戦前に建てられた町家や長屋が、石畳の細い路地が残る街・谷町六丁目。梅田からは約10分、心斎橋からは約5分、そして天王寺からも約6分と繁華街の近くに位置するにもかかわらず、アーケードを持つ空堀商店街が活き活きと広がっており、若者にも年配の方にも壁がない雰囲気。下町情緒のある街です。そんな谷町六丁目へ、堀江から2013年に引っ越ししてきたのが東欧の雑貨店「チャルカ」。開放的な空間にハンバリーの刺繍やチェコビーズ、チェコの糸ボタンなど、現地で買い付けた手仕事や工芸製品が並んでいます。
オーナーの久保よしみさんは、ここ「チャルカ」を友人と二人でスタートしたのだそう。いったい、なぜ東欧へ?「チャルカ」のこれまでと今後をお聞きしました。大阪府の物件を探す

―現地へ旅し買い付けた雑貨や手仕事を扱う「チャルカ」さんですが、もともと旅がお好きだったのですか?

久保さん:「そうですね、私は大学を出たばかりの頃、リュックを背負って3ヶ月ヨーロッパを旅したり、バックパッカーをしていたんです。その後仕事をするようになって、友人の藤山なおみさんとまとまった休みを使っては、よく二人で旅に出るようになりました。彼女は写真とライターの仕事、私はお花の仕事をしていたので、彼女は現地で写真が撮りたくて、私は現地のフラワーショーなどを見てみたくて。それぞれの目的もありつつ旅を楽しんでいました」

店主の久保よしみさん

―旅をしながら、ご自身の興味のあるものへ入り込んでいくのはすてきですね。当初から東欧へ行かれていたんですか?

久保さん:「最初の頃はアジアの国々やフランス、イギリス、ドイツなど。東欧は行ったことがありませんでした。旅をする中で向こうの市場や蚤の市で買ったものがどんどん増えてきたので、それを売ってみようと。旅の商品だけでなく、お花や二人が好きな喫茶も合わせて。友人たちからは『なおみとよしみの趣味の店』ってめっちゃ言われましたね(笑)」

―ということは、最初は東欧の雑貨のお店ではなかったんですね!でも、好きなことやものが店という形になるのは、楽しそうです。

久保さん:「お店を始めたのが、1999年だったのですが、その頃はまだ堀江が流行るちょっと前。友人のカメラマンから『堀江にいい物件を見つけたんだけど、僕には家賃が高いから二人にどう?』と物件を教えてくれて。大家さんがすごく優しい方で『あなたたちに、借りてほしいわ〜』って言ってくれはって。昔、北新地でママをされていた方で、かっこいい赤い口紅をさしたすてきな方でしたね。家賃が20万円もして高かったんですけど、なんとかなるやろ(笑)と、『チャルカ』を開くことにしました」

2012年に堀江から、自身の暮らしていた谷町六丁目へ移転

―東欧との出合いはいつ頃だったんですか?

久保さん:「店を始めて2ヶ月たった頃、売るものがなくなってしまったんです。そこで、せっかくだから行ったことがない国に買い付けに行ってみようと。チェコへ行ったのですが、その時は全然肌が合わなくて…(笑)」

―というのは?

久保さん:「寒いし、美味しいものもないし、暗い雰囲気で…。隣の国のハンガリーは、日本人はビザを申請しなくても入国できることがわかって、ハンガリーへ移動しました。そしたらすごく良いところで、大好きな国になりました」

―どんなところが、よかったんですか?

久保さん:「チェコと同じ東欧の国ですが、少しアジアっぽい雰囲気があるというか。お店のディスプレイがごちゃっとした感じだったり、マネキンの置き方も雑然としていたり。そんな様子にどことなくアジアを感じて、ちょっぴり笑えるような懐かしさを感じました。もともとハンガリー人の祖先にはアジア系の民族がいたそうです。ハンガリーの方もとてもフレンドリーに接してくださいました。それに食べ物も日本人の口にあって美味しくて!」

