赤ちゃんの口を拭ったり、胸元の汚れを防ぐ「よだれかけ」。今はスタイとも呼ばれ、出産準備品としてベビー衣類と共に買いそろえる方も多いのではないでしょうか。
清潔を保つという本来の用途以外に、最近ではおしゃれを目的に、形やデザインにこだわったものも人気です。スタイを使う時期は首が据わり始める3ヶ月頃から2歳頃まで、子どもによってさまざまです。唾液が多い子であれば汚れやすく、取り替える頻度も高まります。
そんな赤ちゃんのスタイは、「裁縫が苦手」、「裁縫は家庭科の授業でしかやったことがない」というお裁縫ビギナーさんでも作りやすい作品です。今回はスタイの作り方やコツ、あると便利なアイテムなどを、これからお裁縫にチャレンジしたいという方にもわかりやすく紹介します。
生まれてくる赤ちゃんへの贈り物に最適な「手作りスタイ」
妊娠中、「生まれてくる赤ちゃんに何かを手作りしたい」と考えるお母さんも多いことでしょう。
私自身もそうでした。私の母や祖母が、私が母のお腹にいるころに「健康に、無事に生まれるように」とおくるみやベビーベストを編んでくれたことを知り、私も生まれる子のことを思いながらおくるみや小さな鈴の入ったおもちゃ、スタイなどを作りました。
そもそも、よだれかけがなぜスタイとも呼ばれるようになったのでしょうか。 実はこのスタイは、北欧のベビーグッズメーカーが1992年に発売した食事用エプロンの商品名でした。シンプルで洗練されたデザインは、おしゃれなママの間で大ヒット。瞬く間に広がりました。それ以来、同メーカーの製品以外のよだれかけもスタイと呼ばれるようになったといわれています。ちなみに、英語では「bib(ビブ)」といいます。
難しい工程が一切ないスタイ作りで裁縫にはまった私
上の写真をご覧ください。手際よく作ったように見えますが、最初はお裁縫がとても苦手でした。玉留めの仕方も忘れてしまったし、なみ縫いの幅もそろわない。そんな私でしたが、手芸専門店でベビースタイの作成キットを見つけ、「裁縫の練習になるかも」と手に取ったのがきっかけで苦手を克服できました。
スタイ作りは難しい工程がなく、基本的にまっすぐに縫って、裏返すだけ。好きな素材、好きな柄、好きな形のスタイが作れます。慣れてくるとあまり時間もかからず作れてしまいます。私自身、産後の病室で縫っていて、看護師さんに驚かれたくらいです。生まれる赤ちゃんのことを想像しながらのスタイ作りはとても楽しいものです。
スタイ作りに必要な材料、道具、環境
それでは何はともあれスタイを作ってみましょう。スタイ作りに必要なものは以下の通りです。
材料(スタイ1枚分)
・ダブルガーゼ(30cm×30cm)2枚
・スナップもしくはマジックボタン
・スタイの型紙
必要な道具
・裁縫針 ・手縫糸 ・まち針
・布用印つけペン ・裁ちばさみ
・アイロン ・アイロン台
スタイ作りを始める前に検討しなければいけないのは、スタイの生地と型紙をどのようなものにするのかです。また、材料や道具はどんな場所で購入できるのか、製作する場所の環境などのポイントを紹介します。
生地選びのポイント
スタイの生地には特別な決まりはないものの、赤ちゃんが使うものとしてふさわしい素材を選びたいもの。赤ちゃんの肌に優しい「ダブルガーゼ」を選ぶのが一般的です。ダブルガーゼは手芸専門店のほか、100円ショップでも手に入れることができます。大きさは30cm四方ほどの大きさで売られている場合が多く、スタイを手作りするには十分な大きさです。
ダブルガーゼ以外の素材では、ニットやフライスもスタイに向いているといえます。いずれも柔らかく肌触りがいい素材ですが、口元を拭うなどの目的よりは、オシャレなスタイを作るのにおすすめです。ただ、ニットやフライスはストレッチ性があるため、初心者には扱いにくいかもしれません。
作りたいスタイの型紙を準備。入手方法はさまざま
