ、30名ほどが答えてくれました。その結果、いきなり団子は手作りよりも買って食べることが多く、学生時代に比べると食べる機会も減っていることがわかりました。
つくって食べる、と答えた人は0で、買って食べると答えた人も数人でした。つまり、買って食べる機会も減っているということですね。
昔に比べて”簡単”の概念が変わってきている影響も大きそうです。つくってみると簡単ですが、これを「いきなり作って」といわれてもなかなかできないかもしれません。
思い出のいきなり団子を後世に残したい
昔から熊本で親しまれてきたいきなり団子ですが、若い世代には少しずつ馴染みがないものになっていくのかもしれません。郷土料理や伝統文化の伝承は、意識して伝えていかないとどんどん薄れていってしまいます。
私は伝統文化や郷土料理を大切にしていきたいと思っているので、今後も郷土料理や郷土おやつをつくっていきたいと思います。
熊本には美味しいものがたくさん!
熊本には美味しいものがたくさんあります。トマトやなすなどの有名な農産物もたくさんありますが、私は熊本に美味しいものが多い要因の一つに「水」の美味しさがあると思っています。熊本は火の国でもあり、水の国という一面もあるのです。
熊本は美味しいお水で料理ができる
熊本から上京した熊本人は、「東京の水は美味しくない!」といいます。実際に私は熊本から上京した当時、東京の水が合わずに肌荒れを起こしてしまいました。熊本は県の80%が地下水で、熊本市の水道水は天然地下水100%なのですが、大都市では非常に珍しいそうです。
熊本県には、環境省が選定する平成の名水百選に4ヶ所、昭和の名水百選に4ヶ所選ばれている水源があります。合計8ヶ所もの名水池があるのは、全国で最も多いそうです。県内各地に1,000ヶ所以上の湧水場があります。 (厚生労働省「おいしい水」研究会において熊本市の水道水が全国第3位に選ばれるほど)
熊本では「蛇口をひねればミネラルウォーター」といわれているため、料理やお菓子作りに最適といえます。水道水が美味しいので、子どもの頃も水道水をガブガブ飲んでいました。水道水が美味しいというのは、生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)が上がると感じています。
参照元:熊本県環境生活部環境局 環境立県推進課
(http://mizukuni.pref.kumamoto.jp/default.aspx)
美味しい熊本の食材
熊本県の美味しい水で育つ主な農畜産物の全国順位を、平成29年 農林水産省・熊本県の統計データより引用します。
スイカ 1位
トマト 1位
なす 2位
メロン 3位
いちご 3位
肉用牛飼養頭数 4位
乳用牛飼養頭数 4位
スーパーでは熊本の野菜や果物を見かけることも多いでしょう。このように、熊本の恵まれた自然環境で育った農産物が、全国に出荷されています。
また、熊本の美味しい食を語るに欠かせないのがお米です。”森のくまさん”という銘柄を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。森のくまさんは、日本穀物検定協会にて2012年に日本一美味しいお米に認定されました。
生きていく上で欠かせないものが豊かにある土地は、とても魅力的だと思います。
参照元:熊本県環境生活部環境局 環境立県推進課
(http://mizukuni.pref.kumamoto.jp/one_html3/pub/default.aspx?c_id=33)
熊本の魅力的な郷土料理「だんご汁」
熊本には「だんご汁」という郷土料理もあります。(だご汁とも呼ばれます。)小麦粉を練ってつくったモチモチのお団子が入っています。熊本は、小麦粉を練ったものを使う郷土料理が多いです。
地域によって味噌ベースやすまし汁風の味付けがあります。いわゆるけんちん汁のようなイメージです。けんちん汁に団子が入るとだんご汁になります。
いきなり団子と同様に、気軽に食べられて腹持ちがよいことから、時間と手間を節約するためにつくられていたようです。私もだんご汁はよく作りますが、子どもたちも大好きです。
熊本の魅力的な郷土料理「高専ダゴ」
熊本では「高専ダゴ」という大きなお好み焼きも、ご当地グルメとしてよく取り上げられています。
かつて熊本県荒尾市と福岡県大牟田市「三井三池炭鉱」という炭鉱が栄えていました。全国各地から炭鉱に従事する人たちが往来し、安くて手軽にお腹を満たせる料理として食べられていたことから定着したそうです。
熊本の魅力的な郷土料理「いも天」
熊本ではいきなり団子のほかにもさつまいものおやつがあります。それが、「いも天」です。名前のとおり、さつまいもの天ぷらです。熊本ではさつまいもを使ったおやつが人気です。
こうやって挙げてみると、熊本の郷土料理やおやつを語る上で、小麦粉とさつまいもは絶対出てくる食材のようですね。
水と豊かな農畜産物が育つ環境がある熊本は、お料理好きな方や食にこだわる方も安心できる環境なのではないでしょうか。特に子育て中は、子どもに安心安全なものを食べさせたいと感じる親御さんも多いと思います。
広いキッチンで、美味しいお水と美味しい食材で、子どもと一緒に料理を楽しみたいですね。私は子どもと一緒に並んで作業ができる調理スペースがあるキッチンに憧れます。
子どもが小さいうちはお手伝いしてもらうのも大変なので、広いスペースがあると助かります。家族が多い家であれば、対面キッチンで話しながら料理するのも楽しそうですね。
熊本の郷土料理を暮らしの中に
核家族化が進み、共働きで毎日忙しい日々を過ごしていると、子どもと一緒に料理やお菓子づくりを楽しむ余裕がありません。私自身、日々何かに追われていて慌ただしく、滅多にそんな時間はつくれていないです。
しかし、熊本の郷土料理や郷土菓子を子どもたちに伝えるために、歴史や由来を話しながら郷土料理や懐かしいお菓子づくりを続けていきたいと思いました。ぜひこの記事を読まれた方も、ご自身の育った地域の郷土料理やお菓子を作ってみていただけたら嬉しいです。