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伝統をつなぎながら、新しい挑戦に挑む。神戸・南京町の人気店「元祖豚饅頭 老祥記」の今
伝統をつなぎながら、新しい挑戦に挑む。神戸・南京町の人気店「元祖豚饅頭 老祥記」の今

伝統をつなぎながら、新しい挑戦に挑む。神戸・南京町の人気店「元祖豚饅頭 老祥記」の今

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神戸市中央区、JR元町駅から3分ほど歩くと、中華街・南京町があります。ここは、中華料理店をはじめ、食材店や雑貨店など100店舗以上が立ち並び、食事や雰囲気を味わおうと県外から訪れる人も多いエリアです。その中でも、圧倒的な人気を誇るのが「元祖豚饅頭 老祥記」。現在は、創業当時から使われていた建物の老朽化に伴いリニューアル工事中だそう。一時的に向かいにお店を移して営業を続けていますが、場所が変わっても相変わらずの人気店のようです。今回は、変わらない人気店を取り仕切る4代目店主の曹祐仁(まさひと)さんに話を伺いました。

観光地化される前の南京町で生まれた「元祖豚饅頭 老祥記」

―創業は1915年とのことですが、当時のお店のことを教えていただけますか。

曹さん:諸説あるんですが、相当苦労したという話は聞いています。私の曽祖父で初代店主の曹松琪(しょうき)は、第一次世界大戦ぐらいの時に、中国から曽祖母と一緒に日本に来て、二人でお店を始めたそうです。今では、一日1,000人ぐらいのお客さまに来ていただけるようになったのですが、当時は全然そうではなくて。南京町自体も今ほど観光地化されておらず、治安もよくなかったんです。いわゆるスラム街のようでした。戦時中は特に、兵隊さんが仕事を終えて来る飲み屋街といった感じだったそうです。決して一般の観光客が来るような場所ではなかったので、経営は厳しかったと聞いています。

―初代店主の松琪さんは、なぜお店を始められたのでしょう。きっかけや経緯はお聞きしていますか。

曹さん:もともと、ひいおじいちゃん(松琪さん)は上海と横浜を結ぶ船の上で点心士として料理人をしていました。着港先の横浜でひいおばあちゃんと出会い、結婚したそうです。その後、一度中国に帰りお店を営んでいましたが、神戸に店舗を持っていた日本の方から「自分の店を畳むので、もしよかったら神戸でお店をやりませんか」と打診があり、じゃあやりますと言って創業したのが老祥記の始まりです。

―なるほど。いつから南京町に観光客が来るようになったのでしょうか。

南京町の中央にある東屋は、南京町を代表するスポットで集合場所に使ったり、テイクアウトしたフードを食べる休憩場にもなっている
南京町の中央にある東屋は、南京町を代表するスポットで集合場所に使ったり、テイクアウトしたフードを食べる休憩場にもなっている

曹さん:1977年に「南京町商店街振興組合」ができ、1981年からは都市計画の取り組みとして区画整理をして、道や筋を造り始めたんです。南京町の真ん中に東屋や、北・南・西に3つの門を造って観光地化しようという動きがありました。その背景には神戸・北野が舞台の朝の連続テレビ小説がヒットし、観光が盛り上がったことが理由にあります。風見鶏の館を題材にしたドラマだったと思うんですが、その成功体験から、南京町も神戸の観光コンテンツの目玉にしようと、ハード面を整える動きが始まりました。南京町は神戸港の開港とともに1868年にできましたが、今の、中国の特色ある街並みと文化の発信地点としての歴史で言うと、まだ45年しかたっていないんですね。

老祥記4代目の曹祐仁さん
老祥記4代目の曹祐仁さん

―当時の南京町に対してどんな印象をお持ちですか。

曹さん:そうですね。いちばん古い記憶は僕が幼稚園ぐらいの時ですかね。今、改装工事をやっているお店の1階が店舗、2階以上が住居だったんです。そこに2代目のおじいちゃんとおばあちゃんが住んでいたので、おじいちゃんとおばあちゃんの家のある街という感覚でしたね。僕の実家も元町だったので、徒歩10分もかからんような距離感で、月に2、3回は来ていました。あと、1月とか2月になると南京町内でお祭りがあり、カンフーの服を着てパレードに参加する子どもも楽しめる演目もあって、小さい頃から生活の一部のような街でしたね。

お客さんがたくさん来て、扉に穴が開いた!?

