すべての生活空間がワンフロアに収まる平屋には、2階建てにはない魅力や利便性があります。しかし、2階建てと比べると広さを確保するのが難しく、設計に工夫が必要な面があるのも事実です。
今回は4人家族で生活するのに必要な建物の広さや土地の面積、主な間取りの事例について詳しく見ていきましょう。
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平屋のメリット・デメリット

面積に関するポイントを見ていく前に、まずは平屋の特徴を押さえておきましょう。ここでは、平屋の主なメリットとデメリットを紹介します。
平屋のメリット
平屋の構造上の特徴は2階建てと大きく異なります。すべての住空間がワンフロアに収まることで、さまざまなメリットが生まれるのです。
メリット
- 効率の良い動線確保が可能
- 段差が少なくバリアフリー化しやすい
- 家族とコミュニケーションがとりやすい
- 庭の景色を楽しみやすい
- 構造が安定しやすく、広い間口を確保しやすい
- 部屋の高さを確保することで開放感が生まれる
- 2階建てよりもメンテナンスコストが抑えられる
平屋の大きな魅力は、上下の移動が必要なく、効率的な動線確保が可能なところにあります。すべての設備がワンフロアに集約されるため、家事や掃除の負担が少なくなるのです。
さらに、上下階に分かれていないことで、「バリアフリー化しやすい」「家族で顔を合わせる機会が増える」といったメリットも生まれます。
また、生活空間を庭と一体化しやすく、中庭の景色を楽しめるように工夫された間取りが多いのも特徴です。
構造面からいえば、2階建てよりも安定性が高く、比較的に自由な建築が可能になる点がメリットとなります。2階の荷重を計算する必要がないため、柱や壁を減らすことができ、広々とした間口を実現しやすいのです。
また、2階建てのように高さの制限を気にせずに済むことから、部屋の高さを確保したり、吹き抜けを導入したりすることも可能です。
平屋のデメリット
平屋のデメリットとしては、以下のポイントが挙げられます。
デメリット
- 広い敷地が必要
- プライベート空間の確保が難しい
- 日当たりの確保が難しい
- 延べ床面積の割に建築費が高くついてしまう
平屋で2階建てと同等の居住面積を確保しようとすると、それだけ広い土地が必要になってしまいます。そのため、都心部などの地価が高いエリアでは、平屋を見かける機会がそれほど多くありません。
また、部屋同士の独立性が低いため、間取りによってはプライベートな空間をつくりにくい面があります。さらに、周辺の建物によっては日当たりの確保が難しく、採光性を高める仕組みも欠かせません。
いずれにしても、平屋で快適な住環境を実現させるためには、スペースの確保や間取りの配置に工夫が必要となります。
2階建てより割高? 平屋の建築費用の目安

平屋の注文住宅を建てる際には、2階建てとの建築コストの違いに目を向けておく必要があります。ここでは、平屋の建築費用の目安について見ていきましょう。
平屋の建築コスト
平屋は2階建てに必要な足場の組み立てがないため、建築コストを安く抑えられる面もあります。しかし、平屋は2階建てと比べて、基礎部分と屋根の面積が広くなります。
これらの箇所は特に建築費用がかかりやすいため、結果として同じ延床面積の2階建て以上にコストがかさんでしまうのが一般的です。トータルコストは2階建てよりも1~2割程度高くなると考えておきましょう。
坪単価60~80万円程度が目安
具体的な費用相場としては、坪単価60~80万円程度が目安とされています。細かな費用については、施工会社によっても異なるため、複数の会社に見積もりを依頼して比較することが大切です。
平屋住宅の住宅カタログを探す 無料で住まいの窓口に相談する4人家族にはどのくらいの広さが必要?

平屋を建築するうえで、もっとも重要なポイントといえるのが、生活に必要な居住スペースの確保です。ここでは、国土交通省の「住生活基本計画」をもとに、4人家族に必要な面積について解説します。
4人家族の最低居住面積水準は50平米
住生活基本計画によれば、4人家族に必要な「最低居住面積水準」は50平米とされています。
最低居住面積とは、「健康で文化的な生活に必要不可欠な面積」を示すものであり、50平米あれば4人家族が生活できる最低限の面積は確保できるという意味です。
なお、50平米は畳数に換算すると約31畳となり、間取りは2LDKになることが多いといえます。
4人家族の誘導居住面積水準は95~125平米
最低居住面積水準に対して、多様なライフスタイルに合わせて豊かな住生活を送れる広さのことを「誘導居住面積水準」と呼びます。
誘導居住面積水準は、都心とその周辺地域を想定した「都市型」と、都市部以外のエリアを想定した「一般型」に分かれており、それぞれ土地の価格が異なることから、水準にも違いが設けられています。
4人家族の場合、都市型では95平米、一般型では125平米が水準です。畳数に換算すると59~77畳程度であり、間取りでは3LDK~5LDKのものが中心となります。
このように、住まいのエリアによっても確保できる広さが異なることを意識して、注文住宅の面積を考慮する必要があるのです。
4人家族の平屋にはどのくらいの土地が必要?