型紙は、どんなスタイを作りたいのかによって選びます。入手方法としては、赤ちゃん用品の作り方を紹介した書籍、手芸用品店のほか、最近ではインターネット上で型紙のデータを提供しているサイトがあり、そこからダウンロードすることもできます。
また、手元にあるスタイと同じ形で作りたい場合は、そのスタイから型をとるという方法もあります。スタイを平らにして等倍でコピーをすれば、型紙として代用することもできます。
材料や道具のほとんどは100円ショップで購入できる
ダブルガーゼ生地やスナップ、マジックテープボタンといった素材のほか、裁縫針や糸、まち針などの道具は、ほとんどが100円ショップでそろえることができます。手芸専門店は品物が多すぎて選びにくいと感じる場合や、道具一式をそろえるのはちょっと…という方なら、手軽に立ち寄れる100円ショップで買いそろえてみるのがおすすめです。
ハンドメイドしやすい環境を整えよう
スタイ作りに限らず布小物を製作するときは、布の切れ端や糸くずなどのゴミがテーブルや床に散らばります。また、まち針やアイロン、裁ちばさみなど一歩間違えると危ない道具を使用するほか、ビーズやボタンなど細かな材料を使う場合もあります。思わぬ事故を防ぐためにも、できれば作業場所は安全を確保できるところに固定しましょう。
また、手元の細かな作業になるので、自然光が入りやすい場所のほうが作業しやすく、おすすめです。私の場合は、リビングダイニングの南向きの四人掛けダイニングテーブルがいつもの作業場所です。ミシンや手芸道具、アイロンなどの道具はテーブル脇の3段ワゴンにひとまとめに収納しています。
スタイを作ってみよう! 手順とポイント
材料、道具、環境が整ったら、いよいよスタイ作り。まずは生地のアイロンかけなど下準備から始めていきます。
スタイ作り【準備編】
1. 生地にアイロンをかけ、折れ目やシワを伸ばす
下準備として、生地の折れ目やシワを伸ばします。折り目やシワが強く入ってしまっているなら、一度水を通して伸ばしてから使いましょう。下準備のアイロンを丁寧することによって生地が扱いやすくなり、型紙も当てやすくなります。綺麗な仕上がりになる大事なポイントです。
2. 生地に型紙をあて、印つけペンで型をとる
生地に型紙をあて、手芸用の印付けのペンを用いて型を写し取ります。ダブルガーゼは柔らかい素材のため、ペン先を強く当ててしまうと引っ張られて失敗しやすいポイントでもあるので、ゆっくりと行いましょう。
失敗を防ぐ方法の一つとしては、印付けにサインペンタイプのものを使用することです。えんぴつのように硬質なものに比べると、布に押し付けずに型を写すことができます。
3. 生地を裁断する
生地を裁断します。裁断には布用の裁ちばさみが最適ですが、ない場合はよくある事務用はさみでも問題ありません。ただ、刃先が短すぎたり、刃こぼれがあると「ほつれ」ができやすくなるので、切れ味の良いものを使うことをおすすめします。
4. 2枚の生地を中表に合わせ、アイロンをかけまち針を留める
縫う前の最後の工程です。ここでも一度アイロンを当てましょう。余計なシワなどを整えるとともに、2枚の布がかみ合わさって滑りにくくなります。
アイロンを当てた上で、まち針を打ちます。まち針は内側から外に向かって打ちましょう。このとき、型紙に指定された縫い代で出来上がり線を写します。
スタイ作り【縫製編】
5. 縫いしろの5ミリ程度に印をつける
いよいよ縫う工程ですが、忘れてはいけないのは返し口。これは、中表になっている布を表に返すために残します。あまりに小さいとうまく返せないので、5センチ程度を残すといいでしょう。
6. 返し口を5センチほど残し、なみ縫いもしくは半返し縫いで縫う
返し口の位置を決めたら、線に沿って「なみ縫い」もしくは「半返し縫い」で縫い始めます。なみ縫いの場合は細かいピッチで縫い進めましょう。2枚の布がずれてしまわないように、布を高く持ち上げたり、手の中で握ることのないようにしましょう。まち針が落ちてしまう原因にもなります。
7. カーブする部分に切れ目を入れ、返し口から裏返す
