福島県の中心にある郡山市では、郡山駅に新幹線と在来線が4路線停車します。高速道路は、南北を走る東北自動車道と東西を走る磐越自動車道が交差する郡山ジャンクションがあるなど、交通の利便性がとても高い街です。
もともと郡山市に住んでいた私は、就職で一度地元を離れたのち、出産を機に郡山市に戻ってきました。現在は、夫と子どもの家族3人で郡山市に住んでいます。
今回は、実際に郡山市で子育てをしてきた私が、郡山で子育てをして感じたことやおすすめポイントをご紹介します。引越しをご検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
郡山市で子育て中
郡山市の概要
郡山市は福島県の中心にあります。人口321,108人、世帯数は143,185世帯(いずれも2024年2月1日現在)です。
“郡山市”と聞くと商業都市というイメージが強いですが、音楽都市としての側面もあります。終戦後、治安のよくない街だった郡山が、市民の活動により音楽の街へと生まれ変わる姿は全国的に注目され、映画化されました。
現在でも、2008年に郡山市が「音楽都市」を宣言した他、市内の小中高校の合奏部・合唱部は、コンクールの全国大会の常連として活躍中です。
また、郡山市は中核市に指定されているため、本来は福島県の管轄である保健所が、郡山市で運営されています。そのため、保健所の業務である保健福祉(乳幼児健診や母子保健)と、市役所の担当である子ども関連部署との連携がスムーズで、一体感のある子ども関連の行政サービスを受けられます。
わが家が子育て環境に郡山市を選んだ理由
わが家が郡山市で子育てをしようとした理由は、次の3点です。
(1) 私の実家が郡山市であったこと
子どもが産まれたときに、私はフルタイムで仕事をしていました。私の実家のある郡山から新幹線で一駅隣の福島市に職場があり、そこに住んでいました。夫の実家も県外で離れていたため、子どもが体調を崩した場合などに頼れる人が近くに誰もいなかったのです。当時の福島市には病児保育などの仕組みが整備されていなかったため、出産を機に実家のある郡山市に引越すことにしました。
(2) 通勤が便利であったこと
出産当時の私の仕事は、勤務地が全国および県内数カ所にありました。郡山市は福島県の中心にあるため、転勤で県内の他の勤務地に異動しても通勤できます。新幹線沿いであれば県外通勤も可能です。子どもにはなるべく転校させたくなかったため、交通の利便性を考慮したときに、郡山市が子育て環境に適していると感じました。
(3) 気候が穏やかなこと
郡山市は若干風が強いものの、気候が穏やかです。夏は福島市ほど暑くならず、雪も年に数回、少し積もる程度。年降水量も1,000mm前後と、全国平均(約1,700mm)より少なめ(出典:郡山市ウェブサイト)です。子どもが中学や高校に通うようになって通学距離が伸びたときに、悪天候の場合は車での送迎が必要になりますが、郡山市であればそのような可能性は少ないと判断しました。
実際どう?郡山市での子育て
ここからは、郡山市役所の近辺に暮らして感じた、郡山市の子育て事情についてお伝えします。家族構成は、私・夫・子どもの3人で、自宅から少し離れた場所に私の実家があります。
数字で見る郡山市の子育て事情
まずは郡山市の子育て事情について、数字を見ていきましょう。
・年間出生数2,233人(2021年)
・乳幼児数(0~6歳)17,012人(2022年3月31日時点)
・保育所入所児童数5,520人、待機児童数0人(2022年4月1日時点)
・認可保育所数89施設、認可外保育所数28施設(2023年4月1日時点)
・幼稚園28園、認定こども園5園(2023年4月1日時点)
・小学校数52校、中学校26校、義務教育学校2校(2022年5月1日時点)
・放課後児童クラブの設置状況公営81箇所、民営26箇所(2022年4月1日時点)
社会問題にまでなっている保育所入所待機児童数が、郡山市では0人でした。共働き世帯に必要な放課後児童クラブも、公営・民営を足すと107箇所で小学校数を上回っており、充実しているといえます。
