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ミニマリストの引越し事情。引越しは暮らしをスッキリさせる大きなチャンス
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私は成人するまでずっと生まれ育った場所で過ごしたからか、幼い頃から引越しに対して強い憧れを持っていました。その反動でしょうか、大人になってからは住まいを転々とし続け、これまでの引越し回数は20回を超えています。

この20回には自分の意思とは関係ない転勤による引越しや、大きな荷物の移動を伴わない転居も含まれています。決して少なくはない私の引越し経験を振り返ってみると、ガラリと環境を変えられる引越しは楽しいから好きなのですが、準備が大変なので嫌いです。

このように、私は引越しに対してやや複雑な感情を抱いていますが、引越し回数の多さは、ものを持たないミニマリストになったきっかけになりました。そこで今回は、ミニマリストとして暮らしている私の引越し事情についてお話しします。

引越しはミニマリスト生活を始める絶好の機会

「引越しを機に段ボール箱いくつ分の荷物を捨てた!」とか、「今まで大事に取っておいたもののほとんどがゴミだったと分かった」といった話はよく聞きます。ものを捨てるのが苦手な人でも、持ち物を確実に減らせる方法が、引越しです。

ミニマリストになることを目的に、わざわざ引越しをするのは現実的な話ではありません。しかし、持ち物を減らしたいと考えているときに引越しのタイミングが来たら、暮らしをシンプルにする大きなチャンスといえるでしょう。

引越しは、無理なくスッキリした生活へと変化できる絶好の機会です。

私がミニマリストになった経緯

幼少期は典型的な「片付けられない子」

今でこそ最小限のものだけを持つシンプルな暮らしを心がけている私ですが、幼少期は典型的な「片付けられない子」でした。身の回りの整理整頓や簡単な掃除など、自分のことを自分でできるようになったのは、小学校に入学するあたりだったと思います。

その頃の私が使っていた学習机はいつもぐちゃぐちゃで、引き出しの中はまるで整理されておらず、もはや何が入っているか把握できないような状態でした。学校でも同じように机の中は壊滅的で、配布物のプリントや大事な提出物を失くすことは日常茶飯事。ランドセルの中もまったく整理されておらず、荒れ放題でした。

特定のおもちゃやグッズを集める収集癖こそなかったものの、ものが捨てられないからなんでもかんでも大事に取っておくタイプだった私。お菓子のおまけや子ども雑誌の付録、ショップの包み紙あたりはまだ可愛いもので、給食で出される牛乳瓶の紙キャップまで後生大事に机に押し込んでいました。

当時は小学生の間で、牛乳瓶の紙キャップで面子遊びをしたり、レア銘柄のキャップを集めたりするのが流行っていたからとはいえ、今になって考えると、普通は捨てるべき紙キャップを大量にため込んでいたのはちょっとゾッとしてしまいます。私と同じくため込むタイプではあるけれどキレイ好きで整理整頓が上手な母に、よく小言をいわれたことを、まるで昨日のことのように覚えています。

ミニマリストになった最大のきっかけ

片付けられないガサツな子どもも成人し、どうにか自分で部屋を整えられるようになった頃、実家で震度7の大地震を体験しました。

幸い家の倒壊は免れ、家族全員怪我もなく無事だったのですが、家の中はめちゃくちゃに。もともと狭い家に大量の荷物を押し込んで暮らしていたわが家は、どこから手をつけて片付ければいいのかと途方にくれるほどの惨状になってしまいました。

それまでガラクタを含む多くのものを、大事にため込み続けてきた母が突然の大災害でパニックに。「たくさん持っていたって、こんな風に全部壊れちゃうんだから、もう何にもいらない!」と叫びながら、役に立たなくなった家財道具や汚れた洋服を、次々にゴミ袋に詰め込んでいた姿は忘れられません。

このときに初めて、ものを大量に所有することに価値を見出す生き方に、疑問を感じました。

海外移住でミニマリストに

大人になった私は、仕事の都合で出張や転勤が多くなり、引越しを繰り返す生活になりました。最初は憧れの一人暮らしに舞い上がり、インテリア用品や調理器具をあれこれ買い漁っていました。