―老祥記が知られるようになった背景に、先代たちのどのような工夫があったのか気になりました。きっかけなどあったのでしょうか。

曹さん:一つきっかけがあって、南京町が区画整理されるちょっと前の1973年だったかな。当時、お店の扉が引き戸だったんですね。で、お客さんが引き戸を開け閉めするんですが、その時に引き戸の取っ手に2ヶ所、穴が開いてしまったことがメディアに取り上げられたんです。

―それだけお客さんが来て、戸を開けたということですか。

曹さん:そうなんですよ。お客さんが来店されるたびに扉を開け閉めすることによって、指の摩擦で木の扉に穴が開いてしまったわけです。それぐらいお客さんがたくさん来ていると示唆する記事が神戸新聞に載ったんですね。飲食店が新聞に載ること自体、当時はめっちゃ珍しかった。なので、それをきっかけに翌日からすごいたくさんのお客さまが来てくれました。メディアに取材していただいて、お客さまが来てくれるという循環で少しずつ繁盛していったと聞いています。

伝統と歴史の継承と、時代に合わせた革新のバランスが難しい

―祐仁さんは、以前は電機メーカーに勤務されていて、そこからお店を継がれることになったんですね。

曹さん:いきなり店に入社することには、すごく抵抗がありました。先代も、うちの父も、さらに上のおじいちゃんもそうなんですが、一度も社会に出ずにお店を継いだんです。それが悪いとかいいとかいう話ではなくて、自分の特色をどう出したらいいのだろうと考えたときに、先代たちと違うことをするために、違う入り口から入った方がいいのではないかなと、高校生の時ぐらいからずっと思っていたんです。せっかく大学教育まで受けさせてもらったので、ちょっともったいない気持ちもありました。一度社会人を経験して、その経験を自社に持って帰る方が、将来を考えたときに意味があるのかなと考えたのです。

―2012年から4代目を継がれたんですね。

曹さん:メーカーに勤めたのは、約2年間ですかね。店が100周年となる2015年には戻ってきたかったので、すごく短い期間でした。

―祐仁さんがお店を継がれてから、店づくりで工夫されてること、実際にやってみて大変だと感じられたことを教えてください。

曹さん:最初に心がけたのは、従業員の働きやすい環境づくりです。もともと家族経営でスタートしているので、今までは阿吽(あうん)の呼吸でなんとかなっていたんですが、従業員も少しずつ増えてきて、どうやって組織を一枚岩にするか、どうやって長く働いてもらえるか、そのための仕組みづくりが自分の中でいちばん工夫したポイントですかね。苦労した点というか、今でもずっと意識していることなんですが、今年で創業110年を迎える中で、今まで培ってきた伝統と歴史を引き継ぎながら、時代に合わせて革新する。そのバランスは難しいなと日々思います。

―なるほど、伝統を踏襲している部分は具体的にどんなところですか。

職人たちが豚まんを手際よく包む風景
職人たちが豚まんを手際よく包む風景

曹さん:経営理念の部分ですね。経営理念は「豚まんを通して人々の幸せと神戸の発展に貢献します」です。なぜこの場所で豚まんを作っているのか自分の中で想像して、先代とも話し、大切にされていた思いを理念として明文化しました。そうすることで、僕は経営の立場から日々どうやって運営をするのか、従業員はどうやってものづくりやサービスをするのかを考える指針ができました。

あと、ものづくりの観点では、1店舗ワンアイテムのシステム。日本を例にしても、同じビジネスモデルでやっている会社って多分ないと思うんですよね。ゼロとは言いませんけど。だから、その部分は、少なくとも自分の代では、老祥記として踏襲していくべきものだと思っています。多店舗展開の話や商品展開の話は、内外部からさまざまお声がけがあって、短期的に見ると旨みがあるような話もたくさんあるとは思うんですけど、それを自分の中で咀嚼(そしゃく)して、「うちはやりません」と。やらないブランディングですね。それは2代目、3代目も続けてきたスタンスなので踏襲していくべきだと思っています。

―では逆に変化していく部分について伺いたいのですが、例えば豚まんの作り方などは創業当時からずっと変わらないのでしょうか。それとも少しずつ改良しながら作られているのでしょうか。

曹さん:製法は、変えていないです。ただ、調味料の配合を数パーセント単位で変えたりとか、もともと食材の産地は国内産でしたが、さらに産地にこだわってみたりとか。そういうマイナーチェンジはしています。ただ、ベースは変えていません。

あつあつの湯気に包まれた蒸したての豚まん
あつあつの湯気に包まれた蒸したての豚まん
メニューは、5個600円と10個1,200円の2パターン。できたてをその場で食べてもよいし、家に持ち帰っても◎
メニューは、5個600円と10個1,200円の2パターン。できたてをその場で食べてもよいし、家に持ち帰っても◎

―食材はどういったところから仕入れているのでしょうか。差し支えない範囲で教えてください。

曹さん:例えばネギ。今までも国産のものを使っていましたが、さらにこだわって京都の九条ネギを使うようにしたりしています。

―簡単に豚まんの作り方を教えていただきたいです!

