土地を購入する際のプロセスは建物付で購入するよりも慎重にならなくてはいけない部分もあります。建築制限はもちろん隣地との関係や登記に関する事項です。これらを事前に念入りに調べておかなければ、引渡後になって二束三文の土地だと判明しても遅いです。土地購入のプロセスと契約締結時の注意点、そして登記に関すること等をわかりやすくまとめます。
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買い付け、契約、引渡3つのステップごとに注意する
土地を購入するということは、その土地に家を建てたり、何かに活用したりという前提でしょう。その土地の持っている性質を「現地で確認すべき内容」、「法令上での制限での内容」、「そして登記面での内容」について購入に値する土地かどうかを調べることが不可欠です。
土地購入の流れを3つのステップに分け、それぞれの時点で確認しておくべきポイントをまとめてみました。
買い付けの前に確認しておくべきこと
買い付けとは気に入った土地が見つかった際に、「買う意思がある」ということを売主側に正式に書面で申込ことを言います。契約のように解除や解約のルールに縛られる厳格さはありません。しかし、買い付けの申込をしたということは、「特別な事情がない限り必ず買う」という意思表明になります。そのため、この段階で、その土地について充分な内容を把握しておく必要があります。
販売図面の情報以外にも現地と登記の関係をつかむ
対象地の物件概要については不動産会社から入手する「販売図面」で確認できます。建築制限や配管設備に関すること等で、もし不明瞭な点がある場合は不動産会社に詳細を確認できます。しかし、現地と登記の関係は販売図面の内容以上に情報を入手することが堅実です。
例えば、
- 登記簿上の面積(公簿)は、実際の面積(実測面積)とはどれくらいの差があるのか
- 登記簿の地目と現地の整合性はどうか。(現地では宅地だが登記簿では田畑のままになっている)
- 道路が私道負担ありとなっているが、正確に何m2なのか。セットバックのラインは決まっているのか
- 隣地との境界線は未確認となっているが、現地で越境しているような事実はないのか
- 更地になっているのに古い建物の登記が残っていないか
これらの内容が特記事項として表示されている広告もありますが、殆どにおいては、そうではありません。大きな買い物をするのに不確かなことが多いまま買い付けを入れてしまうことも多いでしょう。最低限、次の事項を法務局で確認して現地との整合性を確かめておくことをお勧めします。
- 隣接する土地の要約書を確認して隣地所有者に反社会勢力を想像させる団体や法人名の登記になっていないか
- 公図が現地と一致していない、地積測量図が存しない→公簿取引だと後日の測量費がかさむ
- 現地が更地なのに古い建物の登記が残っていると第三者に借地権を主張される
- 近隣地に地積測量図を参考にセットバックのラインを現地で落とし込んでみる
買い付け時にここまで把握して申込を入れる人はあまりいません。確かに買い付けのタイミングで悠長にしていると第三者に先を越されてしまうという懸念もあります。しかし、半日あれば法務局と現地を再確認することも不可能ではありません。「ぜひ急がば回れ」でチェックしておきたい内容です。

登記簿の確認はしっかりと
契約時には重要事項説明でダブルチェック
買い付け時に先ほどの問題点を定義しておくことで、その内容を売主と買主の間で煮詰めた方向にして契約に持っていけます。未登記に関する費用の負担の有無。境界確定はしていないが、隣地との境界トラブルもないことを確認する。現況と登記簿の地目があっていない部分は売主が契約までに変更しておく。これが買い付けの時に何も明確になっていないとどうなるでしょうか。
契約時に「重要事項説明書」の内容で初めて知ることになります。契約を締結する流れになっているということは、融資の審査には通っているでしょうし、決済引渡までの日程も決まっているような状態です。手付金として1割または2割の額をも用意しているでしょう。その時点で上記のような懸念材料を知らされるケースが決して少なくありません。
もし、事前に聞いていない内容が重要事項として説明された場合は決して鵜吞みにせず、「待った」をかける勇気も必要です。この時点で初めて知る場合は契約書に「買主の負担とする」「現状渡しとなる」となっている場合が多いのです。
登記につき不備があったり、現地に問題点が存在したりする場合は、その費用や対処を考慮した価格交渉ありきです。契約書を目の前にした時点でも譲歩できる部分と売主の責任として欲しい部分とをきっちり交渉することが重要です。
引渡までの注意点とその手続き
残金を全て清算し、所有権移転の手続きをする「引渡」。この引渡までが取引内容について考える最後のチャンスです。
買い付けの時点、契約の時点で見逃していた問題点が新たに発覚することは稀でしょう。どうしても引っかかっている点がある場合は、契約を解除できるラストチャンスでもあります。
引渡の準備につき売主が着手する前であれば、手付金を放棄することで解除できるのが一般的です。現地の状況、登記面、隣地関係でどうしても気になる点があり引渡に踏み込めない場合は解除するという決断も一考です。手付金の放棄というリスクもあるので、よく考えることが重要です。

