駅前からその街を知るべく街を歩き、巡り合った人に街について聞いてみたり、酒場で店主と話してみたりして、街に住む人、そしてその街の良さを探る本連載。今回は、出張編を挟み再び阪急宝塚・箕面線へ。服部天神駅周辺を散策します。
ホーム上に残る樹齢100年のクスノキが有名な駅
阪急宝塚線・箕面線の各駅周辺を散策していく本シリーズ、今回は服部天神駅を目指します。豊中市服部元町に位置する服部天神駅は、阪急宝塚線の普通電車のみが停車する駅で、路線図でいうと庄内駅と曽根駅の間にあります。梅田駅から10分ちょっとで着きます。
服部天神駅のシンボルとして有名なのが、大阪・梅田方面行きのホーム内にある“クスノキ”です。このクスノキは、服部天神駅の名のもとになっている駅の近くの神社、服部天神宮の御神木とされてきた木で、樹齢は100年以上になるというものです。
服部天神駅は、1910年に今の阪急電鉄の前身である「箕面有馬電気軌道」が開業した当時から存在する古い駅なのですが、駅のある場所は、かつては服部天神宮の境内だったそうです。駅の建設工事を前に、御神木として大事にされてきた木を切らずに残せないかという声が多くあり、今のような形でホーム内にクスノキが残ることになったといいます。ホームの屋根を突き抜けるようにして今も青々と茂るその姿は見ものです。
駅の北側にある改札を出ると、すぐに「服部会館」というパチンコホールの大きな建物が見えます。個人的な話ですが、昔、服部天神駅近くに住んでいる友人がおり、何度かその家に遊びに行ったことがあります。その友人は別の場所に引っ越してしまったのですが、服部会館の建物を見上げると、その時のことが懐かしく思い出されました。
駅前は繁華でも東の天竺川を越えるとのどかな風景が
かつて、その友人に案内してもらって服部天神駅前を少し歩きましたが、街全体の様子を確かめるように歩いたことはなく、駅前の風景には懐かしさを感じつつも、ほぼ初めてのつもりで歩き出します。
すぐ近くにある服部天神宮には後でゆっくりお参りするとして、まずは駅の東側に歩きます。府道145号豊中吹田沿いには飲食店が立ち並び、繁華な印象です。国道176号線を渡ってさらに東へ進むと徐々に静かな街並みになり、天竺川にかかる天竺川橋を渡ると、一気にのどかな雰囲気になりました。近くに学校があるのか、下校中の中学生たちがのんびりと横を歩き過ぎていきます。
さらに少し東側に進んだ閑静な住宅街の中に、当連載の編集担当・Mさんの古くからの友人であり、私も別の仕事で取材させてもらったことがあった料理開拓人・堀田裕介さんの仕事場があるというのでそこまで歩いてみることにしました。堀田さんはかつて服部天神駅近くで「ライスミールスフォータン」というお粥の専門店を営業されていました。お店は2022年に大阪の中津に移転し、人気店となっています。
残念ながら堀田さんはちょうどお出かけ中とのことで直接お話しすることはできなかったのですが、MさんがLINEで連絡してくれたところによると、堀田さんは服部天神周辺ののんびりした雰囲気がとても好きだとのこと。特に天竺川周辺はカエルの鳴き声が響くようなのどかさで、田んぼもあちこちにあるそう。5月から6月にかけては、近くで蛍を見かけることもあるといいます。駅周辺のおすすめのお店もいくつか教わり、再び駅方面へと引き返すことにしました。
天竺川近くにある神社・住吉稲荷大明神にお詣りし、その参道を歩いて駅前まで戻って、今度は服部天神宮へ、と、神社めぐりかのような行程になりました。服部天神宮は菅原道真を祀っていますが、かつて、この神社で菅原道真が足の病を治して福岡の大宰府までの旅を無事終えることができたという言い伝えがあり、昔から「足の神様」として信仰を集めています。気ままに散歩している時間が何より大事なこの連載なので、「いつまでも元気に歩けますように」と手を合わせました。
踏切を渡って駅の西側へも歩いてみます。こちら側も、府道145号豊中吹田線に沿って飲食店や商店が立ち並んでいて、気になるお店もたくさんあり、歩いているだけで楽しいエリアでした。5分ほど道沿いを歩くと左手に服部阪急商店街という小さな商店街があるのが目に入り、そこを歩いてみることにします。昔ながらの商店街という雰囲気ですが、新しそうな外観のお店もちらほらあり、ここもかなりおもしろそうな通りです。
その商店街を南へ抜け、服部天神駅利倉東線を駅方面へ引き返すと、「ビスワス服部店」というスパイス専門店があり、目を引かれたので立ち寄ってみることにしました。
「ビスワス」はインドのスパイスを専門に扱うお店で、本店は兵庫・尼崎にあるそうです。この「ビスワス服部店」はその支店で、インドの食材やスパイス、レトルト食品やお菓子などを販売しています。お試しサイズのスパイスが100円で販売されているコーナーもあり、私のようなスパイス初心者にも楽しいお店でした。
