将来、子育てを考えたときに、「地方でのびのびと子どもと暮らしたい」と思う人は、少なくはないでしょう。
愛媛で生まれ育った私は、転職をきっかけに初めて地元を離れ、東京で約2年間暮らしました。東京には愛媛にない魅力がたくさんあったため、日々刺激的で新しい発見の連続でした。多くのことを学び、成長できた時間だったと思います。
一方で、通勤ラッシュや帰宅の遅さ、生活コストの高さなど、都市ならではの忙しさを感じることもありました。結婚を機にこれからの暮らし方を見つめ直したとき、「子どもとは自然の中で、もっとのびのびと過ごせる環境で暮らしたい」と思うようになりました。
そうして選んだのが、やはり自分にとって一番馴染みのある愛媛です。現在は、3歳の息子と0歳の娘、そして夫と4人で、愛媛県松山市ののどかな場所に一軒家を建てて暮らしています。この記事では、実際に松山市で子育てをする中で、感じる魅力や子育て支援について紹介します。
松山市での子育て
まずは、松山市の概要からご紹介します。
松山市の概要
松山市は愛媛県の県庁所在地で、県内のほぼ中央、「中予」と呼ばれるエリアに位置しています。人口は約49万人(2024年4月1日時点)です。
温暖な瀬戸内気候で、年間の平均気温は16.8度です。降水量が少ないため、夏場は水不足になりやすいことが少し気になります。四国山地に守られていて台風の通過が少なく、自然災害があまり起きない恵まれた環境です。
松山市は、俳人正岡子規の出身地であるほか、夏目漱石『坊っちゃん』や司馬遼太郎『坂の上の雲』など、小説の舞台にもなっている文化の街です。市内には「俳都松山俳句ポスト」がさまざまな場所に設置され、誰でも自分の一句をポストに投函できます。
道後温泉など、歴史あるものが多く点在する中、JR松山駅周辺や松山市駅前広場などの再開発が進められ、懐かしい風景と新しい街が混合する場所になりつつあります。
わが家が子育て環境に松山市を選んだワケ
「慣れ親しんだ愛媛で子育てがしたい」と思い、東京からUターンしました。ただし、戻ったのは生まれ育った地元ではなく、愛媛県の県庁所在地でもある松山市でした。
今回は、私が松山市を子育ての場に選んだ理由を、4つのポイントに分けて紹介します。
子育て環境に松山市を選んだ理由(1)物価が安い
松山市の家賃は、市がまとめたデータによると、東京都区部と比較すると半額以下です(3.3m2あたりの平均)。なお、中四国内では、3番目に物価が安い都市です。
実際に東京に住んでいたころ、家賃はもちろんのこと、スーパーで食材を買うときも、愛媛のスーパーとの値段の違いに驚いたのを覚えています。
子育て環境に松山市を選んだ理由(2)大きな商店街や大きな病院があり便利
松山市の中心部に、地元民が多く集まる商店街「大街道・銀天街」があります。お買い物や食事を楽しめるほか、イベントも頻繁に開催され、週末のお出かけスポットにぴったりです。
松山市には、大きな病院がいくつかあります。地元に住んでいたころ、身近な人が大病をしたときには、家から離れた松山の病院まで行く必要がありました。大きな病院が身近にあると、いざというときの安心につながります。
子育て環境に松山市を選んだ理由(3)自然が身近にある
子どもが生まれてから、気候のいい季節は、ピクニックをすることが増えました。松山市内には、芝生広場がある公園がいくつもあります。広々とした公園には、週末になるとお弁当やポップアップテントを持った家族連れが多く訪れます。
公園のほか、海や山も行きやすい距離にあり、自然の中で子どもたちをのびのびと遊ばせることが可能です。わが家から車で10分ほどのところに、綺麗な海水浴場があるので、定番の遊び場です。
子育て環境に松山市を選んだ理由(4)人が穏やかで子どもに優しい
松山市には、温暖な気候と相まって、温和な性格の人が多いと感じています。