所有権移転の手続きをする「引渡」
引渡時に行う所有権移転の一般的な手続き
買い付けから引渡までの流れは前述の通りです。次に、引渡時に行われる所有権移転の手続きについて説明します。売主と買主側にそれぞれ不動産会社が介入している場合はそれぞれに提携している司法書士が引渡時に立ち合いを行い、所有権移転の手続きを行います。
買主が用意する書類や手数料
- 住所を証する書面(住民票)
- 身分証明書(写真付きのもの 免許証など)
- 認め印
- 司法書士報酬費+実費調査費 約6万円から8万円 (出典:日本司法書士会連合会 報酬に関するアンケートによる平均報酬額)
- 登録免許税 対象不動産評価額の1000分の2
以上が買主の用意する書類と手数料等です。
売主側の司法書士は売主が持参する登記済証(登記識別情報)と売主の実印、印鑑証明、そして本人について全ての信ぴょう性を確認します。他人がなりすましで取引をしていないか、実印が偽造のものでないかなどです。
買主が融資を受けて、その融資につき抵当権を設定する場合は、融資先の銀行が指定する司法書士が手続きをすることが一般的です。
買主から売主への売買代金の支払い、書類などに不備がないことを確認した後、その日のうちに司法書士が法務局に出向き、所有権移転登記を申請します。代金の授受から登記書類が申請されるまでにタイムラグがあるため、国家資格を有する司法書士がその職務を遂行することで買主への所有権移転が担保されることになります。
所有権移転登記は自分でできる?
引渡時に行われる司法書士による所有権移転の手続きは、やはりその重みがあります。専門家に全ての書類を託すことで間違いなく所有権が移転するという安心感です。そのため司法書士には6~8万円の報酬費を支払います。この手続きを自分で行うことはできるのでしょうか。法的にはイエスです。しかし実務的には諸事情から自分で行えないことが殆どです。その主な理由は次の通りです。
- 融資を受ける場合、銀行が間違いのない所有権移転を担保するため指定の司法書士に依頼することが融資条件となる
- 不動産仲介会社を介しての取引の場合、これもスムーズな取引を望むため指定の司法書士への依頼が条件となっている
融資も受けず、知人間で取引を行う場合はご自身で所有権移転をすることができます。必要書類は以下の通りです。
必要書類
- 申請書(法務局のホームページでダウンロード可)
- 登記識別情報
- 印鑑証明書
- 住民票
- 固定資産評価証明書
- 収入印紙(登録免許税納付用)
書類の内容は法務局の登記相談コーナーで間違いがないかチェックしてもらうことが可能です。取引の日に先だってあらかじめ相談を受けておくとスムーズな所有権移転が行えます。
もし対象地が借地権付きの土地である場合は?
借地権が付いており、地上に他人の建物が建っている場合は、空き家になっていてもその建物の借地権が存続している可能性が高いです。売却に伴い建物の所有者が借地契約を解約することになっていると言われても、その建物の取り壊しおよび滅失登記を行い、借地契約が終了したことを書面により確認しなくてはいけません。
借地上の建物の所有者が亡くなり、相続人がいる場合はその借地権にも建物の所有権と同じく相続権が発生します。口頭での説明ではなく、必ず建物の借地権者が解約と建物の滅失手続きを行ってから取引をするようにしてください。
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ステップごとの注意点まとめ
| 契約の流れに沿った注意点チェック事項 | ||
|---|---|---|
| アクション | 詳細 | |
| 買い付け証明を出す前に | 登記簿等を法務局で調査 | 公図、地積測量図、登記簿を確認。 隣地の所有者と図面類についても チェック |
| 現地と登記の違いを調査 | 地目や地積、境界についての越境 の可能性などもチェック。 地積測量図に境界標の表示があればその有無を現地でチェック。 セットバックに関する事項は特に注意 | |
| 買い付け証明書に付す内容 | 登記、現地につき懸念される事項等への対処、減額等を条件として付す | 登記と現地の不一致への対処方法。 境界復元の費用分減額又は確定測量費用分減額など |
| 契約時の注意点 | 上記買い付け申込の条件について の特記事項確認。 調査済みの内容以外に新たな問題が契約書内にないかの確認 | 登記と現地の不一致につき契約する上での取り決め確認。 新たに明記された内容に不具合がある場合の対応 |
| 引渡までに注意すること | 取引に向けてのチェック最終段階 | もし、どうしても譲歩できない部分がある場合は手付を放棄して解除することも検討 |
| 引渡・登記 | 融資、仲介会社、知人間など 取引形態によって決済方法を 考える | 取引の最終段階。 手違いのないようにケースにより対応を選択する |
条件にあった土地を見つけて慌てて買い付け申込をしてしまう前に、本来なら調査しておいたほうがいいという内容が多数あります。購入について冷静に判断ができるようにぜひ参考にしてください。
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更新日: / 公開日:2017.08.01