返し口を残して一周縫い終えたら、布を表に返す前に縫いしろに切れ目を入れます。これは、生地の内側で縫いしろを落ち着かせる目的があります。縫い留めた糸まで切らないように気をつけて、カーブの多いところには複数の切れ目を入れます。
8. 返し口から布を引き出し、表に返す
返し口に指を入れて布を表に返します。このとき、首元になる部分は細くなっているため、指だけではうまく返せないこともあります。細い棒状のものや目打ちなどを活用して丁寧に引き出しましょう。
表に返せたら、返し口部分を内側におさえ、アイロンをかけて全体の形を整えます。
返し口を「この字縫い」で整え、ひとまずスタイの形ができあがりました。
9. 首元に留め具になるマジックテープ(スナップ)をつける
スタイの留め具は好きなものを選びましょう。スナップの場合はプラスチックの素材を手ではめ込むだけで完成です。マジックテープの場合はアイロン接着をします。
10. 端から2ミリ程度に一周丁寧になみ縫いをかけ完成
フワッと柔らかい印象のスタイが完成しましたが、このままだと洗濯をしたらすぐに生地がよれてしまいます。スタイの強度を上げるため、端から2ミリ程度の位置になみ縫いをかけます。縫ったところが丸見えなので、細かく丁寧に縫いましょう。これで完成です。
布にアイロンを当てるところから端の処理まで、トータル1時間半ほどで完成しました。
スタイを手作りするときのコツ
ここまでスタイの作り方と、手順ごとに気をつけることをお伝えしてきましたが、手作りをする上でのポイントは次のことです。
こまめにアイロンで整える
生地を整えたり折り目をつけたりと、布製品を作る上では頻繁に登場するアイロンですが、いちいちスイッチを入れて温めて…と、少し面倒に感じる作業です。しかし、アイロンがけを適切に行っているかどうかで、完成品のできは大きく変わります。
特にガーゼのように柔らかく薄手な生地で作るスタイの場合、型紙を写す段階からズレが大きいと仕上がりもいびつになってしまいます。アイロンは必ず使いましょう。
細かいことは気にしない
何よりも、完璧を求めないことです。市販のものやハンドメイド作家さんが売っているもののようなクオリティで作るのは難しいことです。少しのズレがあっても「売るわけじゃないのだから」と割り切ることは、スタイ作りに限らずハンドメイドを楽しむコツといえるでしょう。
作るときに「あってよかった」おすすめアイテム
スタイをはじめとした布小物を作るときに、使うと便利に感じたものを紹介します。
工作用紙(厚紙)
型紙として使用します。型紙を手で押さえにくい場合や同じものを何個も作るときには、厚紙で型紙を作っておくと便利です。
布用のロールカッターとカッティングシート
薄い布や表面がツルツルして滑らかな布は裁断のときにズレやすく、はさみを入れにくいと感じます。そんな時に便利なのがロールカッターです。併せて準備したいカッティングシートは、小さいものから大きなサイズまで100円ショップでも購入できます。
クリップ
まち針の役割として使える手芸用のクリップです。片面が平らになっているのが特徴です。針ではないので刺さることもなく、作業中に落ちてしまっても探すのに苦労をすることはありません。小さな子どものいる家庭なら、まち針よりもクリップがおすすめです。
ハンドメイドは楽しい!作業がはかどる環境を整えよう
今回は、赤ちゃんのスタイの作り方やコツ、おすすめの環境などを紹介しました。
赤ちゃんのスタイが完成したら、ほかのベビー用品の手作りにもぜひ挑戦してみてください。例えば、スタイ作りの余った布は赤ちゃんの背中にセットする汗取りシートやマスク、ミトンにも応用できます。
布製品の作り方の基本は、スタイ作りの手順と同様。布を適した方法で下準備し、型どおりに裁断し、手順どおりに縫い合わせれば完成です。
そうしたハンドメイドがしやすい環境があると作業はさらにはかどり、楽しみも倍増します。スタイ作りから、ハンドメイドの楽しさを感じてもらえたら幸いです。