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大阪・此花で活動する詩人・辺口芳典さんと歩く、西九条・梅香の街
大阪・此花で活動する詩人・辺口芳典さんと歩く、西九条・梅香の街

大阪・此花で活動する詩人・辺口芳典さんと歩く、西九条・梅香の街

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大阪・此花区の梅香エリアといえば昨今、ミューラルアートが増え若い店主が経営する書店や飲食店、さらに、クリエイターが居住するエリアとして徐々に浸透している注目の場所です。
して、ライブに展示、場の運営や施設のディレクション、最近では梅香エリアに描かれているミューラルアートの世話役も担っている辺口芳典さん。そんな辺口さんの最近の活動を梅香の街を歩きながら伺いました。

変わりゆく街に残すべきもの

―今日はよろしくお願いします。

辺口:「最近、ショックやったことがあって。西九条の駅前といえば、トンネル横丁っていうのがあるんですけど、それがなくなるっていう流れになっていて。『楽園』っていう友人がやっていたお店が最高のお店やったんですけど」

―中津に移転しましたね。

辺口:「ですね。めっちゃいい雰囲気やったんすよ。昔ながらの高架下にある居酒屋の渋さと新しさが相まったお店で、若い子たちが集っていて。古い場所だったのと、街全体が駅前中心に新しくなりつつある中で、再開発の波が押し寄せていて。変化するのは悪いことではないのですが、ただ古くなったからなくす、という動きではなく価値のあるものを残していく、そんなことを行政などに働きかけられるような関係性を作っていればなと」

―それは諦めずに、積極的に関わっていきたいということもあるのでしょうか。

辺口:「そうですね。この町に来て15年くらい。つながりは作ってきたつもりだったんです。此花区の区長からもアート関連のことで相談を受けたこともあったんですが、トンネル横丁に関しては無力でしたね」

―でもそこで腐らず活動を続け、最近では、ミューラルアートのコーディネートをやられているわけですよね。
※ミューラルアートとは:ミューラル(=mural)は壁画の意。近年、所有者の許可を得て、アーティストが壁に絵を描くミューラルアートなどで町おこしや、さまざまな啓蒙活動に使用されています。

辺口:「ミューラルアートは、素直にすごいなと思っています。描ける場所を探して世界中を飛び回って、交渉してうまくいったら描いて。その作品がパブリックな場所にあるので、すごく人目に晒されていろんな意見を投げかけられると思うんです。そこに対して自分たちの自由を主張している様子に親近感が湧くなと。だから、ミューラルアートに特別傾倒しているというわけではないんですが、僕なりに作家さんのことを理解して、不動産につながりもあるので、間に入って人や壁を紹介しています」

―いつ頃からそれはされているのでしょう。

辺口:「去年からですね」

―もっと前からかと思っていました。本当に最近ですね。ちなみにこの梅香地区でのテーマなどはあるのでしょうか?

辺口:「日本一の多様性をこの町から発信すること。世界で活躍するアーティストの絵が此花区に集まりローカルとグローバルがブレンドされることを目指しています。個性に寛容な下町の雰囲気が残る梅香・四貫島エリアで、世界中の優れたミューラルアートが観られるとおもしろいなと」

―現在はどのくらいの作品数があるのでしょうか?

葛飾北斎からも影響を受けたNychos(ナイチョス)による神話的な絵が描かれている
葛飾北斎からも影響を受けたNychos(ナイチョス)による神話的な絵が描かれている

辺口:「14作品以上あります。アメリカ、スペイン、中国、ロシア、インドネシア、オーストラリア、、、あ(川の向こうを指差して)あそこにちょうど見えるのがアメリカ人のナイチョスという作家の作品です。この(六軒家)川を挟んでのコントラストがすごいでしょ? 西九条の駅前方面は新築のマンション。そして、朝日橋を渡るとトタン屋根の長屋の並び。でもこれを一掃するのではなく、『この風情や景色もあるよ』ということを開発を考えている人や新築に住まわれる方々に伝えたいですよね」

六軒家川を朝日橋から見た景色。右手が梅香、左手は駅前に建てられた新築のマンション。その隣にはスーパーマーケットのライフがある
六軒家川を朝日橋から見た景色。右手が梅香、左手は駅前に建てられた新築のマンション。その隣にはスーパーマーケットのライフがある

―ゼロにしてしまうのではなく今あるものと、いかに融合させるかが重要ということでしょうか?

辺口:「僕はすごく今の此花や梅香の風景と状況は、個性が響き合っていると勝手に思ってるんです。例えば、橋を渡ったすぐには脱サラした人のおでん屋さんがあって地域の案内所になっています。他にも北加賀屋でイラスト描いたりお店をやっていた人がこっちにきて、お店を切り盛りしていたり、さまざまな人が入り込んでその場所ならではのものが出来上がっています」

―そんなところもできているんですね。コロナ前はそのお店はなかったですよね。と言っている側から、壁画がありました。これ、個人宅の壁?

