近年、テレビや雑誌などで“エシカルファッション”や“エシカル消費”という言葉を目にすることが増えてきました。
エシカル(ethical)とは「倫理的な」を意味する英語ですが、「エシカル消費」とは、自然環境や地域社会に配慮した消費活動のことをさします。
私は、夫とともにエシカル消費を意識した生活を1年以上実践しています。そこで今回は、エシカルの基本知識やエシカル消費をする生活とはどのようなものかを紹介します。
エシカル消費とは
“エシカル消費”は、日本を含め先進国と呼ばれる国々で、一般的になりつつある言葉です。
世界的に有名なコーヒー店を筆頭に、適正価格で取引されたフェアトレード認証のあるコーヒー豆を使用するなど、取り組みは広がっています。
また、世界のファッション業界では独自に環境への負荷を減らすための提案もなされ、すでに10ヶ国以上の企業やブランドが署名。SNSでは「ethical fashion(エシカルファッション)」のハッシュタグの付いた投稿も多く見かけるようになりました。エシカル消費は、国内外で拡大しつつあります。
エシカルとは? サスティナブルとの違い
エシカルと同時に“サスティナブル”という言葉も多く聞かれるようになりましたが、この2つの言葉はどのような違いがあるのでしょうか。
エシカルとは、英語で「ethical=道徳的・倫理的」のこと。「エシカル消費」や「エシカルファッション」という使い方をします。倫理的な消費の方法や、道徳的に正しいファッションを取り入れることを示す言葉です。
一方のサスティナブルは、和訳すると「sustainable=持続可能」。“この先もずっと続けていける”という意味を持つ言葉です。「サスティナブルな社会」や「サスティナブルな取り組み」などといった使い方をされ、持続可能な社会、持続可能な取り組みと和訳でもしっくりきますね。
2つの意味を合わせると、「持続可能な世界にするために、道徳的・倫理的な行動をする」といったところではないでしょうか。サスティナブルは継続していく大きな目標であり、エシカルはサスティナブルな社会にするための手段の一つといえます。
なぜエシカル消費が注目されているの?
エシカル消費の注目と大きく関わっているのは、2015年に国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)です。SDGsでは、ジェンダー・気候変動・飢餓といった世界の問題を2030年までに改善するための17の目標を掲げています。
エシカル消費は、17の目標のうち5〜6個もの目標達成のための重要な行動なのです。特にSDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」がエシカル消費と深く関係しています。これは自然環境に配慮した素材を使うことや、食料廃棄の減少、廃棄物の管理、労働環境にまで注意を促す項目です。
国や大企業レベルで問題に向き合わなければ達成されない目標ばかりで、近年では日本でもレジ袋の有料化などを取り入れ、大きく動きだしました。
エシカル消費の先進国といわれるヨーロッパの各国ではすでに大企業を中心に、レジ袋の有料化以外にも取り組みがなされています。イギリスの大手スーパーでは、野菜・パスタ・お酒などの食品から洗剤までも、購入者が自ら持参した容器への量り売りを実施。プラスチックゴミの削減に貢献しています。
今後、日本でも大企業を中心にさまざまな対策が発表されるのではないでしょうか。
エシカルライフの思わぬ魅力
わが家は、夫婦で1年以上エシカル消費を意識した生活を行い、今やそれが日常となっています。私たちの活動によって目に見えるように地球環境がよくなったか、と聞かれれば“NO”です。しかし、私生活にゆとりが生まれるようになりました。
今までの生活は「車が欲しい」「新しいものが欲しい」と消費に目が向いていましたが、現在では“今あるもの”に目を向けるようになりました。捉え方一つで大きな変化が生まれます。
「徒歩10分で電車に乗れる」「今もまだ使える」と意識を変えることで、地球にも家計にもやさしい行動ができます。ミニマリストのような生活ですが、片付けや掃除の手間も減り、その分時間の余裕ができました。
また、「少し高いけど有機野菜を」と意識して買うだけで、以前はあまりなかった野菜の存在に注目するようになりました。「このお野菜、お薬使わないで自分の力で大きくなったんだって!」と小さなわが子への食育にもつながることを実感しました。
エシカルライフは地球にはもちろんのこと、消費の考え方や生活のゆとりについて見直すことができるライフスタイルです。
無理せずできるエシカル消費のポイント