なお、郡山市の保育所は公立の施設があるものの、幼稚園はすべて私立です。小中学校は1校を除きすべて公立のため、小中学校の受験は基本的にありません。子育て世帯が引越しをする場合は、通わせたい小中学校の学区にあわせて住まいを探す人が多いです。
郡山市の子育て支援情報
次に、郡山市で行われている子育て支援について、主なものを5つご紹介します。なお、最新情報については郡山市のウェブサイトをご覧ください。
郡山市の子育て支援情報(1)郡山市保育・幼児教育ビジョン
郡山市では、”子どもの想いを第一に考えるまち こおりやま”を理念として、2021年に”郡山市保育・幼児教育ビジョン”を策定しました。これは、持続可能かつ質の高い保育・幼児教育を実現するための理念で、4つの基本方針が定められました。
基本方針(1)保育・幼児教育の質の向上に必要な基盤を整えます
基本方針(2)多様な保育・幼児教育ニーズへ対応していきます
基本方針(3)施設の適正配置に取り組みます
基本方針(4)非常時(災害・コロナ感染症等)に強い体制を作ります
郡山市の取り組みは、この4つの基本方針に基づいています。郡山市では過去に東日本大震災やその後2度の大きな地震があったので、基本方針(4)の非常時の体制づくりは最優先で行ってほしいなと思います。
郡山市の子育て支援情報(2)子育て支援施設
郡山市内には公設の子育て支援施設が6箇所あります。
・ニコニコこども館
・ペップキッズこおりやま
・東部地域子育て支援センター
・南部地域子育て支援センター
・西部地域子育て支援センター
・北部地域子育て支援センター
それぞれの施設でお話会などのイベントが行われており、他のお子さんや保護者と交流できます。保健師さんの相談を受けられるのもありがたいです。
郡山市の子育て支援情報(3)子どもの一時預かり・ファミリーサポート
郡山市では子どもの一時預かり事業や、ファミリー・サポート・センター事業を実施しています。子どもの一時預かり事業とは、公立保育施設などで一時的に子どもを預かってもらえる制度です。
私は育児休業中に何度か利用し、美容院に行きました。育児のリフレッシュができて、非常によかったです。利用する理由によって1ヶ月の上限が決められているため、詳しくは郡山市のウェブサイトをご確認ください。
ファミリーサポート事業とは、子どもを預かってほしい人と子どもを預かれる人がそれぞれ会員となり、お互いに子どもを預けたり、預かったりする活動です。地域みんなの手で子育てをすることが目的となっています。
私は利用したことはありませんが、子どもが大きくなったら、子どもを預かる会員として地域の役に立ちたいと考えています。
郡山市の子育て支援情報(4)児童手当・こども医療費助成制度
郡山市では、中学校3年生までの子どもを養育している人に支給される”児童手当”、18歳に達する年度末まで医療費の助成が受けられる”こども医療費助成制度”があります。
児童手当には所得制限があります。こども医療費助成制度は高校卒業まで医療費の助成が受けられるので、運動部でケガをする可能性のある子どもには特に助かる制度です。
わが家の子どもは文化部で身体も丈夫なので利用する機会はあまりありませんが、それでも冬場にインフルエンザが学校ではやったときは、助成があると安心だなと感じました。
郡山市の子育て支援情報(5)LINE子ども・子育て相談
子育ての悩みや不安なことをLINEで相談できる支援があります。私が子育ての悩みを抱えていた頃には、このLINE相談の支援はありませんでした。子育てがしやすい環境づくりを年々工夫、改善しているのだと感じます。
電話や直接市役所に出向いて相談するのは勇気が必要ですが、LINEなら気軽に相談できそうです。
郡山市での子育て体験談
郡山市で育った私は、一度市外に出たものの、出産を機に郡山市に戻ってきました。そんな私が郡山市で子育てをして感じた魅力やギャップを感じたことを、包み隠さずお伝えします。
郡山市で子育てをする魅力
私は郡山市に戻ってきたときに、実家のすぐそばではなく市役所の近くに引越しをしました。実家が郡山駅から少し離れており、電車通勤をするには不便だったからです。また、小中学校の学区を調べた上で物件を決めました。
