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大阪「鶴橋」駅前にある「よあけ食堂」。夜明けとともに始まる食堂という名の呑みどころ
大阪「鶴橋」駅前にある「よあけ食堂」。夜明けとともに始まる食堂という名の呑みどころ

大阪「鶴橋」駅前にある「よあけ食堂」。夜明けとともに始まる食堂という名の呑みどころ

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1945年創業、現在3代目が店を営む「よあけ食堂」。創業時は、伊勢から鮮魚列車なるものが大阪に向かって走り、朝方にようやく仕事を終える人も多く、そんな労働者の胃袋を満たす店としてにぎわっていたそうです。
それから80年を迎えようとしているこちらのお店も今では、「なんでもやります!」という掛け声ともに要望を聞いたメニューを提供してくれると常連客からの信頼も厚く、何より楽しい! また、食堂というよりも夜勤明けの一杯を楽しみにやってくるお客さんが多いと様変わり。
そんな今の「よあけ食堂」にお店のこと、街について話を伺いました。

名物メニューがお客さんの声によって生まれ続ける

――たくさんおもしろい名前のメニューがありますよね。

奥田さゆりさん(以下:奥田さん):「そうなんです。お客さんが『こんなん作って』『あんなんでけへんの?』なんて言わはるので、その要望に応えて作るようにしてたり、それでいろいろ増えました。今日は、せっかくやから名物のイワシ汁、にゅうめんの入ったのと思ったんやけど、イワシが全然市場になくて」

――それは残念です。

奥田:「でも、粕汁とかもやっているので、どうですか? うちのお客さんは、おでんに粕汁かけて食べるとか、よくされますよ。他にも粕汁うどんとか粕汁そば、麺を食べた後には、その鉢にご飯を入れてきれいに食べて。粕汁だけで2、3杯飲んでいく人もいます」

娘さん:「(飲んだ後に)お持ち帰りもされる方もいらっしゃるし」

おでんのタネが隠れるほどたっぷりとかかった粕汁。好きなネタを入れてくれるのも嬉しい
おでんのタネが隠れるほどたっぷりとかかった粕汁。好きなネタを入れてくれるのも嬉しい

――それはすごい! 粕汁は季節商品ですよね。いつ頃から、だいたいされているんでしょうか?

奥田:「『寒っ』て言い出したころからいつもやるので、11月くらいかな。年によって多少の違いはあるけど、それくらい。終わりは2月末くらい。その後は、キムチそうめんが定番。暑くなったらお客さんみんな『キムチそうめん頂戴』って注文されます」

――飲みに来られるお客さんが多いのかと思っていましたが、しっかりとご飯のメニューを頼まれるんですね。

奥田:「うちは結構、いろんなメニューに青唐辛子を入れるんです。キムチそうめんにも合うし、オムライスにも入れたりします。ピリッとして、アテになります」

娘さん:「オムライスをアテに食べられる方多いですよ。わんぱくですよね(笑)」

――確かに。わんぱくです。

娘さん:「おでんの具ですが、牛すじがないので、代わりに梅焼きを入れておきますね」

――ありがとうございます。

奥田さん:「粕汁をかけたおでんは、おでんの出汁と粕汁が合わさって、また美味しいんです」

――そうですね。まろやかというか、粕汁苦手な人でも食べやすそうです。余談ですが、関東の方は粕汁に馴染みがあまりないようですね。

和やかに話す母娘。ときには厳しい一幕もあるそうです
和やかに話す母娘。ときには厳しい一幕もあるそうです

奥田さん:「そうそう。今朝もそんな話をしていました。関東から来られたお客さんが『粕汁好きなのよ〜』っていうんで、『ご存じなんですか?』と聞いたら、油カスのことで。そのカスと違って酒粕のお汁って言ったら、『知らない』って言われて」

娘さん:「はじめて飲んで『美味しい』っておっしゃる方もいらっしゃるけど、苦手な人もやっぱり多いかな」

――そうですね。通年メニューで、お客さんの要望から生まれたものなどは?

奥田さん:「ピザトーストなんかは新しくできたメニューですね。林(修)先生と同じ予備校の先生が、テレビ番組のロケで来てもらった時に、『(よあけ食堂は)なんでもやらせてもらいます』というスタンスでお店をさせてもらっているんで、『ピザトーストなんてメニューで作れますか?』とご注文いただいて」

娘さん:「それで、もともとあったエビエッグ(700円)というグラタン皿に入れてチーズのせて焼くメニューがありまして、そのメニューもそもそもクラッカーをつけてお出ししていたので、それをパンに乗せたら美味しいんじゃないかと。茹で卵とエビとほうれん草と玉ねぎとチーズが入ってるんですけど。それを作った後に村瀬先生が『僕の名前つけてください』とおっしゃったので村瀬ピザトースト(650円)という名前がついています。だから、いつも『なんなんあのメニュー?』って聞かれて説明しているんです」

村瀬ピザトーストがこちら。ボリュームも満点で、唐辛子のからさが効いて、お酒が進みます
村瀬ピザトーストがこちら。ボリュームも満点で、唐辛子のからさが効いて、お酒が進みます

――美味しそうな予感はするものの、ネーミングが一筋縄ではいかないというか。なかなか癖が強いですね。

奥田さん:「でも、味は青唐辛子を使ってるんでアテにめちゃくちゃいいんですよ。そこにまだタバスコかけて食べる方もいらっしゃいますね」

洋食から和食の一品まで、幅広いメニュー。このメニューと一緒に飲む強者が多数来店
洋食から和食の一品まで、幅広いメニュー。このメニューと一緒に飲む強者が多数来店

地域のさまざまな人に愛され、まもなく80周年

――2025年には80周年を迎えると思いますが、昔から飲みに来られるお客さんが多かったんでしょうか?

奥田さん:「私がここに嫁いできた頃は、まだ、食堂という感じでやっていました。飲む人もいましたけど、食事が中心で、お酒も飲むというような。でも、今は、飲むのが中心でオムライスをアテに飲むし。元々8時30分からの営業でしたけど、2023年から9時オープンにしているんですが、お店開けた瞬間からお客さん来られますね。午前中は近隣に大きな病院があるので、そこの看護師さんとか、夜勤のある公務員の方も来られますし、鉄道の方々もよく来られます。その時間が終わったら、子どもを幼稚園などに送って行ったお母さんたちで賑わいますね。わーっと飲んでご飯食べて、『もうお迎えの時間!』みたいな感じで(笑)」

――時間帯によっても客層が全然違うわけですね。時間帯ごとに色があって楽しい雰囲気で。

奥田さん:「目まぐるしいです(笑)。それで、4時30分になったらラストオーダーして、5時にはきっちり閉店」

――現在、3代目になられると思いますが、引き継がれて何年になるのでしょうか?

奥田さん:「結婚したのが1957年でその当時は、主人の兄と主人と母親でやっていたんですが、兄が違う仕事をしたいということで、引き継ぎました。最初はビールと日本酒くらいしかなかったんですが、焼酎ブーム(1970年〜80年代に2回あった焼酎ブーム。80年代には酎ハイやサワーが流行。缶酎ハイが出たのもこの頃。ちなみに2000年にも焼酎ブームがありこの頃には、焼酎専門店が台頭)の頃に、注文が増えていろんなお酒を置くようになりましたね。それからは飲む人がよく来るお店になっていったと思います」

――男性客の方が多めでしょうか?

店内は細長いカウンター席が並ぶ。扉が4つあり、どこからでも入店可
店内は細長いカウンター席が並ぶ。扉が4つあり、どこからでも入店可

奥田さん:「いやいや、女性の方もいらっしゃいます」

娘さん:「最近は女性も多いですよ。お一人でも来られますし」

奥田さん:「ややこしそうな店で、怖そうな店に見えますでしょ? 勇気のある人がいっぱいいるなとびっくりしているんです(笑)」

娘さん:「私だったらよう入りません(笑)」

奥田さん:「でもおかげさまで、ユーチューバーの人やインスタグラムで紹介してもらったりして、それを見た女の人が、よく来られます」

――いつも三人でされているんでしょうか?