「よし、今日からエシカル消費を意識しよう!」と決意したところで、「具体的に何をしたらいいのだろう」と考えてしまいませんか? 実践できるのは「服を買うときはエシカルファッションブランドで買う」など、限定的な方法ばかりではありません。
エシカル消費はポイントを押さえることで、生活のさまざまな場面に生かすことができます。無理のない範囲ですぐに取り入れられる、3つのポイントをお伝えします。
1. 新しいものを買わない
エシカル消費といっても、必ずしも“消費”する必要はありません。なぜなら私たちは気づかない間にも、多くの消費をしているからです。“新しいものを買わない”という選択は、簡単ではありますがお金も使わずにすぐに始められるエシカル消費なのです。
「今あるものを長く、寿命がくるまで大切に使う」、それだけで立派なエシカル消費。
また、“新しいものを買わない”を意識することで“欲しい”といった物欲に対して敏感になります。「これは本当に必要なのか」「買うとしたら本当にこれでいいのか」としっかり向き合うことで、後悔のない買い物ができるようになります。
とはいっても、子ども服のように1年足らずでサイズアウトしてしまうものは買わざるを得ません。そこで私はフリマサイトを利用しています。安く購入できるだけでなく、「まだ着られる服を救った!」という清々しい気持ちが生まれました。
2. できるだけオーガニック製品を選ぶ
「オーガニックを選ぶことがなぜエシカル消費につながるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。その理由は、“無農薬で育った自然な作物を選ぶことは、地球の生態系を守ることにつながる”と考えられているからです。
農薬は作物の虫食い被害を最小限に抑えることができますが、使用される農薬によっては土壌の環境に悪影響を及ぼすことがあります。
農薬や化学肥料を使うと養分の少ない土壌でも作物を育てられます。しかし、土本来の養分が育ちにくくなることがあるのです。
オーガニック食品を選ぶことは、本来の土壌を守ることにつながるというわけです。ただ、日本のスーパーには有機野菜がほとんど並んでいないので、選択肢が少ないのが現状です。
それでも、注意して食品表示を見てみましょう。例えば、きな粉や醤油など大豆を原料にしている加工食品であれば、見分けるポイントは、“有機”表示されていること。また、ブラックペッパーやシナモンなどの調味料や、海外輸入されたお菓子などにもオーガニック認証のついた商品もあるので要チェックです。
また、食品だけでなく、肌着やタオルなどはオーガニックコットン使用のものを選ぶのもいいでしょう。
「オーガニック製品は価格が高いのでなかなか手が出せない」という方であっても、「プレゼント用はオーガニックを選ぶ」などと、マイルールを作ると実践しやすいです。無理のない範囲で、オーガニックを選択肢に入れてみましょう。
3. 毎日の食事を見直す
食事は毎日欠かせないものなので、エシカル消費を取り入れるのに向いています。
例えば、毎日お肉を食べていることが習慣化されている方は、その“お肉”を見直してみましょう。ほかにも、食後のコーヒーやおやつのチョコレートなど当たり前のように毎日食べている食事を考えることで、エシカル消費へのヒントが見えてきます。
エシカル消費への見直しポイントは、食材の産地です。自分が毎日食べているお肉が「アメリカ産やカナダ産ばかりだな」と認識すれば、「国産のお肉を食べていない」という事実が見えてくるでしょう。エシカル消費を意識すれば、「食費を見直して、月に2回は国産のお肉を買おう!」という選択肢が生まれるかもしれません。
消費者庁が掲げるエシカル消費の定義には、地産地消や被災地の産品の購入も含まれています。また、コーヒー豆やカカオの産地も見直してみましょう。実はコーヒー・紅茶・カカオ・バナナなどの品目には、フェアトレード認証以外にも“レインフォレストアライアンス認証”が存在します。
フェアトレード認証とは適正価格での取引を示していますが、レインフォレストアライアンスでは生産者の持続可能な生活を確保するだけでなく、地球環境の保護も行っています。
かわいいカエルのマークが特徴です。買い物の際は、フェアトレードやレインフォレストアライアンス、各国のオーガニックマークなどを見つけてみましょう。
自身の食生活の当たり前を見直すことが、エシカル消費の第一歩です。
4. 高級志向に偏らないよう注意する
エシカルを学び、実践を続けることで「高級志向になった」「エシカル消費は高い」と感じた場合は注意が必要です。
「お肉を食べる量を減らした」「洋服の買う頻度が減った」「滅多に冷暖房をつけなくなった」など、エシカル消費というのは本来お財布にやさしい行為です。しかし、オーガニックや無添加、フェアトレードなどの商品が好きになることで“金銭的に余裕がないとできないこと”のように感じてしまうかもしれません。
少しでも無理のあるエシカル消費は、なかなか続きません。家計に響き、家族から快く思われない可能性も出てきます。「1.新しいものを買わない」でも挙げたように、“今あるもの”に意識を向けて、「人や地球環境にいいものを買う」といった“消費”だけに意識を向けないようにしましょう。
お財布にもやさしいエシカル消費の基盤ができてから、購入する製品の内容を変化させてみてはいかがでしょうか。エシカル消費を行うことで、自分も家族も苦しむのは本末転倒です。みんなが笑顔になれる方法を探しましょう。
エシカル消費を習慣化しやすい住まい
どんな住まいでも、今あるものを大切にしながら暮らすことは可能です。しかし、さらにその日常の中にエシカル消費を盛り込めるのであればうれしいですよね。
ここからは、私が思う「エシカル消費を取り入れやすい住まい」の特徴をご紹介します。
公共交通機関を使いやすい住まい
住まいから徒歩圏内に駅やバス停があれば、自動車がなくても通勤・通学のための移動に問題はありません。公共交通機関を利用することで、二酸化炭素の排出削減に貢献できます。これもサスティナブルな社会を築いていくうえで大切な行動です。
気候変動の原因とされている二酸化炭素の排出量を減らすことで、SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」に一役買っています。
自家用車のない生活を習慣化してしまえば、大きなストレスはありません。実際に私たちも自家用車のない生活を送っていますが、子どもは電車もバスも上手に乗っています。子どもにとって、これが“当たり前”の移動手段です。
また、徒歩では遠く感じる距離も、自転車があれば十分ではないでしょうか。そのためには住まい専用の駐輪場があると防犯面でも安心です。
このように住まい探しの際は、公共交通機関の使いやすさと駐輪場の有無の確認は必須です。
小さなMY畑が持てる住まい
オーガニックの野菜を購入しようとすると高い買い物ですが、自分で作ってしまえばお財布にもやさしいですよ。どんな肥料をあげたかも明確なので安心です。
そのために、自分だけの小さな畑が作れるスペースのある住まいを探しましょう。1階であれば庭のある物件も多いです。また、専用の庭がなくてもプランターを用いればベランダ菜園は完成します。小さなスペースで作物を育ててみましょう。
みょうがや大葉などの薬味となる植物は、虫や病気に強くどんどん収穫できるのでおすすめです。初心者の方は種からでなく、ホームセンターで苗を買ってきて育ててみてください。収穫まで挫折しにくいでしょう。
店頭で並んでいる野菜よりも見た目は劣っているかもしれませんが、収穫の喜びは何ものにも変えられません。お子さんのいるご家庭であれば、より濃い食育ができます。
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フリマサイトが利用しやすい住まい
「まだ使えるけれど使わなくなったものをフリマサイトに出品したい!」と思ったときに便利なのが、収納スペースです。出品してもすぐに売れることは少ないので、一時的に在庫を抱えることになります。
フリマサイトの在庫管理スペースとして一角を使用しましょう。売れたときには物がどんどん減っていくのが目に見えるので、クセになりますよ。
また、徒歩圏内に宅配会社の営業所や郵便局がある住まいも便利です。配送するのが楽なので、出品する際の負担がありません。宅配の不在通知があった場合でも、直接受け取りに行くことができます。
また、「フリマサイトは使わない!」という方でも、通販を利用することはあると思います。その際は、宅配ボックスがある住まいであれば再配達を減らすことができます。車による再配達が減ることで二酸化炭素の削減に。一つ一つの行動がエシカルな行動につながるのです。
エシカル消費でより心豊かな生活を!
今回はエシカル消費についてご紹介しました。もったいない精神で、子どもにお下がりを選んでいるママも着ている子も、実はエシカル消費をしています。すでに日常の中で倫理的・道徳的な消費ができている方も多かったのではないでしょうか。
しかし、今後サスティナブルな社会を実現するためには、今よりもっと一人一人が意識してエシカル消費を行う必要があります。自分にも他人にも地球にもお財布にもやさしい、新しいライフスタイルを楽しみましょう。