ハンガリーの蚤の市で出合った刺繍たち

―すっかり虜になったわけですね。

久保さん:「そこから何度かハンガリーに行くようになりました。当時日本でハンガリー語を学べるのは、旧・関西外国語大学(現・大阪大学)のハンガリー語学科だけだったんですね。だから大阪にはハンガリーに興味がある学生や、ハンガリーからの留学生もいて、次第にお店にそういう人たちが集まるようになったんです。でも、ハンガリーは農業国なので工芸品や手仕事があまりなくて、仕事としてメインでやっていくには買い付けできるものがあまりなくて。そんな時、通販会社さんから『東欧の雑貨を集めた6ヶ月コース』を一緒に企画しませんかと、声をかけていただいて。ハンガリーの商品だけでは足りないので、工業国であるチェコをもっと掘ってみようと。ボヘミアンガラスなど有名な製品もありますし、かわいいガラスボタンも。現地の蚤の市や雑貨店で見つけた商品の、台紙にある会社名や地名を辿って工場や作り手を探していきました」

チェコの糸ボタン

チェコのガラスビーズは形も色もさまざまでかわいい

―すごい、本当に探偵のように一つひとつ調べては出向いて、今があるわけですね。今も買い付けには行かれているんですか?

久保さん:「コロナ禍を経て、今は1年に1回程度ですね。いろいろなものが高騰しているので、今は無理に東欧へ行くというよりは、店でできることをやっていきたいと思っています」

―キッチンなどがありますが、何かイベントなどをされているんですか?

久保さん:「今は月に1回、朝ごはんの会をやっています。きちんと出汁をとったお味噌汁とおかずを3品くらいつけた定食を。朝ごはんを気持ちよく食べることで、いい1日になってほしいなと思って始めました」

―朝8時からやっているんですね。家族みんなで来て、ゆっくり朝ごはんを食べて過ごすのも良さそうです。

久保さん:「ほかにも『山のテーブル』さんが作る、おでんの会をやったり、シタール奏者の石濱匡雄さんによる『ビリヤニの会』をやったり。お味噌を仕込むワークショップやハーブの教室もしています。あと月に1回『ちくちくの会』という、みんなでお茶を飲みながら刺繍をしたりして過ごす会も。これは先生がいるわけでなく、自分の好きなものをそれぞれがのんびり刺して過ごす会です」

―本当にいろいろな会があるんですね。東欧の雑貨店でありながら、ほかのジャンルのイベントをするようになったのはなぜなんでしょう?

久保さん:「うちは置いてあるものが東欧の雑貨という少し特殊なものなので、お客さんの9割は遠方の方なんですね。近所の知らない人がふらっと入ってくるということがなかなかない。でも、こういうイベントをすることで人と人がつながっていったらいいなと思うようになりました。こうやって集まることで、また新しい話が生まれたり、誰かがやりたいことができた時に手伝ったり、手伝ってもらったり。この場所で集まることがきっかけで別のことが始まるような場所になったらいいなと思っています」

―「チャルカ」の新しい顔ですね。こういう場所が身近にあると、自分のより所が一つ増えるような感じがします。

久保さん:「東欧の雑貨店ではありますが、それを外したうえで、いいものを知ってもらったり、人が行き来できるような場所になれたら。公民館のような場所になったらいいなと思います」

紙ものもかわいい東欧。店内の商品を一つひとつ見ていくと、時間が足りなくなりそう!

◆今回取材したお店

「チャルカ」

住所:大阪府大阪市中央区瓦屋町1-5-23

電話:06-6764-0711

HP:www.charkha.net/

営業日:木・金・土曜のみ営業(不定休があるためHPをご確認ください)

Instagram:@ charkha.zakka

今回ご紹介した「チャルカ」の最寄り駅は、Osaka Metro谷町線と長堀鶴見緑地線が通る、谷町六丁目駅。谷六(たにろく)という愛称で親しまれるこの街は、梅田まで約10分、心斎橋まで約5分という中心地の立地でありながら、戦災を免れたこともあり、木造瓦ぶきの長屋や石畳の風景などもところどころに残る、趣のある街並みです。

家賃相場は6.66万円ですが、1LDKは11万円台2LDKは16万円台が平均と、他の町より少し平均値があがりますが、築年数が古い物件であれば、家賃が安価なものも。近隣にはタワーマンションも増えており、さまざまな物件がそろいます。

街が発展し、お店が増えれば増えるほど、ふらっと日常の延長で立ち寄れるような場所は少なくなっていくものですが、「チャルカ」という場所は、その土地に暮らす人を迎え入れてくれるような場所。東欧の雑貨に興味がある方はもちろん、食や刺し子など何かのきっかけで足を踏み入れることで、また新たな暮らしが始まるきっかけを得られるかもしれません。ぜひ谷町六丁目に暮らし、人と出会い触れ合う暮らしを始めてみませんか。

◆本記事の担当者

取材・文:小島知世 写真:沖本明

[clink id="925" type="button"][/clink]

公開日: