京橋といえば、関西の人にとっては懐かしのCMでお馴染みのグランシャトー。「おまっせ」(あるの意)というもはや関西人でも使わないフレーズをリズムに乗せて、流れてくるテレビCMに昭和の小学生はよく口ずさんでいたと思います。
さて、そんな京橋ですが、今も昔も変わらず飲み屋さんが多く、帰りに一杯やっていく会社員たちを多く見かけます。そんな京橋の散策を期待に胸膨らませながらスタートします。
スズキナオさんによる人気連載が書籍化! 加筆修正を大幅に行ない、「大阪環状線」1周の降りて歩いて飲んでみるが楽しめます。
京阪電車や地下鉄への乗り換えにも便利でにぎやかな駅
冒頭から自分の話をさせていただきますが、私が10年ほど前に東京から大阪へと引越して来た当初、とにかく驚いたのが天満駅と京橋駅の居酒屋の充実ぶりでした。
天満駅も京橋駅も、多数の飲食店が駅前に並び、昼前から営業している居酒屋もたくさんあります。大阪はなんて活気に溢れたパワフルな場所なんだ……と、最初に衝撃を受けたのが天満と京橋という二つのエリアだったのです。
大阪で暮らすうち、天満と京橋はそれぞれに異なる雰囲気を持つ街だと思うようになりました。おしゃれな飲食店を目掛けて若い方が集まるようになったとはいえ、同時にうっすらと生活感が漂う天満に比べ、京橋はもっとエネルギッシュで雑多な街だというイメージがあります。行き交う人々を眺めていても、京橋の方が老若男女、幅広く感じられます。
そのため、天満へも京橋へも同じぐらいの頻度で飲みに出かける私は、天満に行く時は割とフラットな気分で、京橋に行く時は「よし、行くぞ!」と、ちょっと気合を入れて臨むのです。
大阪環状線の京橋駅のメイン出口は北口で、この北口界隈に最も多くの飲食店が密集しています。京阪電車やOsakaMetro長堀鶴見緑地線との乗り換えにも便利で、移動の途中に京橋駅を経由していく人も多そうです。ちなみに駅の南側すぐを寝屋川が流れており、川を越えて南へ進むと、城見、鴫野といった方面にたどり着きます。
路地をうろうろしながら新京橋商店街へ
さて、まずは駅北口側の喧騒を眺めつつ、歩き出してみます。東側に歩くと「立ち飲みストリート」と呼ばれる活気あふれる飲食店街があったり、細いアーケード街をうろうろしているうちに「京橋はええとこでっせ、グランシャトーがおまっせ」という、東京出身の私ですらなぜか知っているCMソングで有名な商業ビル「グランシャトー」が見えてきたり。とにかく情報量の多い一角です。
京阪電車の高架下に広がる「エル京橋」という飲食店街に沿って歩いていくと、向こうに「エディオン京橋店」の大きな建物が見えてきます。繁華街の印象が強い京橋駅ですが、このあたりまで来ると、意外なほどに住宅が多いのに気づきます。背の高いマンションもたくさんあります。
国道1号線の大通りを渡り、西方向へと歩いていくと「ビギン京橋」という愛称もあるアーケード街「新京橋商店街」にぶつかりました。この新京橋商店街の雰囲気が私は好きで、たまに散歩します。住宅街とも近いためか、駅前の活況とは少し違って、のどかな空気が流れている気がします。
「新京橋商店街」から繋がる「リブ・ストリート(京橋中央商店街)」へと歩き、創業50年以上になるという老舗豆腐店「のとや」で美味しい豆乳をいただきました。いい豆腐屋さんがある界隈は暮らしやすい街だ、というのが私の説です。
さらに北へと進むと、アーケード街の切れ目近くに、「橙(だいだい)」という立ち飲み店があったので入ってみることにします。
駅前から歩くごとに表情を変える京橋の街
「橙」は、気さくな女将さんが一人で切り盛りされているお店で、オープンから4年ほどになるそうです。以前はレンタルのキッチンスペースとして使われていたという空間を、上手に活用しているのがわかります。