壁画というと建物の側面などに描かれているのをよく見かけるけれど、この家の場合は、正面に
壁画というと建物の側面などに描かれているのをよく見かけるけれど、この家の場合は、正面に

辺口:「オーストラリアの作家の作品です。個人の人とも交渉していて、普段からお付き合いがある方もいるので理解が得られやすいというのもあります」

梅香に住む

―それはやはり辺口さんがこのあたりに根ざしてきたからこそですね。辺口さんのお仕事といえば、以前はホテルだったTHE BLEND INNもありますね。

辺口:「あそこもいいホテルだったんですけど、コロナになって集客が難しくなり撮影などに使うスタジオとして生まれ変わったんです。僕はもう関わってはいませんが、運営している会社はそう決めてから実際軌道に乗り、別の場所でもスタジオをやっていたりします」

スペインの作家、ペズさんの作品。真ん中にあるポストの裏にメッセージが書かれている。訪れる機会があったらぜひご覧ください
スペインの作家、ペズさんの作品。真ん中にあるポストの裏にメッセージが書かれている。訪れる機会があったらぜひご覧ください
コロンビアとシンガポールの作家、レダニアさんとソングさんの作品
コロンビアとシンガポールの作家、レダニアさんとソングさんの作品
アメリカ人のローレンさんの作品。怪獣カフェと命名されている。そのすぐ横では足場が組まれ、ロシアからやってきたアーティストのFORKさんが新たなミューラルを製作していた
アメリカ人のローレンさんの作品。怪獣カフェと命名されている。そのすぐ横では足場が組まれ、ロシアからやってきたアーティストのFORKさんが新たなミューラルを製作していた
メキシコの作家・UNEGさんの作品。此花の壁画プロジェクトの情報はMURAL TOWN KONOHANAのウェブサイトで紹介されている
メキシコの作家・UNEGさんの作品。此花の壁画プロジェクトの情報はMURAL TOWN KONOHANAのウェブサイトで紹介されている

―壁画を見て回っている間に黒目画廊に到着しましたね。*黒目画廊は、辺口さんの営むギャラリー、以前はここで暮らしていた。

辺口さんが作り上げたギャラリーであり居城
辺口さんが作り上げたギャラリーであり居城

辺口:「黒目画廊は、常設展示もあって今もその常設展を見てもらえます。展覧会はとびとびって感じになってますが、あの頃のままですよ。最初は住むつもりはなかったんですが、一人で暮らし始めて家族ができたり、すごく(住むには)厳しかったですね。ガスがないんですよ、ここ。だから銭湯に通っていました。銭湯は好きなのでそれはよかったんですが、ある日、行きつけの銭湯がなくなるという情報が入ってきて、ある人に相談したら、いろいろと調べてその人が『僕やりますわ』と引き継いでくださった。その頃には結婚もして子どももいたので、お風呂は重要な問題でしたが、風呂代をタダにしてくれるという形で、かみさんがそこで働くことになって。そういうつながりで自分たちが生きていくために必要なものを手に入れていた感じです」

ギャラリーと生活空間が交錯する黒目画廊の中。今でも新鮮な気持ちで作品を鑑賞できるのはすごい
ギャラリーと生活空間が交錯する黒目画廊の中。今でも新鮮な気持ちで作品を鑑賞できるのはすごい

―あの通称、自転車湯の千鳥温泉でしょうか?

辺口:「そうです。めちゃありがたかったです。千鳥温泉がなくなってたら行き詰まっていたと思います。なかなかハードな生活をしていたんですが、追い討ちは2018年に台風があったでしょ? 大阪でものすごい風が吹いて。その時にいろんなものが飛んできて、窓が割れました。すごい音がして、身の危険を本気で感じましたね。暮らしがありながらもギャラリーとして展示をみせてプライベートとパブリックの境界がないのも精神的な負担があったと思いますが、台風は全く耐えられませんでした。でもそういうギリギリの環境での展示やパフォーマンスをしていたから育つ感性というのもあるみたいで、ドイツの写真家のカチャ・ストゥーケに見つけてもらったのをきっかけに、2011年から定期的にデュッセルドルフに渡り日独交流プロジェクトに参加しています。2022年には一絵(当時6才の娘)と共にデュッセルドルフ、ケルン、フランクフルトで展示や朗読演劇を2ヶ月間かけてやってきました」

―少しずつこれまでのことを聞いてきましたけれど、本当にさまざまなことをされていますよね。辺口さんの今の職業としては何になるのでしょうか?