しかし住んだ場所がたまたまピンポイントでお年寄りの多い地区で、近い年齢の子どもが近所に住んでおらず、私の友人も全員県外に出てしまっていたため、ママ友がなかなかできませんでした。そのため、ママ友の家に遊びに行くよりも市の子育て施設に出かけることが多かったです。
ちょうど東日本大震災があった頃だったこともあり、屋外で遊ばせることに不安を感じたため、ニコニコこども館やペップキッズこおりやまなど、屋内で遊べるところに連れて行っていました。
同じような状況の人が多く、施設に通ううちに顔見知りのママもできて、徐々にママたちと情報交換ができるように。話を聞いてみると、旦那さんの転勤にあわせて引越しをしてきた方が多く、このような施設で他のママと話ができるのはありがたいと仰っていました。
東日本大震災から13年が経ち、新型コロナウイルスも落ち着いてきた今となっては、公園で遊ぶ子どもの数は昔と変わらなくなったと思います。それでも、屋内で子どもが思い切り遊べる環境があるのは、やはり子育てにおいて大きな魅力です。
また、小中学校の受験が必要ないことも、のびのびと子育てができて魅力に感じています。音楽都市であることにちなみ、郡山市内の小学校には特設の合奏部、合唱部があるところが多いです。わが家の子どもも小学校の特設合奏部に入部させました。中学受験がないので、卒業ギリギリまで部活に打ち込めて、合奏の全国大会に出場できました。勉強だけでは味わえない経験ができて、よかったです。
郡山市の子育て環境
郡山市では、市の郊外に古墳を基に作られた公園や緑地公園などがある他、街の中心にも子どもがのびのびと遊べる施設があります。今回は、その中から3箇所を紹介します。
●開成山公園
郡山市役所の向かいにある開成山公園では、常に小さな子どもの歓声が響いています。乳幼児が主に遊ぶ遊具と小学生が主に遊ぶ遊具の2種類が、人工池である五十鈴湖を挟んで対角線の異なるゾーンに配置されています。そのため、乳幼児が小学生と接触して思わぬケガをするという心配は少なく、より安全です。似たような年齢の子どもを持つママ友・パパ友ができるのも嬉しいポイントです。
急に雨が降ってきた場合には、郡山市役所の隣にあるニコニコこども館の屋内に行けば遊べるスペースがあります。公園のトイレが苦手な方の場合は、ニコニコこども館でおむつ替えなどを済ませられます。
●ペップキッズこおりやま
東北最大級の屋内遊び場であるペップキッズこおりやまも、一部の施設を除き無料で利用できるありがたい施設です。大型スーパーの跡地に作られたため、駐車場も完備。少し頑張れば郡山駅から歩いていくこともできます。
遊具の種類が豊富なのと、お弁当を食べられる休憩スペースがあるので、一日中遊べます。私も、子どもが小学校にあがるまではよく連れて行きました。広々と遊べるせいかもしれませんが、私が行っていた頃は、ママよりもパパの方が多かったような気がします。
利用できるのが小学生まで、75分間の入れ替え制で整理券が必要(2024年3月時点)と制限はありますが、子どもが元気いっぱい遊べるおすすめの場所です。
●郡山市ふれあい科学館スペースパーク
郡山市ふれあい科学館スペースパークは、郡山駅に隣接するビル“ビッグアイ”の20~24階にあります。プラネタリウムだけでなく、宇宙飛行士の訓練や月面の重力が疑似体験できる設備があるなど、遊びながら宇宙について学べる施設です。こちらの施設は利用料がかかるものの、休みの日は大勢の家族連れで賑わっています。わが家では、私が週末に仕事が入ってしまった場合に、夫が子どもを連れて訪れることが多かったです。
無料の展望ロビーからは郡山市街地を一望できるので、子ども連れだけではなくカップルやお年寄りの姿も見かけます。桜の時期は街がところどころピンクに染まりとても綺麗ですよ。
郡山市の住まい事情
郡山市は明治期から発展した街のためか、郡山駅前~郡山市役所近辺の“旧市内”と呼ばれる地域では、ピンポイントにお年寄りが多い地区があります。最近開発が進んでいる郡山市北部の郡山富田駅近辺は、比較的若い世帯が多いイメージです。