続いては、必要な土地の面積についても見ていきましょう。平屋は2階建て以上に広い土地を必要とするため、特に注意が必要となります。
建ぺい率とは
建ぺい率とは、建築基準法によって定められた「土地の敷地面積に対する建築面積の割合」を示す数字です。
建築面積とは「建物を真上から見たときの広さ」を意味しており、平屋の場合は、そのまま住宅の面積として捉えて問題ありません。
土地にはそれぞれ、防災や風通し、景観の維持などを目的として、建築基準法によって建ぺい率の制限が設けられています。
たとえば、敷地面積100平米の土地であっても、建ぺい率が60%となっている場合は、建物部分の面積が60平米までに限られてしまいます。
建ぺい率と平屋の関係性
土地の建ぺい率は用途地域(※)ごとに30~80%程度と幅があり、基本的には建ぺい率が高い敷地のほうが、広い住宅を建てるうえでは有利だといえます。
しかし、住宅街を中心とした建ぺい率50~80%の地域には、2階建て住宅が密集しているケースも多く、平屋ではどうしても日当たりの確保が難しくなってしまうのです。
そのため、平屋を建てるのであれば、建ぺい率の低い土地を選ぶほうが快適な住環境を整えやすいといえます。
(※)用途地域とは、土地の用途に合わせて13種類に区切られた区域のことであり、「第一種低層住居専用地域」「商業地域」「工業地域」などといった種類があります。もっとも制限が厳しい住居専用地域などでは30~60%、商業地域では80%など、用途地域によって建ぺい率の上限には大きな違いがあるため、購入予定の土地がどの用途地域に当てはまるのか確認しておくことが大切です。
4人家族に必要な土地面積
「住生活基本計画」の居住面積水準をもとに、4人家族にどのくらいの土地が必要となるのか、実際に計算してみましょう。
| 建物の面積 | 必要な土地の面積 | |||
|---|---|---|---|---|---|
建ぺい率30% | 建ぺい率50% | 建ぺい率70% | 建ぺい率80% | ||
最低居住面積 | 50m2 | 166.7m2 (50坪) | 100m2 (30坪) | 71.4m2 (22坪) | 62.5m2 (19坪) |
誘導居住面積(都市型) | 95m2 | 316.7m2 (96坪) | 190m2 (57坪) | 135.7m2 (41坪) | 118.8m2 (36坪) |
誘導居住面積(一般型) | 125m2 | 416.7m2 (126坪) | 250m2 (76坪) | 178.6m2 (54坪) | 156.2m2 (47坪) |
この表からも明らかなように、建ぺい率30%の条件で誘導居住面積の住宅を実現しようとすると、必要な土地は極端に広くなってしまいます。
そのため、平屋を建てる場合には効率的な間取り配置を考え、建築面積を抑える工夫がより求められます。
平屋住宅の住宅カタログを探す 無料で住まいの窓口に相談する4人家族の平屋の間取り事例を見てみよう

平屋の間取りを考える際には、具体的な例をもとにして組み立てていくとスムーズです。ここでは、最低居住面積水準に近いものと、誘導居住面積水準に近いものの間取り事例を見ていきましょう。
事例1:動線効率を高めたロフト付き2LDK

最低居住面積水準に基づいて考えると、2LDKの間取りが現実的な範囲となります。
この事例では、廊下を削った分、動線効率が向上しているとともに、シューズインクローゼットやウォークインクローゼットといった収納も設けられている点が特徴です。
また、平屋の魅力の1つは、何といっても高さと開放感のあるLDKです。吹き抜け部分の一部にはロフトが設けられており、フリースペースとして使用することができます。
事例2:ゆとりのある室内空間とウッドデッキが魅力の4SLDK

誘導居住面積水準で考える場合は、3LDK以上の間取りを実現することが可能です。
この事例では、20畳を超えるLDKを中心に、洋室3部屋、和室1部屋と十分な部屋数があるため、家族それぞれに個室をあてることができます。
さらに、LDKに隣接したウッドデッキでは、「庭の景観を楽しめる」といった平屋の魅力を存分に満喫できます。また、日当たりについては、もっとも条件に恵まれた南向きにLDKとウッドデッキが配置されている点が大きな特徴です。
ウッドデッキの先には駐車場用のスペースがあるため、平屋であっても日当たりが遮られる心配はありません。
4人家族で平屋に住むなら効率的な間取り配置がカギ

- 平屋には2階建てにはないさまざまなメリットがある
- 建築コストは2階建てよりも1~2割ほど高くなる傾向
- 4人家族の最低居住面積水準は50平米、誘導居住面積水準は95~125平米
- 平屋は2階建てよりも広い土地が必要なため、限られた空間を効率的に使える間取り決めが重要
更新日: / 公開日:2021.06.01