しかし何度も引越しを繰り返すうちに、「荷物が多いと引越しのときの面倒や作業が増えるだけ」だと悟り、徐々にものを増やさない暮らしに。そして40歳を過ぎた頃に、スーツケース1つに入る荷物だけを持って海外へ移住したことが、持たない暮らしを選択する決定打になったのです。

日本を離れている間は、家財道具や洋服などの持ち物はすべて東京のレンタル倉庫に保管していました。でも、それらがなくても私の生活は普通に成り立つことに気づき、ますます所有することへの執着が薄れていったのです。

度重なる引越しや海外移住の経験がなければ、ミニマリストへの道は開けていなかったかもしれません。

ミニマリストの引越し体験

引越し準備で片付ける度に不要な持ち物が少なくなり、ものが少なくなれば引越しはどんどん楽になります。ちなみに、私のこれまでの人生で最も軽量だった引越し荷物は、「紙袋2つ」です。

当時住んでいた家具家電付きのマンスリーマンションから一般賃貸へ引越したときの話なので、一般的な引越しとは少々事情が異なりますが、まさに「身一つ」状態のかなりお手軽な引越し作業でした。

これはさすがに極端な例としても、回数を重ねるごとに私の引越し準備作業は確実にシンプルになっています。

考えなくても荷造りが完了

引越し作業で最も時間がかかるのは、荷造りそのものではなく、捨てるか捨てないかの判別です。

所有している持ち物をすべて新居に持って行くと決めていれば、箱に詰めるだけなので、単なる「作業」として淡々と進められます。しかし、その都度捨てるか捨てないかを検討・判断しながら荷造りをしていると、時間や手間だけでなく、労力も著しく消費してしまうもの。

その点、必要最低限の荷物しか持っていなければ、荷造りで悩むことがないので、費やす時間も大幅に減らせます。もちろん、カーテンや家具などのサイズが合わずに新居では使えない場合もありますが、悩んだり考えたりで作業の手が止まってしまう時間は、格段に短くなります。

ミニマリストの引越しにかかる時間

ものが少なければ、荷造り作業も少なくなり、引越し当日の積み込み・積み下ろし作業時間も短縮されます。

私の最近の引越し当日にかかった時間は、移動時間を除けばたった20分でした。これは引越し作業員のみなさまの効率と手際のよさが最大の要因ではありますが、運ぶ荷物が少なかったことも理由の1つでしょう。

荷物が少なければ、引越しにかかる費用も当然ミニマムに抑えられるので、出費が多くなりがちな転居時も助かります。

引越しのときに断捨離してよかったもの

私は引越しを機に、それまで所有していた持ち物のほとんどを処分した経験があります。

海外生活を終えて帰国後に私が選んだ住まいは、家具家電付きの物件だったため、レンタル倉庫に預けていた荷物のほとんどが必要なくなってしまったのです。

レンタル倉庫には、冷蔵庫・洗濯機・ベッド・仕事用のデスクに椅子・テレビボードなど、大型の家具家電のすべてを保管していました。しかし、大きな倉庫に保管していたほとんどのものが不要になり、倉庫を解約することに。「数年間払い続けていた保管料は一体なんだったんだろう?」という虚しさを感じつつも、大きな荷物を手放したことで急に人生が軽やかになったような、妙な爽快感に包まれました。

家具や家電といった大きな持ち物を処分した時点で、私の所有物のほとんどを占めていたのは、洋服や靴、バッグといったファッション関連の品々だったことが判明。引越しを機に改めて洋服類も見直してみたところ、多くがもう必要ないものだと分かり、大幅に処分しました。

自分のお金で買ったものたちを大量に手放す行為は、決して愉快なものではありません。その後の私は、衝動買いで安易に持ち物を増やさなくなりました。これは大量にものを捨てるという苦い経験があったからこそ得られた、大きな収穫だったと考えています。