実際に、子どもを連れてどこに行っても、温かく見守ってくれる人や可愛がってくれる人が大半です。近所の人も子どもに声をかけてくれるので、地域の人の目があるのは、とても心強く安心だと感じています。
実際どう?松山市の子育て
私が松山市で子育てをしてから、3年が過ぎました。実際に育ててみて感じる子育て事情をご紹介します。
数字で見る松山市の子育て事情
松山市の就学前児童数は、減少傾向をたどっています。しかし、保育所等利用者児童数は増加しています。松山市は1~2歳児の受け入れの強化をしていて、「待機児童対策・保育の質向上事業」「保育・幼稚園相談窓口」等の実施の成果といえるでしょう。
保育所数については、以下のとおりです(2024年3月)。
● 保育園:44ヶ所
● 幼稚園:27園
● 認定こども園:48園
● 地域型保育園事業:33ヶ所
待機児童数は、2022年から2024年まで0人でしたが、2025年には13人に増加しました。実際、息子が1歳で保育園に入園した2023年度は、最寄りの保育園のみを願書に記載して入園が叶いました。来年から娘も同じ保育園に通わせたいので、待機児童の増加は心配なところではあります。
待機児童対策として、1~2歳児について定員を超えて受け入れた施設への助成や入所予約制の導入、保育士確保の取り組みを実施していますので、その成果が出ることを期待したいです。
松山市の子育て支援情報
松山市は2034年に理想の未来像を叶えるための「まちづくりの分野別未来像」において、11の政策を掲げています。その1つにあるのが「こどもを輝く未来へつなぐ【こども・教育】」です。
出産・子育て中の人には、さまざまな支援がされています。現在実施されている、松山市の子育て支援情報を紹介します。最新情報については、松山市の公式サイトで確認しましょう。
松山市の子育て支援情報(1)出産に伴う補助金が手厚い
愛媛県と連携した事業も含め、出産に伴う補助金が非常に手厚く、出産世帯の経済的負担をサポートしてくれます。現在、条件を満たせば、以下の補助金が給付されます。
・妊婦支援給付金
給付内容:出産前5万円、出産後胎児の数×5万円
妊娠届出(母子健康手帳交付)のときと、産後の「こんにちは赤ちゃん訪問」という保健師による家庭訪問時の面談で給付を案内され、申請できます。
・【県市連携事業】出産世帯応援事業
給付内容:以下の条件に該当すれば、育児用品や時短家電、省エネ家電などの対象品の購入費用を限度額まで補助
給付条件:2025年4月1日以降に出産した世帯/限度額30万円
2024年4月2日以降に出産して出産時の父母の年齢が35歳以下、もしくは2024年度の住民税均等割が非課税世帯で、出産時の父母の年齢が両方または一方が36歳以上の場合は限度額20万円です。
私は2024年の12月に出産した対象世帯なので、子ども部屋のエアコンや、娘用のハイチェアなどを購入して、補助を受ける予定です。
・【県市連携事業】出産世帯奨学金返還支援事業
給付内容:条件がすべて該当すれば、奨学金返還の上限20万円分の助成を受けられる
条件の確認や手続きに必要な書類の準備に手間はかかりますが、補助限度額20万円が助成されるため、対象者の経済的負担の軽減につながります。条件や必要書類については、松山市の公式サイトで確認できます。
松山市の子育て支援情報(2)子ども医療費助成
0歳から18歳到達年度の3月31日まで、保険診療による入院・通院の医療費自己負担分が助成されます。
実際に、息子は0歳のときに精密検査を受けた経験があります。そのときも自己負担が0円だったので、改めて医療費助成のありがたみを感じました。保育園に通うようになってから、感染症にかかることが増えたので、お金を気にせず通院できて非常に助かりました。
松山市の子育て支援情報(3)第二子以降の子どものいる家庭におむつ券の配布
第二子以降の子どもの出生届を提出すると、「愛顔(えがお)っ子応援券」が配布されます。これは、県内企業3社が生産する乳児用紙おむつ製品を、市内の登録店で購入できるおむつ券です。5万円分(1,000円×50枚綴り)になるので、きょうだいでおむつが必要な世帯は、特に助かる支援でしょう。
