今お住まいの家に擁壁(ようへき)がある場合は、建替え時に擁壁のやり直しをしなければならないケースもあります。まずは、擁壁工事が必要となる場合やかかる費用、注意点などについて見ていきましょう。
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建替え時に発生する擁壁工事とは

家の建替えを考えるようになったタイミングで改めて擁壁の存在を意識するようになった人もいるのではないでしょうか。まずは、そもそも擁壁とはどのようなものかについて解説します。
擁壁とは?
「擁壁(ようへき)」とは、高低差のある土地を造成する際に、斜面の崩壊を防ぐために設ける壁状の構造物です。高低差のある土地は、建物の荷重や雨水の水圧で崩れてしまう危険性があります。それを防ぐために擁壁をつくり、土を留めているのです。
擁壁の種類
擁壁には大きく分けて3つの種類があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
■石積み擁壁
イメージとしてはお城の石垣などに近い構造です。「練積み」と呼ばれる石やブロックの間をモルタルで埋めていくものと、「空積み」と呼ばれる石を積み重ねていく2つの工法があります。「空積み」は現在の建築基準法上では認められていません。
■コンクリート擁壁
鉄筋の入っていないコンクリートでつくる擁壁。鉄筋コンクリートより工期が長くなってしまう特徴がありますが、比較的安価な工事が可能です。設置現場でコンクリートを打つ工法となるため、できあがりの見栄えなどは施工会社によって差が出てきます。施工実績等を踏まえてよく検討してみてください。
■鉄筋コンクリート擁壁
一般的な工法の鉄筋コンクリート擁壁は、コンクリートの中に鉄筋が入っている擁壁で、「RC擁壁」とも呼ばれています。斜面に対してまっすぐ設置できるため、擁壁上の土地を広く活用することが可能。3種類の中でもっともコストが高くなるので、費用面を含めてよく検討しましょう。
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擁壁を解体して新しくつくり直す必要があるケースとは?

建替え工事をする際に、擁壁を新しくつくり直す必要があるケースについて、それぞれの詳細を見ていきましょう。
現状の擁壁が法律や条例を満たしていない
現在ある擁壁が、安全上守るべき法律や条例を満たしていない場合は、家の建替え時に擁壁も新しく工事する必要があります。
特に確認しておくべき法律や条例は下記の2つです。
■建築基準法
建築基準法第19条によって、高低差のある土地に家を建てる場合は、崖崩れなどが起こらないように擁壁を設置するよう定められています。建替えの際には今住んでいる家の擁壁を新しくするべきなのか、ハウスメーカーともよく相談をしてきちんと工事計画を立てましょう。
■がけ条例
「がけ条例」は通称で、各自治体によって呼び方が違います。たとえば、東京都の場合は「東京都建築安全条例」第6条において「高さ2mを超えるがけの下端からの水平距離ががけ高の2倍以内のところに建築物を建築し、又は建築敷地を造成する場合は、高さ2mを超える擁壁を設けなければならない」と定められています。自治体によって細かい内容が異なるのでよく確認するようにしましょう。
今の擁壁に劣化が目立つ、耐用年数を過ぎている
一般的に、擁壁は鉄筋コンクリート工法でつくられていても、耐用年数は30〜50年といわれています。そこまで年数が経っていなくても、災害や大雨などで劣化する可能性もあるので、国土交通省が発行している「我が家の擁壁チェックシート(案)」を確認し、自宅の擁壁の安全度を一度チェックしてみてください。

擁壁工事に必要な申請とは

これまで説明してきたように、今住んでいる家の擁壁が条例を満たしていない場合や劣化が激しい場合は、家の建替え工事だけでなく擁壁の工事もしなくてはいけません。その場合は自治体に申請する必要があるので、具体的な手続きの流れについて説明します。
擁壁工事の際に申請が必要になる理由
先述のとおり、全国には通称「がけ条例」というものがあり、土砂崩れなどの危険性があるエリアで家を建てる場合は擁壁も一緒につくる必要があります。また2mを超える擁壁をつくり替える場合は、建築基準法において確認申請の手続きが義務づけられています。つまり、ほとんどの擁壁工事は2m以上の高低差がある土地を想定しているので、申請が必要になるということです。
「建築確認申請」の申請手続き
擁壁の高さが2mを超える場合、お住まいの自治体に「建築確認申請」を出す必要があります。たとえば横浜市の場合は、次の手続きで申請が可能です。
- 指導担当又は構造担当へ、確認申請の事前予約
- 最寄りの建築局へ「申請等受付チェックシート」を提出
実際の申請手続きや必要書類などはお住まいの自治体によって変わってくるので、必ずチェックするようにしましょう。ここまでは一般的な流れですが、東京都全域(島しょ部を除く)において擁壁工事をする場合は、次の法令も確認するようにしましょう。
「宅地造成及び特定盛土等規制法」で定められた規制エリア内で擁壁を工事する場合
東京都では、盛土や土砂崩れによる危険から住民を守るために、2024(令和6)年7月から「宅地造成及び特定盛土等規制法(以下、「盛土規制法」)」が定められました。土砂の崩落により安全に影響を及ぼすエリアは制限地域となっており、当該のエリア内において新しく擁壁工事をする場合は、お住まいの自治体に申請してください。
東京都の場合は、次の手続きで申請が可能です。
許可申請前
…土地の所有者等全員の同意を得る /周辺住民へ事前に周知する
許可申請・許可
…都が定める工事許可基準を満たしているか確認/都知事の許可を得る
工事着手
…現場で標識を掲げる/自治体への定期報告/工事完了後に確認しにくい箇所の中間検査
完了検査
…安全基準を満たしているか確認
今ある擁壁が古くなって割れている状態を放置していると、自治体から是正命令が行われる場合もあるので、必ず安全性に問題がないか確認するようにしてください。
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擁壁工事にかかる費用の相場は?

