先を見越した提案と素材づかいが叶えた心地よい永住住宅（札幌市　I様邸）

玄関には、ご夫妻の要望で家族5人分の靴や上着を収納できるシューズクロークを造作。すぐ隣に水まわりを配した。外出から帰ってすぐに身支度を整えられるため生活動線が快適になる。日常の動きに沿った設計が、心地よい暮らしを支えている。

1階は間仕切り壁のない大空間。スケルトンに仕上げた階段と現しの天井が、家族が集うダイニングに明るさと落ち着きをもたらす。素材の質感を生かした造りが伸びやかな印象を生み、訪れる人を迎え入れるおおらかな雰囲気に包まれている。

北東に大きく開き、安定した光が射し込むリビング。窓からは、奥さんの祖父が育てたブドウの木がある庭が望める。四季折々の移ろいが家の中に届き、穏やかな時間を演出する。家族の会話や団らんに自然の景色が寄り添う心地よい空間だ。

造作の背面収納を設けたキッチンの奥には、大人数のゲストのおもてなしに備えて大きなパントリーを設けた。豊富な収納は日用品の管理を容易にし、調理や片付けも効率的に行える。集う人が多いほどその機能性が生きる空間になっている。

リビングの壁にはめ込んだ作家もののステンドグラスは、玄関に光を届ける役割も果たす。アートとしての美しさと実用性を兼ね備え、住まい全体に特別な表情を与えている。光が時間とともに変化し、日常の中に小さな彩りをもたらす。

多彩な素材づかいが心地よい廊下を、ハイサイドライトからこぼれる外光が明るく照らす。木や塗り壁の質感に光が重なり合い、歩くたびに変化のある表情を見せる。日常の動線が心地よさを感じさせる空間となり、暮らしを豊かにしている。

Iさんの書斎は、膨大な蔵書がすっきり収まるよう隣接する主寝室のスペースを削り、ニッチ状の本棚を設えた。限られた空間を最大限に生かし、集中できる場を確保。趣味や仕事に没頭できる居場所があることで、暮らしに充実感を与えている。

3姉妹共用の勉強部屋と寝室。建具には鍵を付け、間仕切り壁は使い方に応じて取り除きやすい仕様にした。将来の生活の変化に柔軟に対応でき、安心して成長を見守れる。可変性を備えた空間が、家族の未来を支える余白となっている。

2階奥には、海外のゲストのために個室とトイレ、シャワー室を設置。シャワー室は、家族の日常づかいにも重宝しているそう。ゲストをもてなしながら家族の暮らしにも役立つ設計であり、多目的に機能する空間が住まいの魅力を高めている。