娘さん:「そうですね。毎日はいるようになって2年くらいです。結婚を機に働くようになりました。それまでは別の会社に勤めていたので、平日は働きに行って、週末に手伝うような感じだったんですが」

――一緒に働かれてみていかがでしょうか?

娘さん:「めっちゃ喧嘩もします。家族なんで(笑)」

――(笑)お母さんのご出身は、鶴橋でしょうか?

奥田さん:「私は、大正区生まれで藤井寺育ち。でも、今や鶴橋一筋になりました。もう鶴橋でないとダメですね」

近年は外国人観光客にも人気な鶴橋エリア

――近隣の様子は、昔と比べていかがですか?

奥田さん:「昔と比べて、鶴橋周辺もずいぶん変わりました。最近の話でいえば、外国人の観光客の方々は、鶴橋は意外と少なかったんですけど、コロナが終わって急に外国の人が増えたなぁという印象です。元々は、そんなに外国人観光客が多い場所ではなかったんですけど、最近は、東アジアの方々も多いし、西洋の人もたまにいらっしゃいますね。でも、言葉の問題があるし、オムライスや焼き飯、そういうポピュラーなメニューだけやったらね、スマホ使ってちょっと説明するだけでいいんですけど」

娘さん:「『村瀬ピザ』とかね。まず村瀬さんの説明からしないといけませんし(笑)」

奥田さん:「それはちょっと難しいでしょ。(私の)日本語もままならんのに(笑)」

娘さん:「自分の日本語の話?」

――(笑)その流れで言えば、宮城さんというメニューもありますが。

奥田さん:「あれはね、豆腐と白菜と豚肉とを白菜のキムチと一緒にあっさりお醤油で炒めて、そこに青唐辛子もちょっと入れて。アテにもなるし、ご飯のおかずにもなる」

――あー、それは聞くだけで美味しそうですね。80年もされているといろいろなことがあったと思いますが、その中でもコロナは異例なのかなと。大変でしたよね?

奥田さん:「そうですね。お酒もダメでしたし、昼間の営業だけで、全然売り上げもあがらず。早く閉めてました」

――そうでしたか。大変な時期を乗り越えて、いよいよ80年。何かされるご予定は?

奥田さん:「何しましょうかね?」

娘さん:「何かしたいね、なんてことは言っているんですけど。周年は特にしてないんですけど、80年ともなるとちょっとやっておいてもいいなって思いますね」

奥田さん:「何か考えといてもらえますか?(笑)」

一同:(笑)

◆今回取材したお店
「よあけ食堂」
大阪市東成区東小橋3-17-23
06-6972-0992
水・月2回木曜休
9:00-17:00(LO16:30)

交通利便性も高い鶴橋駅。近くに行きつけのお店がある暮らし

今回訪れた「よあけ食堂」は、Osaka Metroと近鉄電車の鶴橋駅から徒歩約1分という、駅近にあるにある呑みどころ、お食事処。焼肉の街としても知られる鶴橋の中にあり、まるで迷路とも思える駅前商店街の一角にあります。一帯は商店街ですが、その商店街を抜けると一戸建ての住宅が多数。昼から近隣住民でにぎわうスーパー銭湯のほか、よあけ食堂にもよく訪れるという大阪赤十字病院、また、大阪市立天王寺スポーツセンターも近くにあります。
交通の便もよく、大阪のミナミへはOsaka Metroの千日前線で約5分、奈良へは近鉄電車で向かうことができます。

◆本記事の担当者
取材・文:松村貴樹

IN/SECTS編集部

プロフィール:大阪という物理的なローカリティと、感性や共感といった同時代性的ローカリティを軸に、ローカル・カルチャーマガジン「IN/SECTS」を発行。現在、大阪の京町堀を拠点に、「IN/SECTS」のほか、書籍の出版も行う。年に一度、イラストレーターや飲食店、作家、アーティストと、アジアの出版社を集めたイベント「KITAKAGAYA FLEA & ASIA BOOK MARKET」を、北加賀屋にて開催。LIFE LISTでは、個の視点を通して見えてくる街や人の姿を紹介する。

※掲載内容の実施に関してはご自身で最新の情報をご確認ください

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