ミニマリストの引越しのメリット

ものが少なければ引越し作業そのものが楽になるだけでなく、物件選びにおいてもさまざまなメリットを感じられます。

ものが少ないと家賃が安くなる

普通にお勤めしている社会人が、自宅で過ごす時間はどれくらいあるのでしょうか。平日は朝から夜まで起きている時間のほとんどを会社で過ごし、休日も出かける機会が多い人であれば、月の半分以上は自宅にいない状態です。

自分が自宅にいてもいなくても、毎月の家賃は当たり前に発生します。ものが多ければ多いほど、広くて収納がたくさんある部屋を選択しなければならず、その分家賃は上がるでしょう。つまり、「もののために家賃を払い続ける」状態です。

大切なものたちの管理にかかるコストであれば、納得はできます。しかし特に必要もないけれど、なんとなく捨てられないものを持ち続けるために、毎月数万円のコストがかかっているとなるとさすがにもったいない話。

私はものを減らして住まいを小さくして、浮いたお金を本当に使いたい趣味に使ったり、勉強など自分への投資に回したりするほうが、生活の満足度が上がるように感じています。

気軽に引越しができる

引越しをしたいけれど、片付けや引越し作業を考えると面倒になってしまう方も多いのではないでしょうか。

私が実際経験したように、ものを減らして引越し作業が楽になれば、引越しに対する苦手意識は薄れます。ものを減らすことで、自分の好きなタイミングで住みたい街に移り住める自由が、少しだけ身近なものになるでしょう。

ただし、「引越し貧乏」という言葉もあるので、放浪はほどほどに。

時間が節約できる

引越し作業で最も時間がかかるのは、捨てるかどうかを判断する時間だとお伝えしたように、ものを減らすことで得られる最大のメリットは、時間の節約です。

引越しするときはもちろん、私たちは普段からものの管理に多くの時間を奪われています。なんとなくものを増やすのではなく、本当に必要かつ愛着のあるものだけを持つようになれば、整理整頓や修理などに時間を取られることがなくなります。

節約といえば、お金のことを考えてしまうものです。しかしお金は頑張ればある程度は稼げるけれど、時間はどう頑張っても1日24時間以上に増やすことはできません。限りある時間こそ、大切に使いたいものです。

ミニマリストの引越しにおすすめの住まい

ものを減らして身軽になれば、物件の選択肢はグッと広がります。広さや収納に関する条件を緩和できる分、他のこだわりを重視してみてはいかがでしょうか。

広めのワンルームでシンプルライフ

ものが少ない分、空間を活かしてスッキリ暮らせるのは、ミニマリストならではの贅沢。少し広めのワンルームに、厳選した家具をセンス良く配置すれば、おうち時間が快適になります。

おしゃれな狭小物件が気になる

最近はミニマリスト向けの小さな住まい「狭小物件」が増えています。コンパクトながらに機能的で、内装がスタイリッシュといった魅力が詰まった物件は、今後も注目を浴びそうです。

ロフトつきの部屋を使いこなす

ロフトつきの物件は面積としては小さめの部屋が多く、収納スペースがないと家具の配置が難しいこともしばしば。しかし持ち物が少なければ、収納の心配は無用。ロフトを使いこなして、空間を上手に利用した暮らしができるでしょう。

引越しで暮らしをさらに快適にしよう

今回はものを持たない生活と引越しについてお話ししました。私自身、意識的にものを減らしてからの引越しは格段に作業効率が上がり、時間も費用も節約することができました。

今でも引越し作業は面倒で嫌だなとは思うものの、以前のような苦手意識は随分薄れてきたように思います。

準備と作業は面倒ですが、引越しは暮らしをより快適に整える最高のチャンスです。今ある持ち物と徹底的に向き合いながら、これからの暮らしをデザインして、新しい自分を見つけてみてはいかがでしょうか。

crispy-life

「カリッとした毎日。」で持たない暮らしについて綴るフリーランスブロガー。放浪欲が強く、国内外の引越し回数やや多め。旅と酒場、家飲みをこよなく愛し、週5は飲酒、週2は休肝。著書に大人の家飲みエッセイ「ひとりぜいたく晩酌帖」(セブンアンドアイ出版)など。

※掲載内容の実施に関してはご自身で最新の情報をご確認ください

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