お店のスタッフで、とても気さくにお話をしてくれるエイコさんにインドの甘いお菓子を試食させていただきました。あまり馴染みのない風味でありながら、クセになりそうなお菓子ばかりでした。服部天神に住んで15年ほどになるというエイコさん、このあたりは「子育てがしやすい街」だといいます。「特にこのあたりには公園もいっぱいあるでしょう。スーパーも近いし、ドラッグストアも、なんでもあるし、高い建物があんまりないので圧迫感がないでしょう。道が広いし、子どもを歩かせても安心なんです」と、住みやすさについて語ってくれました。
明るい時間から飲めるお店もあった
「ビスワス服部店」スパイスやレトルトカレーを買った後、お酒を飲めるお店を探して駅の東側へ向かいます。先述の堀田さんからの連絡で知った「stand BEE HIVE」というバーが府道145号豊中吹田線沿いにあり、まだ明るい時間ですが営業しているようなので寄ってみます。
「stand BEE HIVE」は、6~7人が並べそうな立ち飲みカウンターといくつかの椅子席がある小さなバーです。店主の杉岡学さんは豊中にあるワインバー「シュシュ ワインスタンド」で働いていたそうで、その「シュシュ ワインスタンド」の服部天神店が8年前にこの場所にできた際にお店を任され、後に「stand BEE HIVE」として独立して2年が経つそうです。
15時からオープンしているそうで、(ざっと歩いた限り)このあたりでは貴重な昼飲みスポットです。「スプリングバレー シルクエール」の生ビールをいただいてグッと飲むと、少し歩き疲れた体に染み入るようでした。
店主の杉岡さんはこのお店で働いたことで服部天神に縁ができたそうで、お住まいは大阪市内とのこと。駅から徒歩1分ほどの好立地に位置するこのお店で働くようになって8年、その間でも街には色々と変化があったといいます。
「今、駅前の開発工事が進んでいるんですけど、あそこにも前は色々なお店があったんですよ。串カツ屋さんとか、オリーブオイルの専門店とか、書店とか、立ち飲み屋さんもあったんですけどね。開発の計画が立ってからだいぶ時間が経って、ようやく動き出している感じです。あの工事が終わったら雰囲気も変わるでしょうね。駅の西の方に阪急服部商店街という商店街があるでしょう。あそこも僕が来るもっと前はアーケードがあったらしいんです。それでちょっと暗い感じだったのが、アーケードを取っ払って家賃を安くしたら若い人がお店を出し始めて。僕も店長と仲良くさせてもらってるんですけど、中華料理の『パンダ食堂』とか、お昼はいつも満席らしいですよ。ニラソバとかオムライスが人気で」
この「stand BEE HIVE」に来るお客さんの7~8割は地元の方だそう。大阪市内からお店に通っている杉岡さんは、市内から服部天神までの距離感が気に入っているそうで「梅田からすぐ、10分ちょっとなのにちょっと歩くと田んぼがあって、一軒家も多くて静かで。居心地がいいですよ。若い人も最近増えているみたいですね」とお話ししてくれました。
2杯飲んだところで外へ出て、先ほど「ビスワス服部」のエイコさんが「すぐそこの『中華 上原』は人気のお店ですよ!遠くからも結構来はります」と教えてくれたそのお店に向かうことにしました。
『中華 上原』は2018年にオープンした人気の中華料理店で、昨年(2024年)に改装したばかりとのことで、店内はとても綺麗でした。化学調味料を使わない体に優しい中華料理をいただけるのがこのお店の特徴で、「五目春巻」「エビ蒸し餃子」といった点心類から、ランチでも人気だという「沖縄県産島豚の酢豚」、そして痺れる辛みが素晴らしい「坦々風焼きそば」まで、編集担当・Mさんと「うまい」「うますぎる!」と、夢中であれこれ食べまくってしまいました。
すぐ近くにある「ビスワス服部」のエイコさんに「美味しかったです!ありがとうございました!」と挨拶をし、駅へ向かいます。すっかり夜になり、パチンコホール「服部会館」のレトロなネオンにも光が灯っています。改札を通り、ホームのクスノキを眺めながら梅田へ向かう電車を待ちました。
服部天神駅周辺の物件情報
服部天神駅はその名の通り足の神様・服部天神のお膝元。駅の東西の商店街には多数の商店が立ち並びます。そして駅前から少し足を延ばせば閑静な住宅街、一戸建てが目立ちます。そんな服部天神駅周辺の家賃相場は、ワンルーム5.40万円、1K5.38万円、1DK 5.73万円で、1LDKなら8.94万円、2DKが12.19万円となっています(2025年5月時点)。大阪梅田駅までも10分弱、地元の方々に伺うと、住み心地がとてもよいとのこと。梅田方面への通勤・通学にも便利な服部天神駅周辺での暮らしを、選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか。
スズキナオさんによる人気連載が書籍化! 加筆修正を大幅に行ない、「大阪環状線」1周の降りて歩いて飲んでみるが楽しめます。