ハウスメーカー(住宅メーカー)に家づくりを依頼する際には、「工事請負契約」と呼ばれる契約を結びます。

工事請負契約とは、受注者が決められた内容の工事を完成させ、発注者がその対価として報酬を支払う、法律上の取り決めのことです。

法的なやりとりである以上、どちらかが適切に責任を果たせなければ、違約金が発生する可能性もあります。

この記事ではハウスメーカーとの契約において「どのような場合に違約金を払わないといけないのか」「万が一契約解除をする場合にはどのような手続きが必要なのか」について詳しく見ていきましょう。

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注文住宅を建てるときには、ハウスメーカーと工事請負契約を結ぶことになります。

 

契約の解約や解除に伴う違約金に関する取り決めは、通常は工事請負契約書に記載する場合が多いため、まずは工事請負契約書の内容をよく確認することが大切です。

 

工事請負契約で違約金が発生するケースは、「施主都合のケース」と「ハウスメーカーの契約違反(債務不履行)によるケース」の2つに分けられますが、それぞれ取扱いが異なります。

 

また、着工前と着工後では対応に大きな違いがある点にも注意が必要です。この点については、次の項目で詳しく解説します。

 

なお、工事請負契約は不動産の売買契約とは異なり、契約時に支払った手付金を放棄すれば、必ず契約を解除できるというわけではありません。

 

これは、工事請負契約における契約の解約・解除では、ハウスメーカー等に生じた損害を賠償する必要があるためです。そのため、タイミングによっては、違約金(損害賠償額)が高額になるケースもあるのです。

 

施主の都合によって工事請負契約を解約・解除する際は、「合意解約」「手付解除」「民法の請負の規定に基づく解除」の3種類があります。それぞれの方法におけるポイントや手続きについて解説します。

 

合意解約とは、施主とハウスメーカーが合意をすることで、工事請負契約を解約する方法を指します。

 

ハウスメーカーの判断次第ではありますが、施主都合の場合でも合意解約に対応してもらえるのであれば、違約金の支払いはハウスメーカーとの話し合いによって決められることになります。

 

着工前であれば、契約時に支払った手付金(契約金)を放棄することによって、工事請負契約を解除できる場合があります。

【民法第557条】(手付)

買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。

(引用:e-Gov法令検索『民法』第557条)

ただし、上記の条文にあるようにハウスメーカーがすでに工事を着手しているときは、手付解除が行えない点に注意が必要です。

 

民法の請負の規定による解除とは、以下の条文が根拠となります。

【民法第641条】(注文者による契約の解除)

請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。

(引用:e-Gov法令検索『民法』第641条)

着工後であっても、施主はハウスメーカーに損害を賠償することで、いつでも契約を解除することが可能です。

 

しかし、解除するタイミングによっては、損害賠償が膨らんでしまう可能性があるので気をつけましょう。

 

また、着工前の場合でも、次の項目は支払いが必要なケースがあります。

  • 打ち合わせにかかった費用
  • 建築資材の仕入れにかかった費用
  • 地盤調査の費用
  • 図面の作成費用
  • 工事で得られた利益の一部 など

なお、工事請負契約書に施主都合で契約を解約・解除した場合の違約金について定めがあるときは、原則として契約書の内容に沿う形で手続きが進められます。

 

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ハウスメーカー側に何らかの契約違反があり、住宅の建築を継続することができず契約を解除する(債務不履行解除)場合は、損害賠償請求が問題となります。

 

着工前であれば、工事が延期されたことによって生じた現在の住まいの賃料などが当てはまるでしょう。

【民法第541条】(催告による解除)

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

(引用:e-Gov法令検索『民法』第541条)

また、民法第542条の規定においては、催告を行わなくても直ちに契約を解除することが可能です。

【民法第542条】(催告によらない解除)

次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。

 

一 債務の全部の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。

四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。

五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。

 

2 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。

一 債務の一部の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

(引用:e-Gov法令検索『民法』第542条)

また、ハウスメーカー側に故意または重過失があるときは、損害賠償金の一部を免除するような違約金の取り決めは適用されないことになっています。

【消費者契約法第8条1項2号】(事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)

次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。

 

二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項

(引用:e-Gov法令検索『消費者契約法』第8条1項2号)

一方、事業者に対して支払う違約金が一般的な損害額を超えるときは、超えた部分の支払いは無効になるという規定もあります。

【消費者契約法第9条1項1号】(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効等)

次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。

 

一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分

(引用:e-Gov法令検索『消費者契約法』第9条1項1号)

 

工事請負契約における契約の解約・解除に伴う違約金の発生は、着工前と着工後で違いがあります。

 

特に、着工後にハウスメーカー側から請求される損害賠償額は高額になる可能性があり、すでに工事が完了している部分については違約金の支払いを求められるといえるでしょう。

 

着工後には手付解除が行えない点にも注意が必要です。また、着工前であっても建築資材の仕入れなどを行っていたときは、その分の支払いが求められます。

 

そのため、よほどの理由がない限り、施主の都合による工事請負契約の解約・解除は避けた方が無難だといえます。

 

無用なトラブルを避けるためには、家づくりを始める段階で信頼できるハウスメーカーを選び、住まいのイメージをしっかりと固めておくことが大切です。

 

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希望すれば、実績豊富なハウスメーカーも紹介してもらえるので、ぜひ活用してみてください。

 

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着工前でも、違約金の支払いは必要?

着工前であれば、手付金を放棄するだけで解除できる場合がありますが、契約を解約・解除するタイミングにもよります。違約金の支払いについては、まず工事請負契約書の内容をよく確認しましょう。

ハウスメーカー側の責任だと、契約を解除できる?

故意または重大な過失によって工事が進まず、催告をしても状況が改善しないときには工事請負契約を解除することが可能です。その場合は、ハウスメーカー側に対して損害賠償請求を行うことになります。

 

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