1級建築士の蔦田頼主です。これから家を建てたいという人に向けて、家づくりのポイントを解説します。

私自身、以前勤めていたハウスメーカー時代、設計を担当したお客さんから「最高にくつろげる浴室をつくりたい!」と相談されたことがあります。詳しく話を聞くと、普段家族と過ごすリビングはもちろん、一日の疲れを癒す浴室をリラックスできる空間にしてほしいと要望をいただきました。

たしかに、浴室はリビングや寝室と同様に、生活を豊かにするうえで欠かせない、大切な空間といえます。ここからは実際に担当した例を基に、どのようにくつろげる浴室をつくっていくのか、解説します。
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浴室

 

最初に行うのは、よい部分も悪い部分もフラットな感覚で敷地と向き合うことです。どんな条件でもできるだけ、弱点ではなく、特徴だととらえましょう。

 

たとえば、北側に開けた土地だとします。弱点と考えると、南面の日光が取り入れづらい敷地に感じますが、北側は直射日光が差さない分、一年中、安定して光を取り入れることができます。

 

そのため、直射日光を嫌う美術品を作成するアトリエなどには、北側の窓を積極的に採用するケースが多いです。子ども部屋の窓に置き換えると、常に安定した光が取れるので、勉強しやすい空間ともいえます。

 

今回のケースでは、敷地が西側に傾斜し、人通りのない緑地に面していました。そのため、西側のサンセットと視線の入りにくい緑地の景色を生かす計画にしようと考えました。

 

緑地

 

「最高にくつろげる浴室」と聞いたとき、お客さんと私の間にあった共通認識は、次のようなものでした。

  • 日当たりがよく、ぽかぽかとした日光浴のできる空間
  • 景色がよく、人目を気にせずに入浴できる空間
  • マッサージチェアなどを置ける、遊び心のある空間

それらの要望を以下のとおりまとめて、これらが連続するような空間を設計しました。

  • 西側の景色が一望できる浴室(2階)
  • 洗濯物なども干せるくらい広いゆったりとした脱衣所
  • 背の高いルーバー(羽板)+日当たりがよく、外から見えづらいベランダ

 

今回、「最高にくつろげる浴室」をメインにしていますが、ほかのリビングやダイニング、寝室といった部屋との連携も大切にしました。

  • 西側のベランダからダイニングキッチン側に光が入るようにして、浴室にくつろぎを与えるベランダが居室にも心地よさを与えるようにする
  • ダイニング→寝室→ウォークインクローゼット→脱衣所(洗濯室)→ベランダ→ダイニング(キッチン側)…の回遊動線があり家事動線に配慮する
  • 上記の動線は、寝室から脱衣所へダイレクトにアクセスできるため、「起きてすぐ朝風呂に入る」という旅館のような遊び心ある動線にもなる

家全体との連携も大事にすることで「最高にくつろげる浴室」が「最高に居心地のいい豊かな家」をつくるきっかけになったと思います。

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浴室

 

浴室や水回り空間は、水を扱う以上、ほかの部屋に比べると当然ながら湿気がたまりやすい空間になります。

 

今回の脱衣場や浴室だけを見ると、外気(ベランダや窓)に面しているため、換気しやすい空間になりますが、計画上は脱衣所からウォークインクローゼットにアクセスできるため、同時に湿気もウォークインクローゼットに入りやすくなっています。

 

ですので、寝室は常に浴室と比べて正圧となるように。脱衣所側は負圧になるように換気設備も計画しました。

 

具体的にいうと、寝室とウォークインクローゼット側には空気が入り込むように湿度調整機能のついた換気扇を設け、脱衣所からは空気が出ていくように排気扇を設けました。それにより、空気は、外→寝室→ウォークインクローゼット→脱衣所→外と流れます。

 

また、外壁に面した寝室の換気扇と、脱衣所の排気扇の距離を離すことにより、湿気を含んだ排気扇の空気が、寝室の換気扇から入り込まないようにも配慮しています

 

こういった換気経路などは間取りだけではなかなかイメージしづらいので、実際に設計をしている建築士に聞いてみるといいでしょう。

 

寝室から脱衣所への動線は、生活リズムの豊かさをもたらすと同時に、水の音が寝室に聞こえやすい位置関係でもあります。

 

今回ウォークインクローゼットを挟んでの計画でしたが、水回りと寝室の間には、しっかりとした遮音壁を設置すると同時に、寝室側の収納などを設けて、できるだけ直接部屋同士が隣接しないようにしましょう。

 

また、浴室やトイレのある水回り部屋の直下には、寝室など静の空間をつくらないほうがいいでしょう。床にしっかりとした遮音対策をしていたとしても、完全には遮音できず、住んでから後悔したというケースもあるためです。

 

今回の設計は浴室→脱衣所→ベランダへ、掃き出し窓から直接アクセスできる動線にしているので、春や秋はぽかぽかと気持ちのいい空間になりますが、窓は断熱しにくく、室内の熱が逃げやすい箇所になるため、冬の寒さ対策は必須でした。

 

今回は脱衣所内に床暖房と簡易エアコン(湿度調整機能付)を設置し、窓自体もできるだけ断熱性の高いガラスを採用し、寒さ対策を万全にしました。冬場のヒートショックは特に危険なので、配慮が必要です。

浴室

 

「浴室」というと、一般的な建売住宅ではリビングやダイニング、個室などと比べると優先順位が低い空間になります。だからといってこだわってはいけない理由はどこにもありません。

 

生活のしやすさや居心地とのバランスは大事ですが「旅館のような家に絶対に住みたい!」という願望がある人にとっては、「水回り空間や浴室へのこだわり=生活の豊かさ」へとつながります。

 

注文住宅にとって大切なことは、安心や安全、居心地のよい場所であることは大前提として「生活に豊かさをもたらす場所であるか」だと思います。

 

夢をかなえること、理想の空間に住むこと、憧れの場所を再現すること、すべて豊かさにつながります。ぜひ、家を建てる際には自分にとっての「豊かさ」を考えてみてください。

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