私は一時期、単身赴任で、都内で働いたことがあります。子どもが小学校にあがったときに実家の祖父母に子どもを預け、千代田区のワンルームマンションで暮らしていました。
実際に世帯向けアパートに住んでいたわけではありませんが、家族連れで転勤してきた職場の人の話を聞いていると、やはり都心の世帯向けアパートは窮屈だなという印象でした。郡山市の世帯向けアパートは駐車場がほぼ完備していて、車を2台駐車できるアパートが多いです。
なお、夫婦プラス子どもの3人世帯でよく使われる” 1LDK・2K・2DK”のアパート、マンションの家賃相場は郡山市だと6.46万円、東京都千代田区だと22.52万円です(2024年3月1日現在)。
千代田区のアパート、マンションの場合はこれに駐車場代がプラスされることを考えると、金額の差に驚いてしまいます。近頃、リモートワークの環境が整備されてきたせいか、郡山市に住みながら都内の企業に勤めているといった話を聞くようになりましたが、この差を見てしまうと納得です。
また、福島県内の他の市の家賃相場についても調べてみました。
1LDK・2K・2DKの場合、県庁所在地である福島市は、5.55万円、人口が郡山市と同程度であるいわき市は6.32万円です(2024年4月19日現在)。
福島市、いわき市、郡山市の順番で家賃相場が高くなっています。
これは、築年数や設備の関係もあると思われますが、関東圏からの近さも影響しているのかもしれません。
いわき市は北関東である茨城県と隣接しており、福島市は県の北部に位置しています。
郡山市は交通の便が良いので関東圏へのアクセスに不便は感じず、家賃相場もバランスが取れているため、費用対効果が高いと感じました。
郡山市の子育て世帯におすすめエリア
おすすめエリア(1)郡山第二中学校・第五中学校の学区
子どもに音楽を習わせたい、その中でもバイオリンなど弦楽器を習わせたいと考えている場合のおすすめエリアがあります。郡山第二中学校・郡山第五中学校の学区です。 郡山第二中学校・郡山第五中学校はどちらも管弦楽部(オーケストラ)があり、全国大会の常連校です。
郡山市内では、小学校でオーケストラの特設合奏部がある学校もあります。しかし、その学区の中学校では吹奏楽部しかなく、弦楽器を続けられなかったケースがあります。
私のママ友がこのケースで、子どもにバイオリンを続けさせるためにわざわざ郡山第二中学校の学区に引越しました。そのため、もしも子どもに弦楽器を習わせたいなら、中学校に管弦楽部(オーケストラ)がある地域から選ぶことをおすすめします。
なお、郡山第五中学校は合唱部も全国大会の常連校です。合唱も気になる場合は郡山第五中学校の学区をおすすめします。
おすすめエリア(2)郡山駅周辺・郡山市役所近く
転勤の可能性があるが子どもに転校をさせたくない場合は、郡山駅前、またはバスの利便性が高い郡山市役所の近くをおすすめします。
なぜなら、郡山駅は新幹線が停車する駅であり、職場の場所によっては県外への通勤も可能であるからです。新幹線の他にも在来線が4路線停まるため、市外への通勤にも適しています。
郡山市役所の停留所の場合、郡山駅へと向かうバスが1分~16分の間隔で停まり、最速12分で駅に到着できるので便利です。
郡山駅周辺の住まいを探す
おすすめエリア(3)郡山富田駅周辺
同じ年代の子どもが多い地域を選びたい場合は、近頃開発が進んでいる郡山富田駅近辺をおすすめします。若い世帯が多いので、同学年の子が近所になる可能性が高いです。
郡山富田駅は2017年に完成したばかりの駅ですので、駅周辺の発展に比例して、子育ての環境もどんどんよくなっていくと思います。
郡山富田駅の住まいを探す
郡山市は子育ての環境が整った街
郡山市は子育てに関する施設や仕組みが整っているといえます。特に子どもがのびのびと遊べるような工夫がされている印象です。
子育てに関するLINE相談の他、郡山市外から転入してきた方に向けた市民講座など、子育て世代の転入者への気配りがあるのも嬉しいところです。福島県内への引越しを検討している際は、ぜひ、子育ての環境が整った郡山市も候補に入れてみてくださいね。