辺口:「全然変わらず、詩人なんですよ。詩を書くことが基本にあって、詩を書くために全部やってるんです。結局やっていることを詩人では説明できないから、展覧会って言わなあかんし、プロデュースって言わないといけないだけで。加えて『なんでやってるの』って聞かれたら、 そういう動きとか、人と喋ったり、新しいことをしないと詩を書けない。もっと言うと、詩人が詩を書くことが世の中で許されてないと思うんです。 職業としてみんな認知してないし、シーンがないでしょ。アーティストやミュージシャンにはありますが、詩人って言った途端に仕事としてみなされない」

辺口さんの背後にある窓に2018年の台風時、瓦礫などが飛んできた
辺口さんの背後にある窓に2018年の台風時、瓦礫などが飛んできた

―自由人枠のような。

辺口:「社会的に認められているのって、大きく言えば2人ぐらいじゃないですか。最果タヒさんと谷川俊太郎さん。この2人も厳密に言うと結構いろんなことをしています。翻訳をはじめ、詩だけではないいろんなことをしています」

―確かに言われてみるとそうです。

辺口:「だから、詩人って結局いろいろやらんとあかんのですよ。その土壌づくりから。その話をすると不動産につながっていくわけです。建築や街づくり。だから建築家のこともよく見ている。そういうことがあったのでホテルとしてTHE BLEND INNを企画するとき、島田陽さんやドットアーキテクツにもお願いすることができたと思います」

元THE BLEND INNの前を歩く辺口さん。まだ壁にホテル時代のネオンサインが残る
元THE BLEND INNの前を歩く辺口さん。まだ壁にホテル時代のネオンサインが残る

―THE BLEND INNができたことは此花にとっても辺口さんにとって大きかったわけですね。

辺口:「今はBlend Studioと名前も用途も変わってしまったけど、此花であの建物ができて、あの空間を一棟借りしたいと思う人たちが出てきたということ。古き良き下町の魅力を咀嚼することでこういう規模のお話が成立したと思っているので、それは自信にもなったし、人が欲しいと思うものを創造できるという確信につながっています。だから、極論をいえば、めちゃくちゃお金を稼いでお金のことに関心なくしている人がいたとして、人生をおもしろがれるアイデアが欲しいという人がいたら、僕はそれを提供することができます。詩人っていうのは宇宙で一番オモロいことをペンと紙だけで書き表す仕事なので」

街と人、人の欲求をつなげる

―真逆だからこそ噛み合うということでしょうか?

辺口:「“巨大なホテルは作れるけれど、何かおもしろいアイデアはないんだよね”っていう人と、“僕、アイデアあります”というような人をつなげることができるかなと」

―話は変わりますが、最近注目していることはありますか?

辺口:「遊びを作ることですね。写真ファイト、写真バトル、ピクチャーバトルとと呼べる遊びができないかと考えています」

―それはどのような遊びで?

辺口:「写真としてのクオリティは関係なく、思い入れがあるとか、いいなと思う写真や画像を出し合って、(自分にとって)どうよいのかをプレゼンする。それで、共感性が高いとか驚きとかいろんな項目でジャッジする。そんな遊びです」

―触りの部分だけ聞いてもおもしろそうです。それってつまり、アカデミックに認められた作品の見られ方ではない、市民の手によって決められる価値基準ということですよね。大袈裟ですけど、その写真(対象物)をよく観察する中で、さまざまなことを発見していくわけで、それが新しい価値基準を作ることになりますね。この遊びはぜひ、実現させて子どもにも体験してもらいたいですね。

辺口:「ぜひやりましょう」

イギリスの作家、ニック・ウォーカーとシーワンの共同作品。中央に描かれている英国紳士風の人は、ニック・ウォーカー作品ではお馴染みのモチーフ「ヴァンダル」
イギリスの作家、ニック・ウォーカーとシーワンの共同作品。中央に描かれている英国紳士風の人は、ニック・ウォーカー作品ではお馴染みのモチーフ「ヴァンダル」

今回歩いたのはJRの駅がある西九条から徒歩5分ほどの場所にある梅香エリア。これまでにも紹介してきた書店「シカク」や銭湯「千鳥温泉」などがある地区です。辺口さんも語るように、ここにしかない風情がある街です。個性が見えにくくなる都会で、まだまだ魅力的な街の姿を見せてくれる観察のしがいのある地区とも言えます。
家賃相場は此花区全体のワンルームで5.38万円。1Kは6.26万円。3LDKでも12.43万円と借りやすい値段設定となっています。LIFULL HOME’Sの口コミによれば、自転車利用がしやすいという意見も多く見られました。

IN/SECTS編集部

プロフィール:大阪という物理的なローカリティと、感性や共感といった同時代性的ローカリティを軸に、ローカル・カルチャーマガジン「IN/SECTS」を発行。現在、大阪の京町堀を拠点に、「IN/SECTS」のほか、書籍の出版も行う。年に一度、イラストレーターや飲食店、作家、アーティストと、アジアの出版社を集めたイベント「KITAKAGAYA FLEA & ASIA BOOK MARKET」を、北加賀屋にて開催。LIFE LISTでは、個の視点を通して見えてくる街や人の姿を紹介する。

※掲載内容の実施に関してはご自身で最新の情報をご確認ください

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