松山市の子育て支援情報(4)ファミリー・サポート、イクじぃ・ばぁばママサービスの利用助成
「ファミリー・サポート」とは、まつやまファミリー・サポート・センターが実施する子育てを援助するサービスです。「イクじぃ・ばぁばママサービス」は、松山市シルバー人材センターが養成講座を開き、受講した会員である高齢者が「イクじぃ・ばぁばママ」となり、子育て支援をしてくれます。
サービス内容は、子どもの保育園の送迎や、親が不在時の留守番などの手助けです。それぞれ、以下の助成を受けられます。
・ファミリー・サポート:1ヶ月につき2時間30分までが無料
※児童扶養手当受給者は、1ヶ月につき5時間までが無料
・イクじぃ・ばぁばママサービス:1ヶ月につき5時間までが半額
※児童扶養手当受給者は、1ヶ月につき10時間までが半額
松山市の子育て支援情報(5)こども家庭センター すくすく・サポート
妊娠中から産後の子育てまで、気軽に相談できる窓口が「すくすく・サポート」です。保健師さんなどが各エリアの保健所等に常駐し、サポートしてくれます。
身体測定もしてくれるので、私は定期的に子どもの体重を測りに通っています。子育てをする中で、病院へ行くほどではない些細な気になることについて話せました。
予約制とはなりますが、栄養士さんに離乳食や幼児食の相談ができる「モグモグ相談」も実施しています。
松山市での子育て体験談
松山の暮らしや魅力について、私の体験談を交えながらお伝えします。
松山市で子育てをする魅力
わが家は、松山市の中でも自然が豊かな農村地域にあり、旧北条市に位置します。住宅が密集していない場所なので、小さな子どもがいても、泣いたり遊んだりするときの物音を気にすることなく、本当にのびのびと暮らしています。
松山市の中心地からは離れてはいますが、もともと松山市は「コンパクトシティ」を推進していて、距離や不便さは感じられません。車で10分以内の場所に大きな公園や海水浴場、図書館、児童館などがあるので、近隣だけで十分に子どもを遊ばせられます。
松山市は秋祭りも盛んです。私の地元は、お祭りの文化が薄い地域だったので、松山市で暮らしてからのお祭りの盛り上がりようには驚きました。お祭り文化の延長か、地域のイベントが多いところに、地域性の違いを感じました。地域の人たちの顔が分かるというのは安心感が大きく、子育て世帯にとって大切なことだと感じます。
松山市の子育て環境
週末はできるだけ子どもと出かけることを心掛けています。その中で、特に松山市内でおすすめのスポットを3つご紹介します。
松山市の子育て環境(1)ネッツトヨタ愛媛株式会社だんだんPARK
ネッツトヨタ愛媛株式会社だんだんPARKは自動車販売店ですが、子どもも親も嬉しい絶好の遊び場です。
1階は広々とした商談スペースのほかにキッズスペースがあり、積み木や絵本、塗り絵など、自由に遊べます。3階には有料のキッズスペース「あそび場ナナイロ」があり、さまざまな遊具やおもちゃが用意されています。赤ちゃん専用エリアもあるので、幅広い年齢の子どもたちが遊ぶことも可能です。
カフェが併設されているので、ランチやおやつも楽しめ、ついつい長居してしまいます。何より嬉しいのが、授乳室やトイレがとても快適であることです。清潔感があり広々としているので、とても過ごしやすいです。おしりふきやゴミ袋、各サイズのおむつまで用意してくれているので、長い時間施設を利用して、持参したものが足りなくなったときも困りません。
週末は子ども向けのイベントなどが開催されることもあるので、イベント情報も要チェックです。
・施設名:ネッツトヨタ愛媛株式会社だんだんPARK
・所在地:愛媛県松山市空港通2丁目6-33
・アクセス:空港通り三丁目バス停徒歩3分
・営業時間:9:30~18:00
あそび場ナナイロ【平日(2部制)】午前の部/10:00~14:00 午後の部/13:00~17:00