料理上手の女将さんが用意する日替わりメニューが売りで、ひと手間かかった小鉢が、どれも手頃な価格で提供されています。旬のタケノコを使った「筍とベーコン炒め」をいただきつつ、まずは生ビールで喉の渇きを潤しました。
飲食業界に携わってこられ、ご自身もお酒が大好きだという大阪育ちの女将さんが、馴染みのあるこのエリアに自分の店を出したいと考えてオープンしたのがこの「橙」なのだとか。
京橋駅からは少し離れた場所ですが、それゆえに穏やかな雰囲気で営業できているそうです。「うちは常連さんが多いんです。私自身、個人店が好きなので、こういう店が好きな方が来てくれることが多いですね。このあたりには駅前よりも落ち着いた雰囲気を求めてくる方が多いと思います」と語ってくれました。
カウンターにずらっと並ぶ焼酎のボトルはどれも珍しい銘柄ばかり。「日本酒を色々出している居酒屋さんが近くに多いのでうちは焼酎に力を入れていて、他ではあまり置いていないものを選んでいます」と、そのラインナップでこの店ならではの特色を出そうと考えたそうです。おすすめの芋焼酎「だいやめ」をロックでいただき、その華やかな香りを堪能しました。
「平日は少し早めの15時からオープンしていて、この辺は月曜休みのお店が多いのでうちは火曜休みにして、そういうところでも他のお店と差を出しています。隙間、隙間を狙って(笑)」とのこと。すごく居心地のいいお店だったので、また散歩のついでに立ち寄ってみようと思いました。
「橙」の女将さんがおすすめしてくれた「立ち飲みとおる」で締める
「橙」を出て、再び商店街を歩きます。女将さんが「あそこはメニューが豊富でどれも美味しくて、飲みに行くと勉強になるんです」と教えてくれた「立ち飲みとおる」へ向かうことにしました。ちなみに、女将さんは「最近、エディオン(京橋店)の裏手が『裏京橋』って言われて、お店が色々できてるんですよ」とも教えてくださり、それはそれで非常に気になったのですが、そちらへはまた別の機会に行ってみることにします。
「立ち飲みとおる」は細い路地に沿った、お客さんが10人ほど入れば満員かというお店なのですが、「橙」の女将さんがおっしゃる通り、魚介類を中心として、ホワイトボード2面にわたってたくさんのメニューが並んでいて感動しました。
「カンパチとアサリのアクアパッツァ」をシークワーサーサワーのおつまみにいただくと、旨味がギュッと凝縮されたような味わいで、かなりのスピードでお酒が進んでいきます。
隣のお客さんがズワイガニを丸ごと焼いてもらって食べているのをうらやましく眺めつつ、「よし、今度はここにお腹いっぱい食べにこよう」と心に誓います。
ほろ酔い加減で店を出て、「ビギン京橋」のマスコット的存在である「真実の口」の前で記念撮影をして、再び京橋駅前の喧騒へと戻っていきます。今回は駅の北側エリアのほんの一部を歩きましたが、この街だけで散策記事がいくらでも書けそうな、京橋の奥深さを感じる取材になりました。
<今回立ち寄ったお店>
橙
大阪市都島区東野田町5-15-10
15:00〜23:00
火曜休
なんでもそろう暮らしやすい京橋エリア
飲み屋の数もさることながら、早い時間帯からオープンしているお店も多数。遊びだけでなく駅前から商店街を進めば住宅地が広がる街・京橋。遊びにも暮らしにも便利で元気な街、今回の取材だけではその奥深さを見極めるには、まだまだ足りない印象の京橋です。
LIFULL HOME'Sのまちむすび2024年3月時点の情報によれば、買い物のしやすさ、交通の利便性が共に4を超えていました。さすが、JR、京阪、OsakaMetroの3つの電鉄がそろっている駅という印象と、商店街だけでなく駅前の百貨店などの存在も住むためのメリットになっている印象です。逆に自然の多さが2.5と低めですが、実は桜宮や大阪城公園も徒歩圏内にありますので、子育て世代にもおすすめです。