曹さん:麹菌と水と小麦粉(強力粉)を配合し、24時間発酵させます。それを当日使う分だけ練り上げて膨らむ状態を作ってから、豚まん1つ分の大きさにカットして、具をのせて包んで、蒸して、それを成形する。これがざっくりとした流れです。

―麹を使うから、あんなに弾力のある皮に仕上がるんですね。さて、現在、祐仁さんが取り組まれている子ども向けの食育イベントなどの活動も踏まえて、老祥記の今後についてお聞かせください。

曹さん:本当に制約が多くてですね。商品展開はできないし、拠点も移せないっていう点では、いかに神戸の多様な方々とつながりながら一緒にものを作ったり、イベントをやったりするかというのがポイントになると思っています。まずはこの南京町。僕は南京町商店街振興組合の組合員であり、理事も務めています。南京町をどうやって盛り上げるかを考えることは、ひいては自分のお店にも通じるものだと思っています。なので、個人としてはそういう取り組みに積極的に携わって、お面白いイベントの企画など、常にみんなで話し合っていこうと思っています。

2021年より「老祥記ドリーム豚饅プロジェクト」というSDGs事業を展開しています。そこでは神戸の企業や専門学校とコラボして期間限定の豚まんを作り、食べてもらった収益で食育のイベントを実施しています。あとは、11月に「神戸豚まんサミット」というイベントもやっています。別の豚まん屋さんとユニットを組むなど、豚まんっていう一つのフックで、神戸はもちろん、日本全国の豚まん関係者とつながる。そんなふうに横のつながりを大事にしながら、イベントの担い手とお客さん、それと地域にいい循環ができるようにしたいです。

―近々そういったイベントの予定はありますか。

曹さん:南京町の定例のイベントもありますし、僕がやっている「ドリーム豚まんプロジェクト2025」や11月に行われる「神戸豚まんサミット」も進めています。今まで続けてきたイベントをブラッシュアップさせて、回数を重ねていきたいと思っています。

―ありがとうございます。最後に元町の魅力について曹さんはどのように感じられますか。教えてください!

曹さん:僕自身は、実家も近く、おじいちゃん、おばあちゃんの家もあったのでこの街が好きです。海もあるし、振り返れば山もある。日本なんだけれども、中国の香りもするし、東に行けば欧米のたたずまいみたいなものも感じる。観光資源としては大阪や京都に見劣りするかもしれないけど、住むという意味では、いいなって思います。いろいろなところを旅したりする中で、ここ以上にいいところはないかもって思います。

元祖豚饅頭 老祥記 日本、兵庫県神戸市中央区元町通1丁目3−7
元祖豚饅頭 老祥記 〒650-0022 日本、兵庫県神戸市中央区元町通1丁目3−7
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異国情緒が残る神戸・元町に住むのもあり?

南京町付近にはJR元町駅、阪神元町駅、神戸市営地下鉄海岸線の旧居留地・大丸前駅があります。都心までのアクセスもよく、JR元町駅からは、三ノ宮駅まで2分、大阪駅まで30分、京都駅まで1時間と交通面で困ることはなさそうです。また三宮駅も徒歩圏内です。南京町では中国のような雰囲気が、街を少し離れるとかつての外国人居留地らしいヨーロッパの雰囲気が楽しめるのも魅力です。

取材・文/葭谷うらら(インセクツ) 写真/桑名晴香

IN/SECTS編集部

プロフィール:大阪という物理的なローカリティと、感性や共感といった同時代性的ローカリティを軸に、ローカル・カルチャーマガジン「IN/SECTS」を発行。現在、大阪の京町堀を拠点に、「IN/SECTS」のほか、書籍の出版も行う。年に一度、イラストレーターや飲食店、作家、アーティストと、アジアの出版社を集めたイベント「KITAKAGAYA FLEA & ASIA BOOK MARKET」を、北加賀屋にて開催。LIFE LISTでは、個の視点を通して見えてくる街や人の姿を紹介する。

※掲載内容の実施に関してはご自身で最新の情報をご確認ください

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