・定休日:火曜日、第2水曜日、祝日
松山市の子育て環境(2)波妻の鼻 わくわくランド(北条公園(波妻))
波妻の鼻わくわくランドは、波妻の鼻(はづまのはな)と呼ばれる場所にある、海が望める公園です。山の傾斜を活かした公園で、芝生の斜面をソリで滑ったり、寝転んだりして遊べます。
木製の大型複合遊具が傾斜に沿って設置されているため、スリル満点のアスレチックを楽しめます。傾斜を下り、海岸に出ることも可能です。本当に眺めのいい場所なので、ピクニックにおすすめです。
・施設名:波妻の鼻 わくわくランド(北条公園(波妻))
・所在地:愛媛県松山市大浦168番地
・アクセス:JR大浦駅徒歩20分
・駐車場利用時間:7:00~20:00
※夏季期間(7~9月)は21:00まで
松山市の子育て環境(3)長浜海岸(風和里(ふわり)前海岸)
長浜海岸は、道の駅風和里の前にある海水浴場です。景色が美しい海岸なので、夏以外にも多くの人が訪れます。
シャワーやトイレなどの設備も整っているので、子ども連れでも行きやすいスポットです。バーベキューもOKなので、お友達家族と一緒に楽しむのもおすすめです。
・施設名:長浜海岸(風和里前海岸)
・所在地:愛媛県松山市大浦119番地
・アクセス:JR大浦駅徒歩17分
松山市の住まい事情
気になる松山市の家賃情報をご紹介します。松山市家賃相場は1LDK・2K・2DKで5.83万円、ファミリー向けの2LDK・3DK・3LDK・4K以上は7.54万円です。
2LDK・3DK・3LDK・4K以上で他の市と比較すると、以下のようになります。
● 新居浜市:5.6万円
● 伊予市:5.27万円
● 東温市:5.88万円
近隣の市と比較すると、松山市は少し家賃相場が高い印象です。ただ、これまで紹介した利便性や住みやすさ、子育て支援を考えると、多少家賃相場は上がっても私は松山市での暮らしを選択してよかったと思います。
松山市の子育て世帯におすすめエリア
ここからは、子育て世帯におすすめしたいエリアをご紹介します。
松山市の子育て世帯におすすめエリア(1)JR松山駅周辺
2024年9月にリニューアルしたばかりのJR松山駅周辺エリアです。駅直結の商業施設「だんだん通り」は、ここならではのお土産やグルメが楽しめ、オープン時は連日ローカルテレビ等で報道されていました。
近辺には学校や総合病院、大型の商業施設があり、子育て世帯に便利な施設が集約されています。バスや郊外電車、路面電車も出ているので、観光地や空港などへのアクセスが抜群にいいエリアでもあります。
JR松山駅前は再開発予定があり、今後ますます活気づくことでしょう。
松山市の子育て世帯におすすめエリア(2)JR伊予北条駅周辺
JR伊予北条駅周辺は、松山駅周辺より閑静で、昔ながらのお店が軒を連ねており、ゆったりと過ごせます。 松山市内では、松山駅のほか、ここ伊予北条駅のみに特急電車が停まるので、遠方へのお出かけにも便利です。
駅周辺には、スーパーやドラッグストア、病院などが集まっています。小学校、中学校も徒歩10分以内にあるので、通学にも困りません。
松山駅周辺は有料駐車場を利用しないといけないスポットが多いですが、伊予北条駅周辺は無料の広い駐車場があるお店・施設が多い印象です。公園や図書館、児童館など、気軽に車で子どもとお出かけできます。
松山市なら、街と自然の中でのびのびと子育てができる
松山市で子どもを2人出産してから、ますます子育てしやすい街になっていると感じます。1人目のときよりも、2人目のときの方が、出産前後の補助金が拡充し、経済的な負担が軽減されました。
民間の施設にも、キッズスペースが増えた印象があり、お出かけしたくなるスポットが多いです。松山市は、気候だけではなく、人も温かく、子どもがのびのびと成長する環境にぴったりだと思います。
「自然の豊かな環境で子育てをしたい」という人は、松山市を検討してみてはいかがでしょうか。