今ある擁壁の解体工事と新しい擁壁の新設工事をしなければいけない場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。ここではそれぞれの費用相場と、利用できる助成金について解説していきます。
擁壁の解体費用の相場
一般的に鉄筋コンクリートの擁壁を解体する費用内訳としては、擁壁の解体・擁壁を解体した土地の掘削・余分になった残土の処分・高さのある擁壁を解体する場合は足場の設置・重機を利用する場合はその費用・諸経費がかかります。大まかに40万円程度を見積もっておくといいでしょう。
お住まいの土地や自治体の条例、解体会社によっても費用の幅が大きく変わってくるので、あくまで目安の費用と考えてください。
新しい擁壁工事に必要な費用目安は?
擁壁工事の費用目安としては、「単価×面積」で算出することができます。たとえば、1平米あたり5万円の擁壁を、高さ2m・幅15mで設置する場合、150万円の費用がかかることも。さらに注意したいポイントとして、もし工事する家の前の道路が幅4mの狭い場所であれば、通行制限をする必要が出てきます。通行制限をするための人件費なども予算に入れておくといいでしょう。
自治体によっては助成金などの補助も利用できる
擁壁を新設する工事の場合は、数百万円ほどかかってしまうこともあるので、お住まいの自治体の助成金を調べてみましょう。たとえば、東京都品川区では、一定の要件のもと擁壁新設工事費の1/2(上限500万円)を助成しています。
住んでいる人々や通行人の安全を守る工事なので、各自治体のバックアップも手厚い傾向にあります。ぜひ、助成制度を積極的に調べてみてください。
建替え時の擁壁工事における注意点

擁壁工事は、近所に住む人やハウスメーカーとのトラブルの原因になることもあります。これから説明する注意点を参考にしてみてください。
地盤沈下を防ぐために地盤調査は必須
擁壁工事をする際には、必ず地盤調査もセットで行う必要があります。地盤の弱い土地に擁壁を作っても、災害時に擁壁ごと沈んでしまう恐れがあり、安全上の効果が少ないためです。
もし土地の地盤が弱いと分かった場合は、盛土工事や地盤改良工事も必要になってきます。工事費用や土の購入費用などが追加でかかってくるので、きちんと調査をしたうえで費用の計算をするようにしましょう。
隣地との境界線を確認
擁壁に限らず、隣地との境界線はトラブルの元となりやすいです。擁壁を設置した場所が隣地との境界線上、または境界を超えていた場合は大きな問題となるため、工事前に両者の合意が取れている状況が望ましいといえるでしょう。
解体会社や、ハウスメーカーをよく見極める
お住まいの地域に根付いている解体会社、ハウスメーカーの場合は自治体の条例に詳しかったり、隣地との挨拶・交渉に同行してくれるケースもあります。安心できる会社を見極めましょう。
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記事のおさらい
そもそも擁壁とは?
高低差のある土地を造成する際に、斜面の崩壊を防ぐために設ける壁状の構造物です。大きく分けて石積み擁壁、コンクリート擁壁、鉄筋コンクリート擁壁の3種類があります。「建替え時に発生する擁壁工事とは」をご覧ください。
擁壁を新しくつくり直す必要があるときはどんなケース?
現在の条例や法令に沿ってつくられていない場合や、劣化が目立つ場合には擁壁を新しく工事する必要があります。詳しくは「擁壁を解体して新しくつくり直す必要があるケースとは?」をご覧ください。
擁壁の工事に必要な申請は?
擁壁については、お住まいの自治体ごとにさまざまな条例があり、それに沿って工事の申請をする必要があります。詳しくは「擁壁工事に必要な申請とは」をご覧ください。
古い擁壁の解体と、新しく擁壁をつくるためにはどれくらいの費用が必要?
擁壁の解体費用は大まかに40万円程度、新設費用については「単価×面積」で決まります。自治体によっては助成金が出るケースもあるので確認してください。詳しくは「擁壁工事にかかる費用の相場は?」をご覧ください。
建替え時の擁壁工事について、気をつけることはある?
隣地との境界線トラブルになる場合や、地盤沈下によって費用がかさむ場合も考えられます。詳しくは「建替え時の擁壁工事における注意点」をご覧ください。
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更新日: / 公開日:2025.02.18










